【36歳からの人生の作り方】#4 「夢はつかめるもの」――出版企画が動き出した日
36歳まで、わたしはただの「趣味で絵を描いている専業主婦」だった。
それがイラストレーターになり、46歳で漫画家になり、51歳でインタビューライターになった。気づけば4冊の本を出し、NHKで教え、新聞やテレビでコラムを書くまでになったのだ。
20年前のわたしが、「何かの間違いじゃない?」と疑うような、そんな激動の記録をここに記したい。
この冒頭で始まる記事も、今回で4本目である。
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10秒で読める「前回までの話」
20年前、子どものいない専業主婦のわたしは、好きな植物画(細密画)を習いながらも満たされない日々。「1日1つおもしろいこと」を探してひよこの絵日記を始めた。
blog連載「ひよこ日記」が交流を生み、自分を出せるようになると、「もっとおもしろく書きたい!」とライター講座へ通うことを決めた。

「ライター講座」は「文章講座」にあらず
さて、わたしはライター講座を「文章講座」だと思って通い始めたのだが、違っていた。この講座は「本の企画を立てる講座」だったのだ。
受講仲間によると、講師のY氏、その界隈では有名な人らしい。何も知らんかったわたし。そりゃ、少し前まで鳥籠の中にいたんだもんな。
そういえば、わたしの名前(ペンネーム)が「ひよこ」なのは、この講座でひよこちゃん、と呼ばれていたから。わたしの出した企画が「ひよこ企画」だったからである。

そう、「ひよこ日記」はWebを飛び出して出版企画となったのだ。この経緯については、長くなるのでまた別の機会に。
「夢はつかめるもの」と気づいた日々
講座では本の企画を立てると、Y氏が知り合いの編集者を呼んでプレゼン大会を開催した。
企画が編集者の目に留まれば、自社で会議にかけてくれて、本当に出版されるかもしれないのだ。そんな「夢みたいな話」、信じられるだろうか。
今でこそわたしにとって、イラストの受注や企画を立てることは「日常」だけど、当時は「憧れ」であり「想像もできない世界」だった。
でも、ライター講座に通ううちに、その「憧れ」が自分に近づいてきた。「夢」は、手を伸ばせばつかめる場所まで、やってきていたのだ。
習い事を越えた収穫
ライター講座に通ったことは、単なる習い事の域を越えた収穫があった。
今まで見えていなかったものが見えてきたのである。
仲間から「もっと自分を出していいのに」と言われたことで、わたしは「今まで自分を抑えてきた」ことにはじめて気づいた。
毎週土曜日の午後から夜まで、本を出したいとギラギラするメンバーと一緒に過ごすうちに、わたしの意識は明確に変わっていったのだ。
金曜夜の銀座をさまよう4人
春から始まった講座は、夏にいったん修了。講師のY氏にお礼の品を買おうと、仲間と銀座のITO-YAへ出かけた。
この銀座での夜が思いがけない変化をわたしにもたらすことになる。

お礼の品を無事購入し、そのまま男女4人で飲むことになったが、金曜の夜の銀座である、どこもいっぱいで断られ続けた。
そのとき、とんでもないことに気づいた。わたしは夜の銀座に出かけるのが生まれて初めてだったのだ、関東に住んで7年も経つのに。
そう話すと、ほかのメンバーはものすごく驚いた。そりゃそうだろう。逆の立場ならわたしも驚くし、なんならちょっと引く。
「パンドラの箱」を開けた夜
「ひよこのためにいい店探すぞ!」そう言ってみんなはますます力を入れて店を探してくれたが、残念ながら撃沈。たどり着いたのは「ほぼ新橋」のうらびれた中華料理店。
4人でラーメンをすすりながら、わたしはなんだかすごく楽しかった。
そして、銀座で飲むことすらできない生活とはなんだろうか、と考えてしまった。
もちろん、わたしには一緒に飲む友達などいなかった。けれど、週に数回は飲んで帰ってくる夫とも、自分は一度も都内で一緒に食事したことがないことに、気づいてしまったのだ。
いや、気づいていなかったわけではない。
気づかないふりをして閉じ込めた箱を、この銀座の夜は開いてしまったのかもしれない、のである。
Y氏からの当然の電話
ライター講座は好評につき秋も開講された。
春講座のプレゼン大会では、受講生の考えたショボイ企画への反応は芳しくなかったが、秋になると「悪くない」という講評を得る企画も出て来た。
そして、忘れもしない10月のある日のこと。講師のY氏から電話がかかって来た。
何事かと思えば、わたしの「ひよこ企画」について、とある中堅サブカル系の出版社の社長に話したところ、すごく興味を示してくれたので、これから一緒に社長に会いに行こうという。
ひ「いきなり、これからですか?」
Y「今、忙しい?」
ひ「いえ、暇ですけど」
Y「じゃあ行こう」
ひ「だ、だって、心の準備が!!」
Y「僕が一緒だから大丈夫!!」
言われるがままY氏と一緒に出版社Xへ。初めての出版社、これが編集部・・・い、いかん、これから社長と会うというのに、うれしすぎて、顔がにやけてしまう!
Y氏、「ひよこ企画」をプレゼンする
社長室に通されると、わたしは緊張のあまり、頭の中が真っ白になった。何も言葉が出てこない!でも、まったく問題なかった。
なぜなら、Y氏がすべてプレゼンしてくれたからだ。「ひよこ企画」をY氏がプレゼンできるほど理解してくれていることにわたしは驚いた。
30人もの受講生の企画をY氏は一人で全部プレゼンできるのだろうか。すごすぎる!
Y氏はかなり変わった人なのだが、はじめて「尊敬の念」を込めて見つめてしまった。
プレゼンが終わり、お暇しようと考えていると、それまで黙って聞いていた社長が口を開いた。「出しましょう」
なんと、企画が通ってしまったのだ。
その日の帰りは、どうやって帰ったのか覚えていない。さらに数日後、X社の編集部から「呼び出し」があった。な、何事?
いきなりの波乱の展開。果たして「ひよこ企画」は本になるのか?
次回を待て!!
おまけ:結婚生活絵日記
いくら専業主婦とはいえ、30代女性が関東に住んで「7年間で一度も夜の銀座に行かない生活」ってどんなん?と思う方もいるかもしれない。
そんな方のために、当時の結婚生活が垣間見える絵日記をこっそり置いておく。


これが、あひるストラップ(右端)。

折り畳み式ガラケーに万歩計にデスクトップPCのキーボード。
まるでタイムカプセルのような一枚。
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