定性的な情報と定量的なデータを集め、シナリオを作成し、キャスティングをして、自分たちの地域の医療のあり方を議論し決定していくしかない
県立宮崎病院のグランドオープン記念式典がありました。
そのときの地域医療セミナーで、株式会社日本経営の角谷哲部長の講演がありました。
角谷部長は、総務省地方公営企業経営アドバイザーもされています。
演題は、「人口減少・高齢化社会における地域医療の再構築」です。
(株)日本経営はいわゆる医療コンサル会社で、病院支援を1703件実施しており、また28府県の地域医療構想に関与しているとのことでした。
潰れかけの病院の事務長をやって、再建させたこともあるそうです。
10年前は、病院の関係者に、地域のことを考えないといけないと言っても誰もやってくれませんでした。
今は、関係者には健全な危機意識があって、改革をてがけないといけないという感じを持っているそうです。

地域医療構想は、2013年に134万床あった病院のベットが、2025年には152万床が必要になると想定したことから始められた。
これを115万床~119万床に抑えることが目標だった。
財務省のロジックでは、病床があるから費用が増えるので、病床を押さえようとした。
こうした費用を押さえるというお金の観点からと、150万床に増やしても、それを支える労働力が無いという労働の観点からも進められた。
今年は目標年の2025年だが、病床数は119床となり、目標は達成された。
この間に、実は、医療体制の効率化が図られている。
入院病床については、例えば看護師1人に対して患者7人という基準がある。
看護師が1人減れば、病床数は7床減る。
昔は約300万人生まれた。松阪世代は150万人。昨年は70万人。
つまり20年後は、70万人しかいない。看護師になる人が減れば、病院を支える人はいなくなる。
現在の一次二次救急医療は、60歳代のドクターが昭和魂で支えている。
現在の病院の当直は、50歳代のナースが昭和魂で支えている。
高齢のドクターは引退する。50代のナースの後釜がいない。
引退した60歳代の看護師は、病棟の当直よりも、孫の面倒を見たい。
病院職員の高齢化は、病院経営の危機。
ある日突然、病院が無くなる。地域医療が崩壊する。

病床が減った理由は3つある。
①DPC制度の創設で急性期医療の効率化が図られた。
DPC制度により在院日数を短縮すると病院に利益が出る仕組みが導入されて、急性期病床の回転率が向上した。
②地域包括ケア病床の創設で、60日以内に退院する地域包括ケア病床の普及で、長期入院が減った。
③医療から介護へ転換した介護医療院の創設で、医療保険適用の医療療養病床が、介護保険の介護医療院へと転換がすすんだ。
これからは、在宅医療サービスが手厚くなる。
医療の需要を抑えるための、予防的なケアが広がる。
介護施設での誤飲性肺炎の予防に、施設内の口腔ケアや、外来での嚥下リハビリが実施される。
また、うっ血性心不全が重症化しないように、救急搬送で三次救急に運ばれないように、外来医療での適正な治療が重要になる。
サ高住や有料老人ホームは、地域とのつながりがなかったが、地域の自立支援サービスの利用も必要になる。

需要が多く供給が少ないという状況は、本来的には病院は経営をしやすい。
しかし、そうならない理由は3つある。
①価格転嫁できないこと。病院の収入源である診療報酬は国が定めており、物価や人件費の上昇分を価格に迅速に転嫁できない。
②ポジショニングの問題。局所的な需要争奪戦に巻き込まれている。競合相手が多いレッドオーシャンで戦っている。
③人員不足。看護師不足で保有病床を最大限稼働できない。PT不足でリハビリができない。週7日中5日しかリハが提供できない。
自治体病院は条例で定数が定められており、人員増に柔軟に対応できない。
非効率な医療体制の地域は、生き残れない。
地域で生き残るためには、病院間で役割分担をするしかない。
臓器の数=診療科の数、になる。臓器を内側から診るのが内科、外側から手術するのが外科。
全ての臓器を診るためには、ざっくり30診療科が必要になる。
医師は1人8時間労働とすると、24時間対応すると、3人は必要。
3人×30診療科 = 100人
ベッド数は400床の規模が必要。
24時間、365日、全ての臓器を診る病院のイメージは、だいたいこういう感じとなる。
診療科数30、医師数100人、ベッド数400床。
病院がカバーする人口は、約20万人。
宮崎県には、病床数が400床以上の病院は、宮崎大学附属病医院、県立宮崎病院、県立延岡病医院の3つ。
宮崎県では中小病院の数が多い。さらに似たような病院が多い。キャラかぶりしている。
臓器別で役割分担がはっきりしているのは、循環器の宮崎市郡医師会病院、乳がんのさがら病院。
宮崎県の病院には、リハビリ職が極めて少ない。
1人の患者に20分リハを指導すると、患者入れ替え時間が無駄になる。リハ時間を長くすれば、入れ替え時間が減る。
急性期からリハビリをやると治療効果があがるし、報酬も上がる。リハビリ戦略を見直す必要がある。
県内の病院の集約化、効率化を図る必要がある。
並行して在宅医療をきちんとしないと、病院だけでは支えられない。
人口減の中で、人の取り合いになるだけ。
このままいったら、全員が共倒れになる。
病院間の役割分担をはっきりする必要がある。
医療関係者は、崖っぷちにいることを共有すること。
定性的な情報と定量的なデータを集めて、シナリオを作成して、キャスティングをして、自分たちの地域の医療のあり方を議論して、決定していくしかない。
実際の病院の統合再編においては、各主体がこのままではダメだという想いを共有して、各主体が何かを手放すこと、執着しないことが、重要になる。

耳の痛い話でしたが、待ったなしです。
ノストラダムス松田教授、サージャリー医務技監の話と合わせた、地域医療構想三部作は重要だと思いました。
たまたまスーパームーンが出ていたので、角谷部長は、ムーンコンサルト部長と命名させていただきます。
「月に代わってお直しよ」
恐縮です。
ハベレオ通信のノストラダムス、サージャリー、ムーンコンサルトの三部作を読めば、2040年をターゲットとした新しい地域医療構想が理解できます。
