日本の魅力は、なぜ世界に翻訳されないのか。
はじめに
日本の魅力について話せる人は、たくさんいます。
食、伝統工芸、製造業の技術、独自の文化。 「日本にはすごいものがある」と、誰もが熱く語れます。
でも、それを海外に伝えようとした瞬間に、こう言い始めます。
「私には無理です」
これが、今の日本のいちばん大きな問題だと思っています。
K-POPが教えてくれたこと
K-POPが世界を席巻しているのは、偶然ではありません。
韓国は人口が約5,000万人で、国内市場だけでは投資を回収できない。だから最初から「世界で売る」ことを前提に、練習生制度・多国籍メンバー・世界配信のインフラを整えました。
一方で日本は、世界第2位の音楽市場を持っています。国内だけで商売が成り立ってしまうから、海外に出る切迫感がなかった。
でも私は、これを「日本が国内で満足しているから」とは思っていません。
「行きたいけれど、行き方が分からないから、国内に留まるしかない」というのが、現場のリアルだと思います。
満足しているのではなく、満足せざるを得ない状態になっているのだと。
J-POPとマンガが世界に届いた理由
面白いのは、J-POPもマンガも、最初から海外を狙って作っていないことです。
新しい学校のリーダーズ、藤井風、YOASOBIのような人たちが世界でバズったのは、韓国のように国策で仕掛けたからではありません。
「日本独自の文化を、そのまま突き詰めて作った」ものが、海外の人に「聴いたことがない、でも刺さる」という感覚を生んだからです。
これはマンガと同じ構造です。スラムダンクの踏切も、君の名はの飛騨高山も、狙って作った観光地ではありません。物語の背景にあるリアルな日本だったから、海外の人が「ここに行きたい」と感じた。
つまり、「中身の純度が高いものが、結果的に世界に届く」という流れです。
ではなぜ、日本は「次の一手」が打てないのか
K-POPが勝てない部分で、J-POPやマンガは強い。
それは分かっています。
でも、日本はその後が下手です。
藤井風の「死ぬのがいいわ」がタイのTikTokから突然バイラルした時、日本側はしばらく何もできませんでした。火がついているのに、ガソリンを注ぐ人がいなかった。
「クールジャパン戦略」として政府が仕掛けようとした時も、ほとんど効果がありませんでした。上から計算して作ったものは、ファンに「下心が透けて見える」からです。
問題は、「仕掛ける」のが下手なのではなく、「火がついた後に、誰かが裏で増幅させる仕組み」がないことです。
「自由な創造 × 意図的な裏方」という戦略
私が思う、日本のエンタメと産業が世界を攻めるための本来の形は、これです。
クリエイターや職人には、これまで通り自由に作ってもらう。
その後、「裏方」が動く。
何が世界で受けそうかを見極め、海外の文脈に合わせて言葉とビジュアルを「翻訳」し、自然現象のように世界の棚に並べていく。
日本語で「創業100年、職人が真心を込めて作りました」と書いても、海外では「で、何がすごいの?」と終わります。
同じ商品でも、「三ツ星シェフが絶賛した、グルテンフリーのラグジュアリードリンク」という海外の文脈で語れば、全く違う反応が生まれます。
中身を変えるのではなく、「届け方」を相手の文脈に合わせて変える。それだけでいいのです。
これは製造業にも言える話
K-POPとJ-POPの話をしましたが、この構造は製造業でも全く同じです。
日本の製造業は、中国などかつて日本が技術を伝えた国に追い越されたと言われています。でも「技術力」で負けたのではなく、「売り方の戦略」で負けたのだと思っています。
今でも、他国には真似できない精密加工や素材技術を持っている企業が、地方に眠っています。
その技術者に「海外に売り込みに行け」と言っても無理な話です。
でも、「技術者は世界一の部品を黙々と作る。裏方が、欧米の最先端の宇宙開発や医療ロボットの文脈に結びつけて、高値で売り込む」という形なら、技術者は何も変えなくていい。
「攻め方が分からない」というのは、技術者の問題ではなく、この「裏方の翻訳者」がいないという構造の問題です。
最後に
文句を言うのをやめて、誰かが動くのを待つのをやめて、相手の文脈に合わせた言葉で、こちらから仕掛けていく。
日本の魅力は、まだまだ眠っています。
それを世界に届けるために必要なのは、国策でも大きな予算でもなく、「自然現象に見える流れを、裏で意図的に作っていく人」の存在だと思っています。
YEES FACTORY|治部康臣(やすにぃ) 製造組織の構造改革者
製造業の構造的な課題でお悩みの経営者・社長の方、 まずはお気軽にご相談ください。
