第5話 おとなしい子の見えなかった顔|おとなしい=やさしいという勘違い
学生時代、同じクラスにおとなしい子がいました。
声も小さく、彼女が大きな声を出しているのを
聞いたことはありませんでした。
顔つきも、すこし笑みを浮かべているような、
どちらかと言えば、穏やかな顔でした。
当時、クラス委員をしていた私は、
どちらかと言えば活発で、リーダータイプでした。
詳細は忘れたけれど、
クラス単位で何かを発表をするイベントがありました。
たしか、クラスのみんなで何かを調べて、
それを発表するというものでした。
その時、私が、今でいうプレゼンターに任命されました。
クラス委員もそうだけど、みんなの投票で決めます。
だから、まあ満場一致とは言わないまでも、
みんなが納得していると思っていました。
けれど、
あの声の小さいおとなしい彼女が、
一番、私の悪口を言っていたとあとから知りました。
そのことだけでなく、ずっと以前から。
もしかしたら、
彼女には、私に対して、
何かしら不満があったのかもしれません。
私には見えていなかっただけで。
そのことがあってからも、相変わらず彼女の声は小さく、
みんなの前で、何かを発言することもありませんでした。
私は、彼女を好意的に、
「おとなしい子」と見ていました。
そして、
おとなしい=やさしい
に違いないと思い込んでいた気がします。
でも、彼女は、本当に、
「おとなしい子」だったのでしょうか?
それ以来、
私は「おとなしい人」という言葉を、
少し疑うようになりました。
私が見ていたのは、
彼女のほんの一部分だったのでしょう。
人は、
外から見える姿だけで、勝手に判断しがち。
でも本当のところは、
誰にもわからないのかもしれません。

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