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宇宙民話 : ワラキアの子犬たち⓻ Cuentos del Universo : Los perritos de Valaquia ⓻ by ルア・ノアール

宇宙民話 もくじ
自己紹介/わたしについて(ルア・ノアール)
大好きな日本のみなさまへ(ルア・ノアール)
*メキシコの新米作家によるスペキュレイティブな民話集。

Title image by Lua Noire

クッキー惑星と救出劇 | Planeta Galleta y el rescate

このお話を思いついたのは、飼っているわたしの犬が恋しかったから。そして夢見ることは心を解放してくれるから、空想的な物語がいいと思ったのです。ここにいるわたしたちはティーンエージャーだけれど、お話は少し子どもっぽくしました。囚われの身の人たちの中に子を産んだ人もいて、その娘たちの世話をわたしたちがさせられていたからです。わたしは彼らの言うことに従わず虐待を受けて傷を負っていたので、この役をより多くさせられました。

救助を求めた電話がうまくいくかどうか、わからないし、もし警官と話したことが彼らに知られたらと思うととても怖い、何をされるかわからない。彼らはわたしの心を破壊した。もしさっきの電話で助けられなかったら、わたしの魂までもが破壊されるだろう。ワラキアの子犬たちのお話が本当のことで、子犬たちが助けに来てくれたらと思う。
「いい、みんな、誰かが助けに来たら、全速力で逃げるのよ。ここはわたしたちの家じゃない、ここから出ていかなければ。それが今日だったらと願っている。助けを待つ間、最後のお話を、これが最後になることを願ってするからね」

***

あるアパートから、ひどい悪臭が漂ってきました。近所の人々は耐えられないと文句を言いました。オルテンシアという名の女の子が、そのアパートに住んでいました。人々はオルテンシアの変わりようにがっかりしていました。この界隈で、オルテンシアは感じのいい女の子として知られていましたが、急に人々の前に顔を出さなくなったのです。オルテンシアは隣人たちと口をきかなくなりました。ファーストフードを買うために家を出ることがありましたが、道で出会った人に挨拶さえしなくなりました。彼女に何があったのか、誰にもわかりません。あの子は悪い道に走った、むやみに動物を助けたりして、社会不適合者となったと噂する人たちもいました。

近所の人々は臭いに我慢できず、アニマルポリスに電話して悪臭が収まらないと訴えました。電話のあとに、動物保護団体がやって来て部屋に押し入りました。ドアを開けると、床の上でオルテンシアが眠っており、部屋はひどく散らかっていました。そこに隠れていたのは、4匹の犬と栄養失調状態の1匹のうさぎでした。オルテンシアは無理やり精神科の病院に連れていかれました。こんな風に動物を保護するのは難しいことだったのです。この出来事は人々の噂となって広まりました。ワラキアの子犬とミハイも、友だちの小鳥からの知らせでこのニュースを知りました。

「5匹が入れる施設が見つからなかったら、みんな安楽死させられてしまうよ」 そう小鳥が言いました。
「そうさせるわけにはいかない。助けに行かねば」とサルマーレ。
「でも気をつけないと、道をうろつく犬は捉えられるっていう噂があるからね。当局の人は野良犬を捕まえて、駆除しようとしているんだ」とミハイが警告を与えました。
「そりゃひどいな。ぼくらだって生きる権利はある。まるでゴミかなんかみたいに処分するのはフェアじゃない。悪いのは飼い犬の世話をしない主人なんだから。唯一の逃げ場が道路ってわけさ」 頭にきたブラスコが文句を言いました。
「だけどこんな目にあってる動物たち全員を、いったいどうやって助けられる?」 キャプテン・クッキーが疑問を呈しました。

「オルテンシアの犬たちを助けながら、何かいい案を考えよう。彼らがつかまったりしないようにね」 時間があまりないことを心配しながら、ブラッキーがキャプテン・クッキーに言いました。
「今日は馬たちの世話をしなくてはならないんだ、農場にいなくては」とミハイ。「きみたちだけで行ってほしい」
「さあ、すぐに行こう、時間がない」 キャプテンがみんなに指示しました。
子犬たちは気の毒な動物たちを救うため、オルテンシアの家まで飛んでいきました。ところがそのとき子犬たちは、パトロールの係官たちが道にいる犬を捉え始めていることを知りませんでした。14日以内に引き取り先が見つからないと、安楽死させられてしまいます。

子犬たちがオルテンシアの家のそばに着陸したとき、運悪く当局の人たちに姿を見られてしまい、飼い主がそばにいないことから追いかけられるはめに。オルテンシアを探すのに気を取られていて、ブラッキー、サルマーレ、ブラスコはキャプテン・クッキーがいなくなったことに気づきませんでした。

キャプテンは捉えられ口輪をはめられていました。キャプテン・クッキーは宇宙吠えなしではパワーを発揮できなかったし、仲間からの追跡も受けられませんでした。キャプテンはいまや、無力なただの子犬でした。行く先不安で、何がこれから起こるか誰にもわかりませんでした。

「さあ、走れ、警察がぼくらを追ってるぞ」 キャプテンがいないことに気づかず、ブラスコが警告を発しました。
「さあ、残りも捕まえるぞ、まだ3匹いるはずだ、まだ1匹しか捕まえてないからな」 と、キャプテンを捉えた警官。

「ブラスコ! キャプテンはどこだ、見失ってしまったよ」 サルマーレが心配して言いました。
「行くぞ、オレたち捕まってしまうぞ、キャプテンは宇宙吠えで自分でなんとかできるはず」とブラッキー。でもキャプテンのことを忘れてそう言ったのではなく、ここにいる仲間を助けなければと思ったのです。

子犬たちは飛び去っていきました。キャプテンのゆくえはわからないままです。すごく心配になり、子犬たちはミハイを探しにいきました。そうすれば当局の人に話ができるでしょう。子犬たちは人間の言葉が話せますが、ミハイはそれを他の人間に見せないように伝えていました。そうでないと子犬たちにマジカルなパワーがあることが知られてしまいます。

「ミハイ、警官がクッキーを連れ去ったんだ」 サルマーレが言いました。
「あー、気をつけるように言ったのに。一緒に行かなかったわたしのせいだ」
「誰が悪いかはどうでもいい、キャプテンを探すのが先だ」とブラスコ。
「ワルキアの犬の収容所に行こう、そこにいるに違いない」 そうミハイが言いました。
「一刻もこうしてはいられない。友だちを救わねば。オレらは種類は違うけど、だからといってキャプテンが兄弟姉妹じゃないってわけじゃない。キャプテンを助けにいくんだ」
ブラッキーが友だちの陥った運命に責任を感じて、勇ましく言いました。

ブラッキーはすぐさまキャプテンを探しに出発し、ワラキアで一番近い犬の収容所を見つけました。そして勢いよく窓ガラスを突き抜けて中に入りました。普通の犬ならガラスで怪我をしてしまうでしょうが、ブラッキーは宇宙から来た犬なので、まったく平気です。ブラッキーは特別な犬で、超自然のパワーの持ち主なのです。

ブラッキーの必至の一吠えで、野犬収容所の扉が一斉に開きました。犬たちは、小屋の中で積み重なるようにして狭さに耐えていました。たくさんの犬が一箇所に詰め込まれ、ひどい環境の中で暮らしていました。ブラッキーは小屋から犬たちを解放しました。そして様々な大きさの犬の群れの中に、友だちのキャプテンを見つけました。

「キャプテン、きみの口輪を外さなくては」 ブラッキーがクッキーに近寄って、口輪にかみついてそれを壊しました。
「ああ、やっと口がきける、吠えることができる。パワーが戻ったよ」 キャプテンがホッとして言いました。
「助けてくれてありがとう。あなたがどなたか知りませんけど、ここから逃げ出さなくては」 そう言ったのは1匹の雑種の犬でした。
「ウチらはワラキアの子犬、さあ行こう」とキャプテン・クッキー。
「一回ここを出たことがあるんだ、でもまた戻された。飼い主が捨てたんだ、片目だからさ。2回引き取られたけど、そのたびに捨てられた」 1匹のマルチーズが話し始めました。「ここから逃げなくては、そうじゃないと15日目には安楽死だ」

「だけど道に出ていったら、あいつらが捕まえにもどってくる。堂々巡りだ。どこに行ったらいいのか、家はないし」とピットブル・テリア。
その言葉を聞いて、そこにいる犬たち全員が吠え始めました。
「みんな黙って! ワタシにいい考えがある。新しい家を探しに、遠くまで行く気はある? 住むのにとても素敵な惑星があるの、クッキーという名の惑星で、すばらしいところだった。そこの住人たちは犬が好きになった。だからきみたちを受け入れてくれると思う。ワタシたちと一緒に、宇宙をちょっと旅すればいいだけ」 そうキャプテン・クッキーが言いました。

「だけど、わたしたちは犬だから、空を飛べない」 そう言ったのはマルチーズ。
「オレたち、酸素泡の輸送機がつくれるんだ、それで宇宙に行けばいい。案内させてほしい」とブラッキーが提案しました。
「そうか、新しい未来の家か、気に入るんじゃないかな。たとえ地球から遠いところにあってもね」とピットブル。
「あたし人間がこわい、あたしたちを傷つけることしかしない」 震えながらチワワが言いました。
「悪い人間ばかりじゃない。希望を失わないで、優しい心の持ち主も中にはいるんだから」とキャプテン。
「ここにほら、ちょっと変わった犬がいるよ。クッキー惑星のやつらが、この子も受け入れてくれることを願おう」 そう言ったのは雑種の犬でした。
「それは犬じゃない、オルテンシアのうさぎだ!」

「オルテンシアがいなくて寂しい。あの人はわたしたちの世話をするのをやめてしまった。動物を救助していたけれど、突然自分自身が手に負えなくなったんだ。精神に異常をきたしてしまって。彼女が救助されてよかったオルテンシアはみんなに相手にされなくなって、泣いていた。ドラッグをやってるって疑われて、でも統合失調症を患っているだけなんだ。わたしらの世話をするために、薬を買うのをやめてしまったからね。仕事も失った。仕事をなくしたことで、精神的に落ち込んで統合失調症になったんだ。オルテンシアは統合失調症だという噂が広まって、町じゅうの人が彼女は危険人物だって言いはじめた」 うさぎはそう言うと泣き始めました。「オルテンシアが助けた犬たちと、よその惑星にいく心構えはできているよ」

「ついてきて、みんな。人間がぼくらのパワーを目にしたり、しゃべっているのを耳にしても気にしない。ここから出るのが先決だ」 ブラッキーが興奮気味に言いました。
ワラキアの英雄たちと救助された犬たちが隊列を組んで、宇宙への旅の準備のために、ミハイの家へと向かいました。犬たちの一群が通りに出ました。

「きみたち早かったね、迎えにいこうと思ってたところさ」とミハイ。「きみらには仲間がたくさんいるんだな。町じゅうの野犬収容所から連れてきたみたいだ」
「うさぎだって連れてきたよ。全員を救ったんだ」とブラッキー。
「収容所にいた全員をクッキー惑星に連れていこうと思っている」 そうキャプテンが言いました。
「だけど、きみたちも行ってしまうのかい?」 ミハイが子犬たちまでここを去ってしまうのかと心配して訊きました。
「いいや、クッキー惑星に彼らを連れていくだけだよ。戻ってくる」 ブラッキーが答えました。

「ここにいる仲間全員を惑星に連れていくよ。ぼくのミッションは彼らを守ることだからね」 ブラスコがみんな助けるという自分の任務を示しました。
「きみに同行するよ」とサルマーレがブラスコに言いました。
「あいつらがまたやって来る前に、出発だ」 そう言ったのはさっきの雑種犬でした。「あー、警官がこっちに向かってくるぞ」
「心配しなくていい、わたしが話をするから。わたしのところの農場を、一時的にシェルターにすると説明しよう。きみたちを道で見つけて、もうわたしのシェルターにいると言おう」 ミハイが犬たちにそう言いました。

警官がミハイのところにやって来ました。
「ここにいる犬たちを連れていく。こいつらは収容所から逃げたんだ」 警官が言いました。
「でも、わたしが彼らを保護したんですが。わたしのところのシェルターにいるんです。十分な場所があるのがわかるでしょう?」
「ああ、そうなのか、わかった。あれだけの数の犬を全て捕まえねばというプレッシャーのせいで、黒い小さな犬が空を飛ぶのさえ目にしたさ」と警官。
「心配ない、みんな大丈夫だから」とミハイ。
「じゃあ、もう行くよ」 警官はそう言うとパトカーで去っていきました。

ブラスコとサルマーレはクッキー惑星へ出発する準備が整いました。すべての犬が歓迎されるはずです。

サルマーレが息を吐いてつくった魔法の泡玉に、収容所から逃れてきた犬たちが乗り込みました。宇宙の子犬たちは飛ぶことができます。でも普通の犬たちは飛べないので、サルマーレがあらかじめ泡玉をつくっておいたのです。

子犬たちの一群がクッキー惑星に向かいました。到着すると、キャプテン・クッキーを讃えるいくつもの彫像があるのを見つけました。宇宙レースの優勝は、レーサーとして記録破りだったのです。惑星の住民たちは、子犬たちがいなくなったので悲しい思いをしていました。するとその英雄たちが、たくさんの犬を引き連れてやって来たので、大喜びしました。よその惑星からやってきたたくさんの犬たちが、安住の地を得たことは素晴らしいことです。

サルマーレとブラスコは地球に戻りました。ブラスコは再び、迷い犬たちをクッキー惑星に連れていく準備を始めました。そして惑星が犬たちでいっぱいになると、他の惑星を、犬たちが安全に幸せに暮らせそうな惑星を探しにかかりました。

突然、ドアがドンと叩かれ、お話が中断されました。数匹のラブラドール犬が調査官と共に入ってきて、部屋を嗅ぎまわりました。失踪者を探すための警察犬でした。国際捜査令状がエリサベタに出ていましたが、家族は彼女からの助けを求める電話を受けるまで消息がつかめませんでした。エリサベタの電話のおかげで、すべての娘たちが救出されました。女の子たちはそれぞれ家族の元へと帰っていきました。

**

留意事項:他者の痛みや経験をこの物語で利用しようという意図はありません。若い女性に世の中の現実について警告を発したいと思っただけです。『ワラキアの子犬たち』のお話はフィクションであり、この世界には希望があることを表そうとしました。

*第7話をもって『ワラキアの子犬たち』は終わりです。

<宇宙民話> Cuentos del Universo もくじ

ルア・ノアール(Lua Noire)
メキシコ生まれ。書くことは自分の世界を捉えること。統合失調症である。そこで見る幻覚と現実の世界をリンクさせて作品を書いている。(自己紹介を読む)
フェルナンダ・カルバハル(Fernanda Carvajal)
チリ在住のジャーナリスト。スペイン語話者として翻訳をサポート。2020年以来の葉っぱの坑夫の友人。
だいこくかずえ(Kazue Daikoku)
日本在住の翻訳者・編集者。ルア&フェルナンダの支援とChatGPTをフル稼働させスペイン語→日本語訳を敢行。


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