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バックレ・トゥ・ザ・フューチャー 第4話「探」

「煙草を1本取ってよ、ぼくのレインコートにあると思うんだけど」
「私たち最後の1本吸っちゃったじゃない、1時間前に」
それでぼくは景色を眺め、彼女は雑誌を読んだ
それから月が ひらけた野原の上にのぼった

「キャシー、ぼくは迷子なんだ」
ぼくは言った 彼女が眠っているのを知ってたけれど
「空っぽで、痛んでて、どうしてかもわからない」
ニュージャージー・ターンパイクを行き交う車を数えて
彼らはみんなアメリカを探しにきたんだ
みんなアメリカを探しに……

America - Simon & Garfunkel (1968)

彼女の運転で次の街ウィリアムズ(Williams)を目指す。カーステレオから「ん~ん~ん~、ん~んんんん~……」というあのハーモニーが聞こえてきた。おお、ここでこれがきたか!「ぼんやりとした不安ソング」の全米代表こと、サイモン&ガーファンクルのアメリカだ!

「アメリカを探しにいこう」なんつって軽い気持ちで旅に出かけた若いカップルがグレイハウンド・バスに乗っている情景を描いた曲なんやけど、60年代中盤ぐらいの何かやりきれない感じが歌詞からも音からも伝わってくる。

ギンズバーグの『吠える』、ケルアックの『路上』、ブローティガンの『アメリカの鱒釣り』『芝生の復讐』、初期のディランなんかも同じ時代に「アメリカとは何か」というものを追い求めていた気がする。その親世代のロスト・ジェネレーションの作家(ヘミングウェイとかフィッツジェラルド)もそうかもね。第一次大戦後のパリで「迷子」になってしまったアメリカ人たち。

自分が生活しているアメリカと、政治(国)レベルのアメリカと、理想の(もしくは古き良き)アメリカというものの間にギャップがありすぎることで、ひとりひとりの中に幻想のアメリカができあがる。だからみんなアメリカを探しに旅に出る。この日ずっと見てきた景色とトランプにそんなことを考えさせられた。

だいウッドー(マザー2の敵)を思い出させる景色

うちらは今回全くもってアメリカを探しに来たつもりはなかったんだけど、動画を回しながら「アメリカを探してまーす」「うちらマジでいまアメリカを探してるわー、どやぁ」とか言って盛り上がってる。そして本当にそんな気がしてくる。LA旅行記から何度か小ネタにしている映画『あの頃ペニー・レインと(Almost Famous)』でも象徴的に使われているこの曲。ペニー・レインって偽名ロックでかっこいいな。おれもロックな名前が欲しくなってきた!

ちょっと後にかかったTwo of Us の歌詞も何か意味ありげに聞こえてきた。41年間の人生で最も故郷から遠いところにいて、さらに遠くに向かっているはずなのに、不思議と「帰っている」感がしてくる。親はバブル全盛期に20代で、1984年生まれのおれたちは氷河期ゆとりのはざまで迷子になった。だからアメリカを探したくなるのか?ウィアオナウェイホーム、ウィアゴーインホーム!

ぼくらはホームに向かう途中
ぼくらは故郷に向かう途中
ぼくらは家に帰っているところ

きみとぼくには この先に広がってる道よりも長い思い出がある

Two of Us - The Beatles (1970)

バーマ・シェーブの看板がまた出てきたので助手席から撮ってみる。時速65マイルで走行中に5枚ともピント合わせて撮るのはなかなかむずい。1回だけ成功したと思ったら、それが最後の1セットだった。

この1回だけ
ただ楽しみのために
あなたにフィニッシュさせてあげましょう
私たちが始めたものを
最後の1枚Burma Shaveのロゴじゃないんかい!

この看板のすぐ先でルート66は終わってI-40に合流。制限速度も時速75マイル(約120km/h)に上がって爆走。だんだん標高が上がってきたのか耳がおかしくなってきた。16時過ぎにウィリアムズ到着。西部劇チックなとてもいい街並み。今回はちょうど通り道だったのでビジターセンターに寄ってちょっと休憩させてもらうだけ。スタンプをゲットして何かいいものあったら買おう。

セリグマンとウィリアムズのページ
今回はここでスタンプラリー終わり
ミニチュアの街
山火事の番人ことスモーキー・ベア先輩
ミニスモーキーさん

米国民のほとんどが知っているらしい山火事啓発キャラ、スモーキー・ベアさんと初めまして。「キミだけが山火事を防ぐことができる」が決め台詞。スモーキーさんのかわいい首振りフィギュアとマグネットを買った。山火事という文字を見ると村上春樹の短編『雨宿り』を読みたくなる。無料で自然発生するものの代名詞、山火事。

気になったステーキハウス

運転を交代し、ここからは北に向かう。メインストリートをちょっと通過しただけやけど、よさげなステーキハウスとかいっぱいあったしウィリアムズにもいつか一泊してみたいね。もう一日余裕があれば右に曲がってフラッグスタッフ→セドナに行きたかった。次はそのふたつとアルバカーキだな!

AZ-64(アリゾナ州道64号線)をひたすらまっすぐ進む。カーステからはアクロス・ザ・ユニバース。さっきスモーキーパイセンと会ったのもあってめちゃくちゃ自然を守りたい。森と動物たちを守りたい。

走っているうちに両サイドがだんだん針葉樹林の森みたいになってきた。レンタカー借りて最初に走行距離の写真撮るの忘れた!と思って彼女にレシートを確認してもらったら「マイルズアウト4996」って書いてあってよかった。いま5220まで進んでいる。車はかなりまばらで、途中で曲がっていく車には「ばいばーい」と声をかけた。こんなところを右左折して先にいったい何があるのだろうか。

地平線と山

地平線が見えてきた。ゲップー(MOTHER2の敵)みたいな山のふもとから頂上までが全部見える。何なんだこれは。日本やったら絶対先に海が見える感じなのに、ここはやっぱり大陸の中なんよな。そして、この先にクソでかい谷があるなんて信じられない。畏怖すら感じさせるような景色。『インターステラー』よろしく、違う惑星に来たみたいな気分。ウディ・ガスリーが「この土地は君の土地、この土地は俺の土地……」って歌い始めた。

俺の行く手を阻もうとする 大きな高い壁があった
塗られた看板には 「私有地」と書いてあった
だがその裏側には 何も書いてありゃしねえ
君と俺のために この土地は作られたのさ

This Land Is Your Land - Woody Guthrie (1944)

ウィリアムズを出て1時間少し走って18時ごろ、グランドキャニオンの門前町タサヤン(Tusayan)に到着。本日のホテルはここのホリデイインリゾート。とりあえず今日はもう運転しなくていい!缶ビールをしばきながら夕食の店でも探すかね。そうだ、セリグマンのスタンドでクアーズと農心カップラーメンを買ってたんだった。クアーズを急速冷蔵して飲もう。

Holiday Inn Resort the Squire at Grand Canyon

プラザ・ボニータというメキシコ料理屋が評判よさげだったので行ってみることにした。ホテルと飲食店とスーパーがギュッと集まってる小さな町で、観光地だし歩いて移動しても全く問題ない感じ。夕方からは少し肌寒い。

メキシコビールで乾杯 1本8ドル
お通しチップス、ミニタコス5種選べて30ドル、ワカモレ5スクープ16ドル…

内装もかわいくて料理もおいしかった。店内のテレビでは「アメリカン・ニンジャ・ウォリアー」(原作:サスケ)の女子のやつをやっている。みんなフィジカルやばすぎだぜ。お会計はチップ入れて81ドルちょっと(明細13,358円)。やっぱりどうしてもこれでこの値段かーってなってしまうね、ビール1本ずつしか飲んでないし。バーガーとかタコスのうまさの上限ってたかがしれてるしなー……とかも思ってしまう。

部屋に戻ってさっき車で聞いてたシャッフルを再開する。何か予感がしてホテルに着いたときに止めてて、絶対に続きを聞くべきな気がしていたんよな。そしてきましたジョー・コッカーのWith a Little Help from My Friends!ドラマ「素晴らしき日々(The Wonder Years)」の主題歌でめっちゃ聞いてたビートルズのソウルフルカバー。小学生のころNHK教育の火曜18時半がこれで、水曜18時半が「フルハウス」だったらしい。ときどきカーテンの向こう側をアメリカ探しの車が通っていく。

どうなってるのこの国は

トランプのハイ皿に「まずは入国させてくれてありがとうございます。入国するまで絶対に言わないように我慢してましたファッキュー!あと昼は顔面に放尿ぶちかまして申し訳ありませんでした。本日もアメリカ国旗柄のビール(バドライト)をいただいております」とか伝えて爆笑している。

最近は入国審査でSNSとかチェックされる場合もあるらしいからトランプについては何も言及しないようにしていた。名前すら呼びたくない我が国の首相もそうやけど、民主主義の制度や手続きを蔑ろにする奴らが2026年にもなってはびこってて、それを支持し続ける人たちがいる意味がわからない。いや、2026年だからこそこんな世の中になってきてるとも言えるのかもな。極まれば通ずで、いつかそのうちまた逆方向に揺り戻しが起こっていくのだろう。そうなるまでに大きな悪い出来事が何もないとありがたいけど。

首振りスモーキーさんとベガスの薬局で買ったプリロール
アカデミー賞候補者にも贈られているらしいブランド、ドッグウォーカーズ

出発するちょっと前に軽い気持ちで見返した『カーズ』やったけど、ルート66ドライブには必修だった。昼間の「アワ・タウン」に続いて、ここでエンディングの「ファインド・ユアセルフ」が流れるもんね。

自分が遥か彼方にいることに気付いて
それがものごとを考え直すきっかけになったとき
自分がゆっくりと別の誰かに変わっていっていると感じ始める
そしてそのとき 君は自分自身を見つける

新しい町で友だちを作って
身を固めることについて考え始めたとき
それまで響かなかったものごとは
今やはっきりと聞こえるようになるだろう
そして君は自分自身を見つける
それこそが自分自身を見つけるときなんだ

自分がどこに向かっているか 確信して人生を送っていて
思いがけず行き詰まってしまう それは起こりうる最高のことなんだ
道を見失ったとき それが本当に良い方向につながることがある
だって君は自分自身を見つけるんだ
それこそが自分自身を見つけるときなんだ 

Find Yourself - Brad Paisley (2006)

道に行き詰まったときに自分自身を見つけるってのは冒頭のアメリカの歌詞にも通ずるところがあるよなー。バスルームで用を足していると、洗面台とトイレを挟んだ両側が合わせ鏡になっていて、右にも左にも無限のおれが見えた。過去と現在と未来の自分がずっと繋がっていて、このタサヤンのホテルの一室でご対面しているのだ。ここまで来て、ある意味うちらは既に未来を生きているのではないかと思い始めた。こうなったら行けるとこまでバックレトゥザフューチャーかますしかないな。

この旅はまだ半分も終わってないし、まだ何も始まってない。目的地まではぜんぶ寄り道みたいなものなのかも。明日も早いしそろそろ休もうか。窓の外を通る車はだんだん少なくなってきて、やがて誰もいなくなった。おやすみアメリカ。

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