盗みはワレラの本性 / Robar está en nuestra naturaleza by ルア・ノアール
宇宙民話 もくじ
自己紹介/わたしについて(ルア・ノアール)
大好きな日本のみなさまへ(ルア・ノアール)
*メキシコの新米作家によるスペキュレイティブな民話集。
わたしは自転車に乗っていた。
乗りはじめてまだ間もなかったけれど、ちゃんと乗れるようになるという自信があった。
ところがある日、とんでもなくシュールなものを目にしたことで、すべてが変わってしまった。
道の真ん中に、真っ二つに割れたスイカがあったのだ。
そこはメキシコ市の南に位置しており、道の近くには高速道路が走り、軍が保有する森が広がる変化に富んだ景色に囲まれていた。わたしは軍の大学の近くに住んでいて、草地や木々の緑はいつも目にしていたが、スイカ畑など見たことがなかった。
びっくりしたわたしは首をグッと傾げて、道の真ん中の割れたスイカを見ようとした。
その途端、わたしの体は宙に投げ出された。
空中に舞い上がったわたしは、地面に着地するとき、もう少しで肩の骨を折るところだった。
しかし柔道を習っていて受け身ができたので、かすり傷だけで済んだ。
そのとき大きな目をした生き物が近づいてきた。
最初見たとき、猫かと思ったがリスみたいにも見えた。
次の瞬間、カコミスルだとわかった! これぞメキシコ、という動物。
「大丈夫?」とカコミスルが訊いてきた。
大丈夫、とわたしは答えた。
カコミスルが口をきくはずないよな、と一瞬考えたが、そこにいるカコミスルは口をきいたのだ。
わたしは素早く立ち上がると後ずさった。カコミスルは何も悪いことはしない、疲れているだけなんだ、と言ってきた。そして話をしよう、とわたしを森に誘った。
好奇心もあったし、わたしはそれに従った。
カコミスルが言うことには、自分の任務は先祖から受け継がれてきたもの、何世紀も自分は生きており、惑星を作ったのも自分である、惑星の住人たちから果物を盗んで丸い惑星として仕上げ、それを宇宙に放ったのだ、と話した。
カコミスルたちは惑星に命を授けるために、踊ったり歌ったりやんやの大騒ぎをした。この任務のために、数匹のカコミスルが宇宙に集まった。そして果物をつかってボール遊びをした。
カコミスルたちはボール遊びのために、8つのチームを集合させた。どのカコミスルも遊び心をもつ必要があった、そうすれば果物は自然に動きを覚えて、惑星らしくクルクルと回ることができる。
カコミスルはわたしに、盗んだのは果物だけじゃないと打ち明けた。金と銀を盗んで、その盗んだ二つの金属から糸をつくり、空に刺繍をするのが仕事だった、そうすることで夜に星が現れる、と話した。
さらにカコミスルたちは、残りの金属の糸と地球に生えている木をつかって、ハープとギターを作った。するとメロディーが奏でられ、宇宙塵が舞いあがった。星々はそのメロディーを聞いて、とても幸せになり飛びたっていく、そうカコミスルは言った。
「夕暮れはわたしたちのマント、その中でわたしたちは遊ぶ。そこに刺繍をほどこし、毎晩、地球をおおうのです」
わたしはカコミスルに、あの道にあった割れたスイカはどうなるの、と訊いた。あれは惑星をつくるのには役立たない、割れているからね、とカコミスル。
でも地球では割れてしまった果物は虹をつくるのに使われている。「果物の種から虹の色がとれるんだ」と何世紀も生きてきたカコミスルは言い、さらにこう続けた。
「カコミスルは何一つものを捨てない。資源を守るよう訓練されてる。盗みはわたしたちの本性、でもそれは宇宙の循環の一部なんだ」
だいこくかずえ訳・フェルナンダ・カルバハル [スペイン語→日本語訳] 校閲
