【#創作大賞2025#ファンタジー小説部門】マァァァァァム!16話
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旅の途中で自分達に声をかけてきたサクと合流して以来、ボン一家の雰囲気が変わった。今まで母親と子だけで楽しかった旅に、大人の、しかもよく知らない男が仲間に入ってきたのだ。父親のアグが出征したのは3年前。ゾウは4歳、サトは1歳、ユタなんてボンのお腹の中だ。ユタの名前はボンが手紙を送って名前をつけてもらった。
「ユタ」と2文字、手紙に書かれたそれはまさしくアグの文字だ。戦争に行く前、ユキはアグから文字を教えてもらっていた。戦地から送られてきたアグの文字はボンとユキにとってとても懐かしく大切な宝物。この手紙は今もボンの守り袋に入れられている。ボン達母子の絆の象徴でもあるのだ。
そこに突然「アグの友達」と名乗る男「サク」がやってきて戦争中のアグについて語る。自分達が知らないアグの話をしてくれるサクをボンは大切に扱った。子ども達も父親の話が聞けるので、最初は喜んだ。
だが。サクが語るアグの思い出話は、戦中に必死に逃げるアグとそれを守る自分、というものばかりだった。
「えー」
と不満げなゾウに、
「おじちゃんが機転を利かせて」
と話を終わらせる。サクの話はいつも「勇敢な自分、卑怯なアグ」という構図なのだ。記憶の中の父親アグは笑顔で優しかったが、卑怯な振る舞いは一度もなかった。小さな生き物を慈しみ、家族を愛し争いを好まない、それがユキの記憶の中の父親アグだ。そう思い、ユキがぼんやりしていると、
「アグはね、戦地で武器を使わないんだよ」
と悪いことをしたかのように話を重ねる。
「ダドを悪く言うな!」
ゾウが癇癪を起こす。するとボンが、
「いや、ダドは弱かったから戦争では役に立たなかったかもな」
と言う。我が意を得たりと顔を輝かすサクに対して、
「アグはね、平和が好きなんですよ」
とニッコリする。それを見てがっかりするサク。平和が好きなんだあ!と喜ぶ子ども達。
「こんな妙な世界にした戦争で役に立たなかったってことはダドは立派だったってことだね!」
そういって豪快に笑うボンと子ども4人。ペスもキャン!と叫んで尻尾を振る。そんな時、チッと舌打ちが聞こえた気がして振り向くと、何事もなかったかのようにサクが口笛を吹いていた。ユキと目が合ったサクはニコリと笑う。
「素敵な家族だね。絆がしっかりとしている」
「ありがとうございます……」
ユキはモヤモヤとしながらサクに礼を言った。
サクは病院で必要な物資を、近隣の村から集める仕事をしており、道に詳しい。ボンから病院へ向かう道を聞くと大きく横に首を振った。
「ボンさん、その道は土砂崩れで通れませんよ」
自分がもっといい道を知っているからと、近くの村で用事を済ませてから一緒に行こう提案をする。そういう話ならと快諾するボン。
始めてサクに会った時、大人の男性が一緒だと頼もしいとボンが言った何気ない一言は、子ども達の心に未だにチクリと刺さったままだ。自分達を否定されたような気持ちがムクリと子ども達に生まれてしまったのかもしれない。ボンの役に立っているということは、子ども達にとって大きな誇りでもあったのだ。
サクは人当たりが良く、ボンの横でずっとおしゃべりをしている。いつも子ども達の安全を第一に考え、難しい顔をしているボンは、サクのお喋りを聞いている時は、少し口元がゆるんでいるような気がした。
母親の少しの変化を真っ先に感じたのはゾウ。そのため、初めからサクに敵意を丸出しにして、よくボンから「失礼だろ!」と叱られていた。サトは生来の人見知りを発揮し荷車から降りてこない。
「サト!降りて手伝え!」
ユキが怒ると「ふぇぇん」と泣き出す。するとサクがそっとユキに言うのだ。
「僕がボンさんの手伝いをするからユキ君も荷車に乗れば?」
断ってもしつこく提案するサク。そのうちボンも荷車に乗って本を読めと言い出すのでしぶしぶ荷車に乗る。しかし、ユキの目は本の文字ではなくボンとサクを追ってしまい、とても読書どころではない。サクがなにかおかしいことを言ったのだろう。
「やだよう、サクさんったら!」
バシンという音がした。
「ウグッ」といううめき声がしたので、見るとサクが地面にめり込んでいる。
「あらやだ!ごめんよ!」
地面にめり込むサクを慌てて起こすボン。
「だ、だいひょうぶれふ」
フラフラしながら抱き起されるサクを見て、ユキはアグを思い出した。アグも、面白いことを言ってよくボンに叩かれて地面にめり込んでいたのだ。そのたびに、ボンはアグを笑いながら起こしていた。
「ダド!」
と驚いて叫ぶユキに、大丈夫だよ~と言いながら笑顔を向けてくれていたアグ。アグの優しい笑顔を思い出し、ユキは目を伏せる。
マム、ダドと同じことを違う男の人にしないで。
心の中でボンに話しかけるユキ。ただ、救いなのは、助け起こす時のボンの表情に違いがあることだ。サクを起こした時のボンの顔が「しまった」となっている。ボンはアグとサクでは向ける感情が違うのだ。そう思い少し胸をなでおろすのだが。
起こされるサクの顔はアグのような「甘い顔つき」をしていた。
サクさん……ちょっとヤダな。
自然と思い浮かんだ考えを慌てて消すユキ。ダドのお友達に僕はなんてことを!打ち消そうと頭を横に振った時、偶然サクと目が合う。ニヤリ、と嫌な笑いが浮かんだ気がしてドキリとする。しかし次に見た時は、サクの顔には爽やかな笑顔しかない。人好きのする笑顔。ただ、横で、
「サク……嫌いだ」
とゾウが呟いたのをユキは聞き逃さなかった。ユタは兄2人の複雑な心境を知ってか知らずかペスの背に乗り、上機嫌。拾われた頃、毛玉のような子犬だったペスは成長が早く、いつの間にか幼児を1人乗せられるくらいの大きさに成長していた。
17話に続く
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ここからは物語と違う話をさせてください。
今日は『沖縄の慰霊の日』だということを彩夏さんのnoteで知りました。
「マァァァァァム!」でうっすらと感じているかもしれませんが、この話は「平和」への思いが込められています。この話は怪力無双の主人公ボンが戦争にとられて帰ってこない夫を、子どもと共に探す話です。
舞台は世紀末。馬鹿な戦争のせいで環境は悪化し、変化したオヤチャイやオチャカナは食料であると同時に人を襲う危険な生命体となっています。無政府状態なので野盗が村を荒し、子どもは通う学校もありません。
こんなことあるか、とばかりな設定ですが、ファンタジーなので私の好き勝手に設定しました。ボンにも度々「平和への思い」「戦争の理不尽さ」を語ってもらっています。
戦争さえなければ、ボンは怪力なだけ(?)の主婦として平和に暮らしていたはずです。狩猟の腕だって磨かれなかったことでしょう。異様な世界がボンに異能力をつけさせ、「マム無双」にしてしまいました。なので、ボンは常に平和な世を忘れない女性として描いています。
世界を見回しても争いのニュースは絶え間なく流れています。あまりに心が暗くなるので、スカッとなる冒険小説を書き始めました。面と向かって反戦を訴えないよう冒険小説を書いております。
6月23日『沖縄の慰霊の日』に平和を願う人が増えたら嬉しいです。声高に叫ぶのではなく、ゆるく優しく穏やかな気持ちを込めて「平和」について考えていただけたらと考えております。
残念ながら私は戦争の悲惨さを経験せず、平和な日本でノホホンとしているだけの人間です。私の言う平和など絵空事でしょう。だからこそこういう「#平和の樹の下で」というタグは私には必要だし、心にも染み入ったのだと思います。
彩夏さんのページにもリンクがありますが、こちらにも貼らせていただきました。無許可での掲載お許しください。
ノンポリで脳内お花畑な私ですが、理不尽な争いに巻き込まれる人々がいると思うと胸が痛くてたまらないのです。誰もが幸せでいるって当然の権利ですよね?
今日は脱力が少なく申し訳ありません。
