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TRIZ(発明的問題解決理論)を解説:生成AIにより高まる汎用性

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TRIZ(発明的問題解決理論)は、革新的なアイデアを生み出すための強力なツールです。この記事では、簡単にその概要を述べ、生成AIの登場による汎用性の高まりについて記載していきます。


TRIZ(発明的問題解決理論)とは?基本と歴史

TRIZの定義と本質

TRIZ(発明的問題解決理論)は、技術革新と問題解決のための強力なツールとして、世界中で利用されています。その定義は、単なる問題解決手法にとどまらず、創造的な問題解決を支援する体系的なアプローチです。TRIZの本質は、既存の知識や経験に頼るだけでなく、矛盾を解消し、理想的な解決策を追求することにあります。数百万件以上の特許を分析し、そこから普遍的な発明原理を抽出したことが、TRIZの大きな特徴です。TRIZは、問題の本質を見抜き、創造的な解決策を生み出すための体系化された方法論なのです。

また、TRIZは、技術システムの進化には一定の法則があるという考えに基づいています。この法則を理解し、活用することで、将来の技術開発の方向性を予測し、新しい製品や技術を開発することができます。単なる問題解決ツールではなく、未来を創造するためのツールでもあると言えるでしょう。

TRIZの誕生と発展

TRIZは、1946年に旧ソ連のアゼルバイジャン・バクー出身のゲンリッヒ・アルトシューラーによって創始されました。アルトシューラーは、特許審査官として勤務する中で、発明には共通のパターンがあることに気づき、そのパターンを体系化しようと試みました。彼は、20万件以上の特許を分析し、発明の原理や矛盾解決の手法を抽出しました。

当初、TRIZはソ連国内でのみ利用されていましたが、冷戦終結後、世界中に広まりました。現在では、製造業、ソフトウェア開発、サービス業など、様々な分野で活用されています。TRIZは、その過程で様々な発展を遂げており、新しいツールや手法が開発され続けています。アルトシューラーが築いたTRIZの基礎は、今もなお、創造的な問題解決の強力な基盤となっています。

日本におけるTRIZの導入と進化

TRIZが日本に導入されたのは、1990年代後半のことです。当初は、一部の研究者や技術者によって紹介されましたが、徐々にその有効性が認識され、多くの企業で導入されるようになりました。筆者が当時の所属企業で研修を受けたのもこの時期です。日本企業は、TRIZを品質管理、製品開発、プロセス改善など、様々な分野で活用し、競争力を高めてきました。日本におけるTRIZの活用は、単なるツールの導入にとどまらず、日本独自の文化や価値観に合わせて進化しています。
*中川先生のTRIZホームページに掲載されている「日本におけるTRIZ/USITの適用の実践」、4. 日本におけるTRIZ/USITの推進/適用の事例、では導入企業の様々な状況が詳説されています。

ただ、「1997 年 TRIZ は日本で、『超発明術 TRIZ シリーズ』(日経 BP 社)で「超発明術」として紹介されたこともあり一部誤解を生んだ(趣意)」(Wikipedia)、との記載もあり、銀の弾丸と思い込む企業も少なからずあったようです。
*筆者は超発明シリーズを所有していますが、内容はきちんとTRIZを説明しているものです。

Wikipedia「TRIZ、誤解されたTRIZ」より趣意

シックスシグマでは、代表的にはモトローラ―、GEが組織へ導入し、成功している例が散見されますが、TRIZはサムスンが代表的です。例えば、「サムスンではTRIZを如何にして適用したか*」(TRIZホームページ内 Hyo June Kim (サ ムスン SAIT, 韓国)、 第4回日本IMユーザグループミーティング)では、韓国内へのTRIZの変遷が掲載されています。
*検索エンジンで「サムスンではTRIZを如何にして適用したか」と検索してもサイトで閲覧できます。

手法としては、シックスシグマとの融合も散見され、例えば、「融合が可能」[1]、「DフェーズでI-TRIZを用いて全体像を決定」[2]、「シックスシグマプロセスにクリエイティブな手法の必要性からTRIZを」[3]など、大きな期待感とともに、成果を挙げていることが伺えます。

[1] J. Hipple,  "The Integration of TRIZ with Other Ideation Tools and Processes as well as with Psychological Assessment Tools", Creativity and Innovation Management , 14, pp22, 2005. 
[2] Joseph A. De Feo, Zion Bar-EI, "Creating strategic change more efficiently with a new Design for Six Sigma process", Journal of Change Management, 3, pp60-80 , 2002.
[3] P. Gupta, "Innovation: the key To a Successful Project", ASQ Six Sigma Forum Magazine, 4, pp13-17, 2005. 

豊富な知識ベース:TRIZの強み

TRIZのもう一つの大きな強みは、その豊富な知識ベースです。TRIZは、数百万件の特許分析に基づいて開発されており、様々な技術分野における問題解決のパターンや原理が体系的にまとめられています。この知識ベースを活用することで、過去の成功事例を参考にしながら、効率的に問題を解決することができます。TRIZの知識ベースは、単なる事例集ではなく、問題解決のための理論的な枠組みを提供します。

TRIZの知識ベースは、常に更新され続けており、新しい技術や産業の発展に合わせて進化しています。TRIZの専門家は、新しい特許や技術論文を分析し、TRIZの知識ベースを拡充しています。TRIZは、過去の知識を活用するだけでなく、未来の技術革新を予測し、新しい問題解決手法を開発するためのプラットフォームでもあります。

とここまでは、TRIZの紹介とポジティブな記載になりましたが、筆者の企業では汎用的なツールとしては普及しませんでした。それは、TRIZの難解さに加え、導入コストの高さと売り込みの胡散臭さによるものです。シックスシグマも検討していたので、どちらかというと目に見える効果金額の高い後者の導入が決定されました(当時のシックスシグマもコンサルティング費用は高額なのですが・・・)。

使用しつづけていた「TRIZ-DE(未来予測手法)」

ただ、技術進化の法則を用いたTRIZ-DE(次世代以降の将来の技術システムを戦略的に発展させてゆくために用いる体系的な方法)は利用し続けていました。この手法は、未来のシナリオ作成が目的です(決して、未来を当てるものではありません)。理想解を見据え、それらが実現する未来から時間を遡る形で現在より少し先の未来のシナリオ群を作成します。*時間軸では、現在から未来を考察しているというよりは、(遠い)未来から少し先の未来を振り返っている感じ。

例えば、理想解を10年後と推定したのであれば、そのシステムを構成する部品や使用状況、及び進化の法則、及び社会情勢を考慮し、5年遡ると現在から5年後、そこから2年遡れば、現在からは3年後に相当します。

内容的には、システムを自動車に据えるとすれば;あるチームは、理想解を「走るリビングカー」としたとします。それらを構成する多数の部品(サブ システム)はどのような進化の法則で進化してくのか?進化はいくつかの段階を経るのか?社会的;インフラなどの要請は?
組み合わせを考えればキリがないですが、当該チーム(企業)には、その組織の有する理念、また所有する技術、資金力、ネットワークなど限定的な合理性が働きますので、シナリオは発散するほど多くはなりません。

もちろん、下のサイトの車両用トイレの例のようにうまくいかないかもしれません。実際、筆者が担当製品でも設計担当として実施に参加しましたが、衰退期に差し掛かる製品では幾分かの機能を向上させるのみで終わってしまいました。新たなSカーブの出現の兆しも、もしかすると、当該事業部で撤退の判断を下すのは、その事業部の消滅を意味するため、困難な意思決定かもしれません。

ただ、当該製品(=システム)の進化の法則の当てはめ、それは、構成部品や、また、当該製品が組み込まれている上位製品の進化の様子、そして変遷していく社会情勢までのマップは圧巻でした。多くの方の調査の結晶です。

ビジネススクールで、この取り組みを製品開発の一例として議論したことがありました。この時のメンバーの議論は、成果そのものより、この活動の継続による企業の無形資産の蓄積に主眼が置かれてたことは言うまでもありません。

TRIZ-DEの参考サイト
「未来の技術システムの予測 TRIZの活用」,日本TRIZシンポジウム2009.
鉄道車両トイレ空間の開発の例
*特にp41は実際の作業でも、見られる貴重な図です。
DE(次世代商品・サービスの提案、企画)と他の類似手法との比較一覧

ここで、TRIZ+生成AIと考えると、一つの疑問が浮かび上がります。TRIZのバックグラウンドがすでに特許分析を背景に体系化されたものであるならば、その理論は、大よそ、過去の研究者、技術者、設計者など多くの先人が発明してきた思考に担保されている、ということなので、TRIZの生成AIと会話できれば、より身近になるのでは?ということです。

もちろんこれまでには、Semantic TRIZと呼ばれる従来のTRIZにセマンティック技術を導入したもの;何らかの質問がなされると、自然言語処理やテキストマイニングといった技術を用いて、特許文献や技術文書から問題と解決策に関する情報を抽出し、 質問応答、矛盾解決、技術進化トレンドの分析を支援する、というシステムもリリースされています。

米Invention Machine 杜 が開発 し た Goldfire Innovatorなど

生成AIにより高まる汎用性

近年、ChatGPTやClaude、Geminiといった生成AIの進化により、TRIZの基本概念の学習や具体的な問題解決が容易になっています。従来のTRIZは、専門的な知識を持つ技術者や発明家が長年の経験をもとに活用するものでしたが、AIの登場によって、より多くの人々がアクセスできるようになりました。

特に、ChatGPT Plusで利用可能なGPTsでは、「TRIZ」と検索すると多くの専用GPTがヒットします。それらは、もちろん会話形式でこちらの困りごとを聞いてくれるため、利用が容易です。

例えば、「金属を削り、球状の均一な球を得る」ことに発明原理を用いる場合、下の記事の例では「金属粉末の製造に関することです。やすり加工では高純度で球形の金属粒子が得られません。」とのプロンプトで発明原理からの適用例が提示されます。

ブログ記事「民主化するTRIZ:TRIZベースのGPTsと汎用AIの比較検証」より趣意

TRIZの「民主化」がもたらす影響

TRIZはこれまで一般のユーザーが手の届きにくい手法でしたが、先の例のように生成AIの登場がTRIZ利用の「民主化」を進めていることがわかります。これにより;

  • 中小企業やスタートアップでも活用可能に

  • 専門知識がなくても技術革新に貢献できる

  • 教育分野での活用が拡大し、未来の技術者育成に貢献

といった変化が起きています。特に、AIとTRIZを組み合わせた教育プログラムを導入することで、若手技術者の育成が加速し、企業の競争力向上につながる可能性が高いでしょう。

TRIZの民主化に伴う課題

本記事、最後に課題を考察します。
生成AIの進化によってTRIZの利用が広がる一方で、以下のような課題が挙げられます。

AIによるTRIZの理解の限界

生成AIはTRIZの原理を参照し、適用事例を提供できますが、問題の本質を的確に捉えられるとは限りません。特に、業界特有の制約や複雑な技術課題に対しては、AIの提案が実務に即していない可能性があります。また、現場で具体的な解決策の導出に専門的な知識や経験が求められる場合。AIを活用しても、適切な解決策を導くには人間の判断が不可欠です。

教育・習熟の必要性

AIがTRIZの適用をサポートできるとはいえ、TRIZの基礎を理解しないままでは、適切なプロンプトを作成したり、AIの提案を評価したりすることが難しくなります。企業や教育機関では、AIとTRIZを併用するための新たな学習カリキュラムの整備が必要です。

知的財産権と倫理的課題

AIが提案する解決策が既存の特許技術と競合する場合、知的財産権の侵害リスクが生じる可能性があります。これは、最初の課題と似ていますが、最終的には人間の判断が不可欠なケースです。
また、TRIZの活用によって生まれる技術や製品が倫理的に適切かどうかを判断する必要があります。

企業間での活用格差

AIとTRIZを効果的に活用できる企業とそうでない企業の間で、技術開発力の格差が広がる可能性があります。特に中小企業では、AIの導入コストや適切な活用法の確立が課題となるでしょう。

TRIZの民主化は、技術開発の可能性を広げる一方で、適切な活用が求められる段階にあります。これらの課題を克服することで、AIとTRIZの融合がより実践的な価値を持つようになるでしょう。

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