家賃が高くて5年住んだ街から追い出されそうになった話。住まい探しの奥義は、生成AIと超アナログなプロの仕事(エッセイ@転職フェーズ7)
高いなぁ。
もうこの地域には住めないのかもしれない……。
あの失望感はなかなか堪えた。
東京の西側。
5年も住んだ思い出深い場所だった。
今のマンションがあまりにも狭く、もろもろの事情から引越しせざるを得なくなった。
ところが、条件に合う物件がない!
2Kから3Kの住まいに移るのがこんなに難しいことだとは思わなかった。
仲介会社で話を聞いたところ、そもそも物件の数が少ない。みんなファミリー向けのマンションを建てたがらないそうだ。
たしかに面積当たりの家賃で考えると、ひとり向けのほうが採算がよい。
とはいえ、「困る!」としか言いようがない。
◇ ◇ ◇
空き物件がないわけではなかった。
古いのは仕方がない。
……が、内見に訪れた部屋はどれも不思議な造りをしていた。
窓の感じ、ドアの感じ、天井の感じ。
なんというか、現代の仕様ではないし、かといって、昭和の感じでもない。時代の狭間にしか存在しない何かだった。
たとえるなら、乗り物酔いをする部屋。センスでも実用性でもない第3の部屋。
住むイメージがまったくできなかった。
この街を捨てる覚悟をせざるを得ない……。
わたしは転職が多く、そのたびに引越しをしてきた人間だ。
いろんなパターンの転職がありました……
別れには慣れているつもりだった。
それなのに、初めてここを離れたくないと思った。
もっとできることはないのか――?
今なら、AIのフル活用が考えられる。
住まい探しにもAIエージェントが登場した(LIFULL AI)。
わたしはこういうサービスを使いたかった。
不動産データとAIの組み合わせはぜったいに相性がいい。
使わなかった。使えなかった。
なぜなら、これは7年前の話だからだ。
そう、7年前の時点で東京の家賃に苦しんでいたのだ。
ご承知のとおり、コロナ禍を経て、家賃はさらに高騰した。
どうか皆さま、武器をフル活用してほしい。
生成AI、そして、もうひとつの力を。
それはAIとは真逆の力。
◇ ◇ ◇
当時、藁をもつかむ思いで足を運んだのは、遠方の不動産会社、……ではなく、逆に近所。
家から徒歩30秒の場所。地元の不動産屋だった。
圧がある。敷居が高い……。
そんなことを言っている場合ではない。
わいはこの街に残るんや。
最初から社長が出てくる。
イメージどおりの人だった。ぶっきらぼう。よく言えばフランク。
希望の家賃を伝えると、「そんなのないない」。
一蹴された。
商談が一瞬で打ち切られそうになったとき、「1X万円なら出せます」。
わたしは見た。社長の目が光るのを。
歴戦の不動産マンは、その人にしか見えないゴールにたどり着いたのだ。
「それなら、あるか……」
社長の車でさっそく現場に向かう。
社長の説明は驚くべきものだった。
「オーナーが節税対策で持ってる物件だから、もうけようと思ってないんだよね」
まさかのオーナー裏情報。
「節税対策」の響きにお得感がただよう。
「更新の費用もかからないしね」
なんと!
2年に1度、家賃のひと月ぶんを払うやつ、あれ、ないんだ。
本物かもしれない……。
社長はさすがというか、すぐにその物件に行かず、1件イマイチなところに立ち寄ってから、本命の場所へ向かった。
そのテクニックはまったく不要だった。
築年数こそ30年近いが、これまで見た物件と違い、住むイメージができた。
いや、予想以上。
昨日まで街を出ていく覚悟をしていたのに、これは奇跡だ。
すぐに契約書を交わしたことは言うまでもない。
ここまでの話を読んで、「ちょっとうまく行きすぎじゃないか……」と思った人がいるかもしれない。
その感覚は正しい。
社長はとてもいい人でした。仕事のプロは個性的な人が多いです笑
◇ ◇ ◇
なぜそんなに素晴らしいマンションが空いているのか?
実は……、空いてる部屋はひとつではなかった。
入居してからわかったが、空き部屋が常に複数ある。
引っ越しをする人が意外と多い。わたしが入居した部屋も、前の住人が一年も経たず出て行ったようだ……。
皆さま、同じことを思ったのではないだろうか。
わたしは信じていないし、皆さまだって信じていないと思う。それでも、物件の話となるとつい気になってしまう。
人ではない住人の存在を。
わたしは引っ越しが多かったので、いろんな物件を見てきた。自分の感覚としか言いようがないのだけど、どちらかと言えば、「いる」ほうの空気感。
部屋というより、マンション全体に宿っている雰囲気がある。
最初のころはけっこう怖かった。
張り替えられたはずの畳が、けば立って、あちこちトゲになっているのは、新しい入居者を拒絶するかのようだった。
畳が撤収され、替えの畳が到着するまでの数日、床の下地がむき出しになった光景は鮮烈だった。
……………………
やがて怖い感じはなくなっていった。
マンションに住む何かがいたとして、受け入れてくれたのだと思う。
感謝しているから。
多少の問題があったとしても、感謝が圧倒的に上回っている。
この街に残してくれてありがとう!
おかげで不自由なく暮らせています。
感謝する者を、相手は嫌いになれない。
それに……
真に怖いのは物価高騰のほうだ。
大丈夫。わたしたちには武器がある。
直感も、生成AIも、地元の不動産屋もフル活用!
きっと会える。導かれし物件に。

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トップ画像はマンションのエントランスです
氷のアート。東京はますます雪が積もります。 pic.twitter.com/FWOGoNhaBS
— 焔ふぁい|FIREの精霊 (@rockstar_narite) February 8, 2026
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