記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

ゲーム「MUSICUS!」感想

※この感想は男性向け18禁ゲームの感想です。ご注意ください。

 「OVER DRIVE最終作をクラウドファンディングでやる。体験版はこれ!」とお出しされたのが「MUSICA!」でした。当時それをプレイし、絶望に落とされました。あまりにも面白かったのでクラファンページをアクセスしたらメンテナンス中で、失意の中時間が経過し……気づけばMUSICUS!として製品版が発売され、購入だけして数年経ち、ようやく重い腰を上げてプレイしてみることにしました。そんな満を持したゲーム、やっぱり凄かったよという感想です。

ジャンル:ロックンロールADV
プレイ時間:30.5時間
媒体:PC(FANZA)


■ プレイ媒体

 PC(FANZA)、PC(steam)、PS4、Nintendo Switchでプレイできます。当然ながらPS4・Switch版は全年齢向けです。エロ無し。steam版も全年齢向けなんだとか。

媒体の違い

 PC版からPS4・Switchへ移植するにあたって、UIの改修、コンシューマ版用の加筆修正、演出の追加、楽曲の追加が行われているようです。
……え!?だいぶ変わってるな!? R18にこだわらなくて良い人はコンシューマ版の方が良いかもしれません。いやでも、R18のエロシーンも主人公が結構面白いのでどっちが良いとは言い切れない……!


■ 本作の制作会社はブランド活動を終了している

 実は本作を制作しているOVERDRIVEはブランド活動を終了しています。えーーー!?

でもまだDL版は購入できます(2025/11/04現在)。
ちなみにOVERDRIVE代表の方のnote記事(2025/08/15公開)ではこんなことが書かれています。

現在FANZAさんなどで販売してますOVERDRIVEのゲームですが、あと数年(2〜3年)で販売を終わらそうと思ってます。
(中略)

OVERDRIVEのゲームタイトルの販売継続について

えーーー!?
もしPC版をご検討の方は早めに購入して早めにプレイしましょう。私はこの記事を読んで、今プレイしていて良かったと心底ほっとしました。


■ あらすじ

 興味を持てたらさっさとプレイした方が良いことがわかったところで、あらすじのご紹介です。公式から引用します。

主人公・対馬馨(つしま・けい)はかつては有名な進学校に通っていたが、とある事情で中退。今は定時制に通っている。
『親の後を継いで医者になる』という最短のレールからは外れたものの、まだまだ挽回可能。
ただ、最近は『それでいいのだろうか?』と考えつつある。
定時制で出会った、これまで周りにいなかった多種多様な人々。
世界には自分が知らないものが沢山あるんだと実感させられた。
……なのにまた、戻ってしまっていいんだろうか?
僕は本当に、医者になりたいんだろうか?
それが僕の、この対馬馨という人間の、生まれてきた目的なんだろうか?

そんな中、市の懸賞に応募した小説をきっかけに、音楽プロダクションの社長・八木原から『うちのバンドの遠征に同行してレポートを書いてくれないか』という依頼を受ける。
取材先はかつてはメジャーでも活動していたバンド『花鳥風月』。
そのリーダー・花井是清はかなりの変わり者で、馨に対して『音楽なんてろくなものじゃない』と音楽の無意味さをこんこんと説く。
そんな花井に戸惑いながら参加した初めてのライブで、馨は花鳥風月の音楽に心を奪われてしまう。

数日後、初めてのライブの感動を忘れられない馨の元に届いたのは『花鳥風月解散』のニュース。
突然の解散に納得いかない馨は花井を説得に向かうものの、議論は平行線でらちが明かない。
その後も顔を合わせるたびにバンド再開を求める馨に、花井はこう言う。
『馨君、きみがおれのかわりにロックをやらないか?』

STORY

簡単にまとめると「人生が面白くなかった青年がロックと出会い、感銘を受けて影響され、音楽をやっていく」話です。


■ 別作品と世界観を共有

 本作は別作品「キラ☆キラ」の数年後の世界です。が、これを知らなくても単体でもOK。念のためキラ☆キラの感想記事を繋げておきます。

また、私はプレイしたことがないですが、同会社から出ている「DEAR DROPS」とも世界観を共有しているようです。この作品のことを知らなくても特に問題ありませんでした。


■ エロシーンは少なめ

 PC版(R18版)の特徴としてエロシーンがあることが一番のポイントになってくるかと思いますが、本作はエロシーンが少ないです。えー、指折り数えてみましたが、全部で5シーンしかありません。個人的には文句はありませんが、エロ目的だと物足りないかも。なのでエロ目的じゃないならコンシューマ版でも良いかも。

ただ、本作は主人公があまりにもおもしれ~男です。エロシーンの時もおもしれ~男なんです。このおもしろさを体感して欲しくもある。


■ 主人公はおもしれ~男

 主人公のおもしれ~男っぷりについて触れたのでこちらをご紹介しましょう。この主人公、あまりにもおもしれ~男なんですよ。医者の息子で、頭も良くて、イケメンで、なんでもそつなくこなせるかなりのハイスペック人間なんです。しかし心から感動できず、ただ機械的にこなす人生に悩んでいる若人でもあります。
本作では「自分の人生に心動かされるものを感じられず、とある事件がきっかけで高校を中退し、夜間学校に通い、興味本位で小説の賞に送り、なぜかバンドのレビュー記事を書くことになり、そのバンドの歌に感銘を受けて音楽の道に進むことになる」んですが、主人公はいつまで経っても感情が揺れ動きません。ただし、作中の多くの人物から主人公は「丁寧だけど見下してる」と笑いながら評されています。例えば他人が泣いてる姿を見て、自分では「よくこんなに泣けるなあと不思議な気持ちで見てた」と思っているんですけど、他人からは「ゴミを見るような目で見てた」と言われるんです。なんだこれ。全然違うじゃないか。そしてたぶん、他人から見える姿の方が合ってるんです。
つまり、プレイヤーがト書きから見る主人公(つまり主人公の自認)と、他者から見る主人公はだいぶ乖離があるんですよ。主人公があまりにも自分の感情を自覚するのが下手くそなんです。それによって我々プレイヤーは主人公含めこの世界のことが全然わからないんです!そして他者の評価と作中の現実を過ごす上で「たぶん主人公は本来こう思ってたのか?」と推測するしかないんですよ!
なんでエロゲでミステリのトリックを暴いてる気持ちになるんだろう?
最高過ぎる。なんておもしれ~男なんだ。


■ 攻略するのではなく、人生の選択を誘導する

 この手の恋愛シミュレーションゲームは基本的に「攻略対象」がいます。攻略対象に好意的な選択をし、ルートに入るのがほとんどです。
しかし本作はキャラを攻略するのではなく、主人公の人生の選択を誘導し、その思想のもと人生が確定していくという形です。なので攻略対象はもちろんいますが、キャラルートと表現するのはふさわしくない気がします。この選択の人生はこれ、とお出しされている感じ。
ちなみに、私は途中まで誰がヒロインなのかわかりませんでした。そのくらいキャラがいっぱいいるし、色々な人と関わってる。人生だな~。


■ 曲が良い

 次に、本作で重要な推しポイントをご紹介します。「曲が良い」!

劇中歌が良い

 最初に語るべきはこちら、劇中歌が良い!主人公が感銘を受けたバンドの曲がこちら、「ぐらぐら」です。

カッコ良すぎる~~~!!
ついでに私が好きな別バンドの曲も貼っておきます。もちろん劇中歌です。

これもカッコ良すぎる~~~!!
自分たちのバンド以外の、作中で出会うバンドの曲をこんな風にガチにお出ししてくれます。嬉しすぎる。

音に細かい

 本作はノベルゲームです。そしてバンドものです。バンドものは大抵拙い時期から成長してうまくなっていく物語が多いですよね。でもその拙さは大体文章中で表現されるだけです。でも!本作は!なんと!拙い音も入れてくれる!すごい!
あとバンド曲が流れる時は勝手にオートモードになるのも面白かったです。俺の歌を聞けー!と言う主張、受け取ったよ。


■ インストールしなくても体験版ができる

 さて、段々と本作が気になってきたのではないでしょうか。そうなると体験版を試してみたくなりますよね。そこでブラウザ版(公式名称ではWeb版)です!簡単にプレイできます!インストールする手間を省けます!

こちらの「MUSICUS!体験版(R-18)」から「Web版」をクリック。そうすると、なんていうことでしょう! Windowsでも、Macでも、iOSでも、Androidでも、プレイできます。すげ~!未プレイの人はぜひ体験版をどうぞ!


■ ゲームシステム

UI

 どうやらUIはかなり不評だったらしいですが、個人的には特に不満はありませんでした。下部にセリフウィンドウがあるようなよくあるタイプではなく、全面に文字が表示されるスタイルです。

©OVERDRIVE

メニュー画面もわかりやすく、一目でどんな機能があるかわかりました。

©OVERDRIVE

キャラボイス個別設定

 キャラボイスのオンオフも個別にできます。正直使ったことがない機能です。欲しい人は嬉しいのかも。

©OVERDRIVE

バックログ

 普通に見返せるバックログ。普通に読みやすい。これが大事。

©OVERDRIVE

セーブロード

 手動セーブ・ロードに対応しています。こんなにいる?ってくらい大量に保存できます。フォルダアイコンもぎちぎちだよ。

©OVERDRIVE

その他設定

 その他、テキスト・サウンド・画面設定等、ノベルゲームに必要な設定ができます。文句無し!

©OVERDRIVE

EXTRA

 CG閲覧モード、シーンリプレイモード、BGMモード、SONGモードがあります。CG、BGM、SONGは作中で使われているそれぞれを再生する機能です。
シーンリプレイはエロシーンとエンディングシーンが見れます。欲しいところが揃ってる感じ。

©OVERDRIVE

ただ一点不満を言うとすれば、一曲リピート再生が無いことが残念だな~と思いました。同じ曲をガンガンリピートしたいけどできない。ちぇ!







~~~~ネタバレするよ~~~~







■ 登場人物

 メインどころのキャラクターのみ紹介していきます。

対馬 馨(つしま けい)

 本作の主人公。医者の息子、イケメン、優しい、なんでもそつなくこなすというハイスペック人間だが、人生の面白さや意味がわからず機械的に生きる自分に悩んでいた。自分の感情に疎い。ある事件がきっかけとなり、高校を中退し、夜間学校に通うようになる。紆余曲折あり、バンドのレビュー記事を書くために参加したライブで花鳥風月の音楽に感銘を受けた。

花井 是清(はない これきよ)

 馨の人生を変えた存在。無表情で淡々とした物言いで、気難しく頑固で繊細な人物。花鳥風月という有名なインディーズバンドのボーカル・作曲担当。馨と出会ったのち、バンドを電撃解散し、音楽にすら関わらなくなる。馨に嘆願され、自分が曲を作る代わりに、馨に演奏しろと言う。

花井 三日月(はない みかづき)

 花井是清の妹。表情豊かで明るいが自信が無く繊細で情緒が安定していない。アルビノで引きこもっていたが、兄に呼び出されて馨とバンドを組むことに。ボーカルとしての才能は自分を越えると兄・是清から太鼓判を押されるほど才能に溢れる存在。

香坂 めぐる(こうさか めぐる)

 花鳥風月のベース担当。穏やかでふわふわした女性だが、ライブさえ演奏できれば良く、先の人生についてはどうでもいいと言う刹那的な考えの持ち主。

尾崎 弥子(おざき やこ)

 馨の中学時代の後輩。現在は夜間学校のクラスメイト。家庭の事情で昼はアルバイト、夜は学校に通う生活を続ける勤労少女。馨のことが好き。実は歌がうまい。

金田(かねだ)

 夜間学校のクラスメイト。モヒカン、派手な服装、ガラが悪いとイメージ最悪だが、とあるきっかけでロックファンだと分かり、交流するようになる。ロックンローラーになりたいと言っているが、実は楽器を全く弾けない。



■ 各ルートとエンディングについて

 あらすじ以降を雑にまとめます。大事なことを書いて無なかったりもします。また、クリアした順番にエンディングを書いていきます。エンディングやルート名がないので、名前は適当に付けています。

共通

 花井是清に誘われてギターを習うことになった対馬馨。花井是清は妹である三日月を呼び出し、馨とバンドを組ませようとしていた。バンドの名前は「Dr.Flower」。二人は必死に練習をしていたが、ある日花井是清は自殺した。馨と三日月は葬式で棺に収まった花井是清に練習していた曲をぶつけると、その動画が話題となり、有名な音楽会社からデビューの声がかかる。しかし二人は特に音楽活動をすることなく普通の生活に戻っていった。
 ただ、馨は迷っていた。このまま医大を受けるべきなのか。それとも何かをすべきなのか。馨は迷いながらも、知り合いのバンド・プテラノドンのボーカルに誘われるままバンドのサポート要員として活躍することとなる。

 私が本作を通して一番絶望したのがこれ、花井是清の自殺です。あまりにも唐突すぎる。そして何も語ってくれなさすぎる。楽しく音楽活動をして、楽しく遊んでいたのに、死ぬ時は何も残さず一瞬で終わる。あまりにもひどすぎるだろ。
今後のストーリーはすべて、花井さんという音楽に囚われている話です。

夜間学校エンド

 人生について悩んでいた馨は弥子の話を聞き、堅実に人生を生きるべきだと決意した。バンドのサポートを辞め、その後勉強に励んでいたが、夜間学校のクラスメイトたちが「文化祭でライブを披露しよう」と提案する。唯一のバンド経験者である馨は頼られるまま、音楽を捨てられぬままバンド活動をする。
しかし、文化祭当日にボーカルは風邪を引いてしまった。急遽弥子が代打として登壇し、大盛り上がりで文化祭を終えたのだった。

 別名弥子エンド。主人公は高校を退学してぶらぶらしていた時に彼女と出会い、夜間学校の話を聞いて入学してみて、実際学校が楽しかったそうなので、弥子に対する一般的な好意や尊敬は元からあったそう。

 雑あらすじで私が除外したせいでもありますが、恋愛描写が一切無いように見えますね。違います。このルートでは弥子ちゃん勝手に恋愛してます。弥子ちゃんじゃありません。弥子ちゃんは最初から好感度MAXなんです。
馨くんは「音楽を捨てるか、捨てないか」にずっと悩み続けており、「文化祭という形で意図せず音楽に関わってしまったのに本気で取り組む」んですよ。ずっと音楽に真剣なんですよね。本人が自分の感情に疎いせいもあるのか、馨くんの弥子ちゃんへの恋愛感情はプレイヤーである私が知らないうちに育っていたようです。
ただこれ、プレイヤーの私が「勉学に専念させる」という選択をさせて歪めてしまったせいで選んだことだったりしないですよね?「尊敬できる女性にここまで好意を抱いてもらうなら、自分も好意を抱くべき」みたいなそんな判断で恋愛感情を育てていたり……してないよな!?大丈夫だよな!?
ラブラブ円満エンディングっぽくなっていますが、歪めてる罪悪感がすごいので心配しっぱなしでした。一応音楽への区切りは付けられてはいるけど、その未練は一生消えないし花井さんを引き摺るしかないので……。

 このルートでは作中で使われた文化祭の発表曲がとっても可愛くて良かったです。 1曲目はチャイムの音をベースにしたオリジナル曲、2曲目は曲名の通り未来に向かって歌うオリジナル曲、3曲目は学生になじみ深い校歌をアレンジ。文化祭ライブとして完璧な構成すぎる。
ただ元のボーカルの子が文化祭当日に風邪を引く展開はちょっと微妙だった……!ボーカルの子はあまり好きではなかったんですが、風邪を引いたことにより弥子ちゃんをヒロインにさせる舞台装置感が出てしまって可哀想に思ってしまいました。その後のフォローとして別日にライブさせてはいるけど、文化祭でやるのが大事なんじゃないかなぁ。

学校中退ルート

 人生について悩んでいた馨は弥子の話を聞き、音楽をやろうと決意した。その場合、自分は極端なので片手間で学業はできない。音楽一本にならざるを得ない。学校を中退することにした。
その後、馨は三日月を呼び出し、再び「Dr.Flower」を再結成する。花鳥風月のメンバーである香坂めぐる、めぐるの友人であり過去対バンしたこともある田崎京香、夜間学校のクラスメイトである金田。彼らを引き入れてバンドを結成した。インディーズとしては順調に人気が出ていたが、途中で田崎京香が脱退することになる。

 まさかの金田を誘う展開。クズだしビックマウスだし逃げ癖はあるけど明るく憎めず、生い立ちに同情できるところはあるけど悲壮感は無く、ロックの情熱だけは人一倍ある男。あまりにもモブっぽい立ち位置の金田が馨くんのバンドに入るとは思いませんでした。そしてこれが良いバランスなんですよ!このバンドは馨くんが集めたバンドであり、メンバーのめぐるちゃん曰く「馨が好きなタイプの思い込みが激しいバカ」が集まっています。メンバー間のやり取りが可愛いんですよねぇ。
馨くんが学校を辞めて音楽に集中するため、くたびれた家を借り、そこに金田が居着き、バンドメンバーが訪ねて泊まりに来たり、練習をしたり、合宿みたいなことをしたり、まさにバンドの青春感があって良かったな……田崎さんは家の都合で脱退しちゃったけど!

めぐるの過去を知るエンド

 香坂めぐるは過去にアイドルをしていた。親に言われるままに笑い、媚びを売り、歌い、踊っていた。あまりにもつまらなかった。そんな中、唯一好きな楽曲を提供してくれた人のもとへ会いに行き、ベースを習い、音楽の道を進んできたのがめぐるだった。しかし、その恩師は今は病気で、認知症を患っていた。
自分を忘れられ、音楽への想いを忘れ、家族を恋しがる。動揺するめぐるだが、「次のライブで恩師の曲を演奏し、配信越しで見せること元気づけよう」とメンバーから提案される。その提案を受けてライブをし、病院へ向かうと、恩師は一時的に意識を取り戻しライブのアドバイスを伝え、そして最後に「ライブがやりたい」と呟き、眠るように息を引き取った。

 別名めぐるエンド。恋愛感情を一切抱かず、抱かれず、慰めのためにセックスをし、親しい人として寄り添ってあげたエンド。このまま特に恋愛感情を抱かず普通にバンドをやっていただきたい。ただこれは馨くんの視点から見てるからそう見えるだけで、馨くん視点以外だったらちゃんと恋愛してるように見えるのかもしれない。何もわからなさすぎる。

 恩師(朝川老人)のやったことはとんでもないし、ファンや家族が見限ったのも当然だし、報われて欲しいとは一切思わなかったけど、めぐるちゃんにとっては大事な人だし、めぐるちゃんに物凄く影響を与えているんですよね。そしてこのルートでは馨くんは「香坂さんみたいに音楽はただ楽しめればいい」と選択するけど、その選択によって「花井さんを失った馨くん」がめぐるちゃん自身の思想・立場と近いと気づいたんじゃないかな。だからこそ自己開示ができるようになった印象を受けた。悪い言い方をするなら傷をなめ合える関係性ですね。でも「同じ」「似てる」って安心するもんね。
最終的に区切りをつけられてたし、「音楽は楽しい」で進めていけたので良かったと思う。

 あと朝川老人が忘我の状態で「家族に会いたい」と願うのも、最後の最後に自分が定めたろくでなしに戻って「ライブがやりたい」と呟いて眠ったのも「人間」を感じられてすごく良かったな。しょうがないね。人間ってのはあやふやでどうしようもなくて自己中心的だからね。それに救われたり傷ついたりしちゃうからこそ業が深いんだな。

バンド離散エンド

 新たなメンバー・風雅を加えて活動するも、Dr.Flowerは売れない。インディーズでくすぶっている時、三日月を指名したソロデビューの話が舞い込んできた。三日月の才能を活かしきれてないと自覚している馨は、三日月にソロデビューをすべきだと伝え、脱退させる。
その後、三日月無しで活動していても特に動員は落ちなかったが、爆発的に売れもしなかった。馨はバンドを解散することを決め、テーマバンドを組んだりソロ活動に勤しむ。
気分転換がてら路上で演奏した時に出会った澄(すみ)と関係を持ち、ヒモのような関係性となる。しかし澄に子供ができた。馨は堕胎するよう伝え、澄は渋々了承する。だが馨は金田と話すことで考えを改め、澄のために音楽を捨てまともな仕事に就こうとするも、澄は交通事故で死んでしまった。そして馨は、その衝動のまま曲を作った。

 通称澄エンド。もしくはBADエンド。唐突に出てくる澄ちゃんと売れないバンドマンヒモ生活をすることになり、最終的に結局音楽を捨てられず大事に思っていた人の死さえ利用して自分の情動を音楽に向ける。あまりに歪すぎる。
どうやっても音楽を捨てられず、その音楽は所属レーベルの社長にすら「よくわからない」と言われ、憧れた花井是清のように音楽に囚われている。これが人生ってこと……!? とんでもないものを見せられました。

メジャーデビューエンド

 新たなメンバー・風雅を加えて活動するも、Dr.Flowerは売れない。インディーズでくすぶっている時、三日月を指名したソロデビューの話が舞い込んできた。三日月の才能を活かしきれてないと自覚している馨だが、三日月にはソロデビューしないでくれと伝えた。
 その後、馴染みのライブハウス・阿呆船でDr.Flowerのワンマンライブをやらないかと誘われる。ワンマンライブを成功させると、ソロデビューを指名したプロデューサーが再び声をかけてきた。今度はバンドとして指名してきたらしい。彼と組んでアニメタイアップ曲を作り、バンドは順調に売れ、各メンバーもそれぞれ売れ、金に困らないくらい稼げるようになってきた。しかし、三日月が不安定になってきてしまった。
三日月の不安定さを支えるため馨は同棲をし始めるが、ある日突然三日月が顔に酸をかけられる。そのせいで三日月は歌えなくなってしまった。バンド活動を休止し、二人は穏やかに過ごしていく。
 そんなある日、昔世話になったSTAR GENERATIONのボーカリスト・八木原から一夜限りのスタジェネ復活ライブを行うと誘いが来た。馨はそのライブで花井是清の幻覚を見る。
「おれは考え過ぎていた。音楽の感動はまやかしだ。でも、だからなんだって言うんだろうね?それがなんであろうと、おれたちには音楽が必要なんだ」
 馨とは別に、八木原の言葉で三日月も歌えるようになり、Dr.Flowerは再びバンド活動を再開することができた。久々のライブで三日月は昔の通り客先に向かって声をかけて歌い始める。
「いきます」
音楽は、まだまだ続いていく。

 本当にちょっとしたことがきっかけで売れるか売れないかが分かれていたのがあまりに辛い。具体的な数字としての動員が見えないこと、花井是清の関係者だからあのメジャーレーベルが声をかけてるはずという遠慮、ワンマンライブをやらないかと声をかけ辛い雰囲気。でも現実ってこうだよね。本当にちょっとしたことなんだよね。人生を見せつけられている。

三日月のアシッドアタックは本当にひどすぎてショックを受けたけど、これも理不尽は何の前触れなく襲い掛かるってことを伝えてるんですよね、たぶん。花井さんの自殺と同じだよね。ひどいよ~……。

 そしてあまりにすごいのが馨くんが探していた答えが目の前にあったこと。三日月は最初から「音楽は音を奏でるだけじゃない、すべて音楽だ」と言っていた。ただ馨くんには響かなかった。でも花井さんの幻覚を見て、その幻覚が「考え過ぎていた。おれたちには音楽が必要なんだ」と言ったからこそ三日月の言葉が響いてきた。このルート以外はあんなに悩んで遠回りして、答えを見つけられてないのに、目の前に答えがあった。言葉は正しさなどではなく、受け入れる当人の心境やタイミングによるんですよね。だからなんてことない言葉が刺さったりするし、印象深かったりするし、逆に全く刺さらなかったりする。これって音楽も一緒なんですよね。でもそんなことを難しく考えず、感じるまま、そのまま楽しめばいいんだと。だって我々には音楽が必要だから。
いや~~~凄まじい話だった。

そして、ラストの三日月の「いきます」からライブが始まりエンディングムービーが流れるのが最高すぎる。この作品は花井さんのライブから始まって、自分たちのライブで終わるんだよ。これがMUSICUS!の物語なんだよな。ありがとうありがとう!



■ いろいろ

 クリア後に思ったこといろいろ。

馨くんは花井是清を探し続けている

 最初から最後まで、馨くんにとって音楽を届けたい相手は花井さんだったんでしょうね。三日月の言葉を借りるなら、花井さんが音楽だった。それが急に奪われて、今度は逆に音楽の中に花井さんを探し始めてよくわからないことになっちゃったんだろうな。馨くんは作中で「花井さんを救い出したかった」と言ってるけれど、花井さんを自殺させた(と思っている)罪を音楽を通して赦されたかったんですよね。
あの、花井是清を攻略するルートはないんですか?この人生はありませんか?

クリエイターとしての価値観の話

 本作は音楽を通して「自分の作ったものをそのまま届けたい、そのまま受け取って欲しい、わかってほしい」という欲望や「すべての創作物はストーリーしか見られてない」という諦念、なぜ我々クリエイターは音楽をやり続けるのかという問いをずっとやり続けています。ほんのちょっとの違いで天と地ほどの人生になります。
そして最終的に「難しく考えるな、音楽を楽しめ」という結論に至ったように思えました。でもその結論に至ったとしても結局色々悩み始めると思うんです。人間だからね。ずっと己に問い続けるしかないんだろうな。それでも音楽をやめられない人たちの話でした。

 馨くんが序盤で売れないバンドマンたちのことを「貧乏だからってやめたくてもやめられない、音楽に呪われて煉獄で生殺し」と表現するのですが、本当にその通りだし、自分もそうなっていくのも凄まじかったです。「必要だからやる」、本当にただそれだけの単純なことなんだよな。

人生を見せられてる感

 本作はいつものライターの雰囲気と異なってる気がしました。今までは「このひどい世の中でも、美しいものはある」と言うメッセージ性を感じていて、キャラの人生の1シーンを切り取ってた印象だったんです。
それが本作だと切り取りではなく、そのままお出しされている感じでした。何かに憑りつかれている人間のどうしようもなさや迷い、世界の理不尽さを見せてられていて、理由を話さずにスタジェネが復活ライブをしたのも、花井さんがなぜ死んだのか遺書の中でも教えてもらえないのも、三日月がアシッドアタックされたのも、全部「唐突な理不尽やどうしようもないことはある。正解なんて教えてもらえない。でも飲み込むしかない。進むしかない」と言われてるような。
だからこそ「見てくださいよ。この人間ってやつはどうしようもないんだけど、どうにかして進むしかないんですよ」と言われているような気がしました。そして「どうにかできなかったらこうなる」を突きつけられてあのBADエンドになるわけですね。えぐ……。

他の作品が人間賛歌だとすると、本作は誰かに対する応援歌に見えるんですよね。応援はするけど理不尽さを受け入れろよ感がすごい。

各エロシーンの特徴がすごい

 弥子ちゃんとは満を持しての気を遣った初セックス、めぐるちゃんとは慰めセックス、三日月とは三日月の頭の中を空っぽにする初セックスと慣れたセックス、澄ちゃんとは自暴自棄で相手を慮らないセックス。抜けるかどうかとかじゃないんですよ。これ、コミュニケーションとして表現されてるんですよね。男性向けエロでこういう風にコミュニケーションとして描写するのが本当にすごい。セックスで相手への向き合い方がわかるの、面白い。
ただね弥子ちゃん、「精子入りコンドームを記念に取っておきたい」と言う発言にはドン引きだよ。

 そしてセックス中に謎に哲学を考え始める馨くんは「頭が良いのにバカ」を体現していて爆笑しました。面白過ぎるだろ。そもそも、馨くんは「性欲自体はあるけどお互いの恥部をこすり合わせるセックスって行為がシュールであんまり好きじゃない」らしいので、しょうがないかもしれない。

花鳥風月のアルバム

 私は作中で思いました。花鳥風月の曲をもっと寄こせよと。そして調べてみたらなんと「花鳥風月1stAlbum復刻プロジェクト」なるものがやっていたらしいじゃないですか!一般販売もしてるらしいじゃないですか!サンプル曲もめちゃくちゃ良いじゃないですか!!

タワレコ限定販売だそうです。

はい、購入しました。まだ在庫が残ってくれてありがとう!翌日配送してくれるタワレコありがとう!花井さんの諦念と苦しみと藻掻きと音楽はクソだという主張とお前らはクソだという叫びがこれでもかと詰まっているアルバムでした!素晴らしかったです!
ただ、花鳥風月ってこんな経歴だったそうなんです。

(略)
その後、2ndアルバム「極楽鳥」をリリース。
(略)
翌年、シングル「這いずりまわるものたちの唄」を発表。(略)この曲を収録した3rdアルバム「花信風」はバンドの最大セールスを記録する。
(略)
4thアルバム「ハロー。」を発表。

花鳥風月1stAlbum復刻プロジェクト

うん、全部出してくれないか?

花鳥風月のシングルもある

 公式サイトを見ていたら花鳥風月のシングルが配信でありました。上記のシングル「這いずりまわるものたちの唄」ですね。即買いました。おいおいおい。おいおいおいおい。花井是清が童謡オマージュ曲とか、おもしれ~じゃん!

Dr.Flowerのライブがある

 私はプレイ中に「三日月はぐらぐらを歌え。なぜ歌わないのか、期待させておいてひどい。歌ってくれ」と連呼していました。
そして本作をクリア後、OVERDRIVE代表のbanbooさんに(!?)Dr.Flowerの3Dライブがあると教えてもらいました。

そしてこれを見たら三日月がぐらぐらを歌ってるんですよ!作中で聞いたことのない新曲がいっぱいあるんですよ!あまりにも太っ腹すぎないか?ありがとう!

 ちなみに、「三日月はぐらぐらを歌え」と連呼する私はこのライブで成仏できましたが、「花井是清はCallingを歌え」と連呼する私はいまだ成仏できません。現世に残留決定です。ぐらぐらは後ろ向き遺書だけど、Callingは前向き遺書みたいなもんじゃん!本人も歌ってくれぇ~!

Dr.Flowerの配信曲がある

 なんとDr.Flowerは曲を配信しているようです。えー!ありがたい!
1stアルバムはNIGHT SCHOOLERSを含めたアルバム、2ndアルバムは新規オリジナル曲集のようです。これがライブで歌ってた曲か!豪華~!






■ まとめ(ネタバレなし)

 プレイ時間は30.5時間。音楽に出会い、音楽を捨てようと悩み、結局どう足掻いても捨てられない人たちの人生を覗き見てしまいました。とんでもないものを見せられてしまった。OVERDRIVEの最終作はすごかったです。
すでにブランド活動が終了しているため、いずれ購入できなくなるかもしれません。プレイしたい場合は早めにプレイしよう!ね!体験版だけでもいいから!先っちょだけでいいから!

・免責用
本記事の画像や一部の文言は©OVERDRIVEの著作素材を引用しております。引用している著作素材は著作権者に帰属します。これらは他への転載を禁じます。

©OVERDRIVE

備忘録用メモ。SNSでの実況スレッドです。

同ライターの別作品感想を繋げておきます。

ゲーム感想まとめ

いいなと思ったら応援しよう!

はずき いただいたチップで娯楽作品を購入し、感想記事にまとめます。