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宇宙民話 : ワラキアの子犬たち⓹ Cuentos del Universo : Los perritos de Valaquia ⓹ by ルア・ノアール

宇宙民話 もくじ
自己紹介/わたしについて(ルア・ノアール)
大好きな日本のみなさまへ(ルア・ノアール)
*メキシコの新米作家によるスペキュレイティブな民話集。

Title image by Lua Noire


サイコポムプのブラッキー | Blackie el psicopompo

サイコポムプとは、死んだ人の魂を地上から来世へと導く案内人。霊的な存在として、あるいは天使や悪魔、神として多くの宗教に登場する。

Wikipedia

コルブ・シェパードは最近、奇妙な夢を何回も見ました。ルーマニア北部にある、色鮮やかな墓地として知られる「陽気な墓」にみんなで行ったあとのことでした。ミハイの曽祖父に花を捧げるためでした。その墓地で生き生きとしたカラフルな絵を見て、コルブは驚きました。一つ一つの墓に書かれた美しい絵や、死者の人生を綴った詩に心奪われました。

花を捧げに墓地に行ったあと、コルブ・シェパードは庭で骨を掘りだす夢を見るようになります。それは楽しく笑いに満ちたものでしたが、やがて見知らぬ声を聞くようになり、事態は一変しました。

「わたしの足を返してくれ!」
「おまえはわたしのノミだらけの頭を盗んだ!」

骨を見つけて楽しんでいたコルブ・シェパードは、この声がいったいどこからやってくるのかわかりませんでした。夢はすぐに悪夢に変わりました。骨を盗んだことで、この子犬はカラカ(メキシコの骸骨)の大群につかまってしまったのです。逃れる方法もわからないまま、コルブは持てる力を、宇宙パワーをなくしました。

死者たちがコルブをジョイマリタ(Joimărița)のところに連れていきました。それは非常に年老いた陰気な女で、髪はモジャモジャ、その手は近寄る者すべてを吸い寄せるようでした。

「遊び好きで怠け者の子犬だね、おまえは。ミッションを実行しなかったから、おまえの耳を引っ張ってやろう」
「でも、わたしはまだ子犬ですよ!」
「この子犬が、おまえは自分の運命を知らないな」
「わたしの運命は、主人の農場の羊の世話をすることだと思ってました」
「おまえは黒犬だから、それ以上の運命にあるのさ」
「その運命とは何です?」
「それは祝いごとのたびに、死者をその親類縁者の捧げ物へと導くことだよ。ブラジーニの日がやって来るまでに準備できてないといけない」
「だけどどうやって死者を導けばいい? どうやって死者を見つけるんだ?」

ブラジーニとは:
1. ルーマニアとウクライナの民間信仰によれば、正義のキリスト教徒の神話上の国とされる。ルーマニア正教会の暦に従い、いくつかの地域でルーマニア人は、聖トマス主日後の第1月曜日に、ラーマニッシュ・イースターを祝う。ラーマニッシュ・イースターは、死者のイースター、あるいは偉大なイースターとも呼ばれる。
2. ブラジーニはルーマニア語で「優しさ」や「善良な」といった意味を持ち、死後の世界に住む霊的存在を指す。人間の祖先の霊として語られ、死者の世界と密接に結びついていると言われる。

Wikipedia, ChatGPT他より

そこでコルブ・シェパードは目を覚ましました。ジョイマリタは質問に答えず、夢は終わりました。ブラジーニの祭りは2、3日後でした。コルブは怠け者の犬と言われて、耳を引っ張られたくはありませんでした。夢のことは一旦忘れて、コルブは仲間のサルマーレ、キャプテン・クッキー、ブラスコのところに行きました。

「もうすぐイースターなのに、卵がないんだ」 ミハイが子犬たちに話しました。
「ニワトリがいないの?」 キャプテン・クッキーが訊きます。
「いや、メンドリはいる、でもストをしていて、みんな卵は産まないと言ってる。ワラキア全土で、卵がないんだ」
「卵なしのイースターだって」と、サルマーレ。

「そんなイースターはあり得ない、卵を死者に捧げなくては。卵の殻を見て死者たちはブラジーニだとわかるんだからね。イースターだと知らせる唯一の方法なんだ。捧げ物なしでは、死者たちは自分たちのための祭りだとわからない。死んだ人たちは捧げ物なしの祭りなど知らないだろうね。卵なしでいったいどうやってブラジーニを祝えばいいんだ? あり得ないよ、これを祝わない年などないからね。墓地で死者たちは何を食べたらいいんだ?」 ミハイが当惑した様子で子犬たちに言いました。

「わたしたちには、ニワトリに卵を産ませるミッションがある」とキャプテン・クッキー。
「ぼくらそれをしなくちゃ、そうじゃないとミハイは先祖に食べ物を捧げられない。食べ物なしの祭りなんて、想像できないよ」とサルマーレ。

子犬たちは、なぜニワトリが卵を産まなくなったのか、調べなくてはなりませんでした。ほんとうに奇妙なことです。
子犬たちはニワトリ小屋を調べてまわりましたが、1羽のメンドリがこう言ったことで答えが見つかりました。
「あたしたち、メンドリの女王がフランスに連れ去られて悲しんでいるの。そのメンドリの飼い主はもっといい生活を望んでいて、ルーマニアを離れたの」
「そうなの、あたしたちメンドリは大きなコミュニティで、誰かいなくなったらすごく悲しい。それでストライキをしてるわけ。女王が帰ってくるまで、ストライキをやめるつもりはないの」 仲間のメンドリが言いました。

「だけど、ブラジーニに卵を捧げなくちゃ」
「できません」
子犬たちにはどうすることもできません。ミハイの家に戻るしかありませんでした。なんとかしてメンドリたちに卵を産んでもらえるよう考えなくては。

「みんな、夢を見たんだ、年老いた女がぼくに罰を与えようっていう…」
「コルブ・シェパードはちょっと待って、いまはメンドリのことをなんとかしなくちゃ」 キャプテン・クッキーが口をはさみました。

と、そのとき突然、コルブがジョイマリタの姿を目にしました。
「助けてくれよ、みんな、あの女がまた現れた。悪夢に現れた年老いた女だよ」とコルブ。
「この怠けものの子犬を連れていく、ブラジーニが終わるまでこいつを目にすることはないだろうね。あたしはジョイマリタ、怠けものに腹をたててるんだ」
キャプテン・クッキーがコルブのところに行こうとしましたが、無駄でした。老女とコルブは消え去りました。みんな、その年老いた女がコルブをどこに連れ去ったかわかりませんでした。

「ぼくら、どうしたらいいんだ。卵はないし、コルブは連れていかれるし」 答えが見つからず、不機嫌な口ぶりでブラスコの洗礼名を受けたブコヴィナ・シェパードが言いました。
「ミハイに助けを求めよう、すぐにミハイを探しにいくんだ」 サルマーレが言いました。

ミハイは家の外で牛の世話をしていました。
「ミハイ、年老いた女がコルブを連れ去った、助けてほしい」 サルマーレが頼みました。
ミハイはそれを聞いて手をとめました。
「年老いた女だって、でもわたしの祖母はもう生きていないよ」
「その女はジョイマリタっていうんだ」とキャプテン・クッキー。
「ブラジーニが終わらないと、コルブを返してくれないだろう」 ブラスコが追いかけるように言い足しました。

「そりゃ、大変だ」とミハイ。
「メンドリたちが卵を産む方法を見つけなくては。ワラキア卵じゃないとな。それがないと魔法は起こせない。ブラジーニはお祝いだ、わたしたち生きている者は墓地に行って食べ物を捧げ、冗談を言って、墓の上に置いたものを食べるんだ。来世に行って戻ってくる。来世との間には『アグア・デ・サバド』という川がある。そこを渡るんだ。アパ・スンベテイ(ルーマニアの神話に登場する地球をおおう海)は卵の殻を手にイースターのとき、クルミの実を手にクリスマスのときだけ渡れる。ブラジーニでは、ブラジーニ(人間に似ていて、とても小さな生きもの)と死者を祝う。卵の殻なしには、ブラジーニも死んだ人たちも生きているわたしたちとお祝いすることができない。それはとても危険なことなんだ。コルブ・シェパードは1年間、来世にとどまってわたしたちの元に帰ってこれないことになる!」

「卵がないと、友だちをなくすことになる!」 キャプテン・クッキーが嘆きました。
「ちょっと待った、いいアイディアがあるぞ!」 アイディアマンのブラスコが興奮した口調で言いました。
「ぼくらはメンドリの女王を必要としている。ぼくらのキャプテン・クッキーがメンドリに扮装して女王を装ったらどうだろう?」
「わたしが? ニワトリに? 無理だよ、犬だもん」
「それしかぼくらには方法がないんだ、クッキー、ニワトリに扮装して、メンドリたちに卵を産んでもらうんだ」とサルマーレ。


一方、あの世にはコルブがいました。この子犬は自分の任務を理解していませんでした。コルブとジョイマリタはサバドの川を渡っていきました。土曜日だったため、サバドの水は静まっていて、ジョイマリタは卵の殻なしでそこを渡れたのです。

「おまえの任務は死者を導くこと、そうすれば死者たちは準備を整えて土曜日に川岸まで行き着けるそこで卵の殻を待って川を渡ることができる。そしてブラジーニの祭りで捧げ物を手に入れられる。黄泉の国に住む者はそこがあまりに平穏なので、愛する者たちへの責任を忘れてしまう。誰かが死者たちを導かなくては。それがおまえなんだ」とジョイマリタ。
「だけど、いったいどうやって?」 コルブが尋ねます。
「あたしがおまえにそれを教える必要はない。どうするか、おまえは知ってるはずだ。おまえの運命だからな」とジョイマリタ。

ジョイマリタとコルブはサバドの川を渡り終わりました。緑と花々に満ちたとても美しい場所でした。そこは来世でした。

「着いたな、おまえが自分のミッションを果たすよう、あたしはおまえを置いていく」
「だけど、だけど、ぼくは死者を導く方法なんて知らない」
「じゃあな」 ジョイマリタはコルブ・シェファードを残して去っていきました。

コルブは水をたたえた湖で、1匹の犬と出会うまで、すべてが混乱の極みだと考えていました。その犬は見たことのない姿をしていました。毛がまったくないのです!
「ちわっす、きみは誰? どこから来たの?」
「いや、なんで自分がここにいるのか、わからないんだ。ぼくはルーマニア犬だ。きみのことは初めて見るけど、どこから来たの?」
「この水場を渡る人を助けてる。オレを見たことがないって? きみもオレも同じ犬だけど、違う世界に住んでいる。ミクトラン*に向かう魂を管理している。ショロイッツクゥイントリという種類の犬だ。
「ショロ?ケ?」
「だからオレらは違う世界の住人だって言ってるだろう、でもどちらも黒犬だ。同じようなミッションを持っていると思う」

「ああ、ぼくには生者の捧げものを受けて、死者をそこに導く任務がある。生者は食べ物を死者に捧げるんだ」(コルブが言う)
「オレにはただ死者を黄泉の国へと導く任務があるだけさ。主人を待ってる、ここを通すためにな」(もう1匹が言う)
「すべての人間にとって、地下世界は同じじゃない」(コルブ)
「そうだ、きみはルーマニア人の世話をすればいい。オレはメキシコ由来、それぞれが違う行き先を持ってる、文化とか伝統によってな」(もう1匹)
「じゃ、きみはぼくの新しい友だね」(コルブ)
「そうだ、でもオレはここにずっといるだろう」(もう1匹)
「ぼくは家族のもとへ早く帰りたい。友だちや主人が恋しい。こわいよ。ずっとここにはいない」(コルブ)
「まあな、だけどきみはもう友だちができたじゃないか、オレだ」(もう1匹)

「たぶん、ぼくは自分の運命と向き合う必要がある、そうすれば恐れは消えるだろう」(コルブ)
「友があれば、人生の苦難はさけられる」(もう1匹)
「新しい友だちと出会うのはいつだって素晴らしい、どこから来たやつでもね」(コルブ)
「世界中に友だちができれば、恐れるものは何もない。世界というのはオレらの恐れる気持ちよりもっとずっと大きいさ」(もう1匹)
「ぼくの運命は死者とともにあることだって、勇気を持って受け入れるよ。そんなに悪いことにはならないだろう」(コルブ)

*ミクトラン:アステカ神話において九層目にある最下層の冥府であり、北の果てにある。戦いで死んだ者、雷で死んだ者、出産で死んだ女、子供のうちに死んだ者以外の死者は全てこのミクトランへ向かう。その旅は困難で4年の年月を要するが、死神であるショロトルがそれを助ける。
*ショロイッツクゥイントリ:メキシカン・ヘアレス・ドッグのこと。

Wikipedia「ミクトラン」より

2匹の黒犬が交流しているとき、子犬たちはメンドリに卵を産ませる計画を練っていました。

「ニワトリの羽や偽のくちばしとか、メンドリに扮装するためのものを集めなくては」とサルマーレが仲間たちに言いました。
「だけど、メンドリたちはぼくのことを信用するだろうか? ぼくは犬だよ」 キャプテン・クッキーは、ニワトリになどなりたくなくてそう言いました。
「あれこれ言ってる暇はないんだ、きみを女王メンドリに仕立てて卵を手に入れなくちゃ」
「わかったよ、友だちのコルブのためにやるよ」
「みんなでペットショップに行って、必要なものを手に入れよう」 ミハイが子犬たちに提案しました。
4者そろってキャプテン・クッキーを新女王に仕立てるため出かけていきました。それは簡単なことではありません、キャプテンは完璧にニワトリのように振る舞う必要がありました。みんなでミハイの軽トラックに乗り込み、ペットショップに向かいました。

店に到着して、ミハイが中に入っていきました。
「こんにちは、犬に着せるメンドリの衣装がほしいんです、それとトサカも」 ミハイが店の人に言いました。
「小さいサイズの羽付きセーターがあります、くちばしとトサカのあるフード付きです。王冠も一つ在庫してますけど、真珠のネックレスの飾り付きです」
「そりゃいいな、それをください」とミハイが店の人に言いました。
「この子犬が着るんです」 ミハイがキャプテン・クッキーを紹介しました。
「女の子サイズですよ」と店の人は言うと、衣装と王冠を取りに去っていきました。

「こちらです」 そう店の人は言うと、ミハイに持ってきたものを見せました。
「完璧です、お支払いしましょう」
「あとトランペットがいるんですが」 ミハイがお金を渡しながら言いました。
「一つだけ在庫があります。衣装と一緒に包みましょう。仮装パーティでもされるんですか?」 店の人が尋ねました。
「そうなんです。お祝いごとがあるんです。このトランペットがあれば、子犬たちは大喜びですよ」
「トランペットと衣装はこちらです」と店の人。
「ありがとう」 ミハイはお礼を良い、買ったものを受け取りました。
ミハイは子犬たちを連れ、包みを手に軽トラックに向かいました。さあ、衣装も揃ったし、トランペットで女王さま登場のご挨拶です。

「さあキャプテン、ニワトリ小屋に行こう。月曜日までにメンドリたちは卵を生まなくては。ブラジーニが始まる日だ、今日は土曜日だからな」 ミハイが早口で村の伝統について、子犬たちに説明しました。

「キャプテン、いいかい、ニワトリみたいにクワックワッって鳴くんだ、それから羽をバタバタさせる」とサルマーレが指示しました。
「わかった、覚えておく、ちゃんとしたニワトリになるから」

ミハイの軽トラックでキャプテンの扮装を終えると、メンドリたちがストライキをしているニワトリ小屋に向かいました。
「さあニワトリ小屋に入ろう」 そうミハイが子犬たちを見て言いました。
ミハイと子犬たちはメンドリ小屋に入っていきました。サルマーレがトランペットを吹き鳴らし、ミハイがサルマーレを連れて進み出て、キャプテンを新しい女王であると宣言しました。
「親愛なるメンドリさんたち、新しい女王のクッキーをご紹介します」
そうブラスコが言い放ち、サルマーレから受け取ったトランペットを吹き鳴らして女王の登場を知らせました。

「コッコッ、あなたたちの新しい女王です」 キャプテンが地面をついばみながら言ったので、誰も疑ったりしませんでした。
「あら、かわいいじゃない」 1羽のメンドリが言いました。
「このメンドリはセルビア生まれなんだ、だからちょっと違ってみえるけど。この女王を大事にしなくちゃね」 サルマーレがメンドリたちに言いました。
「セルビアからやって来た妹メンドリなら、いいですよ、わかりました」と声を揃えてメンドリたち。
「新しい女王として、わたしはブラジーニのために、卵を生むよう命令します」
ルーマニアはセルビアに親愛の情を持っていたので、そうするのは自然でしたし、メンドリの誰も、キャプテンが犬だと疑ったりしませんでした。

「さあ、卵を生みましょう、みんな」 1羽のメンドリが命令しました。
するとメンドリたちはすぐさま、卵を生みました。
「さあ、これでブラジーニの卵の用意ができた、あとはそれに絵を描くことだ、伝統的なやり方でね」とミハイ。
子犬たちは卵を集め、アンクータと一緒に絵を描くため、ミハイの母親の家に向かおうとしました。でもその前に、エネルギーを養うため、ワクワクした気持ちで卵に絵をつけるために、ミハイの家で少し眠ることにしました。

日曜日がきて、3匹の子犬とミハイはアンクータと母親の住む家に向かいました。家に着くと、みんなはブラジーニや死者のためのイースターの卵に絵をつけはじめました。
「卵に絵をつけるのは、死者たちに魔法の力を授けるためなんだ」 ミハイが子犬たちに説明しました。「つける色は自然を表している。太陽の黄色、水の青、血の赤とね」
「で、どうやって色をつければいいの?」 キャプテン・クッキーがミハイに尋ねました。
「うん、まずワックスを塗る、そうすれば卵の殻にキシザ*を使って絵が描けるんだ。わたしが手にしているこのキシザは、木と金属片でできていて、これで描くとととてもキレイに描ける。ワックスが乾いたら、染料に浸して色をつける。母さんにどうやって着色するか教わった。わたしたちは人工着色料は使わない。卵を乾かしたら、少し温めてワックスを溶かす。それでワックスが除去される。これで出来上がり。説明は終わりだ、卵に絵を描く手伝いをしてもらえるかな? 母さんとアンクータはまだ早いから寝ている、わたしたちだけで進めてはどうだろう?」
「うん、やろうやろう」 ブラスコが賛成します。

みんなは卵の絵付けを始めました。ミハイが絵を描き、子犬たちが色別の着色料に卵を漬けました。

キシツァ(キシザ)は、厚さ 0.2 mm の銅板で作られた卵用の筆記具です。使用方法:蜜蝋を器具に入れ、熱源 (キャンドル) で加熱して蜜蝋を液体状態に保ちます。細く書くには、ペンを卵に対して垂直に持ちます。

ルーマニアのショップサイトより


その頃、コルブ・シェパードは死者たちと共にいました。
「こんにちは、子犬くん。黒毛だからブラッキーって呼ばせてもらうね」 そうコルブに言ったのは、来世に住む子どもの死者でした。
「あー、いい呼び名だね」 コルブは尻尾を振って答えました。
来世は生者もうらやむような、素晴らしく居心地のいい場所でしたから、死者たちは快適で何の心配もないようでした。ブラッキーと名づけられたコルブは自分の鳴き声が幸運を呼ぶのではと思いました。それは宇宙吠えともいえるもので、コルブ・シェパード独特のものでした。

「ワァン!」 コルブが大声で鳴き声をあげると、すぐにたくさんの死者が現れ、鳴き声に従うようにきれいに並びました。「ブラジーニに備えなくては」 ブラッキーがそう指令を出しました。
死者たちはその指令に従い、すぐさまブラジーニのために集まったカラキタたちが行進を始めました。
ときはすでに月曜日、賢い子犬たちは、イースターのお祝いが始まる前に、死者への伝言として川に卵を置いていきました。子犬たちとミハイは期待に胸ふくらませて、姿を消した仲間のブラッキーがそこにいるのではないかと、墓地に向かいました。
ジョイマリタがブラッキーを墓地に連れていきました。
「おまえはミッションを果たしたから、罰は与えない。家族と会えるよう、おまえに自由を与える」
「ああ、耳を引っ張られなくてよかった!」

カラキタは小さくて奇妙な骸骨で、メキシコの死者の日の装飾に使われる。死者の日の祭壇でよく見られ、祝祭の日に愛する人の元を訪れるとされる。

Google AI overviewより

ミハイ一行がワラキアの墓地に到着し、ブラッキーを見つけました。
「ああ、みんな、会いたかったよ! ぼくはあっちの世界でブラッキーって名前をもらった」
「名前がなかったのはきみだけだったからね」とミハイが嬉しそうに言いました。
「もうきみが帰ってこないんじゃないかって」 キャプテン・クッキーが泣きながら言いました。

「友情が消え去ることはないよ、地下世界に連れていかれたとしても、友だちのことを忘れたりはしない」 ブラッキーがそう答えました。

そこで4匹と1人は墓地でブラジーニを祝いました。ミハイは子犬たち家族とお祝いするために、食べものを持参していました。その後でミハイの母親とアンクータがやって来て、死者への捧げものを前にして、全員で祖先を思いました。ブラッキーの忠実な行ないのせいで、死者たちはこの日を祝うお供えを手にできました。友がいれば、生きることはずっと楽になる、それに疑いはありません。


だいこくかずえ訳・フェルナンダ・カルバハル [ スペイン語→日本語訳 ] 校閲

つづく(7月)
第6話:<ワラキアの子犬たちと目に見えない娘たち> Los perritos de Valaquia y las mujeres invisibles
<宇宙民話> Cuentos del Universo もくじ

ルア・ノアール(Lua Noire)
メキシコ生まれ。書くことは自分の世界を捉えること。統合失調症である。そこで見る幻覚と現実の世界をリンクさせて作品を書いている。(自己紹介を読む)
フェルナンダ・カルバハル(Fernanda Carvajal)
チリ在住のジャーナリスト。スペイン語話者として翻訳をサポート。2020年以来の葉っぱの坑夫の友人。
だいこくかずえ(Kazue Daikoku)
日本在住の翻訳者・編集者。ルア&フェルナンダの支援とChatGPTをフル稼働させスペイン語→日本語訳を敢行。


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