フランクリン・メソッド で「健康日本21」カレンダーをつくれば売れる
公衆衛生のネタがつきかけたので、自己啓発系のネタです。
「アメリカは自己啓発本でできているーベストセラーからひもとく」(平凡社)を読んで、そもそも自己啓発本はどういうものかを勉強してみました。
著者は、尾崎俊介先生で、愛知教育大の教授です。
私と同じ1963年生まれで、専門は、アメリカ文学、アメリカ文化です。
この本は、科研費による助成を受けた研究を遂行した結果生まれています。
その研究のタイトルは、「アメリカ及び日本における自己啓発本出版史の研究」です。
おいおい、自己啓発本は日本とアメリカにしかないのかよ、とツッコミをいれようとしたところ、最初に書かれていました。
研究の結果、自己啓発本は、発祥国のアメリカ以外の国で自己啓発本が盛んに書かれ、かつ読まれているのは日本くらい。
イギリスのスコットランドには多少、自己啓発本の伝統が残っているとのことです。
近年、韓国でも自己啓発本の出版が盛んになってきましたが、その多くは「あんまり頑張るな、息抜きしながら生きろ」という系で、人生に拍車をかけるようなアッパー系ではないそうです。
なぜにアメリカと日本だけに自己啓発本が盛んに書かれ、読まれているのか。
さすが大学の研究者です。
その理由も突き止めています。

自己啓発本とは、基本的には「出世指南書」。
金儲け指南という側面もありますが、社会的に出世すればそれに伴って収入も増えます。
自己啓発本が生まれるためには、二つの前提条件があるそうです。
一つ目は、出世しようと思えば、出世できる環境であること。
二つ目は、出世したいと思う人が大勢いること。
この二つがなければ、いくら自己啓発本が出世をたきつけたところで、絵に描いた餅!
ううう。そうなのか。
社会の流動性があり、職業選択の自由がある、能力次第でその職業のトップに就けることが大事です。
ところが、カースト制やイスラム社会などでは難しい。
先進国はどうかといえば、出世したいと思う人が大勢いるかどうかがポイントになります。
カトリックのラテン系民族の国では、今が楽しければ、今必要とされる以上の仕事はしないと考えるのんびりした人が多いとのこと。
なるほど。よくわかります!
じゃっとよー&てげてげでいいっちゃがー的な宮崎では、自己啓発本はあまり売れない。

アメリカは、もともとイギリスから厳格な清教徒(ピューリタン)たちが、逃れてきた植民地です。
宗教に厳格で、人間ひとりひとりには神が定めた運命があり、運命は変えられないと信じている人たちが多数を占めておりました。
ところが、この桎梏の植民地に新しいキリスト教の考え方がやってきました。
人間には価値がある。
人間は自助努力を積み重ねて正直に働けば、自らの運命が変えられるかもしれない。
暗黒大陸に一筋の光が差し込み、自分自身に自信を持ち、向上心を携え、猛然と仕事をし、人の役に立ち、そうした自らの行動によってこの世にあるうちに自前の天国を作り出す。
そういう向上心にあふれた新しいタイプのアメリカ人が次々と登場し始めたのです。
そうしたアメリカの第一号の自己啓発本が登場します。
アメリカの自己啓発本の最初は、ベンジャミン・フランクリンの伝記です。
アメリカでは、アメリカンドリームの体現者として今もなお人気があります。
政治家・外交官・文筆家としても知られ、凧揚げ実験をして、落雷は電気現象だと証明したことで有名です。
ちなみに、映画のバック・トウー・ザ・フューチャーで、天才科学者のドクが尊敬している人物です。
自分の開発したタイムマシンを稼働させるために、落雷のエネルギーをつかいました。

フランクリンは、子だくさんの貧しいろうそく職人の息子として生まれます。
12歳で印刷工として働きに出た苦労人です。
勤勉さと向上心を武器に、華麗なる立身出世の経歴を築きあげました
1729年、23歳にしてフィラデルフィアの新聞社を買収します。
図書館をつくり、消防団をつくり、地元に貢献をしました。
フィラデルフィアの郵便局長に推挙されました。
1764年からは植民地全権委任代表としてロンドンで活躍します。
1775年に帰国し、アメリカ植民地の初代郵政長官となりました。
宗主国イギリスとの独立戦争が開始されたときには、アメリカ独立宣言を起草するための委員に就任します。
「すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている」という高邁な前文があります。
後に日本の福沢諭吉がこれを見て、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずといえり」という一文を、「学問のすすめ」の冒頭に書いています。
イギリス相手の独立戦争では、フランスの動向が勝負を左右することになります。
フランクリンは、特使としてフランスに渡り、対イギリス戦でのフランスの協力と他の欧州諸国の中立をとりつけました。
亡くなったときには、「アメリカ建国の父祖」として国葬となりました。
アメリカの100ドル紙幣はフランクリンの肖像画です。
無一文から「アメリカの顔」に成り上がった、アメリカンドリームの象徴です。

フランクリンは自伝を書き上げて、その中で立身出世の秘訣に触れています。それが13徳目です。
1 節制
2 沈黙
3 規律
4 決断
5 節約
6 勤勉
7 誠実
8 正義
9 中庸
10 清潔
11 平静
12 純潔
13 謙譲
案外普通で、小学校の道徳で学んだような気がします。派手なものはありません。
フランクリンは、単に健康日本21のように目標を示すだけでなく、運用方法も提示しています。
毎週1つの項目について集中的に実行し、次の週にその次の項目を実行する。
これを繰り返すと、13週間かかります。そしてまた最初の項目に戻ります。
1クール(13週)を4回繰り返すと、13週 × 4回 =52週となり、ちょうど1年間になります。
健康日本21の目標も50項目ほどあります。
毎週1項目実践すれば、ちょうど50週で、ちょうど1年間。
健康日本21は10年間の計画なので、10年間継続すれば皆健康になる!
健康日本21 × フランクリン・メソッド
= 健康 ↑↑
うーむ。健康日本21カレンダーをつくれば、売れるかも。
松岡修造さんの「日めくり まいにち 修造! 心と元気にする本気の応援メッセージ」という人気カレンダーがあります。
私は厚労省のときは、松岡修造さんのカレンダーをつかっていました。
受けたので、次は、ひろしさんのカレンダーを使ったら、ドン引きされました。
当時は人気絶不調で、再ブレイクする前でした。
いかん。話がそれました。

こうして、フランクリンの自伝は、「勤勉さと向上心によって立身出世と富を勝ち得る方法を伝授する指南本」として世界初の自己啓発本の第一号となりました。
スタート時点では、「隠忍自重してひたすら努力せよ」ということを主張する、きわめて健全な修身本でした。
アメリカは、チャンスの国です。
勤勉努力したことが比較的容易に報われることもおく、実際に立身出世を果たす人が次々とでました。
フランクリンの自伝以降、アメリカには、自助努力系自己啓発本の伝統が生まれます。
鉄鋼業で一代にして巨万の富を築いたアンドリュー・カーネギーの「カーネギー自伝」もその一つです。
この系譜は現在も続いています。
スティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」は、20世紀後半以降に登場した自助努力系自己啓発本の最高峰とされ、アメリカでも日本でも大ベストセラーとなっています。
啓発本不毛の地の宮崎でも、読んだことがある人もいるかも。
フランクリンのことは、「そういち総研/世界史と偉人」さんの記事が詳しいです。
