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【仕事の短編】トリミングファイターさくらさん、ヒゲ裁判編FINAL(デザイン&カメラ)

大好評、お仕事小説。美人デザイナーさくらさんの必殺技はトリミング。今日もトリミングで事件を解決します。

さくら:カメラマン出身のデザイナー(愛用のカメラはNikon D750)。美人で仕事もできるが……
シノ:見習いディレクター(性格に難のあるさくらと組まされがち)
プロデュース部長:顔が怖い。いつも冗談か本気かわかりにくい。
デザイン部長(碓井):ヒゲがトレードマーク。プロデュース部と対立気味。
チリチリさん:チリチリパーマの不良社員。

【前回のあらすじ】社長の思い付きで、デザイン部長のヒゲが会社員としてふさわしいか、社員全員で投票することに。部長は、ヒゲがNGなら退職すると宣言。それなのに、邪悪な社員たちが続々と✕を付ける事態に!

お時間に余裕のある人は、最初のお話から↓

ちょっと忙しい人は、第2話から↓

めんどくさい人はすぐに読んでも大丈夫(↓)


シ、シノです……。

プロデュース部の投票速報をお伝えすると――
さくらさんが爆発してしまいました!

「ヒゲが辞めたら、わたしも辞めるからね!」
「えええええーーー」

今度はこちらがびっくりです。
ふたりは付き合ってるんでしょうか?
ふ、不倫……?

「な、なんでさくらさんが辞めるんですか」
「わたしに仕事が降ってくる!」

「はあ……」そんな理由なんですか。「まあ、多少は振ってくるかもしれませんが、さくらさんなら」
「無理、無理」
「だっていつも言ってるじゃないですか。碓井部長は本当にセンスがないって」

「違うの、これはセンスの問題じゃないの! わたしがヒゲにひとつだけ勝てないものがあってね、それは業務スピード。ヒゲはセンスがない代わりに、オペレーションが驚異的なの。あの人は、デザイナーじゃなくて、オペレーターの化け物なんだって思ってる。まあ、人間AIね」

人間AI……。
深いです。尊敬の念もいっさいないです。

「だからヒゲが辞めたら、仕事が降ってくるというか、月が落ちてくる」

月が落ちてくる……。
素敵な表現です。

「ぜったい辞める、ぜったい辞める」
「わあああ!」

わたしもパニックになってきました。さくらさんが辞めちゃったら、この会社で生き残れる気がしません。

まさか、わたしのロックンロールが、こんな悪夢を招くなんて思いもしませんでした。

原因をつくったのはわたしです。わたしがなんとかしなきゃ、なんとかなんとか。

……そういえば、少し前にもこんなことがあった気がします。炎上三祭りのA社です。

記念すべき第1作目(さくらとシノが社内で三大炎上祭りと呼ばれる難関プロジェクトに挑戦)

あのときは、さくらさんが奇跡のトリミング(切り抜き)を使って解決しました。何か、きっかけがったように思います……。

そうだ、カメラです!
さくらさんはふらっとカメラを持って外に出かけてしまったのです。

「さくらさん!」
「へ」
「写真を撮りに行きましょう!」
「なんで?」

◇ ◇ ◇

秋晴れです。すがすがしい快晴です。

予定表に「客先訪問」と書き、お昼休みを長めに確保、さくらさんと会社近くの神社にやってきました。

近くの神社といっても、敷地は広大です。ここには都内有数の有名な神社があるのです。

シノってときどき変なこと言い出すよね――と言われて恥ずかしかったですが、「まあ、いいよ。気分転換しないとやってられね」と同意してくれました。

さくらさんはこの会社に来る前はプロのカメラマンだったらしく、会社に大きなカメラを置きっぱなしにしています。

わたしは知っているのです。さくらさんはどんな困難にも打ち勝つ無敵のトリミングファイターだって。

パシャパシャ、パシャパシャ。すごい勢いです。
さくらさんは境内の池を撮り、木々を撮ります。

うん、そうです。
こうやって景色を切り取ってるうちに何かが起きるのです。

「うおー、また転職じゃないかー! ここ、家から近くて通勤が楽だったのにーー!」パシャパシャ、パシャパシャ、パシャパシャ。

……うん、今回はダメかもしれません。

そもそも投票終わってますからね。
今さら何ができるわけでもないのです。

パシャパシャ、パシャパシャ。さくらさんもやけ気味です。

奥に進み、写真を撮り続け、今は やしろの中に思いっきりレンズを向けて撮っています。パシャパシャパシャ。さすがにそれ、罰当たりじゃないですか……と思ったとき、パシャパシャ、パシャ……

止まった?
さくらさんの憑き物が落ちたような顔がありました。

「……シノ」
「はい」
「……大丈夫だ」
「…………」

わたしには何が大丈夫なのかさっぱりわかりません。

さっきまで荒れ狂っていた魔人が突然活動を停止。この豹変ぶりが大丈夫じゃないといいますか、ご神体の怒りを買って、さくらさんの魂が抜かれてしまったのではないかと思いました。

それからさくらさんは、ピタっとヒゲ裁判の話をしなくなりました。

無敵のトリミングファイター……。
この人にはいったい何が見えているのでしょうか。

翌日、ヒゲ裁判の結果が発表されました。

チリチリさんアウト、碓井部長セーフ。

わたしが胸を撫でおろしたことは言うまでもありません。

それにしても、いったい何が……。
あのあと、さくらさんが何か細工をしたのでしょうか。

答えを、ランチのときに教えてもらいました。

「うん、あの結果は当たり前なんだよね」
「それはいったい……」
「投票結果は誰が見ると思う?」
「それは……」
社長は部長たちには見せないだろうな。
そうか、「社長」
「そう」
納得がいきました。

「結果なんて社長がどうとでもできるんだよね」
なるほどです。
社長の言葉が耳元によみがえるようです。

うちの会社は民主主義だから。

社の中に、さくらさんがトリミングしたもの。それにタイトルを付けるなら、「民主主義の裏側」でしょうか。

食後のコーヒーを口にするさくらさんは、すっかりいつものクールな表情でした。

シノはさくらさんから目が離せません。

わたしがこっそりトリミング事件簿を作ってること、秘密ですよ?(了)

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焔ふぁい|FIREの精霊 クリエイターであり続けたいー! が、整体に行かないと死ぬ。ポンコツゆえ、ポンコツゆえ、300円よろしくお願いしまーーす!