なぜ有名人のビジネスは、3年で消えるのか。
はじめに
最近、芸能人がコーヒーやお茶のビジネスを始めるケースをよく見かけます。
自ら焙煎を学び、産地にこだわり、SNSで発信する。 その熱量と挑戦する姿勢は、素直に素晴らしいと思います。
ただ、長く続けるために必要な視点が抜けているケースが多いと感じています。
製造現場で15年以上、事業の立ち上げから廃業までを見てきた立場から、 建設的な視点でお伝えしたいと思います。
「ファンへの販売」と「事業」は違う
多くの有名人ビジネスは、スタート時点では「ファンへの販売」として機能します。
商品そのものへの評価というより、 「本人との繋がり」や「応援したい気持ち」が購買の動機になっています。
これ自体は悪いことではありません。 サイドビジネスとして「ファンとの交流ツール」にするなら、それで十分です。
ただ、それを「事業」として長く続けようとする時に、 構造的な問題が生まれてきます。
3年で消える3つの理由
理由①:属人化がビジネスのゴールになっている
本来、事業を継続させるには「属人性をいかに排除して仕組み化するか」が肝心です。
でも多くの有名人ビジネスは、「本人のアイコン化」が唯一の付加価値になっています。
本人が飽きた瞬間、他の仕事が忙しくなった瞬間、供給が止まります。
「本人が関わっているから価値がある」という前提は、 本人がいなくなった瞬間に崩壊する構造です。
理由②:空中戦だけで地上戦がない
有名人が持つフォロワーという「集客力」は、ビジネスにおいて強力な武器です。
でも、これは「ロケットの第1段」に過ぎません。
第2段、第3段と切り替えて軌道に乗るための「燃料」、 つまり「本人の知名度がなくても売れる理由」が設計されていないケースがほとんどです。
「見せ方がうまい」ことと「価値が継続する仕組みがある」ことは全く別物です。
理由③:「誰に売るのか」がぼやけている
「美味しいコーヒーを学んできました」 「良い産地のお茶を仕入れました」
これは自分側のインプットの話であって、顧客に提供する価値の話ではありません。
どんな人に、どんな場面で、どんな価値を届けたいのか。
この問いに答えられないまま走り続けると、 「よく分からないけどずっと走っている」状態になります。
「誰でもいいから飲んでほしい」は、結局「誰にも刺さらない」と同義です。
成功した事例
一方で、同じ「有名人ビジネス」でも、 本物の事業として成立させた人がいます。
ある元アイドルが立ち上げた女性向けアパレルブランドです。
彼女は現役時代から、ファッション誌のモデルとして女性ファンを着実に獲得していました。 卒業後に女性向けアパレルを選んだのは、偶然ではありません。
「誰に売るか」が、最初から明確だったのです。
早い段階で経営のプロをチームに入れ、 自分がやるべきこと(クリエイティブ)と、組織として回すべきこと(仕組み)を明確に分けた。
結果、「あの人のブランドだから買う」ではなく、 「このブランドのデザインと品質が好きだから買う」という顧客が生まれました。
ファン層の分析と事業設計が最初から一致していた。
だから、本人がいなくても価値が残り続ける構造を作れたのです。
成功と失敗を分けたもの
この違いは何だったのか。
シンプルに言えば、「誰に、なぜ、どうやって売るのか」を徹底的に詰めていたかどうかです。
失敗するビジネスは、「なぜやるのか」「何を売るのか」という部分は情熱を持って語れます。
でも「どうやって継続的な価値を生むか」「利益が出る構造になっているか」に踏み込んだ瞬間、解像度が一気に下がります。
「頑張り」や「センス」という曖昧な言葉に逃げているうちは、 それは事業ではなくサイドビジネスの域を出ません。
製造業でも同じことが起きている
これを読んで「他人事だ」と思った経営者の方に、一つ聞かせてください。
実は、製造業の現場でも全く同じ構造の問題が起きています。
「優秀な職人がいるから品質が保てる」
「あの人がいないと現場が回らない」
「社長のカリスマで会社が動いている」
これは全て、「本人の知名度で回っているコーヒービジネス」と同じ構造です。
人が変わっても、社長が倒れても、機能し続ける仕組みがあるか。
有名人のビジネスを「他人事」として笑えない経営者は、意外と多いのではないでしょうか。
最後に
「本人がいなくなっても価値が残り続けるか」
この問いは、有名人ビジネスだけでなく、全ての事業に問われています。
あなたの会社は、この問いに答えられますか。
YEES FACTORY|治部康臣(やすにぃ) 製造組織の構造改革者
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