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緊急ではないが重要な「第2領域」へ挑む―縦割りを打破し、全社視座を養うこれからの委員会運営:いまのたかの組織ラジオ#289

 今野誠一氏(GOOD and MORE)と高野慎一氏(aima)によるユニット『いまのたかの』。マネジメントと組織の現場についてカジュアルに語る、「組織ラジオ」です。

 今回は、第289回目「本業は今日を支え、委員会は未来をつくる」でした。

 多くの企業において、部門横断的な課題を解決するために「委員会」や「プロジェクトチーム」が組織されています。しかし、その多くが有効に機能していないという現実があります。よく見られる光景として、各部門の代表者が集まり、それぞれの進捗や現状を報告するだけで終わってしまうケースが挙げられます。本来であれば、部門の垣根を越えて活発な議論が交わされ、組織としての意思決定や具体的な結論が導き出されるべき場であるにもかかわらず、単なる「情報共有の場」と化しているのです。

 このような委員会では、参加者が自部門の報告を終えると満足してしまい、他部門の発表に対して主体的に関わろうとしません。結果として、互いの領域に踏み込んだ深い議論が生まれず、形骸化した集まりになってしまいます。何のために集まっているのかという目的が曖昧なまま、定例会議だからという理由だけで開催され続ける委員会は、参加者にとって重荷となり、組織全体のエネルギーを奪う原因にもなりかねません。

「軽すぎる場」がもたらす形骸化の罠

 委員会が機能しないもう一つの要因として、運営側が参加者の負担を考慮するあまり、その場を「軽く」しすぎてしまうことが挙げられます。日常の業務で多忙なメンバーに対して、「負担をかけたくない」「意見を気軽に言ってもらえればいい」という配慮から、明確な成果を求めずに緩やかな意見交換の場にしてしまうケースです。一見すると配慮に満ちた優しいアプローチのように思えますが、これはかえって委員会の形骸化を加速させる罠となります。

 貴重な時間を割いて集まっているメンバーにとって、何も生み出さない場に参加し続けることは、自身の貢献を実感しにくく、かえってフラストレーションを生む原因になります。人が集まり、時間を投資している以上、そこには確実なコストが発生しています。そのコストに見合うパフォーマンスが求められない「軽い場」は、次第に「参加する意味のない時間」と認識され、メンバーのエンゲージメントを低下させていくことになります。

成果物をあらかじめ描く重要性

 一方で、活性化している委員会には共通する特徴があります。それは、活動のスタート時点で「どのような成果物(アウトプット)を出すか」が明確に定義されているという点です。
 例えば、単に「人事について話し合う」のではなく、「いつまでに、新しい人事制度に対する社員の不満や改善提案をまとめたレポートを作成する」といった具体的なゴールを提示することです。

 成果物が先んじて描かれていると、その成果物を作るために「誰の知恵が必要か」「どの部門のメンバーをアサインすべきか」という人選の基準が明確になります。参加するメンバーも、自分たちが何を期待され、どこに向かって議論すべきかが理解できるため、当事者意識を持って場に臨むことが可能になります。成果物を強く意識させる「適度な重み」を持たせることが、結果として委員会の質を高め、参加者の満足度を引き上げる鍵となります。

「重要だが緊急ではない」未来へのアプローチ

 活性化している委員会が扱うべきテーマは、時間管理のマトリクスにおける「重要だが緊急ではない課題(第2領域)」です。日々の業務や現在発生しているトラブルなど、「緊急かつ重要な課題(第1領域)」は、それぞれの本業の部門が迅速に対応します。しかし、5年後、10年後の組織を支える基盤づくりや、未来に向けた人材育成といったテーマは、日々の忙しさに紛れて後回しになりがちです。

 本業が「今日」の会社を支える仕事であるならば、委員会活動は「未来」の会社をつくる仕事であるといえます。このように役割を明確に切り離し、現在の延長線上ではない未来の課題に対して、部門横断のメンバーが知恵を絞る場として委員会を位置づけることが重要です。未来の会社の仕組みを自分たちの手で設計するという実感が、メンバーに強い動機付けを与えます。

次世代の経営人材を育てる教育の場としての機能

 優れた委員会運営を行っている企業では、委員会を「次世代のリーダーを育成するための教育の場」として戦略的に活用しています。例えば、委員会のリーダー(委員長)を役職者から選ぶのではなく、メンバー間での互選によって決定し、裁量を与える運営方法です。また、予算の管理や具体的な実行プランの策定など、本業では経験できないマネジメント業務を委員会を通じて経験させます。

 普段の業務では自部門の視点しか持てない社員も、部門横断の委員会で全体最適を意識した議論を重ねることで、経営的な視点(全社的な視野)を養うことができます。本業とは異なる環境で、多様なメンバーを巻き込みながら成果を出していく経験は、社員の成長を著しく加速させます。委員会は、単なる課題解決の手段にとどまらず、未来の経営人材を輩出するための強力なインキュベーターとして機能させることができるのです。

企業人事の視点から:委員会を組織開発と人材育成のレバーにする

 企業内で組織開発や人材育成を推進する立場から見ると、社内に存在する「委員会」や「プロジェクトチーム」という仕組みは、非常に有効なレバーになり得ると感じられます。多くの組織において、日常の業務は縦割りのライン組織で完結しており、社員の視野もその範囲にとどまりがちです。そこで、公式な組織図とは異なる「第2の組織」として委員会を正しく機能させることができれば、組織の硬直化を防ぎ、柔軟な知恵の創出を促す一手となるでしょう。

 そのためには、社内にある既存の委員会が、単なる形式的な報告会になっていないかを定期的に確認したいところです。もし、形骸化している兆候が見られる場合は、その委員会の「目的」と「期待される成果物」を再定義するサポートを行うことが考えられます。それぞれの委員会がどのような価値を未来にもたらすのかを明確に位置づけることで、社内の人的資源がより有効に活用される土壌が整うのではないかと思います。

成果物起点のデザインによるエンゲージメント向上

 社員が本業の傍らで委員会活動に時間を割く際、その活動が有意義であると感じられるかどうかは、モチベーションに直結します。運営をサポートする側としては、委員会がスタートする段階で、最終的にどのような成果を目指すのかを、メンバーとともに具体的に描き出すアプローチを大切にしたいものです。例えば、施策の提言書の作成や、新しい全社イベントの企画・実行など、目に見える形でのゴールを設定することが挙げられます。

 参加者に対して過度な負担を心配するあまり、活動のハードルを下げすぎてしまうことは、かえって参加意欲を削ぐ結果になりかねないという点は、非常に示唆に富んでいます。社員は決して「楽な仕事」だけを求めているわけではなく、「意味のある貢献」を求めていると考えられます。明確な成果を期待し、それに応じた適切な役割と責任を委ねることで、社員の当事者意識を刺激し、エンゲージメントを高める機会として活用できるのではないでしょうか。

第2領域への投資による「未来創出」の支援

 日々の業務に追われる中で、「重要だが緊急ではない」未来への投資をいかに継続するかは、多くの企業にとって共通の課題です。本業が今日を支え、委員会が未来をつくるという整理は、社内のリソース配分を考える上で非常にクリアな指針となります。未来に向けた仕組みづくりや風土改革のテーマを委員会に託し、その活動を全社的にバックアップする体制を整えることは、組織の持続可能性を高めるために極めて有効なアプローチだといえます。

 具体的には、委員会活動に対して必要な予算や権限、そして何よりも「時間」を公式に保証する仕組みを整えたいところです。本業のリーダーに対しても、委員会活動が未来の会社をつくる重要な職務であるという理解を促し、組織全体でメンバーの活動を応援する文化を醸成していくことが、未来創出の活動を形骸化させないための重要な土台になるといえるでしょう。

全社的視野を養う「経営人材育成」の場としての活用

 委員会を、通常の研修や日々のルーティンワークでは得られない「実践的なリーダーシップ開発の場」として捉え直すことは、人材育成の観点から非常に魅力的な選択肢です。異なる部門から集まったメンバーをまとめ、一つの成果をつくり上げていくプロセスは、まさに経営そのものの縮図といえます。このような場を社内に意図的にデザインし、若手や中堅社員に経験させることは、次世代のリーダー育成において有効な一手となります。

 例えば、あえて管理職ではないメンバーに委員長を任せ、予算執行やプランの策定を主導させるような機会を設けることも考えられます。全社的な課題に対して、部分最適ではなく全体最適の視点で思考を巡らせる経験は、社員の視座を大きく引き上げるはずです。本業での役割を超えた挑戦の場として委員会を活用することで、社内の人材層をより厚くしていくことができるのではないかと思います。

心理的安全性と健全なコンフリクトが両立する場づくり

 部門横断の委員会が真に機能するためには、メンバーがそれぞれのバックグラウンドに関わらず、対等に意見を戦わせることができる環境が不可欠です。誰が委員長を務めるかによって場の雰囲気が変わり、役職者への忖度や遠慮が生まれてしまうようでは、イノベーティブなアイデアは期待できません。立場を超えたフラットな議論を促すために、委員会の選出方法や運営ルールについて、ガイドラインを設けるなどのサポートが有効と考えられます。

 異なる意見がぶつかり合う「健全なコンフリクト」を恐れず、むしろそれを歓迎するような風土を委員会の中に育むことが大切です。互いの専門性を尊重しつつも、会社の未来のためにベストな選択は何かを徹底的に話し合える場を提供することは、組織全体の心理的安全性を高め、風通しの良い企業文化をつくっていくことにもつながるのではないかと思います。


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