アンパンマンは公衆衛生の漫画である
松下幸之助さんは、パナソニックの創業者です。
コンビニに、松下幸之助さんの「道をひらく」という本が売られていました。
後ろのページを見たら、昭和43(1968)年に初版本が出たようで、手に取った本は2023年に出た第282刷でした。
平成元(1989)年に94歳で亡くなっていますが、いまだに売れ続けているところに驚かされます。
松下幸之助さんは、会社経営の傍らで、昭和21(1946)年に「繁栄によって平和と幸福を = Peace and Happiness through Prosperity」
のスローガンを掲げてPHP研究所を創設しました。
PHP研究所の機関誌「PHP」の裏表紙に、短文を連載しました。
この短文の中から121篇を選んでまとめたものが、「道をひらく」です。
その短文について、松下幸之助さんは、次のように語っています。
その一篇一篇は、時にふれ折りにふれての感懐をそのまま綴ったものであるが、この中には、身も心もゆたかな繁栄の社会を実現したいと願う私なりの思いを多少ともこめたつもりである。
一国民、一庶民としての私のこの思いが、何らかのご参考になるならば望外の幸せである。

生と死
人生とは、一日一日が、いわば死への旅路であると言えよう。
生あるものがいつか死に至るというのが自然の理法であるかぎり、ものみなすべて、この旅路に変更はない。
ただ人間だけは、これが自然の理法であることを知って、この旅路に対処することができる。
いつ死に至るかわからないにしても、生命のある間に、これだけのことをやっておきたいなどと、いろいろに思いをめぐらすのである。
これは別に老人だけにかぎらない。青春に胸ふくらます若い人が、来るべき人生に備えていろいろと計画するのも、これもまた死への準備にほかならないといえる。
生と死とは表裏一体。だから、生の準備はすなわち死の準備である。
死を恐れるのは人間の本能である。だが、死を恐れるよりも、死の準備のないことを恐れた方がいい。
人はいつも死に直面している。それだけに生は尊い。
そしてそれだけに、与えられている生命を最大に生かさなければならないのである。
それを考えるのがすなわち死の準備である。そしてそれが生の準備となるのである。
おたがいに、生あるものに与えられたこのきびしい宿命を直視し、これに対処する道を厳粛に、
しかも楽しみつつ考えたいものである。
公衆衛生や医療に通じるものがあると思って、私はこの文章を読みました。
身も心もゆたかな繁栄の社会を実現するためには、人々の健康を確保する公衆衛生やセーフィネットとなる社会保障や社会福祉の仕組みが不可欠です。

NHKの朝ドラで連載中の「あんぱん」では、ついについにアンパンマンが雑誌に掲載されました。
最初は漫画ではなく、読み物と挿絵でした。
掲載された雑誌が、なんとPHPだったのです!
1969年10月号のPHPの「こどもの絵本」という特集号に掲載されました。
アンパンマンは、スーパーマンやバッドマンのように空を飛びますが、まったくかっこよくありません。ダサすぎです。
ドラマでは、当然のように雑誌の編集者が、ぶかっこうな小太りのキャラにダメだしをします。
「この主人公、できれば少し減量できないですか。やはりヒーローに太ったおじさんは……」
「できません。個性ですから」と答えたのは、一緒にいたやなせたかしさんの妻ののぶさんです。
この一言で、編集者は腹をくくりました。
「そこまで仰るなら、載せてみましょう!」
こうして掲載されたアンパンマンを見た、やなせたかしさんの母は笑いがとまりません。
「そんなに面白いですか?」とのぶさんが聞きました。
「最悪ねー。マントもボロボロで、頭巾も買えないくらい貧乏なんでしょう?
おまけにハンサムじゃないし、汗っかきだし、あんまりお風呂に入っていないみたいだし……」
「そこまでーっ!」
のぶさんが大声で叫びました。
かようにアンパンマンの出だしは、最悪の評価から始まりました。
よくぞよくぞ、まあPHPの編集者は、腹をくくって掲載をOKしたものだと思います。
この情報は、百地百衣さんの記事を引用させていただきました。
百地さんの文章を読むと、映像が自然に浮かびあがります。
さて、敵味方関係なく、お腹を減らした人にパンを配って回るというアンパンマンは、
「身もこころもゆたかな繁栄の社会を実現させる」というPHPの方針に、マッチしていたのかもしれません。
その後、絵本となったアンパンマンは、あいかわらず大人からの評価は最悪でした。
しかし、絵本は、幼稚園や保育所で取り合いになってボロボロになってしまったという報告が次々に出版社に入って、評価が逆転します。
真のユーザーは、子どもたちだったのです。
その結果、アニメ化され、国民的なヒーローとなりました。
さらに言えば、アンパンマンは公衆衛生の漫画です。
その証拠に、バイキンマンという衛生の敵が登場します。
結論は、公衆衛生の漫画は売れる!
かなり強引にまとめたような気がしますが、まあ真実ですので。
気にしない、気にしない。気にしない。
すき、すき、すき、すき、愛してる。
恐縮です。
これはアニメ「一休さん」のフレーズでした。
