改革すべきは自分たちの質問術。中道改革連合が予算委員会を「昭和の野党」に退化させた
予算委員会とは何をする場所か

予算委員会。その名前に「予算」という二文字が入っている。
令和8年度の一般会計総予算は約122兆円。 増え続ける社会保障費、物価高に苦しむ家庭への支援策、子育て給付金の拡充、防衛費の積み増し——国民が「自分の生活に直結する」と感じる政策のほぼすべてが、この予算委員会の審議にかかっている。
閣僚全員が出席し、テレビカメラが入り、総理が答弁に立つ。野党にとって最大の「見せ場」であり、国民にとっては「ようやく政治が自分たちの話をしている」と感じられる数少ない場だ。
さて、中道改革連合はこの貴重な舞台で何を質問したのか。
旧統一教会である。
2日連続で。
3月5日(早稲田夕季議員):122兆円の予算審議がこうなった

早稲田議員の質疑を時系列で整理しよう。
まず冒頭で「集中審議をなぜやらないのか」「与党の委員会運営は暴走だ」と怒る。おっと、これはまだ予算と関係あるかもしれない。審議のあり方の話だから。
次に——旧統一教会の解散命令について文科大臣を追及する。
次に——「TM特別報告書」(教団内部の秘密文書とされるもので、韓国捜査当局が押収したとされる資料)を配布し、「天皇制は将来撤廃されなければならない」という記載があると紹介する。
次に——「この文書に総理の名前が32回出てくる」 と言って集中審議を要求する。
次に——松本文科大臣、松本デジタル大臣、上野厚労大臣、国家公安委員長ほか複数の大臣に対し、旧統一教会との接点を順番に答弁させる。
最後に——「旧統一教会の問題は引き続きやりたい」と宣言して、高額療養費の話に移る。
……えっと、予算は?
高額療養費は予算と関係ある。そこは認める。しかし質疑の大半を占めた旧統一教会の追及は、どこをどう読んでも122兆円の予算案と直結していない。

物価高に苦しむ家庭への支援がどうなるのか、子育て給付金の財源は確保されているのか——そういった話を差し置いて、「大臣は教団施設に行ったことがあるか」「会費は1万5000円か」「秘書が代理で払ったのか」を10分かけて確認する。これは予算の話ではなく、政治倫理委員会か法務委員会でやるべき中身だ。
3月6日(有田芳生議員):スケールアップして再登場

翌3月6日。今度は有田芳生議員が登場する。
開幕直後から「昨日は資料配布が認められたのに今日はなぜダメなのか」と5分間叫んで議場を止める。
テレビの前の国民にとって、この5分間は何だったのか。 防衛費の中身が変わるわけでもない。子育て支援の給付額が決まるわけでもない。物価高対策が前進するわけでもない。
「昨日はいいと言った」「今日はダメだ」「なぜだ」「委員長、答えてください」——ただその押し問答が、国会中継の画面を延々と占領していた。国民にとっては、最も苦痛な「何も生まれない放送時間」だったのではないか。
実際に何が起きていたかというと、中道の理事は長妻昭君ただ1名。理事会で与党側と折り合いがつかず、最終的に坂本委員長の判断で「資料配付不可」とされた。委員長側の説明は「昨日は口頭で補うことを条件に特別に許可したが、今日はその条件が整っていないと判断した」というものだった。
要するに「昨日は特別に許したけど、今日はルール通りだからダメ」という門前払いだ。具体的な理由は依然として曖昧で、有田議員が「それは質問権の制限ではないか」と猛反発したのも無理はない。しかしその怒りをぶつける先が、予算委員会の本会議場で5分間というのは、話が別だ。
紛糾が収まったあとの質疑内容を冷静に見てみよう。
旧統一教会の最終目的は天皇制撤廃と首相の信者化だという内部文書の内容を口頭で紹介
1970年代のアメリカの「コリアゲート事件」に言及
1977年のフレイザー委員会報告書を外務省に確認させる
1986年の京都・嵐山での秘書養成講座に触れる
松本文科相が5〜6年前に豊田市の教団施設に挨拶に行ったことを追及
「オウム事件のように国会で総括されなかった」と警鐘を鳴らす
「解散命令は終わりではなく始まり」と締めくくる
……ちょっと待ってほしい。
1977年のフレイザー委員会。約50年前のアメリカの話だ。
1986年の嵐山の秘書養成講座。40年前の話だ。
子育て支援の財源を議論すべき時間に、40年前の嵐山の話を外務省に確認させている。
念のため繰り返す。予算委員会である。
「因果付け」の技術:予算との接続を試みた形跡

公平のために言っておくと、中道側もまったく無防備に突撃したわけではない。
「解散命令後の清算手続き・被害者救済には行政の支援が必要→予算が関係する」
「政治浸透により政策が歪められてきた→予算配分の適正化に関係する」
こういう"因果の糸"を細く張って、予算委員会の土俵に引き込む構えはあった。
しかし現実には、文科大臣の秘書が1万5000円の会費を代理で払ったのが1回か2回かを確認する質疑が、物価高対策の122兆円にどう繋がるかを説明するのは無理がある。因果の糸が蜘蛛の巣の糸より細い。
法律家の世界には「関連性の乏しい証拠は採用しない」というルールがある。予算委員会にも同じ感覚があっていいはずだが、日本では「なんとなく国政全般に関係する」という理由で何でも通ってしまうのが長年の慣行だ。
中道はその慣行を最大限に活用した——活用しすぎて自爆した、というのが今回の話である。
追及の中身そのものについて(一応フォローしておく)
揶揄だけでは不公平なので、有田議員の追及の中身については少し評価しておこう。
旧統一教会が「単なる霊感商法をやった宗教法人」ではなく、政治・思想・組織浸透を兼ね備えた複合的な組織であるという指摘は、ジャーナリスト時代から30年積み上げた知見に基づいており、本質を突いている部分がある。
フレイザー委員会報告書の「多国籍企業的構造・軍事組織的訓練・国際政党的特徴」という評価も興味深い。
しかし——それは予算委員会でやることか?

「旧統一教会の政治浸透の全容解明には公聴会や第三者機関が必要だ」と本人が主張するなら、それこそ内閣委員会や政治倫理審査会や特別委員会でやるべき話だ。予算委員会を"なんでもできる万能の場"として使うことへの自覚が、中道には薄すぎる。
皮肉の極致:「審議時間が足りない」と叫ぶ党が時間を潰す

今回のハイライトを一文にまとめるとこうなる。
「予算委員会の審議時間が足りない!」と怒っている党が、予算と無関係な質問を2日連続で行い、さらに2日目は資料配布の手続き問題で5分間議場を止めた。
与党が「13日に質疑終局」「土曜日審議も提案する」と日程を詰めてくる中、野党全体が「審議時間が足りない!国民軽視だ!」と反発している。 中道も同じ主張をしている。

そのまったく同じ口で「1986年の嵐山の秘書養成講座について外務省に確認させる」「5分間、壊れたレコードのように委員長と応酬する」——これをやっているのが中道改革連合だ。
審議時間を増やしたいのか、減らしたいのか、どっちなんだ。
49議席の使い方、そして「改革」という言葉の重さ

中道改革連合、49議席。
2024年衆院選で大惨敗し、かつての172議席から4分の1以下に激減した。それでも野党第一党として、予算委員会では15名の委員枠を確保している。貴重な野党の戦力だ。
その戦力を使って、2日連続で旧統一教会を追及し、2日目に手続き問題で議場を止めた。
そもそも「中道改革連合」という党名を今一度かみしめてほしい。「中道」かつ「改革」である。極端な追及ではなく現実的な政策論で戦う——それが党名に込めた理念のはずだ。
しかし今回の2日間の質疑は、「テレビカメラのある予算委員会をスキャンダル追及の場にする」という昭和の野党が得意とした旧来の戦術そのものだった。
改革を旗印にするなら、まず「予算委員会をスキャンダル追及の場にする」という昭和の野党の慣行こそ、自ら改革すべきではないか。
旧統一教会の追及は、法務委員会、内閣委員会、あるいは特別委員会設置要求という形でやれば、はるかに筋が通る。「予算と関係あります(小声)」という薄い因果を付けて、テレビカメラのある予算委員会に強引に持ち込む手法を卒業した先にこそ、「中道改革」という名前に見合う政党の姿がある。
改革すべきは、まず自分たちの質問戦略から。
それだけである。

参考情報源
衆院予算委員会(3月5日)
衆院予算委員会議事録(3月6日)
衆議院予算委員会委員名簿(令和8年2月26日現在)
産経新聞:資料配布巡り衆院予算委が一時紛糾(2026年3月6日)
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清算人
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