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【企画短編#noteでBL※R18】つつじみようぜ!

企画参加作品①
毎月恒例、BL祭りに今回も参加いたします。
なみさん、いつもありがとうございます!!

参加作②はこちら↓

(本作について)
今回はちょっとラブコメ風を目指してみました。
成功したかは不明ですが、私の作品には珍しく誰も悩んでません!!
(作者歓喜)
まぁ拗らせてるっちゃ拗らせてるかも?

※※BL要素を含みますので、苦手な方はご注意ください※※
【テーマ】3つのお題でBL(3,000~5,000字)
【お題】 花・爪切り・「大嫌い!…でも好き」
【タイトル】つつじみようぜ!(スペース除き約3,800字)

「あとは爪切りとー」
「え、いる?爪切り」
 俺の問いかけに、凪はきょとんと目を見開く。
「え、いるでしょ。ささくれできた時とか、爪割れた時とか、あとちょっとしたもの開けるのにも重宝するし。あるじゃん、無駄にパッケージが強いお菓子とか」
「なるほど…?」
 あまり考えたことのなかった爪切りの活用法に思わず納得する。確かに、小さくても立派な刃物だ。
 まぁ『無駄にパッケージが強いお菓子』を買う機会があるかは不明だが、ささくれや爪割れは普通にあり得る。爪切りはあったほうがいいかもしれない。
「でもさぁ、ちょっと荷物多すぎじゃない?爪切りみたいな小さいものはいいけど、着替えとかそんないるのかよ」
「あっても困らないじゃん」
「いや移動が不便になるのは充分困る事だろ…」
 凪はきゅっと眉を寄せた。空気がピリつく。
「あるだろ、飲み物零したりとか」
「いや幼児じゃあるまいし」
「車酔いで吐いたり」
「乗らねーし車。電車と徒歩だろ」
 追い詰めると、凪の眉間のシワはどんどん深まる。瞳が怒りにきらめいて、「あ、まずい」と思った時点で時既に遅し。
「もういい、おまえなんかだいっきらいだ!!」
 いつもの捨て台詞を吐いて、凪は足音荒くその場を去った。
 …いやいや、幼児じゃあるまいし。

 一面のつつじを見よう、と凪が言い出したのは連休の少し前だった。つつじを見るために遠出しようと言う。俺はぽかんとして訊いた。
「そんなに好きだったの?つつじ。初めて聞いた」
「いや別に。あんまり意識したことはない」
 でも今年は遠出しても見たい、らしい。
「まぁ出かけること自体は別にいいけど…どこで見れるの、一面のつつじ」
「知らない。今から調べる」
「…俺が?」
「そう」
 当然のように言って、凪は小首を傾げてみせた。
「いや?」
 ズルいだろうその顔は。
 こうして俺は、特段興味のない『一面のつつじ』を見るため、諸々の検索に追われることになったのだ。
 調べた結果、『一面のつつじ』を見るのによさそうな場所は遠かった。住んでいる場所から電車で2時間強。
 端的に言ってめんどくさい。
 テンションだだ下がりの俺に、凪はあっさりと提案した。
「どうせなら一泊しようぜ。それならいいだろ」
 どういいのか不明だが、こうして『一面のつつじを見る』は小旅行に格上げされたのだった。
 出発は明日。準備は(とりあえず)完了。
 その段階で、お姫さま(王子さま?)は怒りの立てこもりを開始したのだった。
 
「凪。なーぎ。なぎちゃん、出ておいで-」
「うるさい、あっちいけ!!」
「いや子どもかよ」
「うるっさい!!」
 余計に怒らせてしまった。とりあえず退散して、ソファに寝転ぶ。
 凪は短気だ。地雷は少ないが、怒りの導火線は短い。そして火がついた時の態度が極めて子どもっぽい。
 なんだ部屋にこもるって。
 考え出すとおかしくなって、俺はひとりで吹き出す。立派な社会人が、ケンカして部屋にこもる。なお俺的にはケンカでさえない。単に「荷物を減らしたらどうか」と言ってみただけなのに。
「どうすんだよ明日…」
 朝までに機嫌は直るだろうか。いくらワガママ姫(王子)とは言え、苦労して確保した宿をキャンセルさせるようなことはしないと思うけれど。でもそうなると、ふくれっ面で無言の凪と2時間強。きっと本を読むことも許されない。
 なんだその地獄みたいな小旅行。社会人にとってのきらめく癒やし、初夏の連休がそんな時間になるなんて、普通に残念極まりない。
 でも。ふくれっ面の気まずそうな凪、絶対可愛いよな…。
 そんなことを考えていると顔がニヤけるのを抑えられない。結局俺はいつだって、…
「何ニヤけてんだよっ!!」
「うわ、凪!?」
 突然クッションが飛んできて顔を直撃する。トイレか腹が減ったのか、いつの間にか王子は部屋から出ていたらしい。
「っとにおまえは昔からいつも、そうやって俺をバカにして…!」
「いや別にバカになんて」
「してるだろ!いっつも『しょーがねーなぁ』みたいなかおしやがって、保護者ヅラしてんじゃねーぞっ」
「口わるっ」
 ご機嫌は超絶ナナメなようだ。可愛い顔立ちに似合わない乱暴な口ぶりで、猫なら毛を逆立てていそうな剣幕。
 端的に言って、とても可愛い。
「何ニヤけてんだよ!!!」
 …また怒らせてしまった。

 凪の怒りが持続した最長記録は3日間。俺はその間、手を変え品を変え王子の機嫌を取り続け、宝物の大半を譲り渡した。小学生の頃だ。
 何で怒らせたのかはもはや覚えていない。ただ、幼い胸を灼いた焦燥感だけが鮮明な記憶だ。
  おまえなんか、だいっきらいだ!!!
 今よりも高くて細かった凪の声が、耳の奥で鮮やかに蘇る。
 このまま、凪と遊べなくなったらどうしよう。凪が本当に、俺を嫌いになったらどうしよう?
 …その頃から、俺の凪への気持ちはずっと同じだ。違うのは、どうやらそう簡単に「嫌われる」ことはなさそうだとわかったこと。凪の「だいっきらい」の、本当の意味。
 いかん、また顔がニヤけてしまう。

「凪、入るぞ」
「入るな」
「入るよ。寝るんだから」
 ケンカしていても同じ部屋で寝る、はいつの間にかなんとなく決まったルールだ。完全に距離を置いたほうがいいこともあるだろうけれど、ウチの王子には当てはまらない。なので俺は何も気にせず、どんな時でもいつもどおりに一緒に寝る。
「ほら、寄って」
 凪はベッドの中心に大の字になっていた。嫌がらせのつもりだろうか。ダブルじゃなく、まったく同じセミシングルをぴったりと並べているだけなので、真ん中はむしろ寝心地が悪いだろうに。
 可愛いなぁ。
 ふふ、と笑った俺に、凪は枕を投げてきた。
「いい加減機嫌直せよ。明日もその顔で出かけるのか?」
「うるさい」
「俺、頑張って調べたんだけど?つつじも、宿も。…凪との連休のために」
 う、と小さく声が漏れる。俺の可愛い恋人は、実はとても素直なのだ。
「凪。…こっちおいで」
「いやだ」
 構わず引き寄せると、不機嫌そうにそっぽを向く。そんなところも可愛い。
 だから耳に舌を這わせた。
 ひゅ、と息を呑む音がして、眉を逆立てた顔がこちらを向いた。抗議を唇で塞ぐと胸を殴られる。普通に痛い。
 お返しにTシャツの裾から背中を撫でると肩が震える。俺の手を抑えようとするけれど、そこは体格差と体勢の勝利だ。
「…ちょ…やめ…っ」
「機嫌直す?」
 キスの合間からようやくこぼれる声は既に滲んでいて、無自覚に俺の熱を煽る。凪はしぶとく首を振った。…どこまで煽るつもりだ。
「っ、いやだ…はな…」
 弱いところをなぞると腰が跳ねる。繰り返されるキスに息が上がって、瞳が潤み出す。
 そろそろ、俺も限界だ。
「機嫌直せよ」
「い、やだ…おまえなんか、だいっきら…っ」
 強情すぎるだろ。ならこっちも手加減なしで行くしかない。
 明日はきっと、ここが痛いどこが辛いとうるさいだろうな。そんなことをちらっと考えながら、俺は腕に力を込めた。

 おまえの『大嫌い』の意味なんか、こっちはとっくにわかってる。何年おまえのかんしゃくに付き合ってると思ってるんだ。
 決定的に言葉が足りない、俺のワガママな王子さま。
  大嫌いって言っちゃう。…でもほんとは、好き。
  だから絶対に、離れないで。

「なんでつつじなんか見たかったんだ?」
 ベンチでコンビニ飯の昼食を摂りながら訊く。連休は天気に恵まれて、既に夏を思わせる日差しだ。木陰のベンチを風が通り抜けて、軽く汗ばんだ肌から心地よく熱を奪っていく。
 つつじは少しだけ見頃を過ぎて、思ったほど人は多くない。それでも、目的には充分だった。
 一面のつつじ。
 電車を降りた瞬間、駅舎の向こうに見えたその光景に息を呑む。駅舎の外は土手のような斜面になっていて、そこが一面、鮮やかなつつじで覆われているのだ。
 赤紫のような、臙脂色のような、濃いピンク。そのまま「つつじ色」というらしいことを初めて知った。それが自分の身長をはるかに上回る斜面全体を埋めているさまは、まさしく圧巻だ。
 すごいものを見たな、と思った。花には特に興味を持ったことがないけれど、これは一見の価値あり、だ。
「なんで、って。おまえが見たいって言ったんじゃん」
「は??」
 言葉の意味がわからない。ぽかんとする俺に、凪は正面を見たままで言った。
「4月のはじめくらいに、テレビでやってたじゃん。この時期の名所みたいな。で、つつじが映ったときおまえが」
  おお、圧巻だな。綺麗なもんだなー。
  いいなこういうのも、一度くらいは。
「って」
 言ったじゃん?と、小首を傾げて見上げてくる瞳。大きな黒目に自分が映っているのを、信じられない思いで見る。
「え、俺のため?だったの?」
「うん」
 あたりまえだろ、と言いたげな顔。綺麗な眉がほんの少し寄っている。
「気づいてなかったの?」
「いやだって…俺はてっきり…」
 つつじを見よう、と言った凪の言葉を思い出す。一面のつつじを見よう。そのために遠出をしよう、と。
 つつじが見たい、でも、遠出をしたい、でもなかったことに、今さら気がつく。
「え…俺の、ため?」
「だからそうだって。なんでわかんねーんだよ!」
「いやだって…え?ほんとに?」
 いつもワガママ放題なおまえが、俺のために?
 理解が追いつかず、俺は軽いパニックになった。思わず身を乗り出したせいで、持っていたペットボトルが揺れる。
「あ」
 中身の緑茶が勢いよくこぼれて、カーゴパンツの太ももを濡らした。
「うっわつめたっ」
 慌てる俺に、凪は可愛い顔を凶悪に歪めて笑う。
 その顔は、端的に言って、とても…
「な?だから着替えは必要だって言ったんだ」


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