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【支える人の時代】フォロワーシップとは何かーリーダーシップでは語れなかった組織を動かすもう一つの機能

リーダーシップに関する研究論文や書籍、記事は数え切れないほどあります。一方で、「フォロワーシップ」について正面から語られているものは、驚くほど少ないと感じませんか。

実際、その数は圧倒的に少ないのが現状です。

フォロワーシップ研究が本格的に注目されるようになったのは、せいぜいここ30年ほど。組織論の歴史から見れば、まだごく最近の話だと言えるでしょう。

本記事は、
・部下をどう捉えるべきか悩んでいるリーダー
・部下という立場に迷いを抱えている人

その両方に向けて、フォロワーシップを構造的に整理することを目的としています。

▮フォロワーシップが語られてこなかった背景

なぜ、これほどまでにフォロワーシップは語られてこなかったのでしょうか。

一つ目は、「主役=リーダー」という強固な固定観念です。

歴史でもビジネスでも、成果はリーダーの資質や意思決定によって生まれる、という物語が好まれてきました。誰がトップに立ち、どんな判断を下したのか。その方が分かりやすく、語りやすい。結果として、研究も評価もリーダーシップに集中してきました。

二つ目は、フォロワーの貢献が可視化しにくいことです。

・チームメンバーの変化に気づいて声をかける。
・会議の空気が張り詰めた瞬間に流れを整える。
・リーダーの判断を尊重しながら、現場で粘り強く実行を支える。

こうした働きは、数字や成果として切り取りにくく、「縁の下の力持ち」として見過ごされがちでした。

三つ目は、「従う=受け身」というイメージの強さです。

組織論の多くは、「いかにリーダーが部下に影響を与えるか」という視点で語られてきました。その結果、フォロワーは主体的な存在ではなく、従属的・補助的な立場として扱われてきたのです。

しかし実際には、主体的に支えるフォロワーなしに、組織は機能しません。

▮フォロワーシップは「美徳」ではなく「機能」である

フォロワーシップという言葉は、ともすると「控えめさ」や「協調性」といった人格論で語られがちです。

ですが、フォロワーシップの本質は、美徳や性格の問題ではありません。

フォロワーシップとは、組織の意思決定と実行を成立させるための機能です。

リーダーが示す方向性と、現場で起きている現実。その間に生じるズレを感知し、調整し、埋めていく。この機能がなければ、どれほど優秀なリーダーがいても、判断は独りよがりになり、成果には結びつきません。

この関係性を端的に表した言葉が、中国古典にあります。

君は舟なり、人は水なり。
水は能く舟を載せ、亦能く舟を覆す。
リーダーは舟であり、部下は水である。
水は舟を前に進めるが、同時に、舟を転覆させる力も持っている。

貞観政要

ここで重要なのは、舟が主で、水が従という単純な上下関係ではないという点です。

どれほど優れた舵取りでも、水の流れを無視して舟を進めることはできません。会社も同様で、フォロワーの理解・納得・支えがなければ、リーダーの意思決定は機能しません。

フォロワーとは、「従う存在」ではなく、会社の現実を引き受け、流れを形づくっている当事者なのです。

▮フォロワーシップが欠けた組織で起きること

フォロワーシップが機能していない組織では、次のような現象が起きやすくなります。

・トップの判断が修正されない
・異論や違和感が表に出てこない
・現場の変化が上に届かない
・小さな失敗が、大きな失敗に繋がる

これは人間関係の問題ではなく、構造の問題です。

イエスマンが増えることは、フォロワーシップが強い状態ではありません。主体的に考え、必要なときに踏みとどまらせる存在がいてこそ、組織は健全さを保てます。

▮フラットな組織ほど、フォロワーシップは高度になる

近年、フラットな組織が注目されています。しかし、上下関係が弱まればフォロワーシップが不要になるわけではありません。

むしろ逆です。

役職による明確な序列がない分、その場その場で

「誰の判断を支えるのか」
「どう補正するのか」

を引き受ける必要が増えていきます。

フォロワーシップは、より思考力と判断力を要する高度な役割へと変化しているのです。

▮フォロワーの立場にいる人に考えてほしいこと

フォロワーであることは、逃げでも、能力不足の証明でもありません。

フォロワーは、

・組織の流れを形づくり
・リーダーの判断を現実に適合させ
・組織の健全さを支える存在

です。

その上で、特に意識してほしいことがあります。

1. 理解と同意を切り分ける

理解できるが、同意できない。
この状態を自分の中で整理する力が、フォロワーには求められます。

感情的に反発せず、思考停止で従わない。「なぜその判断なのか」を理解しに行き、その上でどう伝えるかを考える。この姿勢が、会社の質、上司との関係性を高めます。

2. 判断と実行の隙間を埋める

リーダーの方針は、そのままでは現場で回らないことが多いものです。

・前提となる現場への理解不足
・言葉の曖昧さ
・現実的な制約

その隙間を埋める翻訳者の役割を担うことが、フォロワーの重要な仕事です。できない、やりたくないという感情ではなく、やる上での客観的で建設的な指摘を言葉選びに留意して述べるのがコツです。

3. 空気ではなく、流れを見る

空気を読む人は多いですが、流れを読める人は多くありません。

・どこが滞っているか
・誰が無理をしているか
・どこで認識がズレ始めているか

感情と構造の両方を見る視点が、舟を沈めない知性になります。

▮最後に

誰もがリーダーを目指す必要はありません。
リーダーとフォロワーは序列ではなく、役割と機能だからです。

・リーダーはフォロワーをコントロールすべき対象と見ない。
・フォロワーは、その立場を思考停止の言い訳にしてはいけない。

フォロワーシップには、鍛えるべき力と磨くべき知性があります。
その自覚を持ったとき、フォロワーシップは役割を超え、会社を動かす
動力になります。

会社経営、組織作りでこれから本当に問われるのは、「誰がリーダーか」
ではなく、どれだけ成熟したフォロワーが存在しているかだと思っています。