なぜ日本の製造業は、自社の強みを言語化できないのか。
はじめに
展示会のブースに立っている人に、こう聞いてみてください。
「御社の強みは何ですか?」
多くの場合、こんな答えが返ってきます。
「高品質な製品を提供しています」 「長年の実績と技術力があります」 「お客様のニーズに柔軟に対応できます」
どこの会社でも言えそうな言葉ばかりです。
これは、その人が悪いのではありません。
構造的に、強みを言語化できない状態になっているのです。
私が展示会でやっていること
少し変わった話をします。
私は展示会に行くと、自分の会社でもないのに、 他社のブースに向かってどんどん提案をしていきます。
「この技術なら、こういう見せ方の方がもっと響きますよ」 「こういう業界の人に話した方が刺さると思います」 「このポイントを前面に出した方がいいんじゃないですか」
最初は相手もびっくりします。 自分が売り込みに来たはずなのに、逆にどんどん提案されるわけですから。
でも、一つひとつ丁寧に説明していくと「なるほど」となる。 最後には「色々教えていただいてありがとうございます」と言われて終わります。
これは展示会だけではありません。 営業に来た人間にも同じことをします。 オンラインのプレゼンでも同様です。
なぜこんなことができるのか。
構造の核が見えているから、如何様にも話ができるのです。
「何を売るか」ではなく「なぜやるのか」
多くの製造業が強みを語る時、こう語ります。
「高精度な部品を作っています」 「短納期に対応できます」 「品質管理が徹底しています」
これは全部「何をやっているか」の話です。
でも、本当に人の心を動かすのは「なぜやっているのか」です。
なぜこの仕事を続けているのか。 何のためにこの技術を磨いてきたのか。 この会社は、誰のために存在しているのか。
この問いに答えられた時、「高精度な部品を作っています」は、 単なるスペックの説明ではなく、 「誰かの困りごとを解決するための技術」として伝わります。
強みが見えない本当の理由
日本の製造業には、世界に誇れる技術が溢れています。
でも、それを言葉にできない。
理由は二つあります。
一つ目は、当たり前になりすぎて見えなくなっているからです。
30年かけて積み上げた加工技術も、 毎日やっていれば「普通のこと」に見えます。 自分たちが当たり前にできることが、他社にはできないことだと気づかない。
二つ目は、「誰のための強みか」が定義されていないからです。
強みとは、常に「誰かにとっての価値」です。
「高精度な加工ができる」は、単なる事実です。 「自動車部品メーカーが抱える0.001mmの精度要求に応えられる」は、強みです。
顧客が誰で、その顧客がどんな課題を持っていて、 自社がその課題に何を提供できるか。
この問いが明確になった時、初めて強みは言葉になります。
強みの言語化は、外から見ないとできない
当たり前になりすぎて見えなくなっているものを、 自分たちだけで発見するのには限界があります。
効果的なのは、外部の視点を入れることです。
「あなたの会社で、他社には真似できないことは何ですか?」 「顧客からよく褒められることは何ですか?」 「なぜこの仕事を続けているのですか?」
こういった問いを外部の人間が投げかけることで、 当たり前だと思っていた強みが、突然見えてくることがあります。
私が展示会で他社のブースにどんどん提案できるのも、 外から構造の核を見ているからです。
中にいる人には見えないものが、外からは見えます。
最後に
日本の製造業の技術力は、世界で認められています。
でも、その価値が正しく伝わっていないために、 受注できなかった仕事、出会えなかった顧客が、確実に存在します。
強みを言語化することは、自慢することではありません。
正しい相手に、正しく価値を届けることです。
あなたの会社の「なぜ」は、言葉になっていますか。
YEES FACTORY|治部康臣(やすにぃ) 製造組織の構造改革者
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