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シゴデキタイミーさん


トンデモタイミーの話ばかり書いているが、もちろんシゴデキなタイミーさんもいる。



以前来てくれたシゴデキさんは、飲食店経験無しとの前情報で、私は朝から「またかよ…店長め💢」とため息をついていた。経験者限定にしろとパートリーダーAさんから散々言われているのに、全然言うことをきかないのだ。仕事のクオリティはAさんの足元にも及ばないくせに、俺は店長だ!俺のほうが偉いし!というくだらないプライドだけは人一倍ある男なのである。



あ、いきなり店長の悪口から始まってしまったが、今日書きたいのはそこじゃない。笑



その日は、そのシゴデキさんとはべつの、常連のタイミーさんが1人入っていた。常連タイミーさんはもう長く来てくれている方で頼りになるのだが、業務のすべてを担えるわけではない。そこに飲食店経験無しのタイミーさんが来るのだ。せめてAさんのいる日だったらよかったが、その日は運悪く店長の日で、(あ、終わった…)と思った。



私がレジに貼ってあるアサイン表を見て絶望していると、背後で「おはようございます。タイミーから来ました」と男性の声がした。



そのひとことで、私は「おっ?」と思った。高過ぎず低過ぎず、早口でも遅口でもない、誠実そうな声。



私が慌てて振り向いて、「おはようございます。よろしくお願いします」と挨拶すると、シゴデキさんは「◯◯と申します。本日はよろしくお願いします」と深過ぎず浅過ぎずの絶妙な角度で頭を下げた。できる…!できるぞ、この人は…!



「飲食店は初めてで。ご迷惑をおかけするかもしれません」と心配するシゴデキさん。大丈夫です。迷惑かけるやつはそもそも「自分が迷惑かけるかも…」という思考を持っていないので、あなたはきっと大丈夫!






シゴデキさんにバッシングのやり方やお冷出しのやり方を教えていると、お客様が来店した。私はお客様のほうへ向かいながらシゴデキさんに「お冷出しお願いします」と言い残した。



すると背後で「かしこまりました」という返事が…!



こんな流れるように「かしこまりました」が言えるなんてすごい。やっぱりこの人はデキるお方だ!



その後のシゴデキさんの働きぶりは、期待以上だった。



その日はいつも以上に忙しい日で、既存のスタッフはみんな走り回っていた。私もレジと案内とオーダーとにてんやわんやで、シゴデキさんに業務を指示する暇もなかったのだが、ふと見るとシゴデキさんはお冷のおかわりに回ったり、入り口にいるお客様に「まもなくご案内いたしますのでお待ちください」と声をかけたり、お客様のテーブルに置きっぱなしになっているメニューを回収したりと、「ほんとに飲食店初めて!?」と思う動きだった。



教わったことや指示されたことだけでなく、周りの人を見て仕事を覚え、自分にできそうなことを率先してやってくれているのだ。



これはスカウトしない手はない。店長がへらへらしながらスカウトすると店の信頼を失いそうなので、Aさんのいない今日は、もう私がスカウトすることにした。



ピークが去り、ようやく落ち着きを取り戻した店内で、私はカスター補充をしているシゴデキさんに近づいた。このカスター補充だって私は教えていない。ほかの人がやっているのを見て、「自分がやります」と申し出てくれたのだろう。



私はシゴデキさんに、「タイミーはよく利用されるんですか?」と訊いてみた。



すると彼は「ええ。本業が自営業なんですが、今の時期は少し暇になるので」と答え、それを聞いて私はちょっと落胆した。ですよね…あなたほど仕事のできる方が本業を持ってないわけないですよね…



トンデモタイミーは仕事を探している。
シゴデキタイミーさんは仕事を探していない。




よく考えたら(考えなくても)この構図になるのは当たり前である。シゴデキさんに来てもらうためには、本業の忙しくない時期に、うちの店を選んでもらわなければならないのだ。ほかに条件のいい案件があればそっちへ行ってしまうだろう。



私はしつこくならないように控えめに、「お仕事が手早くてほんとに助かりました。ぜひまた来てくださいね」と言った。シゴデキさんは「はい、ありがとうございます!またぜひ!」と本心かどうかわからないが、力強い返事をしてくれた。



しかしあれ以来、そのシゴデキタイミーさんは来ていない。本業がお忙しいのか、それとももっと条件のいい案件を見つけたのか。



スキマバイト界の星、シゴデキさん。あなたを待っている店があります。ぜひまたご縁がありますように…!






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