内視鏡検査の日、看護師は裏で何をしているのか?
「内視鏡クリニックの看護師さんって、検査中ずっと隣で介助してるだけでしょ?」
「そもそも内視鏡クリニックって何するの?」
そんなふうに思われたこと、ありませんか。
成人看護すらしていなかった私自身、実際に働くまでは「内視鏡クリニックって何をするところなんだろう」というイメージでした。国家試験の勉強で名前を見たことがあるくらいで、現場のことなんて何も知らなかったんです。
それに、クリニックって病院より楽そう、働きやすそう。
そんなイメージも、どこかにありました。
でも実際に内視鏡クリニックに転職してみたら、その予想は見事に裏切られました。裏側は想像していたよりずっと忙しくて、ずっと奥が深かったんです。勉強することも山積みでした。
内視鏡クリニックに入職する前に勉強しておけばよかったことを下の記事にまとめています。よければ参考にしてみてください🌷⬇︎
この記事では、内視鏡クリニックで働く看護師が「検査の日、実際に何をしているのか」を、私の体験談を持って包み隠さずお話しします。
求人票にも転職サイトにも書かれていない、リアルな裏側です。
イメージを持ちやすいようにイラストも用いて説明しますね。
これから内視鏡クリニックへの転職を考えている方、特に私と同様「病棟経験がないから不安」という方にも、きっと役に立つはずです。
第1章:「内視鏡クリニックってどうなの?」に誰も答えてくれない
わたしが転職を考え始めたとき、いちばん困ったのがこれでした。
「内視鏡クリニック 看護師 転職」で検索しても、出てくるのは転職エージェントの解説記事ばかり。
「夜勤がなくて働きやすい」「専門性を活かせる」みたいな、当たり障りのない言葉が並んでいるだけなんです。
そりゃそうですよね。実際に現場で働いたことがない人が書いている記事ですから。
知りたいのはそこじゃないんです。
1日に何件の検査をこなすのか。スコープの洗浄はしないといけないのか。
鎮静剤を使う検査で、何に注意しないといけないのか。
そういう「現場のリアル」でした。
だから今回は、私自身が内視鏡クリニックに転職して、実際に体験したことをそのまま書いていきます。良かったことも、しんどかったことも、全部です。
第2章:病棟未経験、採血もできなかった私が内視鏡クリニックへ
簡単に自己紹介させてください。
私は病棟未経験ナースです。
新卒でPICU(小児集中治療室)に配属されたあと、保育園の看護師に転職しました。(このあたりの詳しい経緯は、また別の記事でお話ししているので、気になる方はそちらもぜひ。)
保育園での日々は穏やかで、毎日が癒しでした。
でも働くうちに、ふと怖くなりました。
「このまま採血もできないまま、看護師人生が終わっていくんじゃないか」って。
このままじゃいけない。そんな焦りに背中を押されて、次に飛び込んだのが内視鏡クリニックでした。
しかも選んだのは、内視鏡と内科を両方診ているクリニック。
一般的な内視鏡クリニックよりも、忙しい現場だったと思います。
採血はおろか、内視鏡の「な」の字も知らない状態からのスタートでした。
それでも、約3年間働き続けるうちに、少しずつ、でも確実に、仕事を回せるようになっていったんです。
働いて2年後には後輩指導にあたることができるようにまで成長していました。
だからこそ、同じような疑問や不安を持っている方、これから転職を考えている方に向けて、できるだけ詳しくお伝えしたいと思います。
ただし、これはあくまでわたしが実際に働いていたクリニックでの話です。クリニックによってやり方や検査数は違うので、ひとつの参考として読んでもらえたら嬉しいです。
第3章:内視鏡クリニックの1日を、時間で追ってみる
抽象的な話より、実際のタイムスケジュールを見てもらったほうが早いと思います。私が働いていたクリニックの、ある1日です。
▶ クリニックの体制
看護師の配置は「処置室」と「検査室」の2つ
処置室2〜3人、検査室2〜3人、1日合計5人体制で回す
スコープ洗浄は基本的に専属の助手さんが担当
看護師が洗浄に入るのは、午後診の緊急カメラや人手が足りないときだけ
検査数の目安(多い日)
大腸カメラ(CF:Colono Fiberscopy):15件
胃カメラ(GF:Gastro Fiberscopy):12件
胃+大腸検査(G+C):5件 → 一日で両方検査する人
医師は2人体制で、外来診察と検査を並行して回す
▶ 8:15 始業
処置室ナース
当日の大腸検査の情報収集
検査人数分の腸管洗浄剤(下剤)を準備。下剤・水・コップを飲む席に配置
検査で使う鎮静剤の準備
冬季はインフルエンザワクチンの準備も

検査室ナース
朝は胃カメラの予約が先に入っているため、喉麻酔・消泡剤を人数分準備
胃カメラ用の鎮静剤を準備(大腸検査用とは薬剤が違う)
検査室を胃カメラ仕様にセッティング
▶ 8:30 開院
処置室ナース
大腸検査の患者さんが全員そろったら、処置室前の席に誘導して下剤の飲み方を一斉に説明
患者さん一人ひとりに問診
問診をもとに、その人に合った鎮静剤を準備(お腹の手術歴がある人は癒着で検査時に痛みが出やすいため、医師に確認しながら量を調整)
腸管洗浄剤を飲んでいる患者さんを見守りつつ、並行してほかの処置業務も
胃・大腸検査予約時の採血、検査説明
潰瘍性大腸炎の患者さんへの点滴
特定健診の患者さん対応
点滴処置
12誘導心電図 など

検査室ナース
胃カメラの患者さんに問診
医師と連携して検査準備
朝準備した消泡剤を飲んでもらい、喉麻酔を口に含んでもらう
検査室へ誘導し、左側臥位に
⭐︎リラックスして検査を受けてもらうために、深呼吸をしてもらいます。
検査を受ける患者さんへの不安を最大限取り除けるように、声掛けを心掛けていました。静脈から鎮静剤を注射し、胃カメラ開始
バイタル(特にSpO2・血圧の低下)に注意しながら観察
必要があれば生検、指示があればピロリ菌検査も実施
検査時間の目安は5〜10分。病変によってはもう少しかかる
検査後はふらつきに注意しながらリカバリー室へ誘導
覚醒を確認できたら、検査後診察へ

▶ 10:30〜 お通じラッシュ!

処置室ナース
下剤を飲んでいた患者さんの「お通じラッシュ」がスタート
下剤で腸内の便が流されて最終的に尿のような状態になればOK
トイレチェックで呼ばれ、OKであれば順番に大腸検査の列へ
検査室側の準備が整っていれば、順に検査室へ誘導

▶ 11:00〜
処置室ナース
大腸検査が必要な患者さんにルート確保。検査まで持つように点滴を調整
処置室ナースは順番に休憩へ
外来が12時で終わるので、その後は検査室ナースの休憩も順番に回す
空き時間には、翌々日の検査予約患者さんの情報を問診票に記載、ネームプレート作成
検査室ナース
大腸検査の順番が回ってくるので、医師と連携しながら準備
患者さんを更衣室へ誘導し、専用の紙パンツに着替えてもらう
検査室へ誘導し、胃カメラ同様に鎮静剤を注射して体位変換、検査開始
バイタルに注意しながら観察。大腸検査は体位変換が多いため、医師のスコープ操作の妨げにならないようタイミングに注意
ポリープがあればポリペクトミー、ポリペク後に出血があればクリップ処置で止血、指示があれば生検やEMRも実施
検査時間の目安は10〜20分。病変によってはもう少しかかる

▶ 14:00 検査終了
検査室の看護師と一緒に、検査室の清掃・翌日の準備
このタイミングでスコープ洗浄・メンテナンスも実施
採取した検体はホルマリン固定し、ラベリングが正しいかトリプルチェックしてから病理検査へ提出
必要な物品の発注など
▶ 15:00〜17:00 休憩
帰宅する人もいれば、クリニック内で仮眠を取る人も
▶ 17:00〜19:00 午後診察
外来業務がメイン。緊急カメラがあれば対応。
というのが、内視鏡クリニックの1日です。
ここまで読んで、「情報量、多すぎ!」と思った方もいるかもしれません(笑)。
でも実際は、これを毎日こなしていくんです。
「検査の介助」というひとことでは、とてもこの情報は説明しきれません。
第4章:想像以上だった3つの現実
タイムスケジュールを見てもらったところで、特に「これは想像していなかった」と感じた3つのポイントをお話しします。
▶ 1つ目:とにかくスピードが早すぎた
働き始めてすぐ、まったくついていけませんでした。
とにかく検査を回すスピードが早いんです。
先生がせっかちだった、というのもあるんですが(笑)、
それ以上に検査数が多いクリニックだったので、スピードがないと1日が回らない環境でした。

これは私だけが特別ついていけなかったわけじゃなかったんです。
入職して1年後、病棟経験のあるベテランナースさんが新しく入ってきたんですが、その人でさえ「何これ、早すぎる」って言っていたくらいなんです。病棟を経験してきたベテランがそう感じるくらいのスピード感だったと考えると、この現場の忙しさが伝わるんじゃないかと思います。
しかも、ただ早ければいいわけでもありません。
外来患者さんの様子を見ながら、胃カメラから大腸検査に切り替えるタイミングを考えたり、効率を意識して検査を回さなければいけない。
もちろん、患者さんには不安を与えないよう丁寧に対応しながら、です。
イレギュラーな処置が入ることもあるので、そこにも臨機応変に対応する必要がありました。
大変でしたが、このスピード感で鍛えられたおかげで、今では「効率よく優先順位をつけて考える」ことが、当たり前の習慣になっています。
▶ 2つ目:自分の持ち場だけ見ていればいい、わけじゃなかった
その日、処置室にいるか検査室にいるかは決まっているんですが、だからといって自分の持ち場だけ見ていればいいわけではありませんでした。
お互いの進行状況を見ながら、忙しいほうを手助けする。そんな動き方が求められていたんです。
外来が混む日もあれば、検査数が特に多い日もあります。
基本は5人体制のはずが、人手不足で3人だけで回している時期もありました(笑)。
こういう環境で働いているうちに、周りの状況を見る力が自然とついていきました。今、患者さんはどんな話をしているのか。先生は次に何を必要としていそうか。目と耳でしっかり情報を拾って、「次の次」の処置まで考えて動けるようになったんです。
▶ 3つ目:意外すぎるほど、体力仕事だった
看護師といえば体力仕事です。
でもクリニック勤務だから、病棟ほどではないだろうと思っていたんです。これが、まったくの見当違いでした。

検査中は体位変換が必要になる場面が多く、鎮静のかかった体格の大きい男性の患者さんのときは、汗だくになりながらヒーヒー言って体位を変えていました(笑)。
鎮静剤でふらふらの患者さんを支えて介助するのも、想像以上に力がいりました。
検査や処置のたびに院内を走り回ることもありましたし、処置室で迷走神経反射を起こした患者さんを運んだことも一度や二度ではありません。
「クリニックだから体力的には楽そう」というイメージ、正直わたしも持っていました。でも実際は、地味に体力を消耗する現場でした。
第5章:なぜこの3つが求められるのか
ここまで読んで、「大変そう……」と感じた方もいるかもしれません。
でも、この3つの大変さって、実はちゃんと理由があるんです。

▶ スピードが求められる理由
多い日は大腸カメラ15件、胃カメラ12件、胃+大腸検査5件、合わせて多い日は32件の検査をこなします。
しかも開院からお昼の外来終了まで、実質6〜7時間ほどの中で回さないといけません。
医師2人が外来の診察と検査を同時並行でこなしている以上、看護師側もそのペースについていけなければ、クリニック全体の診療が止まってしまう。スピードが求められるのは能力の問題じゃなく、検査数と時間の掛け算から生まれる必然だったんです。
▶ 周りを見る力が求められる理由
処置室と検査室、たった2部屋を最少人数で回している以上、誰かが自分の持ち場だけに集中していたら、必ずどこかで詰まります。
基本の5人体制でもギリギリなのに、人手不足で3人になる日もある。
だからこそ、お互いの状況を見て、忙しいほうを手助けする動き方が、現場を回すためにどうしても必要になってくるんです。
▶ 体力が求められる理由
検査のたびに体位変換をして、鎮静後の患者さんを支え、時には走って対応する。内視鏡検査という処置そのものが、身体を動かさないといけない状況がどうしても多いです。
「クリニックだから身体的には楽そう」というイメージは、クリニックの中身を知らないと持ってしまいがちな誤解だったんだと、今なら分かります。
こうして振り返ると、この3つの大変さは、私個人の力不足で起きていたわけじゃなく、内視鏡クリニックという現場の仕組みそのものから生まれる、当然の大変さだったんですよね。
これに気づけただけで、私自身、だいぶ気持ちが楽になりました。
第6章:それでも、良かったこと
ここまでしんどい話ばかりしてきましたが、もちろん良かったこともたくさんあります。
まず、クリニックならではの固定の就業時間で生活リズムが整いました。
これは想像していた通り、大きなメリットでした。
それから、ゼロから覚えた消化器の知識が、少しずつ自分の武器になっていったことも嬉しかったポイントです。
疾患名や検査の意味を理解できるようになるほど、患者さんへの説明の分かりやすさが変わっていくのを実感できました。
そして何より、「1つの分野を突き詰められる」楽しさがありました。
PICUや保育園にいた頃は、消化器の知識なんてほとんど縁がなかったんです。
それが、内視鏡クリニックで働くうちに、消化器、内視鏡という専門分野をどんどん深く掘り下げていけるようになった感覚は、大きな自信になりました。
こういう環境が向いているのは、こんな人だと思います。
消化器や内視鏡分野に、もともと興味がある人
テキパキと業務をこなすことに、やりがいを感じるタイプの人
手技や器具の扱いを、丁寧に極めていくことが好きな人
夜勤よりも、日勤の中でしっかり集中したいタイプの人
忙しい現場が好きな人

逆に、じっくり患者さんと長期的に関わりたいタイプの人には、少し物足りなさを感じる場面もあるかもしれません。
第7章:転職前にチェックすべき5つのポイント
最後に、これから内視鏡クリニックへの転職を考えている方に向けて、面接や見学のときに確認しておいてほしいポイントをまとめました。
私自身の1日の流れを振り返りながら、「ここを事前に知っておけばよかった」と感じたことをそのまま挙げています。
① 看護師の体制と、検査をどう回しているか
処置室と検査室という役割分担があるのか、それぞれ何人体制で回っているのか。忙しい日の検査数はどれぐらいあるのか。実際にわたしの職場では基本5人体制のところ、人手不足で3人だけで回している日もありました。
この体制の実態は、日々の忙しさに直結します。

② 検査数と、使用している鎮静剤
1日あたりの大腸・胃カメラの検査件数の目安を聞いておきましょう。
件数が多いほど、スピード感を求められる現場になる可能性があります。
また、使用している鎮静剤の種類によって、観察のポイントや覚醒までの時間も変わってくるので、こちらもセットで聞いておくといいと思います。
クリニックによって鎮静剤の種類は違ってきます。なので、毎回ルート確保が必要なのかどうかも聞いておくと安心かなと思います。

③ 教育体制はしっかりしているか
未経験からのスタートだった場合、ここを軽く見ると入職後にいちばん苦しくなります。
マニュアルがあるか、先輩がついて指導してくれる期間があるか、独り立ちまでの目安期間はどれくらいか。
ここが曖昧なクリニックだと、いきなり現場に放り込まれることになりかねません。

④ 看護師以外の業務をすることがあるか
診察介助や助手業務など、看護業務以外の仕事をどこまで任されるかも、事前に聞いておきたいところです。
クリニックの規模やスタッフ構成によって、任される範囲はかなり変わってきます。
私が勤めていた内視鏡クリニックでは看護師は何でも屋さんだったので、人不足のところに配置されることが多々ありました。

⑤ 就業時間について(中抜けの有無と、拘束時間の長さ)
午前と午後の診療の間に中抜けの時間があるクリニックも多いですが、その時間は実質休めるのか、中抜けが長すぎて終業時間も遅くならないか。
就業時間だけでなく、拘束時間としてトータルどれくらい職場にいることになるのかも、あわせて聞いておくと、入職後のギャップを減らせます。

面接や見学の機会があれば、遠慮せずに聞いてみてください。
ここでの答え方や雰囲気を見るだけでも、そのクリニックが働きやすい場所かどうか、かなりの部分が見えてきます。
第8章:まとめ あなたは、内視鏡クリニックに向いているか
ここまで、内視鏡クリニックの看護師が「検査の日、実際に何をしているのか」を、時間の流れに沿ってお話ししてきました。
想像していたよりも忙しくて、想像していたよりも専門性が求められる場所。それが、私が実際に感じた内視鏡クリニックのリアルです。
でも、それは決して「大変だからやめておいたほうがいい」という話ではありません。
忙しさの中身を知った上で、「これなら自分に合いそう」と思えるなら、それはとても心強い選択になるはずです。
大事なのは、噂やイメージだけで判断しないこと。
そして、第7章のチェックリストを使って、面接のときに自分の目と耳で確かめること。
この記事を読んだあなたが、次に面接や見学の機会を得たとき、今日の5つのチェックポイントをふと思い出してくれたらうれしいです。
それだけで、この記事を書いた意味があったなと思います。
おわりに
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。
内視鏡クリニックという場所は、まだあまり情報が出回っていない分野だと思います。
だからこそ、これから転職を考えるあなたには、しっかり中身を知った上で一歩を踏み出してほしいと思って、この記事を書きました。
もしこの記事が「参考になった」と思ってもらえたら、ぜひブックマークして、面接前にもう一度読み返してみてください。
そのときの自分の判断材料に、きっとなるはずです。
この記事で、少しでも内視鏡クリニックのイメージが持つことができたら嬉しいです。
大変長くなりましたが、読んでいただいて本当にありがとうございました。
次回は私が経験したクリニックの闇について書いていこうと思います😂
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