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「ただの黒い点」が、毎日の癒しになるまで。浜中太郎さんに聞く、霧多布のラッコの魅力

浜中町観光協会はこのたび、霧多布岬(正式名称:湯沸岬)に生息するラッコをモチーフにした「霧多布のラッコキーホルダー」を、5月23日(土)より販売開始します。

発売を記念してお届けしている、霧多布のラッコにまつわる連載企画。NPO法人エトピリカ基金・片岡理事長へのインタビュー(前編後編)に続く第3弾となる今回は、ほぼ毎日霧多布岬へ足を運び、ラッコの写真やライブ配信を通じてその魅力を発信し続けている、浜中町在住のフォトグラファー「浜中太郎(@kiritan555)」さんにお話を伺いました。

キーホルダー購入特典として同封される「霧多布のラッコ見守り隊員証」に使用した写真も、浜中太郎さんによる撮影です。

最初は「ただの黒い点」にしか見えなかったというラッコが、なぜ毎日見に行きたくなる存在になったのか。霧多布のラッコの魅力や楽しみ方について、たっぷりと語っていただきました。

霧多布のラッコ見守り隊員証

▼浜中町観光協会公式オンラインショップはこちらから


「個人の記録」として始まった、岬通い

——本日はよろしくお願いします!まず、浜中太郎さんについて教えていただけますか?

2021年に浜中町へ移住し、現在6年目になります。「浜中太郎」の名前で、SNSを通じて霧多布岬のラッコの日常を発信しています。Instagramでは写真を毎日投稿していて、TikTokでは朝と昼に岬からライブ配信をしています。

【浜中太郎さんのSNSアカウント】
Instagram(@kiritan555) / TikTok(@kiritan555

——移住した当初から、ラッコの存在は知っていたのですか?

岬にラッコがいるという噂は耳にしていたのですが、当時はさほど気に留めていませんでした。Instagramを始めたのも、岬の灯台の四季の移り変わりを記録しようと思ったのがきっかけで。せっかく移住したのだから、なんとなく日々の風景を写真に残しておきたいな、と。ですから当時は、今のように反響があるわけでもなかったですね。

ラッコの発信を始めたのは、2024年の5月頃です。その年に職場が変わって、隣のデスクの方に「岬にラッコがいるよ」と言われたのがきっかけでした。

岬をずっと撮影していたのに、一度もラッコを見かけたことがなかったなと。それで、改めて散歩してみると、海に浮かぶ「黒い点」がラッコだというのがわかって。

でも遠すぎて、全然見えないんですよ(笑)。岬は標高45mほどありますから、海面までかなり距離があるんです。これは望遠がないとダメだと思ってカメラを引っ張り出してきたら、ようやくその姿がはっきりと見えました。

望遠がないとラッコは点にしか見えない(出典:浜中太郎さんのInstagramより)

ただの「黒い点」だと思っていたのに、レンズ越しに見るといろんな表情や仕草があって、これは面白いなと。そこからすっかりハマってしまいましたね。

毎朝6時45分、岬に立つ日々

——TikTokでのライブ配信は、毎日されているのですか?

そうですね。朝と昼に30分ずつ配信しています。朝は仕事が始まる前、6時45分ごろには岬にいます。昼は休憩のタイミングで撮りに行って、気づけば毎日1時間くらい岬に立っていますね。

——そもそも、ライブ配信を始められたきっかけは?

実は、単身赴任で妻が釧路に住んでいまして。妻もラッコが好きなので、最初はビデオ通話で岬の様子を見せていたんです。でも「ライブ配信にしたら他の人も見られるし、一石二鳥じゃないか」と思い立ったのがきっかけです。美談っぽく聞こえますが(笑)。

——配信を見ている方々からは、どんな反応がありますか?

常連の方が20人ほどいて、すっかり顔なじみになりました。浜中町出身の方も多くて、「地元の景色が見られて嬉しい」とコメントしてくださることもあります。

以前、「霧多布に行く予定だったけれど、入院することになってしまって。配信で見られてよかったです」と言ってくださった方がいて、その時は続けていてよかったなと思いました。

ラッコが見えない日でも、「仕事、頑張ってください」とか「バレーの練習があるので、今日はここで失礼します」といった日常的な会話もあって、視聴者さんとのやり取りも個人的に楽しませてもらっています(笑)。

——コミュニティが自然と生まれているんですね。

そうですね。TikTokにLIVEファンクラブという機能もあって、現在100名ほどの方に参加いただいています。特典として、「浜中オールスターズ」という名前のスタンプも作っていて、ラッコはもちろん、オオワシやアザラシ、キツネもいるんですよ。

あと、これは視聴者さんに言われて気づいたのですが、私が配信中によく「あ〜可愛い」と呟いているらしくて(笑)。「『あ〜可愛い』スタンプを作ってください」とリクエストをいただいて、追加したこともありましたね。

「浜中オールスターズ」のスタンプ

望遠の先に見える、ラッコたちの「物語」

——観光協会では浜中太郎さんとコラボさせていただき、毎月のベストショットをご紹介する「霧多布のラッコたち」という企画を行っています。毎回キャプションの内容が面白くて、私たちも作りながら楽しませていただいています。

「霧多布のラッコたち」企画(2026年5月号

実は、「霧多布のラッコたち」のキャプションは、妻がほとんど考えたものなんです。

決め方は、まず私が月末までによさそうな写真をある程度ピックアップしておいて、「ラッコのお仕事、手伝ってください」と妻にお願いするところから始まります。写真を眺めながら、その場で大喜利合戦をするんです。お互いに「これがいいね」となったものをキャプションに採用しているんですが、だいたい妻の案に落ち着くんですよ(笑)。

ラッコって、すごく表情豊かなんですよね。毎日通っているせいか、「おじさん、また来たの」っていう顔で見られている気もするし(笑)。もちろん、ラッコ自身はそんなこと思っていないでしょうけど、見ている側が勝手にコメント付けして、「物語」が生まれていく。それが面白くて。

若いラッコは毛艶がツヤツヤしているし、年を重ねたラッコは白い毛が増えていたり、シワも出てきます。一頭一頭に個性があって、物語を作りやすいというのも、ラッコ観察の醍醐味かもしれないですね。

——過去の投稿で、印象に残っているものはありますか?

やっぱり、「最上級に可愛いのー」ですかね。去年の冬に撮った一枚なんですが、シャッターを切った瞬間に「これだ!」と思いました。もう、可愛いが全面に出てますよね(笑)。

「霧多布のラッコたち」企画(2026年1月号)より

——これまでいろんな表情を見てこられたと思いますが、可愛さの一方でギャップを感じた場面はありましたか?

岩をよじ登る姿にはびっくりしましたね。ロッククライミングみたいに、急斜面の崖もものともせず登っていくんですよ。体が重いこともあって、波の反動をうまく使ってヒュンって駆け上がるんです。なかなかアクロバティックですよね。

他にも、海に浮かびながらのんびりしていたかと思えば、荒波をぐんぐん進んでいったり。そのたくましさもまた、愛おしくてたまらないです。

あと、タコを食べているシーンも衝撃的でした。最初、「ラッコが襲われてるんじゃないか」と思ったくらいの迫力で(笑)。あれは本当に面白かったですね。

ラッコがタコを食べている様子(出典:浜中太郎さんのInstagramより

——2026年春に生まれた子供の様子も、積極的に発信されていましたよね。

子ラッコはもう、見ていて本当に愛おしいです。子育ての様子をそばで見守れるのも嬉しいですし、観察が俄然おもしろくなりますね。

今年の春に生まれた子ラッコは、よく寝る子なんですよ。お母さんが餌取りに行って一人にされても、鳴かずにぷかぷかと浮かんでいます。去年の子は、お母さんがいなくなるとすぐに「ミーミー」と鳴いていたので、やっぱり個性があるんだなと感じますね。

子ラッコが餌取りの練習をするシーンも微笑ましいですよ。一生懸命潜ろうとするんですが、うまくいかずにすぐ浮き上がってしまうんです。すると、お母さんが「こうやるんだよ」と教えて、子ラッコが「母ちゃん、頑張る!」なんて。勝手に想像してますね(笑)。

2026年春に生まれた子ラッコ(出典:浜中太郎さんのInstagramより

そんな可愛らしい場面がある一方で、子育ての大変さもひしひしと伝わってきます。子ラッコは自分でグルーミングができないので、お母さんがつきっきりでケアしてあげないといけない。そういう背景を知りながら見ると、お母さんの何気ない仕草ひとつひとつに重みが出てきますよね。

浜中太郎流・ラッコ観察の楽しみ方

——浜中太郎さんのようにラッコの「物語」を楽しむには、双眼鏡は必須ですよね。

そうですね。1人1台あると、観察がぐっと楽しくなると思います。同じ様子を見ながら「あれ、何してるんだろうね」と話せるのも楽しいんですよね。双眼鏡がない人は、霧多布湿原センターで借りることもできますよ。

【霧多布湿原センターについて】
📍〒088-1304 北海道厚岸郡浜中町四番沢20
☎️ 0153-65-2779
🔑休館日:5~9月無休 / 10~4月火曜日
🕐 湿原センター開館時間
・4~10月:9:00~17:00
・11~3月:9:30~16:00
https://www.kiritappu.or.jp/center/

——時間帯や季節によって、見つけやすさは変わりますか?

基本的にはあまり関係ないと思いますね。いる時はいるし、いない時はいない。ただ、朝の時間帯は岩礁で寝ていることが多くて、比較的見つけやすい感覚はあります。

よく寝ている場所は、道道1039号霧多布岬線の起点、湯沸岬灯台の手前にある駐車場付近の岩礁です。引き潮の時間帯に岩礁が現れて、そこで丸まって寝ていることがあります。

ただ、本当に岩と見分けがつかないんですよ(笑)。擬態しているような状態なので、岩礁を一つひとつチェックしていくのが基本です。波がバシャーっと被ると、わっと起き上がる瞬間があって、それで「おー!いたー!」ってなることもあります。その瞬間もまた面白いんですよね。

ラッコが岩礁で寝ている様子(出典:浜中太郎さんのInstagramより

あと、水に濡れている時はツヤツヤした黒っぽい色ですが、乾くと白みがかったふわふわした雰囲気になります。岩礁に白っぽいものがあると思ったら、そこを双眼鏡で確認してみてください。

——残念ながら見つけられなかったという声もよく聞くのですが、探すコツはありますか…?

せっかく浜中町まで来てくださったからには、ぜひ見つけていただきたいですね。

現地に足を運んでいただいた方の中には、遊歩道を岬の先端方向に進んで左側の海域(転落防止柵の設置側)で良く泳いでるなぁというイメージを持っている方も多いと思いますが、じつは波が穏やかな時は右側の海域にいることもあります。岬全体を広く見渡してみるのがおすすめです。

それでも見つからない時は、Instagramのリール動画のアーカイブも参考になると思います。海面から引いた構図で撮影しているので、岬のどのあたりにいるか、どのくらいのサイズ感なのかが確認できて、探す手がかりになるはずです。

偶然のつながりが生んだキーホルダー

——今回の「霧多布のラッコキーホルダー」は、浜中太郎さんと、制作いただいた有限会社スワニーさんがSNSで偶然つながったことがきっかけで誕生したと伺っています。

そうなんですよ。2025年7月、私のTikTokのフォロワーがまだ100人ほどだった時に、突然スワニーさんの公式アカウントからフォローがきたんです。

当時は、フォローしてくれた方のアカウントを見に行くこともあったので、プロフィール欄を開いてみたら、鳥羽水族館の「メイちゃんキーホルダー」を作っている会社さんだということがわかって。

これはいい人と繋がれたな〜と思ってメッセージを送ってみたら、代表の橋爪さん(通称:はっしーさん)がすぐ返信してくれたんです。そこからやりとりが始まって、ものづくりへの思い、就労支援への取り組みなど、いろいろ聞かせていただいて、すごい方と知り合えたなと思いましたね。

——すぐに意気投合されたんですね。

私とはっしーさんが同い年ということもあって、会話が弾みましたね(笑)。

しかも、縁が重なったんですよ。メッセージのやりとりの中で、はっしーさんから「以前、知り合いから、霧多布岬でラッコを撮り続けている人がいると聞きました」と言われて。

その方というのが、私が霧多布岬でたまたま言葉を交わした、とある大学の先生だったんです。とても感じの良い方だったので、名刺を交換しておけばよかったな…とずっと思っていたほど印象に残っていた方で。メッセージを読んだ瞬間「それ、私です!」って、もうびっくりしちゃいました(笑)。

さらにおまけがあって。私のアカウント名が「kiritan555」なんですが、はっしーさん個人のアカウントの語尾も「55」なんですよ。「55って、どんな意味ですか?」って聞いてみたら、「人生GO!GO!です」って(笑)。私も「GO!GOGO!」のニュアンスでつけていた数字だったので、こんな偶然もあるんだなと、テンションが上がっちゃいましたね(笑)。

——ここまで偶然が重なるなんて、何かご縁があると思っちゃいますね(笑)。そこからキーホルダーの話に?

そうですね。はっしーさんから「霧多布でも何か作りませんか」と提案いただいて。SNSでつながった1ヶ月後には、浜中町にまで実際に来てくださったんです。もう、あっという間でしたね(笑)。

そこから浜中町観光協会さんとのご縁も生まれて、年明けに発売された「雪きりたんキーホルダー」を経て、今回の「霧多布のラッコキーホルダー」が出来上がったという流れでした。

「星明子のように見守りたい」——ライフワークとしての霧多布

——毎日欠かさず岬に通い続けて、浜中太郎さんにとってラッコはどういう存在になりましたか?

もう「ライフワーク」ですね。その言葉に尽きます。先ほどお話した大学の先生に、「毎日撮りに来てるなんて、もうライフワークだね」と言っていただいたのですが、その言葉がすごくしっくりきていて。趣味っていうより、なんか響きがいいじゃないですか(笑)。

なかなか浜中町まで来られない方にも、この場所の日常を届けられたらいいなと思っています。とはいえ、自分が一番楽しんでいるんですけどね。「癒しのお裾分け」が届いているなら、それが何より嬉しいです。

——今後、やりたいことはありますか?

ゆるりとラッコたちを見続けられたら、それが一番かなと。

私はいつも「星明子のように見守りたい」という気持ちでいるんです(笑)。「巨人の星」の星飛雄馬のお姉さんみたいに、ひっそりと、静かに寄り添っていたい。シャチに襲われるリスクがあることも、自然の厳しさも含めて、すべてをただ見守っていたいです。

とはいえ、ここまできたらフォロワー1万人も目指してみたいですね(笑)。浜中町はいい町ですし、ラッコを発信することで地域の活性化にもつながったら、それも嬉しいです。

——最後に、キーホルダーを手にした方へメッセージをいただけますか。

たくさん愛でて欲しいですね!そしていつか、実際に霧多布のラッコに会いにきてくれたら嬉しいです。最初は、私と同じように「ただの黒い点」にしか見えないかもしれませんが、双眼鏡を覗いた瞬間、きっと虜になると思いますよ。(了)

浜中太郎さんのInstagramでは毎日ラッコたちの最新の様子を、TikTokでは、朝と昼に霧多布岬からライブ配信を行っています。霧多布に来る前にぜひチェックしてみてください。

※本記事内でクレジットを記載している写真の著作権は、撮影者である浜中太郎氏に帰属しています。無断での転載・転用はお控えください。

🫶 Special Thanks 有限会社スワニー

「霧多布ラッコキーホルダー」の製作を担当いただいたのは、長野県を拠点とする有限会社スワニー様。同社は、鳥羽水族館「ラッコのメイちゃんキーホルダー」でおなじみの製品設計会社で、最新の3Dプリンタと3Dモデリング技術を駆使し、設計から試作・量産化までを一貫してサポートする企業です。行政と連携した地産土産プロジェクトや空き店舗を活用したワークスペース事業など、モノづくりを通じた地域活性化にも積極的に取り組んでいます。
今回は、NPO法人 エトピリカ基金・片岡義廣 理事長の監修のもと、骨格をはじめとする生物学的な知見を細部まで反映したモデリングを実施。実際のチシマラッコの毛皮の色合いも参考に毛色を再現し、3Dプリントと繊細な塗装によって仕上げていただきました。
製品の企画から発売に至るまで、SNSでの告知などさまざまな面でご協力いただいたスワニー様に、心より感謝申し上げます。

【有限会社スワニー様のSNSアカウント】
TikTok(@swanyofficial) / X(SWANYINA)/ Instagram(swany_3dp)  

浜中町観光協会について

公式サイト:http://www.kiritappu.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/hamanaka_kanko/
Facebook:https://www.facebook.com/hamanaka.kiritappu/

ラッコ観察ガイドも公開中です🦦

浜中町・霧多布のラッコに逢いに行こう!見られる場所・時期・アクセスガイド - 浜中町役場

【ラッコ観察時のルール】
ラッコへのストレスを軽減し、厚岸霧多布昆布森国定公園特別区の環境を守るため、下記ガイドラインを必ずお守りくださいますようお願いいたします。

  1. 船舶・カヌー等でラッコに近づかない

  2. えさを与えない

  3. 大声や騒音を出さない

  4. 水面および水中での観察・撮影を行わない

  5. 湯沸岬・アゼチの岬周辺でドローンを飛行させない

出典:浜中町ラッコ鑑賞ルールについて - 浜中町役場

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