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「狼が来た」と言い続けて10年目。有楽町に響く、誰にも聞こえない「戦争」の足音。

「信じられる未来」の前に、信じられない既視感。2.22有楽町の野党共闘アクションを検証。高い支持率の現実を「独裁」と呼ぶ矛盾や、韓国「光の革命」引用の無理筋を鋭く解剖。なぜ彼らの言葉は「届かない人に届かない」
のか?

【メタディスクリプション】

「信じられる未来」、その前にちょっと待って

2026年2月22日、有楽町イトシア前。連休の昼間に、社民党・共産党・立憲民主党・新社会党・沖縄の風の面々が集まって街頭演説をぶった。タイトルは「信じられる未来へ 希望の新しい選択肢」。

……うん、気持ちはわかる。自民党が単独で3分の2超の316議席を取ったのだから、危機感を感じる人がいるのは当然だ。 でも、このアクションの内容を文字起こしで読んでみると、「えっ、そこ?」「それ何回目?」「え、大丈夫?」というツッコミが次々と出てくる。​

「『信じられる未来』という美辞麗句の裏側に潜む『壮大な既視感』の正体を、忖度なしの視点で炙り出してみたい。


ツッコミ①:「また同じメンバーが同じことを言っている」問題

まずここ。市民連合は2015年に誕生した。安保関連法反対を訴える市民が集まり、野党と手を組んで選挙を戦ってきた組織だ。 そして今回の集会のキャッチフレーズは「野原からの立て直し」。​

……「野原から立て直す」って、何回目ですか?

2021年衆院選でも野党共闘は「期待ほどの成果が出なかった」と総括されたのに 、2024年衆院選でも共闘体制は機能せず分散して臨み 、そして今回の選挙では「中道改革連合」という形で再挑戦したが大敗。 そして今また「立て直す」と言っている。

しかも登壇者の顔ぶれを見てほしい。福島瑞穂さん、田村智子さん、石垣のりこさん——何年前から同じステージに立っているメンバーだろうか。「希望の新しい選択肢」と言いながら、選択肢の中身も顔ぶれも10年前から変わっていない。それを「新しい」と呼ぶのは、さすがに無理がある。

「立て直す」と言い続けて10年超。そろそろ「なぜ立て直せないのか」を真剣に考える会を開いた方がよほど生産的ではないか、と思うのは筆者だけだろうか。

ツッコミ②:「戦争」と叫んでいるのは誰?——左派だけが煽り続ける「戦争ムード」の正体

さて、今回のアクションで最も繰り返されたキーワードが「戦争」だ。

「平和か戦争か」「戦争させない」「戦争が廊下の奥に立っている」「トランプと一緒に世界で戦争する自衛隊」——演説の中に「戦争」という言葉が何十回登場したか、数えるのもやめたくなるほどだ。

ここで一つ、素朴な疑問を投げかけたい。

「日本が戦争をする」と日常的に叫んでいるのは、一体誰だろうか?

街を歩いている普通の人が「もうすぐ戦争が始まるな」と感じているか? 会社員が「うちの会社、戦時体制になるのかな」と心配しているか? 子育て中の親が「子どもが戦場に送られる日が来るかも」と毎日怯えているか?

……そんな人は、周囲にほとんどいないのではないだろうか。

「戦争が来る」「独裁が始まる」と声高に叫ぶのは、ほぼ一貫して左派・リベラル系の政治家や活動家だ。選挙のたびに「これが最後のチャンス」「今回で日本が終わる」と言い続けてきた。2015年にも言った。2019年にも言った。2021年にも、2024年にも言った。そして2026年の今も言っている。

国民民主党の玉木雄一郎代表は選挙直後、まさにこの点を正面から指摘した。「防衛力の強化が戦争につながるという考え方を変えるべきだ」と。 長年「戦争反対」という良き主張として続けてきた運動が、逆に抑止力を低下させて戦争を呼び寄せるジレンマを生んでいる——そのパラドックスを、野党の中からも指摘する声が出始めているのだ。​

さらに踏み込んで言えば、こう問いたい。「戦争」という言葉は、政争の道具になっていないか?

相手を「戦争に向かう勢力」と定義することで、自分たちは自動的に「平和の守り手」になれる。反論されれば「あなたは戦争したいのか」と返せる。これは議論のロジックとしてあまりにも便利すぎる。

実際、高市首相の施政方針演説(2026年2月20日)を読むと、「自由で開かれた安定的な国際秩序を守る」「拉致被害者の帰国を任期中に実現したい」「北朝鮮との首脳会談を含めあらゆる選択肢を追求する」と書かれている。

これのどこが「戦争したい政権」の言葉なのか。安保3文書の改定や防衛力強化に反対するのは自由だ。しかしそれを「戦争準備」と即座に結びつけるのは、あまりにも論理の飛躍が大きい。​​

「戦争」という言葉は重い。だからこそ、それを政治的な対立を煽る道具として乱用することには、強い疑問を感じる。

ツッコミ③:支持率75%の首相を「戦争独裁」と呼ぶことの危うさ

では、数字を見てみよう。

FNNの世論調査によれば、高市内閣の支持率は発足以来3カ月連続で75%超。しかも「野党支持層からも高い評価を得ている」という異例の結果だ。 国民の4割が経済政策と物価高対策を評価しており 、今回の衆院選では自民党が2500万票超を獲得した。

つまり、「国民の多数派は今の政治を一定以上、肯定的に評価している」というのが現実だ。

それを「戦争独裁」と呼ぶことの意味を、もう少し丁寧に考えてみてほしい。

民主主義において、選挙で多数を取り、その結果に基づいて政策を進めることは、独裁ではなく民主主義の基本動作だ。 「自分たちの意に沿わない結果が出た」ことと「独裁が始まった」ことは、根本的に違う。​

田村委員長は演説の中で面白いことを言っていた。「高市政権を支持するという人の中でも、戦争やってほしいという人はいない」と。これは正直な観察だし、正しい。

しかしそれを認めるなら——「高市支持=戦争希望」という図式は根本から崩れているはずだ。自分でその矛盾を認めながら、同じ演説の中で「戦争への道を止めろ」と叫ぶ。この自己矛盾に誰も気づいていないのだろうか。

さらに言えば、有権者を「騙された人々」と見なす態度は、民主主義への軽蔑にも繋がりかねない。「正しい情報があれば、みんな私たちの側につくはずだ」という確信は、しばしば「理解できない人間はバカか洗脳されている」という結論に向かう。これは左右を問わず、民主主義にとって危険な発想だ。

75%という支持率は「国民が騙されている」証拠ではなく、「国民が今の政治に何らかの期待をしている」という事実として、まず謙虚に受け止める必要がある。

ツッコミ④:「韓国の光の革命」を日本に当てはめていいの?——借り物の物語の危うさ

山口共同代表は韓国の「光の革命」を熱く語った。ペンライトを振る市民、女性が主役のデモ、国際連帯……確かに感動的な話だ。

ただ、状況の前提が全然違う。韓国の尹大統領は在任中に非常戒厳令を突然宣言するという、誰がどう見ても憲法違反の暴挙をやらかした。 軍を動員して国会を包囲し、反対派の政治家や市民を拘束しようとした。

憲法を破ったのは大統領の方だから、市民が怒るのは当然だし、野党と市民が手を組むのも極めて自然だった。しかも韓国では軍事独裁政権の記憶が市民の中に生々しく残っており、「戒厳令」という言葉が持つ重みは日本のそれとは全く異なる歴史的文脈の上にある。

一方、日本の高市首相がやっていることは何か。「選挙に立候補し、国民の審判を受け、票を集め、国会の多数で政策を進める」こと。これは民主主義の手続きに則った行動だ。 戒厳令と選挙での大勝を同列に並べるのは、比較の前提として根本的に無理がある。​

さらに言えば、韓国の市民運動が成功した背景には、「政権側が明確な法律違反を犯した」という揺るぎない事実があった。だから与党支持者の一部すら「これはさすがにまずい」と感じて離れ、野党と市民が一気に連帯できた。

日本で今、そのような「誰がどう見ても憲法違反」という事態が起きているだろうか。スパイ防止法の議論 や安保文書の改定 に問題があるかどうかは議論の余地がある——しかしそれは「戒厳令」とは次元が違う話だ。

さらに根本的な問題を指摘すれば、「他国の成功事例を借りてきて自国の運動に重ねる」という手法そのものが、いかに危ういかということだ。文化的背景も、歴史的文脈も、政治制度も違う。韓国のデモが感動的だったからといって、同じことをすれば日本でも同じ結果が得られるとは限らない。

むしろ「韓国でできたんだから日本でも!」という物語に頼ることは、自分たちの置かれた現実を直視することから目を逸らす行為になりかねない。

「借り物の感動」で人を動かすことには限界がある。日本の市民運動が本当に力を持つためには、韓国のペンライトではなく、日本社会の現実に根ざした、自分たちの言葉と戦略が必要ではないだろうか。

ツッコミ⑤:「真ん中路線が悪かった」論の自己矛盾——世界を見れば答えは出ている

市民連合の山口代表は「真ん中という妥協の産物がなぜ受けなかったのか。消極的な思考を現実的という言葉でごまかした敗北主義だ」と断じた。

ここは面白い。確かに、直前の選挙で一部野党が取った「中道路線」は軸がなく、ふわっとしたまま戦ったのは事実だ。 原発・辺野古・憲法について曖昧な態度を取り続けたのが支持離れの一因という分析は一定理解できる。​

でも待って。この集会の参加政党を見てほしい。社民党・共産党・新社会党・沖縄の風——左派色の強い政党ばかりだ。「中道路線をやめて左にはっきり振れ」というメッセージなのはわかる。

しかし、世界を見渡すと、まるで逆のことが起きている。

2024年、アメリカではトランプが再選を果たした。「多様性・人権・気候変動」を前面に押し出した民主党は、工場労働者・農村部・若い男性層から広く見捨てられた。

フランスでは左派連合が一時勢力を拡大したものの、政権運営には失敗し、国民戦線(RN)が依然として最大勢力の座を争っている。イタリアではメローニ政権が安定し、オランダ・スウェーデン・フィンランドでも右派・中道右派が政権を担う。ドイツでは2025年の選挙でSPDが歴史的敗北を喫し、AfDが第2党に躍進した。

これは偶然の一致ではない。「世界的なリベラル・左派の退潮」は、政治学者の間でも現在進行形で議論されている構造的な現象だ。その背景には、グローバル化と新自由主義によって広がった格差への怒りが、左派ではなく右派・ポピュリスト勢力への票として流れているという皮肉な現実がある。

佐々木代表自身も演説の中で「新自由主義がどんどん世界中を覆って、格差を是正するための政治の力がどの国でもどんどん弱くなっている」と認めていた——その通りだ。

しかし、その診断を正確に行いながら、処方箋として「もっと左にはっきり振れ」という結論を出すのは、世界のトレンドと完全に逆行している。世界中で、有権者は「左か右か」ではなく「自分たちの生活を実際に変えてくれるのか」という軸で政治を評価し始めている。「戦争反対」「憲法守れ」という抽象的なスローガンより、「物価を下げろ」「賃金を上げろ」という具体的な要求の方が、有権者の心に届く時代になったのだ。

実際、今回の選挙で生き残った野党はどこか。国民民主党だ。 「現実路線・経済重視」を掲げた政党が選挙後も一定の存在感を保ち、「平和か戦争か」を叫んだ政党が壊滅的な結果を受けた——この事実を、世界的な文脈と合わせてどう説明するのだろう。「真ん中がダメ、もっと左へ」という処方箋は、世界規模の診断結果とまるで噛み合っていない。​

ツッコミ⑥:「市民が主役」と言いながら、届いていない人たちへの想像力はゼロ

佐々木代表は「私たちは政治の生産者となる必要があります」と訴えた。素晴らしい言葉だ。

でも、有楽町に集まった人たちは「すでに政治に強い関心を持つ人たち」だ。演説を聞きながら「そうだ!」「その通り!」と叫ぶ人たちに向かって、「戦争が来る」「独裁だ」と言い続けることは、仲間内の熱気を高める効果はあっても、有権者全体への説得力とは全く別物だ。

選挙の勝敗を左右するのは、政治に強い関心を持つ固定層ではなく、「ふわっとした有権者」だということは選挙研究の常識だ。 その層は「戦争か平和か」という二項対立には引かれてしまう。「そこまで言う?」「なんか怖い人たち…」と感じて、むしろ離れていく。​

「若者が政治に絶望している」と嘆きながら、若者に届く言葉もフォーマットも変わっていない。街頭演説+YouTube配信というスタイルは10年前から変わらず、SNSでの拡散も仲間内で完結している。「ガラパゴス化した左派エコーチェンバー」と言われても仕方がない現実がある。

公平に言えば:彼らが指摘する問題は、本物だ

ここまでツッコミを入れてきたが、公平のために言っておく。

スパイ防止法の制定が検討されていること 、武器輸出拡大・安保文書見直しが進んでいること 、衆議院で単独3分の2を持つ政党が存在すること ——これらはイデオロギーを抜きにして、市民がきちんとチェックしておくべき事実だ。

多数決が常に正しいわけではなく、権力のチェック機能が弱まることは与野党問わず、長期的には問題になり得る。

健全な民主主義には「行き過ぎた政策をチェックする野党」が必要だ。 その意味で、彼らが「声を上げる」こと自体の動機は理解できる。​

問題は、叫び方と戦略と、言葉の使い方だ。

「戦争」という最も重い言葉を最も軽く使い続けることで、本当に危険な状況が来た時に誰にも届かなくなる——「オオカミが来た」という童話の教訓は、政治にも当てはまる。

まとめ:「戦争反対」を叫ぶほど、なぜ支持が逃げるのか

今回の選挙結果が示したことは残酷なほど明確だ。有権者は「抽象的な戦争リスク」よりも「目の前の物価高と経済への不安」への対処を選んだ。 「戦争か平和か」という問いより、「給料が上がるか下がるか」という問いの方が、普通の人の生活には切実だったのだ。​

そしてこれは日本だけの現象ではない。世界中でリベラル・左派が後退しているのは、彼らの言葉が「生活の現実」から浮いてしまっているからではないか。

本当に「信じられる未来」を作りたいなら、まずこの問いと向き合う必要がある。「なぜ私たちの言葉は、届かない人に届かないのか」——この問いを、仲間内の熱気の中ではなく、冷静に、徹底的に。

「戦争反対」を叫ぶほど支持が逃げるという皮肉な現実は、言葉の力を信じるなら、言葉の選び方を根本から問い直せというメッセージではないだろうか。

参考ニュース・情報源

関連過去記事リスト

● 高市政権・選挙結果に関連

● 野党・民主主義の機能不全に関連

● 安全保障・平和論争に関連

市民連合
2015年の安保法反対運動をきっかけに誕生した市民団体。野党と政策合意を結び、選挙協力を進める組織。
野党共闘
複数の野党が選挙区で候補者を一本化するなど、選挙で協力し合う体制のこと。
立憲主義
権力者が憲法に従って政治を行うべきという原則。多数決とは別に、権力の暴走を憲法で縛る考え方。
安保3文書
「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の3つの政府文書。日本の防衛政策の基本方針を定める。
スパイ防止法
国家機密を外国に漏らす行為などを厳しく罰する法律。現在制定に向けて政府内で検討中。
集団的自衛権
自国が直接攻撃されていなくても、同盟国が攻撃された際に共に反撃できる権利のこと。
非常戒厳令
非常事態を理由に、軍が行政・司法を含む政治権力を掌握する措置。韓国の尹大統領が2024年末に発令して問題となった。
新自由主義
市場競争の重視・規制緩和・民営化を柱とする経済思想。格差拡大の要因として左派から批判されることが多い。
エコーチェンバー
同じ意見を持つ人同士が集まり、その意見がどんどん増幅・強化されていく現象。SNSで起きやすい。
抑止力
相手国に「攻撃すれば損をする」と判断させることで、攻撃そのものを思いとどまらせる軍事・外交的な力。

用語説明

#政治 #野党共闘 #選挙 #考察 #リベラル #市民運動 #憲法

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