見出し画像

電動車いすサッカーの楽しみ方

はじめに

体育館の床を、大きなボールが低く転がっていく。選手はジョイスティックをわずかに倒し、ボールの少し先へ回り込む。次の瞬間、車いすを鋭く旋回させると、前方のガードから放たれたボールが6m幅のゴールへ伸びていきます。

電動車いすサッカーは、電動車いすの前に取り付けたガードでボールを押し、運び、蹴る4人制のスポーツです。足の代わりになるのは車いすですが、ただ正面からボールを追う競技ではありません。進路、角度、速度、味方との距離を読み、限られた操作で次の空間をつくるところに、この競技ならではの奥深さがあります。

障害の有無を問わず競技用車いすへ試乗できる普及イベントもあります。一方、誰でも参加できる試乗体験と、国内外の公式競技へ選手として出場するための登録、障害に関する条件、クラス分けは別のものです。まずは借りて動かす1回を楽しみ、その先へ進みたくなったときに、自分に合うチームと競技環境を1つずつ確かめていきます。


電動車いすサッカーの基本情報

電動車いすサッカーは、2つのチームが1チーム4人で対戦し、そのうち1人がゴールキーパーを務めます。男女で競技を分けず、コートには年齢や障害の程度が異なる選手が一緒に入ります。公式競技では4人に加えて最大4人の交代要員を置くのが基本ですが、大会規定によって人数が調整されることがあります。

コートは標準で長さ28m、幅15mです。規則上は長さ25〜30m、幅14〜18mの範囲が認められ、主にバスケットボールコートほどの硬く滑らかな床を使います。ゴールはネットの付いた枠ではなく、6m離して立てた2本のポストで示されます。

ボールは直径13インチ、約32.5cmです。一般的なサッカーボールよりかなり大きく、床を低く転がるため、選手は電動車いす前方のガードで押し出したり、側面を使って方向を変えたりします。身体の一部で蹴るのではなく、車いすとガードを1つの競技用具として操作します。

公式規則で認められる電動車いすは4輪以上で、前進・後進とも最高速度は時速10km以下です。前方には、硬く、しっかり固定され、尖った部分やボールを抱え込む凹面のないフロントガードが必要です。車輪の間へボールを挟んだり乗り越えたりしない構造、適切な側部サポート、見やすい選手番号なども確認されます。

ラップベルトは必須で、普段から必要としている脚、足、胸のベルトも使います。頭や体幹を支えるヘッドレスト、胸・肩の支持具、人工呼吸器や酸素など、選手が安全に活動するための重要な機器は競技でも尊重されます。生活に必要な装備を競技のために外すのではなく、本人に合う姿勢と安全を保ったうえで、車いす全体が規則に適合するよう調整します。

2026年時点の公式競技規則では、試合は前後半各20分で、ハーフタイムは10分以内です。用具の故障、選手の安全確保、負傷などで止まった時間は追加されることがあり、実際の所要時間は40分より長くなります。体験会ではコートを狭くし、速度を落とし、短いミニゲームにすることが多いため、初回から公式試合の長さと強度で動くわけではありません。

特徴的な規則が「2対1」です。ボールから3m以内に同じチームの2人と相手1人がいるだけで、直ちに反則になるわけではありません。同じチームの2人がそのプレーへ関与し、相手の動きを妨げたり、位置による利益を得たりしたと判断されると反則になります。味方を助けようと近づきすぎるより、1人がボールへ向かい、もう1人が次のパスコースへ離れる判断が大切です。

自陣ゴールエリアには、同じチームの3人以上が同時に入れません。意図したかどうかにかかわらず「3人目」になれば反則となるため、守備では全員がゴール前へ集まらず、誰が残り、誰が外へ出るかを瞬時に決めます。電動車いすサッカーでは、ボールから離れることも、ゴールを守るための積極的なプレーです。

ガード同士のタックルや適切なチャージは認められますが、電動車いすのほかの部分を当てる行為、速い速度や過剰な力で故意にぶつける行為、相手の側面や後方へ接触して進行を止める行為は認められません。迫力のある接触を楽しむ競技であるからこそ、どこを、どの角度で、どの強さまで当てられるかを指導者と審判から学びます。

公開の見学・試乗体験には、障害の有無にかかわらず参加できる例があります。しかし、国際公式競技では、重い身体障害による永続的な活動制限があり、スポーツを行うために電動の移動機器を必要とすることが適格性の前提です。適格と判定された選手はPF1またはPF2に分けられ、指定競技会ではコート上のPF2は1チーム最大2人までとなります。

国内の公式戦にも、協会への選手登録、障害者手帳、大会ごとのエントリー条件などがあります。クラブ練習や普及イベントに参加できたことが、そのまま公式戦への出場資格を意味するわけではありません。体験、地域での継続、国内公式戦、国際競技をそれぞれ別の段階として考えると、入口の広さと競技の公平性を無理なく両立して理解できます。

初めての1回は、受付、車いすの調整、安全説明、基本操作、ボール練習、ミニゲーム、片付けまで含めて2〜3時間ほどを見ておくと安心です。一般向けイベントでは試乗時間が短い場合もあり、クラブ練習では準備や休憩を含めてさらに長くなることがあります。屋内で通年楽しめる一方、広い体育館、競技用車いす、ガード、ボール、充電と整備の環境が必要なため、施設やチームへの依存度は高い趣味です。

走ったり足で蹴ったりしないため、身体的な負担は小さく見えるかもしれません。実際には、ジョイスティックを操作する手、指、顎などへの集中、頭や体幹を保つ姿勢、急な旋回と接触、長時間の座位が重なります。負担が出る部位や疲れ方は1人ずつ大きく異なるため、運動量を一律に決めず、本人の普段の体調管理と休憩方法を優先します。

電動車いすサッカーにかかる費用

最初は、競技用車いすとボールを借りられる見学・試乗体験を選びます。2026年には、障害の有無を問わず参加でき、無料、予約不要、途中参加・退出可という協会主催イベントの例があります。この場合、初回に必要なのは会場までの交通費と、車いすを使わない参加者の上履きなどです。

無料イベントでも、必ず十分な試乗時間が確保されるとは限りません。参加者が多い日は短時間になることがあり、クラブの個別体験では施設費や保険料が必要な場合もあります。申込み前に、参加費、試乗時間、貸出車の数、同伴者の扱い、駐車場と送迎スペースを確認します。

クラブで続ける費用は、会費、体育館代、スポーツ保険、協会登録、大会参加費、交通費、遠征費などに分かれます。協会登録料は登録区分と年度によって異なり、2026年の地域大会にも1人1,000円の参加例と、無料の大会例があります。すべての練習や大会に同じ料金がかかるわけではなく、クラブ会費と都道府県協会の費用も地域ごとに異なります。

年間費用をつかむため、月2回の練習へ1回1,000円で参加すると仮定します。年間24回で24,000円、大会1回1,000円、保険や小さな消耗品の予備費5,000円を加えると、年間30,000円です。これは全国共通の料金ではなく、協会登録、個人用の競技用車いす、介助、車いす対応の交通費、宿泊費を含みません。実際には練習参加費がかからないチームも、月会費制のチームもあります。

生活で使う電動車いすは、趣味のためだけに買う道具ではありません。座位保持、操作方法、移動、呼吸や医療機器との関係を含めて個別に選ばれた機器であり、その購入費をそのまま「電動車いすサッカーの初期費用」と数えるのは適切ではありません。普段の車いすで活動できるかは、本人、チーム、車いす業者や支援者で確認します。

生活用や簡易型の車いすに取り付けて、レクリエーションとして車いすサッカーを楽しむガードには、税込63,800円の市販例があります。ただし、この製品には競技用電動車いすと一緒にプレーできないという注意があります。気軽な車いすサッカーの用具と、公式競技へ適合するフロントガードを同じものと考えず、購入前に用途と対応車種を確かめます。

本格的な競技用電動車いすは、速度、旋回、重心、ガード、座位保持を競技に合わせて設計し、身体に応じて調整する機器です。海外メーカーの販売例には、本体とサッカー用ガードで9,500米ドルという表示がありますが、日本での実際の負担には為替、輸送、関税、採寸、座席や操作装置の変更、修理体制が関わります。高額なため、表示価格を円へ単純換算して全国共通の購入額にはできません。

ボールにも海外販売で85米ドルほどの例がありますが、通常はチームや施設が備えます。ベルト、ヘッドレスト、胸や脚の支持具は、競技の小物ではなく選手の姿勢と安全に関わる個別装備です。価格だけで市販品を選んだり、他の人のものをそのまま流用したりせず、本人に合う方法を専門家と相談します。

費用を抑える一番の方法は、無料体験、チームの貸出車、共同のボールを使い、購入を急がないことです。数回通って、操作方法、座位、運搬、整備を含めて続けられると分かってから、個人用ガードや競技用車いすを検討します。競技用車いすを先に買うより、継続できる会場と支援体制を先に見つけるほうが、趣味としての土台になります。

電動車いすサッカーをおすすめする3つの理由

小さな操作が、大きなボールの軌道へ変わる

ジョイスティックを少し倒すだけでも、進入する角度が違えば、ボールの行き先は大きく変わります。正面でゆっくり押す、ガードの端で斜めへ送る、ボールの横を通ってから旋回する。手や指だけでなく、顎や足など、自分に合う方法で操作する選手もいます。

慣れてくると、車いすを鋭く回転させてガードから強いボールを放つスピンキックにも出会います。勢いだけで回るのではなく、ボールとの間隔、回転の中心、周囲の安全、蹴ったあとの向きまで整って初めて、狙った軌道が生まれます。ごく小さな入力が、体育館を横切る1球へ変わる瞬間は、この競技ならではの手応えです。

近づかない判断が、味方の道を開く

球技では、味方の近くへ行けば助けられるように思えます。けれども電動車いすサッカーでは、2対1の規則があるため、ボールへ2人で集まると攻撃が止まりやすくなります。1人が相手とボールを争う間、もう1人は3mの外へ離れ、次のパスを受ける角度をつくります。

守備でも、3人目としてゴールエリアへ入らない位置取りが必要です。ボールのない場所で止まる、少し後ろへ下がる、相手の次の進路へ先回りする。その静かな判断が、数秒後のパスや守備を成立させます。速さだけでなく、空間を譲ることがチームを前へ進める面白さがあります。

車いすの操作が、4人の共通言語になる

電動車いすサッカーでは、年齢や性別でカテゴリーを分けず、身体の動かし方が異なる選手が同じ競技規則の中で役割を持ちます。誰かを助ける人と助けられる人に分けるのではなく、パスを出す人、進路をつくる人、ゴールを守る人として互いを見ます。

声を出すことだけが連携ではありません。車いすの向き、止まる位置、相手へ見せる進路も、味方への合図になります。操作方法が1人ずつ違っても、4人が同じ空間を読んで1つの攻撃をつくれるところに、競技としての対等さとチームスポーツの喜びがあります。

始める場所と最初の道具を選ぶ

最初は、日本電動車椅子サッカー協会の大会・イベント情報や登録チーム、地域の障害者スポーツセンターから、見学・試乗体験を探します。障害の有無を問わない普及イベントなら、競技用電動車いすに初めて触れる人も参加できます。日常的に競技を続けたい人は、自宅から通えるクラブへ見学を申し込み、練習日、対象者、貸出用具を確認します。

申込みでは、「競技を見たい」「競技用車いすへ試乗したい」「選手として継続したい」のどれに近いかを伝えます。公開イベントで1度試乗する条件と、クラブへ所属して公式戦を目指す条件は異なります。障害者手帳、選手登録、クラス分け、年齢などは、参加したい大会が具体的になってから主催者へ確認します。

自分の電動車いすを持ち込む場合は、メーカーと機種、寸法、最高速度、操作方法、ガードの有無、座位保持具、医療機器を事前に伝えます。生活用車いすへその場で簡易な板を付ければ競技用になるわけではありません。ガードの強度や固定、車輪周辺の隙間、突起、ベルト、速度を点検できる指導者と整備環境が必要です。

競技用車いすを借りる場合は、座面、背もたれ、ヘッドレスト、肘掛け、ジョイスティックの位置を本人に合わせます。体幹が傾く、腕が届きにくい、視界が遮られる、呼吸がしづらいと感じたら、始める前に調整を頼みます。ラップベルトは必ず使い、普段必要な脚、足、胸のベルトや支持具も省きません。

初回の持ち物は、動きやすい服、室内用の靴、飲み物、タオル、体温調整用の上着が基本です。車いすを使用している人は、必要に応じて充電器、予備の操作部品、クッション、服薬やケア用品、緊急連絡先も準備します。垂れ下がるひも、バッグ、ブランケットの端などが車輪やガードへ入らないよう整えます。

会場については、段差のない入口だけでなく、車いす対応の駐車区画、送迎車の乗降場所、エレベーター、広い更衣・休憩場所、トイレ、充電場所を確認します。介助者や家族の入場、見学位置、移乗やケアに使える場所、途中退出の可否も大切です。「体育館がバリアフリー」で終わらせず、到着から帰宅までの動線を具体的に聞きます。

初めて電動車いすサッカーを体験する1日の流れ

前日まで|体験の範囲と貸出条件を確かめる

参加費、受付時間、試乗できる人の条件、予約の要否、貸出車の台数を確認します。障害のない人も参加できるイベントなのか、選手候補を対象にしたクラブ体験なのかを分けて見ます。公式競技への登録やクラス分けは、初回の試乗に必要な条件と決めつけません。

自分の電動車いすを持ち込むときは、ガードを借りられるか、車いすの適合確認を受けられるかを聞きます。介助、医療的ケア、移乗、充電に必要な時間と場所、撮影や同意書の扱いも事前に確かめます。

出発前|充電、体調、移動手段を整える

車いすの充電残量、タイヤ、ジョイスティック、座位保持具を普段の手順で確認します。競技用の装備を持参する場合も、本人や家族だけで不慣れな改造をせず、会場で指導者の点検を受けられる状態にします。

睡眠、食事、水分、服薬、呼吸や体温の状態を確かめ、いつもと違う痛みや強い疲れがあれば見学へ切り替えます。交通機関、福祉車両、介助者の予定には、受付だけでなく積み下ろしとケアの時間も含めます。

到着後|入口からコートまでの動線を確認する

受付、トイレ、休憩場所、充電場所、コート、非常口を確認します。荷物や充電コードは走行範囲へ出さず、同伴者とスタッフの待機位置も決めます。本人の車いすや身体へ触れる必要があるときは、先に声をかけ、どの方法を希望するかを尋ねます。

競技用車いすへ移乗する場合は、会場の設備と本人が普段使う方法を優先します。急いで持ち上げたり、ジョイスティックを許可なく操作したりせず、姿勢が落ち着いてからベルトと支持具を確認します。

開始直後|停止と低速操作から覚える

最初に、電源、速度設定、前進、後進、旋回、停止、緊急時の合図を教わります。競技用車いすは、生活用の電動車いすと加速や旋回半径が異なることがあります。ボールへ向かう前に、直線走行、目印で止まる、左右へ曲がる動きを低速で試します。

次に、ラップベルト、脚や胸のベルト、ヘッドレスト、ガードの固定を確認します。身体がずれる、操作部へ届かない、周囲が見えにくい、呼吸が苦しいといった違和感は、我慢せずその場で伝えます。

活動の前半|大きなボールを止め、まっすぐ運ぶ

静止したボールへ正面から近づき、ガードの中央でゆっくり押します。近づきすぎてボールへ乗り上げないよう、ガードと車輪の位置を意識します。次は転がってくるボールの先へ入り、正面で止める、少し斜めへ受ける、味方の方向へ押し出す動きを試します。

同じ強さで操作しても、ガードの中央と端ではボールの角度が変わります。ボールだけを見続けるのではなく、進行方向、ゴールポスト、味方、相手、コートの境界を順に確かめます。まずは強いシュートより、狙った線へゆっくり送れたことを成功にします。

活動の中心|角度、距離、味方の位置を1つの攻撃へつなぐ

2人1組で、短いパスを交換します。受け手はボールの正面で待つだけでなく、次に進みたい方向へ車いすを向け、ガードの端で受けられる角度をつくります。出し手も相手の現在地ではなく、数秒後に通れる場所へボールを送ります。

相手役を1人加えると、2対1の規則が動きに関わってきます。味方がボールへ近づいたら、自分は3mの外へ離れ、次のパスコースをつくります。ただ輪の外へ逃げるのではなく、相手が向きを変えにくい側、ゴールへつながる側、守備へ戻りやすい側を選びます。

守備では、ボールへ正面から突っ込まず、相手が進みたい線へ先に車いすを置きます。ガード同士で適切に競る練習をし、相手の側面や後ろへ当てない角度を覚えます。衝突の強さを上げる前に、相手の進路を限定し、味方がボールを取れる方向へ誘う感覚を試します。

ゴール前では、キーパーを含めて3人目が自陣ゴールエリアへ入らないよう声をかけます。「入る」「出る」「右」といった短い言葉を決め、誰がゴールラインを守り、誰がエリア外でこぼれ球を待つかを交代します。全員で下がるより、1人が外に残ることで次の攻撃も始めやすくなります。

旋回してボールを送る練習では、最初から大きなスピンキックを狙いません。周囲に人や車いすがいないことを確認し、小さな回転でガードのどこに当たるかを見ます。回転の途中には視界から外れる方向があるため、指導者の合図と十分な安全範囲が必要です。

慣れてきたら、ガードの中央で押す球、端で角度をつける球、回転を使う球を同じゴールへ送り、速さと軌道を比べます。初めて狙った味方へパスが通った瞬間、2対1を避けて次の場所へ移れた瞬間、ゴール前で3人目にならず守れた瞬間が、この競技らしい小さな達成です。

活動の後半|短いゲームで4人の役割を交代する

短い時間のミニゲームを行い、ゴールキーパー、ボールへ向かう人、外でパスを待つ人を交代します。初心者同士では速度を抑え、接触を限定し、2対1とゴールエリアの人数を中心に覚えます。一度に公式規則のすべてを再現する必要はありません。

ボールへ触れた回数だけでなく、味方のために離れた位置、相手の進路を安全に狭めた場面、守備から攻撃へ向きを変えられた場面も振り返ります。操作が乱れたり姿勢が崩れたりしたら、ゲーム途中でも休憩へ移ります。

終了後|身体と車いすを点検し、次の1つを決める

姿勢のずれ、皮膚への圧迫、首、肩、腕、手、顎などの疲れ、呼吸や体温の変化を本人の普段の方法で確認します。ガード、ベルト、タイヤ、ジョイスティック、バッテリーに異常がないかも見て、貸出車は会場の手順で返します。

最後に、動かしやすかった方向、難しかった停止位置、通ったパスを1つずつ言葉にします。「速く走る」ではなく、「味方がボールへ行ったら3m外へ出る」など、次回に試す行動を1つ決めると上達を追いやすくなります。

安全に楽しむために確認したい5つのこと

ベルト、支持具、ガードを一式で点検する

ラップベルトを必ず使い、普段必要な脚、足、胸のベルト、ヘッドレスト、体幹の支持具を整えます。フロントガードだけ付けば競技できるわけではありません。ガードの固定、尖った部分、ボールを挟む隙間、車輪と支持具の位置まで、指導者や整備担当者と点検します。

借りた競技用車いすも、座ればそのまま安全とは限りません。身体の傾き、操作部までの距離、視界、呼吸、足や腕の位置を確かめ、本人に合わないときは別の車いすや見学へ変更します。

接触できる場所と強さを、低速で覚える

認められるのは、基本的にガード同士の適切なタックルやチャージです。相手の側面や後方へ故意に当てる、車いすのガード以外の部分をぶつける、過剰な速度や力で進路を止めるといった行為は避けます。

初心者は速度を下げ、接触なしのパス練習から始めます。止まれない、操作が遅れる、相手との角度が分からないと感じたら、競り合いへ進まず、停止と方向転換へ戻ります。

旋回する前に、見えない側の安全を確かめる

スピンキックは大きな魅力ですが、回転中にはボールや周囲の選手が見えにくくなる瞬間があります。指導者が確保した範囲で、低速の小さな回転から練習し、人、車いす、壁、ゴールポストが進路にないことを確認します。

コート外にも十分な余白を取り、荷物、充電コード、撮影者を走行範囲へ置きません。緊急停止の合図を共有し、聞こえたらボールを追わず、全員がその場で止まります。

本人の体調管理と介助方法を優先する

長時間の座位、集中、旋回、接触による疲れ方は1人ずつ異なります。痛み、しびれ、姿勢の崩れ、息苦しさ、めまい、強い暑さや寒さなど、普段と違う感覚があれば休みます。休憩、食事、水分、服薬、吸引、体位調整などは、本人が日常で使っている方法と医療者の指示を優先します。

介助者やスタッフは、必要な手助けを決めつけません。身体、車いす、ジョイスティックへ触れる前に本人へ確認し、移乗や姿勢調整は慣れた方法で行います。競技への参加を急ぐために、本人の意思やケアの時間を省かないことが大切です。

バッテリー、故障、帰路まで含めて備える

充電残量、タイヤ、操作部、ケーブル、ガードを出発前と活動後に確認します。会場で充電できるか、充電器を持ち込めるか、故障時に車いすを安全な場所へ移せるかを主催者と共有します。公式競技では試合前に速度や用具の点検を受けます。

競技で電力を使ったあとも、帰宅まで電動車いすが必要です。生活用車いすを競技に使う場合は特に、帰路の残量と予備手段を先に考えます。福祉車両や交通機関が使えなくなった場合の連絡先も用意しておくと安心です。

経験を重ねると変わる5つの楽しみ方

第1段階|止まる、曲がる、ボールへ触れる

低速で直進、停止、後進、左右の旋回を行い、ガードの中央で静止したボールを押します。座位と操作部を調整し、自分が無理なく動かせる範囲を知ります。

強いシュートが出なくても構いません。合図で止まり、狙ったボールへ安全に近づき、ガードで触れられれば、競技の入口に立てています。

第2段階|パスと2対1の距離を覚える

ガードの中央と端を使い分け、短い距離で味方へパスを送ります。味方がボールへ近づいたら3mの外へ移り、2対1を避けながら次の受け場所をつくります。

ボールを持つ人だけでなく、離れる人の動きが攻撃を続けると分かる段階です。守備では正面からぶつからず、相手の進みたい線へ安全に入ります。

第3段階|4人で攻守の形を変えられる

ゴールキーパーを含む4人の位置を見て、パス、守備、ゴールエリアの出入りを選びます。誰かがボールへ向かう前に、次の人が受ける角度をつくり、守備から攻撃へ車いすの向きを変えます。

直線のキックだけでなく、角度をつけたパスや安全な旋回も使えるようになります。交流戦や主要な規則を使うゲームで、自分の役割を繰り返し再現できる段階です。

第4段階|趣味として高い完成度を目指す

相手の守備配置を見て、2対1を誘わないパスコース、セットプレー、ゴール前の人数管理を選びます。速度と接触を適切に使い、スピンキックも周囲を確認したうえで狙った場所へ送ります。

自分に合う競技用車いす、ガード、座位、操作装置を整え、国内大会で安定したプレーを目指す道もあります。大会へ出ることだけを意味せず、体調と移動に合わせて練習を続けられることも、高い完成度の一部です。

第5段階|競技へ入る道と環境を支える

上位大会や国際競技を目指し、クラス分けを含む競技条件の下で戦術を磨くほか、指導、審判、用具整備、クラブ運営へ進めます。体験者に合う車いすを選び、安全な速度と練習範囲をつくり、本人の意思を尊重した支援をチームで共有します。

第4段階が自分とチームのプレーを高い精度で実行する段階なら、第5段階は、次の人が見学から体験、継続へ進める環境を整える段階です。競技用具、会場、移動、介助をつなぐことも、電動車いすサッカーを長く楽しむ大切な役割になります。

電動車いすサッカーと一緒に読みたい関連記事

サッカーの楽しみ方

味方と幅を取り、相手の背後へパスコースをつくり、守備から攻撃へ切り替える考え方は共通しています。足でボールを扱うサッカーと、車いすのガードで空間をつくる電動車いすサッカーを比べると、同じ競技名の中にある戦術の広がりが見えてきます。


フットサルの楽しみ方

体育館ほどの限られたコートで、少人数が細かく位置を変えながらゴールを目指します。近い距離での判断、セットプレー、攻守の切り替えを別の身体操作で味わいたい人に、つながりの分かりやすい趣味です。


ボッチャの楽しみ方

障害の程度に応じた用具や方法を使いながら、狙う位置と次の1手を組み立てるパラスポーツです。速度や接触より、1球ごとの配置と精度へ集中したい日に、電動車いすサッカーとは違う静かな戦術を楽しめます。


指先の先に、4人で走る道ができる

初めて競技用車いすへ乗ると、少しの操作で車体が向きを変えることに驚くかもしれません。大きなボールをまっすぐ押すだけでも、近づく角度、止まる位置、ガードへ当たる場所で軌道が変わります。

やがて、味方がボールへ向かった瞬間に自分は少し離れ、その先へパスが届く道をつくれるようになります。電動車いすサッカーの速さは、最高速度だけで決まりません。4人が同じ数秒を読み、小さな操作をつないだとき、体育館の中に1つの攻撃が走り始めます。


休日のよりみち帖では、気軽に試せるものから、少しずつ時間をかけて深めていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。「次の休日は何をしよう」と迷ったとき、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。これからも思わず試してみたくなる趣味を丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。

ほかの趣味やレジャーも探してみたい方は、こちらの一覧から気になるものを覗いてみてください。

記事作成に使用している元情報や、データの整理方針についてはこちらで紹介しています。


いいなと思ったら応援しよう!