メキシコの麻薬組織が、中国から原料を輸入加工してアメリカで消費されるというルートがあり、日本がトランジットされている
男子バレーの全日本の選手が大麻を所持していたということで逮捕されました。
男子バレーは、本当に強くなったので、本当にショックです。
大麻は外国では普通だから、日本も許可しろという声がありますが、それは、薬物乱用の恐ろしさを知らないからです。
いったん蔓延したら止めることはできません。
大麻は、あらゆる薬物乱用の世界の入り口です。
そうした世界の入り口を設けることは、公衆衛生従事者としては断じて許せません。
特に、麻薬取締事務所(マトリ)のある関東信越厚生局に勤務していたものとしてもダメ・ゼッタイです。
マトリは、終戦後に、米国のGHQが日本での麻薬蔓延を防止するために設けた組織です。
麻薬を取り扱う事の多い医療機関や医療関係者に極めて親和性が高い薬剤師を主力とした組織です。警察とは別に厚生省内に設置しました。

我が国では、麻薬の蔓延の危険性が上がった時代があります。
一つには、江戸時代の末期で、外国との通商を開いたときです。
このときは、アヘンが国内に流入した荒廃した清国の例を知っていた幕府指導者により、蔓延防止が図られました。
最初に交渉したのが米国だったので、運が良かったです。アヘンを交易の主力商品にしていた英国だったら、清国の二の舞だったかもしれません。
二度目は、戦後まもなくの時期です。大量の麻薬・覚醒剤が我が国に蔓延しました。GHQは、徹底的に封じ込めを行いました。
その米国ですが、オピオイド(麻薬性鎮痛薬)が国内に蔓延しています。
トランプ大統領は、2018年に、正式にオピオイド危機を国家的緊急事態と宣言しました。

バリー・マイヤー著・三木直子さん訳の「ペイン・キラー アメリカ全土を中毒の渦に突き落とす、悪魔の処方薬」(晶文社)を読みました。
帯にはこう書かれています。
公衆衛生史上最悪ともいえる大惨事は、いかにして「広められた」のか。
全米を巻き込み、大統領による国家緊急事態が宣言された「処方薬」による、ドラッグ汚染〈オピオイド〉危機。
依存性薬物に侵されたアメリカの実情に肉薄し、製薬会社の闇を暴くノンフィクション
36時間のうちに、9人の死体が数百メートル圏内で発見された。
5人は自宅、2人は車の中、2人は路上で。
最年長は42歳、最年少は24歳だった。
過剰摂取死は増加を続け、場所によっては、死体があまりにも次々と積み上がり、検察医や検死官の作業が追いつかないほどだった。
遺体安置所は満杯で、空きが出るまで死体は何日も、レンタルされた冷蔵トレーラーに保管しなければならなかった。
こうした死亡事例の大部分はいわゆる「オピオイド(麻薬性鎮痛薬)」が関与している。
アヘン、ケシから抽出、または実験室で合成される化合物を原料とする処方鎮痛薬または違法薬物である。
オピオイド危機はもはや、アメリカの日常の一部になってしまっている。

以下は、プロローグの文章です。
病院では、依存症の母親の血液を流れる薬物から切り離された新生児が、オピオイドの禁断症状にもがき苦しみながら生まれてくる。
街の巡回する警察官の標準装備には新たに、薬物過剰摂取の渦中にいる人の命を救う薬の入ったスプレー式点鼻薬が加わっている。
オピオイド危機が与えた影響はあまりにも広範に及び、アメリカでは白人男性の平均寿命が短縮し始めている。
2021年の時点で、過去20年間にこの薬物の過剰摂取で死亡したアメリカ人は約25万人にのぼる。
製薬会社が製造し、医師が処方した、合法的な医薬品による死亡である。
2021年、処方されたオピオイドが関与する過剰摂取死は、1999年の4倍になっている。
早い時期に対処すれば食い止められたかもしれない惨劇は、恐ろしい怪物に成長してしまった。
自然災害であろうとも人災であろうと、災害には発端がある。
オピオイド危機に関して言えば、その端緒はオキシコンチンと呼ばれる医薬品だった。
もともと医師はそうした医薬品の活性成分を呼ぶのに「麻薬」という言葉を使っていたが、より積極的な疼痛治療を推進する人々は、闇で取引される「麻薬」のイメージからオキシコンチンを遠ざけようと必死で、オキシコンチンに新たなブランドイメージを与えるために「オピオイド」という言葉を作ったのだった。
オキシコンチンの製造会社であるバーデュー・ファーマ社は、医師にオキシコンチンの処方を促すために数百万ドルを注ぎ込み、オキシコンチンは疼痛の治療薬として優れているだけえなく安全であると主調した。
アメリカで最も裕福かつ秘密主義を貫く一族の一つ、サックラー家が所有するバーデュー・ファーマ社は、この薬の販売で数十億ドルの利益を手にした。
オキシコンチンは特効薬などではなかった。それは、二一世紀最悪の公衆衛生問題につながるゲートウェイ・ドラッグだったのである。

その歴史はGeminiによると次のとおりです.
第1の波:医療用処方薬の蔓延
1990年代後半〜
製薬会社(パデュー・ファーマ社など)が「依存性の低い画期的な鎮痛剤」と偽ってオキシコンチンなどの医療用オピオイドを猛プッシュしました。
医師も安易に大量処方したため、一般の患者が知らぬ間に深刻な薬物依存症(アディクション)に陥りました。
第2の波:ヘロインへの移行
2010年頃〜
政府や医療機関が処方規制を強化した結果、病院で薬をもらえなくなった依存症患者たちが、より安価で手に入りやすい違法なヘロインへと流れていきました。
これにより、ストリートでの死亡者が急増しました。
第3の波:最強の合成麻薬「フェンタニル」
2013年頃〜現在
安価で大量密造できる人工的な合成オピオイド「フェンタニル」が市場に流入しました。
これが現在の危機の主犯であり、死者数を爆発的に増加させる原因となっています。
麻薬は呼吸機能を低下させます。麻薬による死亡のほとんどは、使用者が呼吸できなくなるのが原因です。

水俣に行ったときにバラ園に寄りました。そのときに出会った美しいバラは、「サックラー」という名前が付いていました。
薬剤の研究で剤を為したサックラー家から命名されたバラ、という解説がありました。
美しいバラとうらはらに、アメリカでオピオイド危機が進行しています。
現在は、メキシコの麻薬組織が、中国から原料を輸入してそれを麻薬に加工して、アメリカで消費される、というルートができあがっています。中国からメキシコへのルートで、日本がトランジットされているという報道がありました。
中国からメキシコへ直接荷物を送ると、米当局の厳しい警戒に引っかかります。
そこで犯罪組織は、税関の信用度が高い「日本」をペーパーカンパニーなどを通じて、中継地として挟むことで、貨物の出所を偽装(ロンダリング)して、検査をすり抜けようとしているのです。
実際に日本の名古屋市などに拠点を置いた中国系組織が、日本経由で原料を北米方面に送り込んでいた事例が報じられています。
麻薬の管理は公衆衛生であり、安全保障です。
アヘン戦争の事例を早くからつかんで、日本へのアヘン導入を防いだ江戸幕府の例もあります。
アメリカの臨床現場から広まったオピオイド危機の事例は、我が国ではまだそれほど知られていませんが、公衆衛生の最大の危機とならないように、麻薬対策はダメ・ゼッタイの精神で対峙する必要があります。
