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フィードバックは「過去の反省」から「未来の栄養」へ―対話の本質と活かし方:いまのたかの組織ラジオ#003

 今野誠一氏(GOOD and MORE)と高野慎一氏(aima)によるユニット『いまのたかの』。マネジメントと組織の現場についてカジュアルに語る、「組織ラジオ」です。

 今回取り上げるのは、第3回目「良いフィードバック、ダメなフィードバック」です。組織運営や人材育成の現場で常に議論の的となる「フィードバック面談」をテーマに、実務でのリアルな違和感や本質的な目的が軽妙な語り口で解き明かされており、大変深い気づきが得られる内容でした。

フィードバック面談が抱える現場のリアルな不満

 組織において定期的に実施される評価面談やフィードバック面談ですが、現場での評判は必ずしも芳しくないのが実情です。対談では、社員に対するインタビュ―などで寄せられる生々しい不満の例が紹介されています。特に多く見られるのは、面談にかける時間が「わずか3分程度」といった極端な短さや、単に評価ランクや数字を伝えて終わってしまうケースです。

 さらに深刻なのは、評価の理由を聞かれた上司が「自分は良い評価をつけたが、社長や評価会議で下げられた」と言い訳をし、他者に責任を転嫁してしまうケースです。
 また、日頃蓄積された部下への不満や感情を面談の場になって一気にぶちまけるといった、指導の本質から外れた面談も散見されます。このように、面談が形骸化していたり、上司の感情の発散の場になってしまっていたりすることが、現場の不満を生む大きな要因となっています。

語源から読み解く「フィードバック」の本来の意味

 なぜフィードバックはうまく機能しないのでしょうか。そのヒントとして、対談では「フィードバック」という言葉のふたつの語源が紹介されています。ひとつ目は「軍事用語」に由来する説です。大砲を撃つ際、射手自身は筒元にいるため遠くの着弾位置や視野を正確に把握できません。
 そこで、少し離れた後ろから客観的に見ている人が「5度左にずれている」といった事実に基く客観的なデータを伝え、軌道修正を行わせます。つまり、本人が気づけない視野の外側にある「客観的事実」を伝えることこそが、本来の役割であるということです。

 ふたつ目の語源は「Feed(栄養を与える)」と「Back(返す)」の組み合わせです。相手の成長や役に立つための「栄養」を相手に返すという意味合いであり、決して相手を攻撃したり感情をぶつけたりすることではありません。これらの語源を踏まえると、フィードバックとは感情的にならず、相手の視野を広げるための客観的事実と成長の栄養を届ける営みであることが分かります。

日常の関わりと愛着が面談の質を決める

 フィードバックを効果的なものにするためには、半期に一度の面談という「点」の機会だけに頼らないことが極めて重要です。半年前の出来事を突然引っ張り出されて指摘されても、受ける側としては背後から切られたようなショックを受けるだけで、素直な納得感は生まれません。重要なのは、日頃から現場での行動を観察し、気になったその場ですぐに伝える「リアルタイムのフィードバック」を重ねることです。

 日常的にタイムリーなコミュニケーションが取れていれば、半期に一度の評価面談は「答え合わせ」の場となり、ブレや大きなギャップが生じにくくなります。そして、そうした日頃の観察を支える根底にあるのは、部下に対する関心や「愛着」です。関心を持っているからこそ変化や行動に気づくことができ、相手の成長を願うからこそ、その場で適切なアドバイスを渡せるのだといえます。

企業人手の視点から考える活かし方

制度の形骸化を防ぎ「対話の質」を高める手引き

 人事の立場として社内の評価制度やフィードバック面談の運用を眺めると、制度そのものの設計以上に「現場でどのように運用されているか」という対話の質が重要であると感じさせられます。どれほど緻密な評価シートや基準を作ったとしても、現場での面談がわずか数分で終わってしまったり、上司の言い訳の場になってしまったりしては、従業員のエンゲージメント向上や成長にはつながりません。

そ こで考えたいのが、評価制度の目的やフィードバックの本来の意味を、管理職層へ継続的にアナウンスし、意識のアップデートを促す取り組みです。単に「期日までに面談を終わらせてください」と促すだけでなく、「フィードバックとは相手に栄養を返し、成長を支援する時間である」という本質的なマインドを共有する機会を設けることが、一手として有効ではないでしょうか。

感情論を排し「客観的事実」に基づいた対話を促す環境づくり

 面談において上司が感情的になってしまったり、逆に過度に遠慮して必要な指摘を避けてしまったりする背景には、「何をどう伝えればよいか分からない」というスキルの不足も関係していると考えられます。大砲の語源にあったように、フィードバックの本質は人格の否定や不満の吐き出しではなく、「客観的な事実の共有」にあります。

 この点を社内に浸透させるために、評価面談時のガイドラインを作成したり、具体的な事実(Fact)に基づいた対話の手法を学ぶ研修を企画したりするアプローチが考えられます。「いつ、どのような行動があったか」「それによってどのような結果が生じたか」を冷静に整理して伝えるスキルを身につけてもらうことで、受ける側も感情的に反発することなく、自身の課題を客観的に受け止めやすくなるといえるでしょう。

リアルタイムなコミュニケーション(1on1等)の習慣化

 半期に一度の面談だけではどうしても「過去の反省会」になりがちであり、伝わる情報の鮮度も落ちてしまいます。日常的に気づいたその場で伝える文化を醸成するために、定期的な1on1ミーティングの導入や、日常的なフィードバックの習慣化をサポートしたいところです。

 日頃から小さな承認や軌道修正を積み重ねておくことで、評価面談の場が「突然の宣告」ではなく、お互いの認識を再確認し、次の期に向けた前向きな目標設定を行う場へと変化します。点ではなく線のコミュニケーションを促す仕掛けづくりは、社内の信頼関係を深める上でも極めて意義深いアプローチといえます。

過去の追及から「未来指向」のフィードバックへ

 対談の最後で触れられていた「未来指向」という視点は、組織の成長において非常に重要な示唆を含んでいます。フィードバックとなると、どうしても過去の失敗やできなかった理由の追及に終始してしまいがちですが、本来の目的は「これからどうするか」「次回の成功に向けて何を改善するか」という未来の行動に変革を起こすことです。

 評価面談の記録フォーマットや面談シートの中に、「次回に向けた具体的なアクションプラン」や「本人から引き出した解決策」を記入する欄を設けるなど、自然と意識が未来へ向くような工夫を取り入れたいものです。対話を「過去の評価」から「未来への投資」へとシフトさせていくことで、従業員が前向きに挑戦できる組織風土の醸成につながっていくといえるでしょう。


 『いまのたかの組織ラジオ』は297回で終了しましたが、まだ取り上げていない回を順次取り上げて、考察しています。


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