見出し画像

やる気がない人は、本当にいるのか。

はじめに

「あの人、やる気がないよね」

職場でよく聞く言葉です。

私はずっと、この言葉に違和感を持っていました。

入社した時から「やる気がない」人はいません。面接を通過して採用されている以上、最初は何かしらのエネルギーを持っていたはずです。

では、いつ、どこで、そのエネルギーは消えてしまったのか。

私は、その人がやる気を失っているのではなく、やる気を出せない構造に置かれているだけだと思っています


「期待する行動をしない」が「やる気がない」に変換される

職場で「やる気がない」と評価される時、実は誰もその人の心の中を見ているわけではありません。見ているのは「行動」だけです。

指示したことしかやらない。会議で発言しない。作業がゆっくり見える。

こうした「期待する水準のアクションを起こさない状態」を、手っ取り早く「やる気がない」という言葉に変換しているだけです。

その裏側には、たいてい別の理由があります。

やり方が分からず止まっている。 過去に提案を否定された経験がある。 頑張っても給料が変わらないと学習した。 何をしても無駄だという無力感を抱えている。

「やる気がない」という言葉でまとめてしまうのは、実はマネジメント側の思考停止でもあります。

「教え方が悪いのではないか」「評価制度がおかしいのではないか」という構造の問題から、目をそらすことができてしまうからです。


私が最初にやることは「紐解き」

私がこういう人と向き合うとき、最初にやることは決まっています。

その人がどんな人なのかを、丸ごと理解することです。

仕事の内容は分かっているかもしれません。

でも「Aさんはどんなスキルを持った、どんな人ですか」と聞かれて、具体的に答えられる上司は、実は多くありません。

私はそこを徹底的に紐解きます。

高校、大学時代に何を学んだか。
どんなスポーツや趣味をしていたか。
会社に入ってから何を経験したか。
どんな資格を持っているか。

製造業であれば、スキルのレベルまで具体的に整理し、誰が見ても同じ目線で理解できるデータを作ります。

これは単なる経歴の確認ではありません。

やる気を失う最大の理由の一つは、「自分がここにいる意味が見えないこと」です。

本人には、もっとできること、もっと活かせる経験があるのに、誰もそれを知ろうとしない。単調な作業だけを任され続ける。

紐解くという作業は、本人の隠れたリソースに光を当て、「あなたの全体像をしっかり見ている」という、最大の承認になります。


紐解いたものを、見える化する

紐解いたデータを、私だけが知っていても意味がありません。

チーム全体の中で、その人がどういう価値を持っているのか、その人がいなくなったらどんな影響が出るのか、そして他にどんな価値を持っているのか。これを組織の中で話します。

そしてこれは本人やチームの中にも見せます。プライベートな部分は公表しませんが、仕事の内容であれば問題ありません。

実はこの「見えない状態でなんとなく仕事をしている」ことこそが、「やる気がある・ない」「必要・不要」という極端な話を生み出す原因の一つだと思っています。

ただ、私が見てきた中で、似たようなことをやっている人でも、資格や経歴を羅列するだけで「ふーん」で終わってしまうケースがあります。

私が踏み込むのは、もう一歩深いところです。

本人の素質そのものです。

「なぜその資格を取ったのか」「どんな性質がこの人にあるのか」というところまで踏み込むと、そこにストーリーが生まれます。

すると周囲の反応が変わります。

「そうなんですか、知りませんでした」

この一言が出た瞬間、その人は「やる気のない人」という記号ではなく、「そういう素質を持った人」として、初めて正しく認識されます。


配置が変わると、見る目が変わる

素質が見えてくると、今までとは違う仕事を任せられるようになります。

その仕事で本人が無理なく成果を出せた時、周囲はこう感じます。

「彼がダメだったのではなく、今までの仕事と合っていなかっただけだ」

これは説得ではなく、目の前で起きる現象としての納得です。

そして、これが一番大事なところですが、「やる気のない人」というレッテルを貼っていた周囲の人たちが、少しずつ関わり方を変えていきます。

無理に「彼を理解しろ」と言う必要はありません。

本人が成果を出せる場所を見つけ、それを見せるだけで、周囲は自然と動き始めます。


やる気は、引き出すものではなく、発揮できる構造を作るもの

ここまでの話をまとめると、私が大事にしているのはこういう順番です。

その人を丸ごと紐解く。
紐解いたものを、組織の中で見える化する。
素質に合った配置に変える。
周囲の見る目が、現象として変わっていく。

やる気というのは、励まして引き出すものではありません。

その人がもともと持っている力を発揮できる構造を、一緒に作っていくものだと思っています。

「あの人、やる気がないよね」と言われている人がいたら、その人の心を疑う前に、その人がどんな人なのか、本当に紐解かれているかを、まず確認してみてはいかがでしょうか?


YEES FACTORY|治部康臣(やすにぃ) 製造組織の構造改革者

製造業の構造的な課題でお悩みの経営者・社長の方、 まずはお気軽にご相談ください。


いいなと思ったら応援しよう!