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綱引き

登場人物
エカガ(カメ)、ンジャグ(ゾウ)、ングブ(カバ)

Title image by Ashenso

アメリカの宣教師、ロバート・ハミル・ナッソー(1835 - 1921)による採話。ギニア、ガボンなど西アフリカの国々で40年間暮らしたナッソーは、訪れた村で語り部が話す伝説を収集した。ムポングウェ語など土地の言葉で語られた話をナッソーが英語で語り直している。詳細はこちら

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注釈
アフリカの人々は年齢が同じか年長かに関して敏感である。「ムウェラ(仲間)」という用語は、同等の者以外に使うと争いを招く可能性がある。

大ヤギを殺したことでカメから非難されたヒョウは、その後死んだ。ヒョウの子どもたちはまだ小さかった。父親の代わりになるほどの力も地位もなかった。それでカメは自分こそ、偉大な存在だと考えた。みんなにこのように言っていた。「われわれ3者が残された。おれ、ンジャグ、ングブは同等の力がある。同じ席で食事をし、同じ権威を有してる」 毎日のようにカメは自慢してまわった。みんなはゾウとカバのところに行ってこう報告した。「これこれしかじか、あのエカガが言ってる」 ゾウとカバは笑ってそれを無視した。「なんのこっちゃ、見下されるだけだ」

ある日、カバは森でゾウと出会った。「ムボロ!」「ああ、ムボロ!」 互いに挨拶しあった。カバがゾウに尋ねた。カメが言いふらしている自慢話を聞いたか、と。ゾウが答えた。「ああ、聞いたぞ。バカなやつだ。俺はンジャグだ。デカイし、足なんかエカガの体と同じくらい大きい。なのに、あいつは俺と同等だと言ってる。だがな、その話はしないし、今後することもないだろう、エカガの口からそれを聞くまではな。どうするかは、その後の話だ」 カバもこのように言った。「自分もそうしてるさ、黙って聞いてる。エカガが言うのを自分の耳で聞くまではな」

カメはゾウとカバが脅しをかけていることを耳にした。そして正確になんと言ったのか、それを伝えた者に尋ねた。答えはこうだった。「あんたがあいつらに直接言うまで待ってるとね。それまではただ見下すだけだと」

カメが尋ねた。「つまりだ、あいつらはおれを見下してるってわけだな」「そのとおり」 するとカメが言った。「そういうことなら、あいつらのとこに行ってやろうじゃないか」 カメは妻にこう言った。「上着をくれ」 カメはそれを着て、森へ出かけていった。ゾウが寝そべっているのを見つけた。その鼻は10キロメートル以上もあったし、耳は家くらいの大きさがあった。足となると測りきれないほどだった。

カメは偉そうな態度でゾウをこう呼んだ。「ムウェラ! 来てやったぞ。挨拶もせず寝てるのか。ムウェラが来たんだぞ!」 ゾウは起き上がるとカメを見た。そして憤慨してこう聞いた。「エカガ、おまえ誰をムウェラなどと呼んでる?」 カメが答えた。「あんたのことだ! ムウェラとあんたを呼んだ。ちがうのか、ンジャグ?」 ゾウは激怒してこう聞いた。「エカガめが、聞いたぞ、おまえが言った言葉をな。本当にそう言ったんだな?」

カメが答えた。「ンジャグ、怒るな、待てよ。まずは話をしようじゃないか」 そしてさらにゾウに向かって言った。「おれはいま、あんたをムウェラと呼んだ。だけどンジャグ、なんでおれに文句を言うんだ? あんたは体がでかいから、エカガに優ってるってことか? たんに、おれが小さいからか? テストをしようじゃないか。明日の朝、ルレルレ(綱引き)をしよう」 ゾウが尋ねた。「それでどうするって? 俺なら片足だけでおまえを踏み潰せる」 カメが言った。「まあまあ、とにかくテストだ」 それでゾウはいやいやながらも同意した。カメがこう付け加えた。「もし綱引きで、一方がもう一方を引き寄せたら、そっちが偉いということになる。そうならない場合、おれらはムウェラだ」

カメは森に行って非常に長いつるを切ってきた。戻ってくるとゾウにこう言った。「こっちの端があんた、おれはもういっぽうの端をもって森の奥まで行く。そして明日になったらそこに戻る。それで綱引きを始める。食べたり寝たりはなし、あんたがおれを引きずり込むか、つるが切れるまで引っ張るのを止めない」 カメは一方の端を手にカバの住む街まで出かけていった。そして町のはずれにつるの端を隠した。カメがカバのところに行くと、水浴びをしていた。岸辺を行ったり来たり、水の中を動きまわっていた。カメが大声でカバを呼んだ。「ムウェラよ! 来たぞ。こっちの岸まで来いよ。おれが訪ねてきたんだからな」 カバは戦う気満々で、大きく口を開け大声をあげながらやってきた。「やるか、いまここで。誰をムウェラなどと呼んでる」

カメが答えた。「どうしてだ! あんたの体の大きさなど怖くないぞ。心は同じ大きさだ。だが、やりあうのは待った。まず話そうじゃないか」 カバがブーブー言いながら腰を下ろした。カメが言った。「おれはエカガだ。あんたとンジャグとおれは同等だ、おれらムウェラだ。あんたがでかくて、おれが小さかったとしてもだ。でもそうじゃないと言うなら、ちょっとしたテストをしよう。明日の朝、あんたとおれでルレルレをするんだ。勝った方が上だ。だが勝負がつかなかった場合、おれらは同等だ」 カバはそんな案はおかしいと怒った。が、最終的に同意した。

カメは起き上がると出ていって、つるの端っこを手に戻ってきてカバに渡した。「こっちの端があんただ。おれは反対の端に行く。明日、つるが揺れたら、反対側にいるおれが準備OKという合図だ。そうしたら始めていい。勝負がつくまで、食べず眠らず、つづける」

カバは森に行って、力がつく葉っぱを集めた。一方、反対の端にいるゾウも薬草を用意し、同じように力を蓄えた。そしてどちらもその晩、ぐっすり眠った。

次の朝、カメはつるの真ん中まで行って、中間地点にあたる場所に印をつけた。そしてゾウ側に向かって、それからカバ側に向かって、つるを揺らした。ゾウはつるが揺れるのを見て、その端っこを掴んだ。カバも同じようにつるの端を手にした。「オリンディが行ったり来たり(そのように泳ぐ魚の名前からくることわざ)」と、ゾウとカバがつるを引いたり引かれたりした。「ンケンディンリは父と母から生まれた(個々の違いを意味することわざ)」 ゾウもカバも、それぞれのやり方でつるを引いた。カメは自分の策略にニヤリとした。一方が他方を引きずれば勝ったことになる。勝負がつかなければ、つるが切れるまで勝負はつづく。

ゾウはつるをピンと張らせていたし、カバも同様だった。つるがブルブル震えるのを見て、カメは笑いがとまらなかった。

腹を空かせたゾウとカバを置いて、カメは食べ物を探しに出かけていった。カメは森に入り、いつも食べているキノコを見つけた。腹いっぱいそれを食べ水を飲み、ひと眠りしに町に帰った。

昼過ぎに目を覚ましたカメは、こうつぶやいた。「綱引きを見に行くかな。あのバカどもがまだやってるかどうか見なくては」 カメが着くと、つるはまだピンと張ったままだった。「アサイ、なんてことだ! 空腹で死ね!」 カメはそこに腰をおちつけ、プルプル震ええるつるを見て、くたびれた2頭の野獣を嘲笑った。一方がもう一方を自分の方に引き寄せたかと思うと、今度は反対側につるは引きずられた。しかしどちらも勝つところまでいかない。

そこでカメは持っていたナイフでつるに切れ目を入れた。つるは二つに分かれた。両方の端で、ゾウ、カバ、どちらもがドシンと尻もちをついた。カメがつぶやいた。「ほらな、やったぞ! まずはゾウのところに行くか。明日はカバだ」 カメはゾウのところに行った。ゾウは悲痛な面持ちで足に薬を塗っていた。そしてこう言った。「ムウェラ、どんな気分だ? 俺らがムウェラで満足か?」 ゾウはそのように認めた。「エカガ、おまえがこんなに強いとは知らなかった。つるが切れたとき、俺はこけて足を怪我した。そうだ、俺らは同等だ。まったくな! 体が大きいからといって強いわけじゃない。おまえは小さいから、おれはおまえを見下していた。しかしだな、実際のところ、力は同等だった」

というわけでカメとゾウは食べ、飲み、遊んだ。チュム(ムウェラ)として。カメは自分の家に帰った。

次の朝早く、もう一方のつるの端を求めて、カメはカバのところに向かった。カバは具合が悪そうで自分の頭をさすっていた。カメが尋ねた。「ングブよ、どんな気分だい? ムウェラよ」 カバが答えた。「まったくな、エカガよ! おれたちは同等だ。おれ、ングブはでかい、おまえ、エカガは小さい。どっちも引っ張り引っ張り引っ張りあったが、おれはおまえに勝てなかったし、おまえもな。で、つるが切れた。おれはひっくり返って頭を打った。だから強さってのは、体の大きさじゃないんだ」 カメとカバは食べ、飲み、遊んだ。そしてカメは自分の町に帰っていった。

それからは、仲間たちとの寄り合いで3者が顔を合わせれば、カメ、ゾウ、カバが上席にいつもすわった。つまり同等ということか? そのとおり、彼らは同等なのだ。

日本語訳:だいこくかずえ


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