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天声トラ語|創作の最大の敵は執着でした
どれだけ書いても足りなかった。どれだけ時間をかけても完璧にならなかった。私の物語はいつも何かが足りない。だからもっと書いた。もっと上手くなれば、もっと読まれれば、もっと評価されれば……その「もっと」がいつの間にか原動力になっていた。
でも気づいてしまった。これはただの執着だ、と。執着とは叶わない想いを諦めきれない心のことだ。もっと良くなれ、もっと愛されろ、もっと届け。その「もっと」は、かつては向上心だったのに、あっという間に呪いとなっていた。
書きたかったのは、愛だった。伝えたかったのは、痛みだった。それなのにいつの間にか読まれる事ばかり願っていた。「いいね」の数で価値を量るようになっていた。
創作は自由だった筈。降り注ぐ言葉を受け止めて紡ぐ。なのに、誰かに読まれるようになるといつのまにか他人の目が文章の中に入り込んでくる。気づけば私の文章では無くなっていたのに、書くのを辞められなかった。執着があったからこそ、ここまでこれたとも言える。でも、だからこそ言いたい。
執筆の最大の敵は、執着だ。それは、才能のせいでも、時間のせいでも、環境のせいでもない。「もっと、もっと」と自分を追い詰めてしまう、その心の癖。それは書く喜びを遠ざける。
執着は恐ろしい。書いても書いても足りない。満足なんて永遠に訪れない。評価されなきゃ。上手くならなきゃ。もっと、もっと……。本当に大切なことはその逆側にあると言うのに。
(601文字)
唐突に執着を断ち切れた気がした。気のせいかもしれないけれど。
#天声トラ語
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