見出し画像

【仕事の短編】トリミングファイターさくらさん、ヒゲ裁判編①(デザイン&カメラ)

好評だったお仕事小説の新作です。美人デザイナーさくらさんの必殺技はトリミング。今日もトリミングで事件を解決します。

前作を読まなくても大丈夫!

【ご相談】彼女は元カメラマンで、職場に持ち込んで普段使いしているカメラがあります。作者がカメラに詳しくないものでAIと相談したら「Nikon D750」ということになりました。イメージ合ってる?

コメント欄で教えてね


ヒゲ裁判……。

ここはいちおう会社です。まさか、他人様のヒゲを断じた一票を、神聖な投票箱に投げ込むことになるとは思いもしませんでした。

あ、失礼しました、わたくしシノと申します。小さな制作会社に勤めています。クライアント企業の広報誌などをつくっていて、仕事は大変なのですが、なんと言えばいいのでしょう……

「敵は内部にいる」とはよく言ったものです。ここには変わった人が多すぎるように思います。社会人経験の浅いわたしでもさすがにわかります。

「シノちゃん、ちょっとー!」
関西弁のアクセント。
「あ、はい……」
部長さんに呼ばれました。身体がぱっと動きます。すぐにそちらに向かわねばなりません。わたしが所属するプロデュース部の部長さんですから。

体格がよくて、ヤクザのような怖い顔をしています。わたしが部内で唯一の女子社員だからなのか、怒鳴ることはないですが、よく目をむいて怖い笑顔をつくります。

「ちょっとシノー!」
今度は反対側から。デザイン部のさくらさん。

「はい!」
わたしは、部長の席に向かう足を止め、回れ右をします。それはこの場においてとても自然な動作なのです。あまりに自然なので、わたしの本当の上司はさくらさんなのかな、と思わなくもありません。

部長は、黙認します。
それどころか部長はときどき、
「シノちゃんは猛獣使いやなー。ものすごいスキルやで」
とわたしを褒めてくれます。
はいはい言うことを聞いてるだけなのですけどね……。

「このページのレイアウトなんだけどね」
「はい!」
部長さんから猛獣扱いされているこのさくらさん、とても美人です。

そして気が強いです。思ったことをズバズバ言ってきます。ディレクターの皆さんは、そういうところが苦手なのかな……と。

この会社は、大きく分けて、ディレクターが所属するプロデュース部とデザイナーが所属するデザイン部があります。2つの部署はいつもピリピリしています。

お客さんと直接やり取りをして、企画を立てたりスケジュール管理をしたりするのがプロデュース部。デザインソフトを使って制作物を具体的に形にするのがデザイン部。

お客さん、ディレクター、デザイナーの順に業務が流れますから、最後に割を食うのはデザイナーです。ディレクターの無理な要求(本当はお客さんなのですが)に対して、デザイナーが抗う。

そんな構図になりがちで、毎日何かしら怒鳴り合いが起こります。とはいえ、お客さんの言うことには逆らえませんから、最終的にはデザイナーが譲歩することになります。

それなのに、さくらさんは自分の意見を曲げません。ディレクターに対して、進め方をディレクション? 結果、プロジェクトがうまく行ってしまうのが恐ろしいところです。

わたしも奇跡のような体験をしました。

どこの業界にも難しいお客さんというのはいるもので、当社には三大炎上祭りと呼ばれるプロジェクトが存在します。そのひとつを、さくらさんは得意のトリミング技術で完封してしまいました。


わたしは、肩書こそディレクターですが、さくらさんの指示に従っているだけの存在なのです。

でも他のディレクターさんはどうでしょう。ほとんどが年配の男性社員です。

さくらさんはまだ20代のはず。年下の女子から反論されて、逆にディレクションされてしまうのは、なかなかつらいものがあるのではないでしょうか。

あ、ヒゲ裁判の話でしたね。さくらさんもバッチリ登場します。というか、ややこしくした人のひとりです。

ことの発端……。

やっぱり、この会社は変なんですよ。

プロデュース部に、脱色した、チリチリの髪をした人がいまして、社長が「歌舞伎町の客引きみたいだな」と言い出したのだそうです。

たとえがピンと来ないところがありますが、信用できない見た目ということなんだと思います。

チリチリさんが社長室に呼ばれました。

わたしは社長が「その髪型はダメだ」とビシっと言いえば終わりだと思うのですが、チリチリさんが社長室から戻ってきたとき、ヒゲ裁判の開催は決定していました。

チリチリさんが「碓井さんのヒゲはいいんですか!」と言い出したのです。

碓井さんとはデザイン部の部長。ヒゲが顔と一体化したような人で、言われてみれば、ああ、碓井さんヒゲ生えてるなと認識できます。普段メガネの人のメガネを気にしないのと同じで、それくらい違和感がありません。

こういうのを巻き込み事故というのでしょう。
2つの投票が同時開催されることになりました。

チリチリさんの髪型。加えて、碓井部長のヒゲ。
OKなのか? アウトなのか? 

正直、チリチリさんは誰が見てもアウトだと思うので、実質、碓井部長のヒゲ裁判です。

びっくりしたのは碓井部長です。イエスマンの碓井部長が、めずらしく社長に抗議しました。

このヒゲを剃ったら、奥さんから離婚だと言われている! 

わたしのヒゲがNGになったら会社を辞めざるを得ない! 


デザイン部長、一世一代の必死の抗議。
しかし、社長は聞き入れません。

うちは民主主義の会社だからと言い出しました。
民主主義ってそういうことでしたっけ?
前代未聞のヒゲ裁判がはじまります。

あの人が、さくらさんが反応しないわけがありません(続く)

読んでくれてありがとう!
スキ・シェア・コメント大歓迎

▼記事を書いたのはこんなひと▼

▼他のSNSでもよろしくね▼

ぐだぐだX!

あまり気づかれないTALES!

いいなと思ったら応援しよう!

焔ふぁい|FIREの精霊 クリエイターであり続けたいー! が、整体に行かないと死ぬ。ポンコツゆえ、ポンコツゆえ、300円よろしくお願いしまーーす!