「なんでその工法、要るの?」が、コストを半分にした。
はじめに
ものづくりの世界には、最初にその技術を確立した人たちと、その後を追って改良していく人たちがいます。
最初に道を作った人たちは、0から1を生み出します。後を追う人たちは、1を100にしていきます。
私は、後を追う立場で働くことが多くありました。そして、その立場には、最初に道を作った側にはない大きな武器があると思っています。
最初に技術を確立した人たちは、特許を出します。これは権利を守るための盾ですが、見方を変えれば「先に取り組んだ人たちの苦労が全部書かれた攻略本」でもあります。
私はその攻略本を読みながら、いつも一つのことを考えていました。
「この工法、本当に要るのか?」
「当たり前」を疑うところから始まる
ある製品で、決まった工法を使うことが「当たり前」とされていました。
このスペックを達成するには、この工法が必ず必要だ。誰もがそう思っていました。
でも、その工法には問題がありました。
不良品が一定数出る。機械のメンテナンスにすごく時間がかかる。
私はこういう話を聞くと、虫唾が走るタイプの人間です。究極のめんどくさがりなので、「めんどくさいなら、なくしてしまえばいい」と本気で考えます。
そこで、現場や設計の人に問いかけました。
「なんで、その工法要るの?」
「頭おかしいんか」と言われた話
すると、こんな答えが返ってきます。
「このスペックを達成するためには、この工法を使うしかない」
私はそこでさらに踏み込みます。
「その工法を使わずに、このスペックを達成する方法があるとしたら?」
そうすると、決まってこんな反応をされます。
「コイツ何言ってんの?頭おかしいんか」
無理もありません。先に取り組んだ人たちが積み上げてきた「当たり前」を、いきなり「いらないんじゃないか」と言い出す人間がいたら、誰でもそう思います。
でも、私には理由がありました。
その工法をなくせば、不良品が減る。メンテナンスの手間もなくなる。良いことばかりです。
「実現できるかどうか」については、こう考えていました。
昔は出来なかったことも、今の技術なら出来るかもしれない。技術は時間が経てば進化します。先に取り組んだ人たちが「これしかない」と思っていたのは、あくまで当時の技術水準での限界に過ぎません。
その限界を、今の技術で代入し直してみる。それだけのことです。
「え?出来るの?」
検討を進め、課題を一つひとつクリアしていきました。
最終的に、その工法をなくした状態でスペックを達成することができました。
周囲の反応は、ものすごく分かりやすかったです。
「え?出来るの?」
あれだけ否定的だった人たちが、結果を見た瞬間に表情を変えました。
不良品が減り、メンテナンスの工数も減り、コストも下がる。良いことばかりが、一気に現実になりました。
一人の手柄にはしない
ここで一つ、大事にしていることがあります。
これは私一人でやったことではありません。実際にスペックを達成するまでには、色々な課題がありましたし、それを一緒に乗り越えてくれた人たちがいます。
「みんなの力でスペックを達成した」ということで、私はそれで良しとしています。
正直に言えば、個人的にはまだ改善の余地があるとも思っています。「自分なら、もっと圧倒的なスペックで達成できたな」という気持ちも、心の中には残っています。
でも、それを声高に言う必要はありません。チームの成果として着地させることの方が、長く現場で信頼を得ていく上では大切なことだと思っています。
「芸がない」というプライド
最初にそのやり方を確立した人たちのやり方を、そのまま真似するのは簡単です。
でも、私はそれを「芸がない」と思っています。
前例をなぞるだけなら、それはエンジニアリングではなく、コピー作業です。
技術は思考と工夫で何とでもなる。最初に道を作った人たちが築いた「当たり前」を疑い、本当にそれが必要なのかを問い続けることが、後から追いかける立場にしかできない戦い方だと思っています。
今の会社で、こんなことを言うのは私くらいかもしれません。
でも、決められた手順をただ正確に守るだけなら、それはオペレーターの仕事です。仕組みそのものを疑い、より良く、より楽な形に変えていくこと。それこそが、エンジニアの本当の役割だと思っています。
最後に
「なんでその工法、要るの?」
このシンプルな問いだけで、複雑に積み上げられてきた「当たり前」が崩れることがあります。
複雑にすることは技術でできます。シンプルにすることには、思想が必要です。
コスト削減も、不良削減も、結局は同じところに行き着きます。
当たり前を疑い、本質だけを問い続けること。
それが、私がものづくりの現場でずっとやってきたことです。
YEES FACTORY|治部康臣(やすにぃ) 製造組織の構造改革者
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