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【仕事の短編】トリミングファイターさくらさん、ヒゲ裁判編②(デザイン&カメラ)

大好評、お仕事小説。美人デザイナーさくらさんの必殺技はトリミング。今日もトリミングで事件を解決します。

さくら:カメラマン出身のデザイナー(愛用のカメラはNikon D750)。美人で仕事もできるが……
シノ:見習いディレクター(性格に難のあるさくらと組まされがち)
プロデュース部長:顔が怖い。いつも冗談か本気かわかりにくい。
デザイン部長(碓井):ヒゲがトレードマーク。プロデュース部と対立気味。
チリチリさん:チリチリパーマの不良社員。

【前回のあらすじ】社長の思い付きで、デザイン部長のヒゲが会社員としてふさわしいか、社員全員で投票することに。碓井部長は、ヒゲがNGなら退職すると宣言!

たぶん、前話を読まなくてもいけるはず(↓)

シノでございます。

前代未聞のヒゲ裁判。あの人が、さくらさんが反応しないわけがありません。

ふたりで会議室にいるときに、当然その話題になりました。
「碓井部長、たいへんなことになりましたね」
「この会社って本当にアホだよね」
さくらさんはわたしと同じ感想を口にしました。

「就業規則にヒゲが駄目ってあったんですね」
「就業規則なんて誰も読まないのにね」
「はい、わたし、見たことがありません」
こう言ってはなんですが、小さな制作会社は無法地帯です。そのときどきで社長がなんとなくルールを決めている気がします。

「わたしは碓井さんのヒゲ、全然気になりませんけどね。えっと、さくらさんは……」
うっ!
そのときさくらさんは、すごく悪い表情をしていました。

わたしの記憶のスナップショットに、こんなメモ書きが添えられています。

なんて悪い顔。
ろっくんろーる? 
美人はどんな顔をしても様になるなぁ。
すごい顔だけど。
うん、この顔好きっ! 

「ふふ、わたしアウトにしよっと」
「えーっ」
「だって、面白いじゃない。あのヒゲがあるからデザイナーっぽい感じがするけど、なくなっちゃったら、ただのつるつるしたおじさんになると思うよ」

たしかに碓井部長の頭頂部には髪の毛がないし、全体的に、健康的なつるっとした肌をしています。

ヒゲがあるから渋いおじさんに見えるけど、碓井部長はつるっとしたおじさんと紙一重なのかもしれません。こんなにしょうもない場面でも、さくらさんのトリミング能力が生きてきます。

「でも、碓井部長、辞めちゃうって……」
「わたしがアウトにしたところで、たいした影響はないでしょ。イベントが少しでも盛り上がればいいかなってくらいだよ」

わたくしシノも、アウトにしたい気持ちがむくむく湧いてきました。わたしはさくらさんのこういう大胆さに憧れているのです。

まずはスモールイベントでロックンロールになってみることがその一歩なのかもしれません。わたしたちふたりがアウトにしたところで、碓井部長のヒゲは大丈夫です。

◇ ◇ ◇

投票の日はすぐにやってきました。チリチリさん、碓井部長がOKかアウトかを書いた紙を箱に入れるだけです。

部署ごとに回収するらしく、プロデュース部の部長が回収箱を手に立ち上がりました。デザイン部の人たちは、ミーティング中のようで自席にいません。

「シノちゃんはどっちにしたん?」
部長が軽いノリで聞いてきます。
「えっと、あのですね……」
勇気をだすのよ、シノ。ロックンロールになるんでしょ。

いま思えば、答える必要はまったくなかったのですが、部長のトークに乗せられてしまいました。あの人はいつも会話にトラップを仕込んできます。

「わ、わたし、✕にしようかと……。ヒゲのない碓井部長も見てみたいなぁ。なんて」
そう言いながらも、わたしは書き直すための用紙を手元に用意していたのです。
「そうやな、見てみたいわ。俺も✕にしよ」
「え?」
部長はわたしの投票用紙をぱっと取って投票箱に入れてしまいました。

「でも、ヒゲを剃ったら、碓井部長が辞めちゃうって……」
そのとき後ろから、「当然アウトでしょ!」
大きな声。窓側のシマの巨体のおじさんです。いつも机のうえに、見せびらかすように分厚い経済書を置いている人です。

「だいたい、就業規則で決まっているわけですよ。こんなの、考えるまでもないでしょう。碓井さんだけ許されてるのがおかしいんです」

いつも真っ先に会社のルールを破るのはこの人なのに……。本人は気づいていませんが、みんなに嫌がられて、ひとりだけ別のシマに追いやられている問題のある方です。

「ナイス、シノさん! シノさんが勇気を出しているのに、ぼくが〇にするわけにはいかないでしょ」
なんか、わたしのせいにしようとしています。
この人はいつもトラブルを起こしたくて仕方がないのです。

あれ、✕がいくつになりましたか?

あわわ……、わたしのロックンロールがこんなに伝染してしまうなんて!

トドメとばかりに、わたしの隣の社員が✕と書いたのがチラ見えしました。

これってまずい事態なのでは――?

本当の大混乱はここからです。

わたしも押し付けるようでなんですが、トラブルの出元のひとが……「えええええーーー! うそでしょーーーっ!」

さくらさんは、こちらがびっくりするくらいのリアクションをしました。こっそり呼び出してプロデュース部の投票速報をお知らせしたのです。アウトが過半数になってしまいました、と。

さくらさんはすでに投票済みのようでした。

「そうしたら、デザイン部が圧倒的に〇を付けなきゃ駄目じゃない! あいつ、そんなに人望ないって」
「ど、どうしましょうか……」

さくらさんのうろたえぶりにびっくりです。いつもはクールなのに、ときどき感情がものすごく出る人なのです。ああ、この表情もスナップショットしたい。

そして、さくらさんが爆発しました。

「ヒゲが辞めたら、わたしも辞めるからねー!」

「えええええーーー」


今度はこちらがびっくりです。
ど、どうして、さくらさん……!

まさかふたりは付き合っているんでしょうか?
それって……不倫?(続く)

ヒゲ裁判編の最終話はこちら↓

記念すべき第1弾の作品はこちら↓(さくらとシノが社内で三大炎上祭りと呼ばれる難関プロジェクトに挑みます)

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▼こんな方針で活動しています(笑)▼

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焔ふぁい|FIREの精霊 クリエイターであり続けたいー! が、整体に行かないと死ぬ。ポンコツゆえ、ポンコツゆえ、300円よろしくお願いしまーーす!