日本の製造業の本当の課題。
はじめに
先週、こんな記事を書きました。
「日本の製造業は、個人の努力では復活しない。」
物差しが壊れている。腕のいいエンジニアが評価されない構造的な問題がある。そう書きました。
先日、あるTV番組を見ていて、改めてその確信が深まりました。
日本を代表する某製造業大手の密着取材でした。
違和感の正体
番組を見ながら、ずっと違和感がありました。
危機感を語る幹部たち。前例のないスピードで開発を進めようとする現場。それ自体は間違っていません。
でも、何かがおかしい。
しばらく見ていて、気づきました。
「どうやって実現するか(How)が決まっていないのに、締め切りだけが先に走っている」
現場が映っていたのは、スケジュールに追いかけられている姿でした。
熱い現場ではなく、答えのないまま急かされている姿でした。
中国の現場を知っているから分かること
私は以前、中国の製造現場で仕事をしていたことがあります。
言い方が悪いかもしれませんが、中国は「当日決めて、当日動き始める」国です。
判断のスピードが、日本とは次元が違います。
その現場を知っているからこそ、TV画面を見ながら思いました。
「これでは追いつけない」
日本には複雑な承認ルートがあります。
何週間、何ヶ月もかかる意思決定のプロセスがあります。
それ自体は安全性や品質を守るための仕組みとして意味があります。
でも、その仕組みを見直さないまま、スケジュールだけを「前例のないスピード」に設定しても、現場が詰まるだけです。
「健康経営」が現場を縛っている
もう一つ気になったことがあります。
近年、「健康経営」「コンプライアンス」「安全第一」という言葉が、製造業でも広がっています。
本来は正しい考え方です。
でも現場では、これらの言葉が「決定を遅らせるための言い訳」として使われているケースがあります。
「リソースがない」「健康経営の観点から無理をさせられない」
その結果、日程が守れない。
でも日程は変わらない。現場だけが追い詰められる。
これは現場の問題ではありません。
「スピードを上げる」という目標と「現状のプロセスとリソース」の間を埋める責任を、誰も取っていないという構造の問題です。
問題はHowの不在
TV番組の中で、私が最も気になったのはここです。
「どうやって前例のないスピードを実現するか」という具体的な答えを、誰も持っていないように見えた。
新興メーカーが速いのは、現場が頑張っているからではありません。
速く動ける「仕組み」を最初から作っているからです。
プロセスを変えずに、目標だけを変えても、現場は根性と残業でカバーするしかなくなります。
そしていつか、その歪みが品質問題や不正という形で噴き出します。
これは某企業だけの話ではありません。
日本の製造業全体が抱えている構造的な問題です。
別組織を作っても、変わらない理由
「外部の視点を取り入れるために、別組織を作った」という動きもあります。
でも、別組織が「道具」を作っても、本体の「文化」を変える権限は持っていません。
出島を作っても、本体との繋ぎ込みができなければ、組織の本質は何も変わりません。むしろ、「ソフトはあちらに任せた」という分断が生まれ、現場はさらに混乱します。
これもまた、社内から変えることの限界を示しています。
では、どうするのか
私が出した答えは、「社内から変えることの限界を認める」ことです。
社内にいる人間が「このプロセスは無駄だ」と言っても、そのプロセスを作ってきた人たちからの反発を受けます。
上層部が「前例のないスピードは無理だ」と言い切ってしまえば、それ以上の議論は生まれません。
だから私は、外から変えることを選びました。
構造を変えることができるのは、その構造の外にいる人間だけだと思っています。
先週書いた旗記事と、今回の話は同じ場所に行き着きます。
物差しが壊れているなら、物差しを作り直す。
プロセスが壊れているなら、プロセスを設計し直す。
それが、YEES FACTORYが存在する理由です。
YEES FACTORY|治部康臣(やすにぃ) 製造組織の構造改革者
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