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狂犬病は、イヌに噛まれる部位によって潜伏期が異なり、脳に近い部位ほどウイルスが早く脳に到達する

県立宮崎病院で開催された宮崎ワンヘルス研究会に参加しました。

古くて新しい病気である「狂犬病」について学んで参りました。

総合司会は、県立宮崎病院の山中先生がされました。

山中先生は、医師免許と獣医師免許を持った二刀流です。

まさに、人間と動物の健康を担当するワンヘルスの申し子です。

その外、参加されたのは、宮崎大学産業動物リサーチセンターの岡林教授、宮崎大学獣医学部獣医公衆衛生学の山田教授、静岡県立がんセンターの倉井先生、厚労省国立感染症研究所の井上部長です。

狂犬病については山田教授が詳しく説明してくれました。

狂犬病は、犬以外の哺乳類がかかることがあります。

犬の次に多いのは猫で、アライグマ、タヌキ、フィレット、コウモリ、イタチアナグマなどが代表的な動物。

ヒトに感染させるのは、99%がイヌ。

発症すれば100%が死ぬ。

臓器移植で感染して死亡した例が、ドイツとアメリカにある。

全世界で毎年5万9000人が死亡している。

狂犬病がない国は、日本、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、スカンジナビア諸国の一部のみ。

アジアには放浪犬が、山ほどいる。

日本の隣の韓国は、北朝鮮から感染したタヌキが侵入し、台湾には感染したイタチアナグマが生息している。

島国日本は、終戦後にGHQの指導で、狂犬病の担当省庁を農水省から厚生省に移管させ、狂犬病予防法を作って対策を強化した。

1957年以降、日本では発生事例はなし。

2002年に36年ぶりにフィリピンで感染し国内で発症した事例が2件あった。

イヌが感染すると、ウイルスは、末梢神経から、中枢神経を経て、脳に移行する。

脳が感染すると、唾液からウイルスが出てくる。

感染した脳により、僅かな刺激で興奮しやすくなり、噛みつくようになる。

感染した飼い犬は、歩き方が変わり、太陽の光をさけてものかげに行く。

飼い主が「あーらどうしたの?」と、
手を差し伸べると噛みつく。

イヌを食べて、感染して発症することがある。

食べたヒトは火を通していることが多いので、感染しにくいが、調理したヒトはリスクが高くなる。

ベトナムにはイヌの屠殺場があり、そこで働く者にも発生している。

感染したイヌに噛まれたら、暴露後のワクチン接種が推奨されている。

咬傷から0.3.7.14.28日の5回、筋注が行われる。

毎年、全、全、全世界の約1000万人が、この暴露後ワクチン接種を受けている。

潜伏期は、犬に噛まれてから1~3か月。

潜伏期中に、狂犬病に特有の診断法はない。

イヌに噛まれる部位によって潜伏期が異なる。

足、手、顔の順に、発症が早くなる。

脳に近い部位ほど、ウイルスが早く脳に到達する。

暴露後ワクチンも効かなくなる。

かぜ様の症状で発症し、
風が吹くとその刺激で怖がり(恐風症)、
水を飲めなくなり(恐水症)、
唾液があふれるようにでてくる。

精神的な動揺が起きるようになる。

やがて麻痺が進み、死亡する。


フィリピンには、サンラザ病院が狂犬病の治療を専門的にやっている。

自分が視察したときは、151人の狂犬病の患者がいた。

フィリピンで噛まれるのは、成人の男性が多い。

噛まれる犬の特徴は、子犬が多い。

特に3か月未満の子犬。

傷が小さいので、軽い傷だから、安全だろうと暴露後のワクチン接種をしないことが原因だと言われている。

狂犬病は、顧みられない熱帯感染症(NTDs)の代表例。

狂犬病が発症すれば100%死ぬことは、既に社会的に受け入れられている

そのため、いまさら「治療薬を開発しろ!」
とワーワー言う人はいない。

静岡県立がんセンターの倉井華子先生は、2002年に富山大学医学部を卒業しております。

好きな言葉は、「日日虫好日」
吸血する衛生動物好き。

自宅に飼っているのが、サシガメの「サッシー」、ヤマビルの「ヒルヒル」、マダガスカルゴキブリの「マダちゃん」です。

ちなみにサシガメは、亀ではありません。

昆虫です。

カメムシに似ている南米産のサシガメです。

シャーガス病を媒介しますが、倉井先生が飼っているものは、無菌のサシガメだとのこと。

エサは、自分の腕。
噛まれたところがかゆいそうです。

ヒルヒルは、山にいる吸血ヒルです。
自分で山から採ってきたそうです。

ヒルの口からは、抗凝固剤ヘパリンが分泌されますので、自分の腕をエサとして差し出した場合は、血が止まらないそうです。

エサとして差し出して寝落ちしたときは、ベッドのシーツが血だらけで、殺人事件の現場のようだったと言っておりました。

マダガスカルゴキブリは、私も見たことはないので、ネットで検索してみました。

5~7cmの大型ゴキブリですが、羽がなく、飛べないゴキブリです。

吸血はしないので、ほっとしました。

これは日本産

ちなみに、日本のゴキブリは気温が30度を超えると、飛んで逆襲してくるので注意が必要です。

下北半島にはゴキブリがいないので、むつ保健所職員はゴキブリについてあまりにも無知でした。

ゴキブリの経験豊富な宮崎県民として、日常生活におけるゴキブリの脅威について、徹底的に指導をしました。

宮崎西高生のときには、宮崎市内に下宿しておりました。

深夜、眠っていたら、何かしゃりしゃりと音が聞こえて、目が覚めました。

机の方から聞こえてきます。

そこで起きて、机の脇の電気スタンドのスイッチを入れたところ、そこにいたのは一匹のゴキブリでした。

なんと鉛筆の芯をかじっていたのです。

かじる音が止まり、私はこのゴキブリと目が合いました。

ノートを丸めて、ゴキブリめがけてマッハの早さで振り下ろしました。

はたして結果はー?

いかん。本題は、狂犬病でした。倉井先生の話を進めます。

犬による咬傷

2006年11月17日、京都市でフィリピンでイヌに噛まれた人に狂犬病が発症したとニュースが流れました。

実に36年ぶりの国内発生でした。

それから3日後の11月20日に、横浜市内の医師から電話がありました。

2か月前にフィリピンでイヌに右手首を噛まれた人がいて、狂犬病かもしれないとのことでした。

暴露後のワクチン接種はしていなかったそうです。

まさか数日後に国内2例目の発生とは信じられず、最初は、他の脳疾患を疑いました。

11月15日に風邪のような症状と右肩痛があり、18日には水が飲みにくくなり、飲水のたびに嘔吐をしてしまうとのことでした。

19日に倉井先生が勤務している病院に入院となりました。

患者さんの状態は、ドアを開けたり、空調があると、風に恐怖を感じていました。

常にテッシュにつばを吐いていました。

病室で人が動くと、怖いので突然大声を出していました。

風が来る、寒い、寒いと繰り返して発言していました。

所見と検査結果は、以下のとおりです。

かまれた部位のしびれと知覚過敏あり
唾液の異常分泌
興奮と意識晴明を繰り返す
脱水によるアルカローシス
頭部のCT、MRI異常所見なし
髄液検査は異常所見なし


集中治療室(ICU)は、装置による音がして、空調からの風があり、患者は「ここから出してくれ」とパニックを起こしました。

こうした状態に、家族、病院の医療従事者、保健所職員が動揺しました。

最後は、鎮静剤で鎮静させて、挿管して人工呼吸器につなぎました。

いったん人工呼吸器を導入すると、死ぬまで抜けないことを、本人と家族に説明しました。

「狂犬病は発症すれば、100%死ぬ病気です」

こんなことを患者と家族に説明することは、他の病気ではありえない。

4日目  唾液過剰分泌。
     チュープが抜けるほどになりました
5日目  肝機能異常
10日目 肺炎
11日目 腎機能異常
     血圧は200~20mmHg、
     脈は30~180/分
     極端な上下変動の
     ジェットコースター状態
16日日 多臓器不全で永眠


家族は、水が飲めなくなった患者さんを見て、最初は気が狂ったのではないかと思ったそうです。

マスコミの取材があるのではないかという不安が、常にありました。

自分たちも狂犬病に感染しているのではないか、という不安もあったそうです。

家族も、暴露後のワクチン接種をしました。

本人ばかりでなく家族に対しても、心理的なサポートが必要だったと言っておりました。

実際に治療をした医療従事者しかいえないような、切実な講演でした。

狂犬病の恐ろしさが判りました。

最後に岡林先生の司会で、パネルディスカッションがありました。

東京の国立感染症研究所からやってきた井上部長の話も興味深いものでした。

井上部長は、1990年から国立感染症研究所で狂犬病の研究を始めています。

全国の自治体の職員と一丸となって、もし狂犬病が国内で発生しても、日本国内で検査ができる体制にしようと努力しました。

ガイドラインも作成しました。

まさか、2006年に京都で発生し、間もおかずに横浜市で発生するとは全く予想していなかったそうです。

もし何も準備していなければ、メディアが騒いで、国内でパニックが生じる可能性がありました。

発症すれば100%が死ぬ狂犬病は、パスツールが成功して以来、暴露後のワクチン接種が一番大事である。

とにかく、蔓延国でイヌに噛まれたら、15分間流水で傷口を洗い流し、ワクチンを即うつことが、命が助かる鍵。

並行して噛んだ犬を検査して陰性だったら、ワクチン接種をやめればいい。

「これまで狂犬病は国内発生がほとんどなかったが、見逃し事例があるのではないか?」と質問がありました。

井上先生によると、「見逃している症例は、あり得る」とのことでした。

米国のCDCは、国内の医療機関で、神経疾患の病理組織が残されているものを調べたことがあります。

数例でしたが、狂犬病ウイルスが陽性だったものがあったそうです。

カルテには、「なんともいえない異様な印象があった」と書かれていたそうです。

日本の狂犬病のガイドラインには、狂犬病を探知するのは、「病院」か「獣医業」だと書かれています。

すなわち患者を診察した医師か、イヌを診察した獣医師が探知します。

日本のすぐ隣にある台湾では、2013年8月に野生のイタチアナグマの3頭が狂犬病ウイルス陽性だと判りました。

それを受けて、捕獲したイタチアナグマの残っている検体を調べてみました。

2010年に採取した検体を調べたら、陽性が半数あったそうです。

捕獲されるほど、よれよれだったのではないかと言われています。

生きているイタチアナグマの映像も調べた結果、2007年に捕獲したものは跳ねるように動く映像で、狂犬病を思わせるような興味深いものだったそうです。

他国の例ですが、ヒトも動物も見逃し例がありました。

狂犬病の早期発見は、ヒトを噛んだ動物の症状を確認することです。

そもそも潜伏期間中のヒトは、どんな検査をしても狂犬病が発症するかどうか判りません。

イヌの最初の症状は、沈鬱になることだそうです。

その後、歩行に麻痺が出て、水が飲めなくなります。興奮してすぐ噛みつきます。

ワンヘルスで重要なのは、噛んだ動物の情報を入手することです。

台湾では、イタチアナグマに接触をしたりかまれた者には、暴露後の狂犬病ワクチンを打ち続けています。

咬傷の患者は、かまれた状態は説明しますが、噛んだ動物のことはほとんど説明しません。

医師の問診でも、噛んだ動物の情報をほとんど聞きません。

大事なのは、噛んだ動物がいまどのような症状があるのか、患者からこれを聞くのが大事だとのことでした。

最後は私の感想です。

問診を確立したのは、2000年前のヒポクラテスです。

問診で職業を聞くように言ったのは、300年前のイタリア人の医師ラマツィーニです。産業医学の父と言われています。

ワンヘルスの医師は、動物の咬傷の患者には、問診で次のことを尋ねるべきです。

噛んだ動物の症状はどうか。沈鬱な状態か興奮しているか。ぐったりしているか、100%元気か。

日本の地域医療を担う医師は、咬傷患者にはオーグメンチンの処方をして、噛んだ動物の症状を問診で聞きましょう!

その理由は、こちらの記事にあります。

すがやみつるさんの漫画はすごく勉強になります!


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