次男の中学卒業
我が家の次男が明日中学を卒業する。
6人兄弟の真ん中っこ。
小さな頃からわんぱくで、家の、幼稚園の、小学校のムードメーカーだった。
空気を読み、平和主義者。
しばしば自分で探索に行くので小さな頃はよく迷子になっていた。
3歳の頃、上野動物園のサル山付近で突如迷子になり、一生懸命探していたら、迷子センターでお姉さんたちとものすごく楽しく遊んでいる様子にヘナヘナと力が抜けたものだった。
そんな明るく元気な次男が、小4から小5の終わりまで、学校をほとんど休んだ。
元気で明るい一方で、神経を使いすぎるとおなかの調子に表れる次男。腹痛で何回か休んだあと登校したとき、友達が数人で、何の気なしに「ずるやすみ〜!ずるやすみ〜!」と囃し立ててきたのだという。
それ以来、学校が怖いところになってしまったらしい。
苦しみながらも心が癒えるのを待とうと、親もひたすらに見守る日々。
そのうち次女もまた別の理由で休み始め、そのころ、我が家には3人不登校がいて、私も悩みの日々だった。
だいぶ元気になってきて、5年の3学期から学校に復帰。6年生の1年は、まるで何もなかったかのように登校を始めた。
いきなり声が低くなり身長も一気に伸びた次男の姿に級友は驚きながらも温かく迎え入れてくれた。親たちもみな喜んでくれた。
そして中学入学。いやに入学式でテンションが高いなと思ったものだけど、実はあとから聞けば、新しい友達ができるようにと「自分」を「明るく元気で泣き事言わず何でも引き受け、優しいぼく」として演出し始めたらしい。
2学期のはじめ、突然、次男は学校に行けなくなった。
担任の先生によれば、既に次男は目論見通り、クラスでは元気で明るく人気者、友達は分け隔てなく陰口も叩かない、誰も手を挙げない役職があれば進んで手を挙げて引き受け、授業で誰も発言しなければ進んで発言して盛り上げて。
クラスメイトにとっても、先生方にとっても、頼りになる存在になっていたようだった。
次男の話を聞くと、そのあまりに作りすぎた自分像に、自分で苦しくなってしまったらしい。
ほんとは暗い部分もあるし、嫌いな人もいる。でもそのダークな部分を自分で認められない、人にも見せたくないのだと、泣きながら話す次男。
はたから見れば、「厨二病」だ。
少女まんがに出てくる主人公の相手タイプ、少年漫画なら、純粋で清廉なヒーロー系タイプ。
そのイメージで、自分の首を締めてしまったみたいだった。
話すことで気持ちを整理する次男。
部屋に行っては話を聞いて、整理の手伝いをした。
心が沈んだら。私だったら浮き上がるまで待つよ。足掻いてもしかたない。いつか浮かび上がるから。大丈夫。
と私が言えば、
「おれはね、沈んだっきりなんだ。上を見上げると、みんながいる。上がろうとしても上がれる気がしない。静かなんだ」
と答える。
「みんな、ダークな部分も知りたいんじゃないかな。きれいな◯◯だけでなく、いろんな面があるのを知りたいものだよ」
と言えば
「でも、怖い。友達が離れるのが、怖い」
と答える。「親友」がいないのも寂しいのだと言っていた。
「「親友」同士に見える友達は、そう見えるだけじゃないかな。お母さんは中学の人と今つながりないよ。みんな自分のことで精一杯だよ」などと、励ましとも言えない言葉で励ましたり。
そんな問答を、1年半、続けた。
3年の4月。
ついに次男は始動した。
受験生というのもあり、休んでいては望む高校に行けないという事実も背中を押したらしい。
クラス委員や活動グループのリーダーなど積極的に手を挙げ、部活にも参加した。
先生方はみな、心配していた。同じことになってしまうのではないかと。
次男は、以前の自分とは違うから、とその姿勢は変えなかった。
6月には、元いた陸上部にも戻った。
以前と異なっていたのは、自分でペースを作るようになっていたことだった。
しんどくなったら、前の日に先生やクラスメイトに言って、1日休む。
その次の日、元気に行く。
ときどき3日くらい精神的な疲れが続いて休んだこともあるけれど、休めばまた行けた。
友達関係は、以前より距離を置きながら過ごしていたものの、みんなにいろいろな面があり、自分もいろいろな面があってよいのだと気づいたり、友情は簡単には壊れないとわかったり。
だから言ったじゃん、とは思うけど、こればかりは自分で腑に落ちないとわからないものだ。
いろいろなことが、彼にとって「腑に落ちた」みたいだった。
徐々に徐々に、中学が彼の居場所として安定していった。
1年半抜けた勉強はさすがに穴を埋めるのが大変そうだったけれど、少しづつ点を上げ、秋には意識を持って受験勉強に本腰を入れていった。
好きな絵を認められ、文化祭でも卒業アルバムでも描いてと頼まれて、絵の自信もついてきたようだった。
今日車で迎えに行くと、「友達と歩いて帰るから、荷物だけ持っていって」といつものお調子者の笑顔で言って、友達の中に戻っていった。
楽しそうに友達と帰る姿を見て、私はその場をあとにしたけれど、涙があふれて仕方なかった。
よかったね、次男。
長かったけど、本当に、よかったね。
自分の内面ととことん向き合ったこの数年は、本当に貴重で、大事な時間だったと思う。
これからもいろいろなことがあり、悩みもあるだろうけれど、ひと回りもふた回りも大きくなった次男は、もう大丈夫だろう。
私は家という港で、見守ることに専念しよう。
卒業、おめでとう。
その後の次男について。
