一人社長、AI社員7人の会社を作る——朝会も請求リマインドも勝手に回る【全景】
金曜の朝、アプリを開いたら、コルクボードに今日の指示書が貼ってあった。
「担当:施策部。楽天のイベント2日前。未着手の店から順に施策を用意。所要目安2〜3時間。提出はCEO決裁後」
書いたのは自分じゃない。秘書のあいこ。うちのAI社員だ。
会社といっても、人間は一人。
13年ECをやって、今は現役で何社もの店を支援して飯を食ってる。その一人会社に、AI社員が7人いる。
この手の話、部分的に切り売りされてるのをよく見かけるけど、まあ、全部作ったのはClaude codeなので、無料で置いておきます。笑
■第1章 会社の全景——1日のタイムライン
まず何が起きてるかを1日で見せる。
7:00 キュー番が今日のSNS投稿3本を下書きして積む(実投稿はしない。積むだけ)
8:07 秘書のあいこが出社。業務レーダーを回して、楽天イベントの接近・投稿ストックの残量・データの取り込み漏れを一括チェック→今日の優先タスク3つを部署に割り当てた指示書を貼る
9:00〜19:00 受付係が毎時、クライアントデータの着弾を見張る(ただし巡回するのは毎週月曜と、楽天イベントが終わった翌日だけ。理由は後述)。データが届いて45分静かになったら、分析部のかずえが勝手に分析を始める
毎月1日・3日・10日の朝 経理のかなえが「請求書、出しました?」と知らせてくる。発行はやらせない。人間が会計ソフトから送る。AIはお知らせだけ
随時 チャットで「かずえ、先月の数字見て」「ことは、投稿作って」と名前で呼べば動く。名前を呼ばなくても、仕事の内容で勝手に該当部署に振り分けられる
人間がやったことは、朝の指示書を眺めて、溜まった決裁に「OK」と言っただけ。
■第2章 社員名簿
AI社員には名前と人格と口癖がある。ふざけてるようで、これが後で効く。(名前はAIに決めさせたけど。)
あいこ(秘書室)——朝会の司会と決裁待ちの番人。週報の整理と連絡文の下書きも
かずえ(分析部)——数字番。口癖は「で、それ在庫あるの?」。生数字で騒がない主義
うてな(施策部)——打ち手職人。口癖は「全セル黒字?」。提案は採算と工数まで入れて一発完成
つくる(制作部)——動画・画像の職人。無口。課金ボタンの前だけ社長を呼ぶ
ことは(発信部)——言葉番。AI臭い言い回しを消す係。この記事の下書きも書いた(後述)
うらら(うらら部)——動画タレント。体験談は語らせない
かなえ(経理部)——金庫番。口癖は「請求書、出しました?」。数字には必ず出典を添える
なぜ人格を持たせるか。愛着のためじゃない。ルールの置き場所を人格に紐づけると、破られなくなるからだ。「数字を推測で書くな」と毎回指示するのと、「かなえは出典のない数字を書かない人」と就業規則に書いておくのは、続き方がまるで違う。

■第3章 種明かし——社員の実体はテキストファイル1枚
魔法でも高額ツールでもない。AI社員の実体は、mdファイル(ただのテキスト)1枚。
実物を見せる。経理のかなえの就業規則、ほぼそのまま。
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name: keiri-bu
description: 【経理部・かなえ】売上管理・クライアント報酬管理・
請求書リマインド。「売上まとめて」「請求書」「経理」、
および「かなえ」宛の依頼はこの部署。
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# 経理部(担当社員: かなえ)
あなたは金庫番のかなえ。几帳面で、数字には必ず出典を添える。
口癖は「請求書、出しました?」。
## 正本と道具箱
- 報酬台帳(正本): 台帳ファイルのパス —— 作業前に読む・変わったら追記
- 作業時間: worklogコマンド(集計+時給単価)
## 請求書ルール
- 発行と送付=人間が会計ソフトから手動。経理部は絶対に発行しない=お知らせだけ
- タイミング: 月初分=毎月1〜3日/10日分=毎月10日
## 部署ルール
- 数字は推測しない。出典(台帳/週報/所長発言)を必ず添える。
埋まらないセルは「要確認」のまま出す
## 決裁ルール
- 請求書の実発行・金額変更・支払いは全部CEO。経理部は集計とリマインドまで構造は3つだけ。
frontmatterのdescription=受付窓口。 どういう言葉が来たらこの社員が担当か。「請求書」「かなえ」と書いておけば、チャットでその言葉が出た瞬間に自動でこの社員に仕事が回る
本文=就業規則。 役割、最初に読むファイル、ルール、やってはいけないこと、成果物の形式
決裁ルール=どこで止まるか。 「ここから先は人間」を明文化しておく
このファイルを決まったフォルダに置くだけで、社員が1人増える。経理部を作った日の作業は、実質このファイルを書いただけ。5分。
そして教育。ミスをしたら、その社員のファイルにルールを1行足す。それで終わり。次からどの画面のどのスレッドで呼んでも、同じ失敗はしない。人間の部下と違って、教育が一度で染みる。
会社は文章でできている。書けるなら、作れる。
■第4章 道具は2つだけ——なぜChatGPTでは社員にならないか
使っている道具は2つ。
Obsidianは「記憶の箱」。会社とクライアント店舗の記憶を全部入れておく場所。店ごとのカルテ、過去にやった施策と結果、失敗のルール、約束。ぜんぶただのテキストファイルで置いてある。
Claude Codeは「その記憶の箱を丸ごと読んで動くAI」。仕事を頼むと、まず箱の中の関係する記憶を読んでから作業を始める。だから毎回イチから説明しなくていい。
ChatGPTに毎回「うちの会社はこういう体制で、この店はこういう事情で」と説明してる状態は、毎朝新入社員に引き継ぎをしてるのと同じ。賢さの問題じゃない。記憶の問題。 記憶の箱を持たせた瞬間、同じAIが専属の社員に変わる。差別化はモデルの賢さじゃなく、店の記憶。ここだけは何度でも言う。
■第5章 自動出社の作り方——スケジュールタスク3本
「頼めば動く」を「頼まなくても動く」にしたのが、この会社の肝。使ったのはClaude Codeの予約実行(スケジュールタスク)で、中身は「決まった時刻に、この指示文を実行して」と登録するだけ。
登録してあるのは3本。
① 朝会(毎朝8:07)
指示文の要点はこう書いてある。
業務レーダー(自作の集計スクリプト)を実行して現状を把握しろ
優先順位はイベント最優先→投稿ストック→週次月次→データ鮮度
今日の優先タスク3つを部署に割り当てた指示書をファイルで保存しろ
投稿ストックが枯れていたら下書きを補充しろ。実投稿は絶対にするな
② 受付係(月曜+楽天イベント終了翌日だけ、9〜19時の毎時)
ここに設計の工夫が2つある。
ひとつ。「イベント終了の翌日だけ動け」は、普通の予約実行(cron)では書けない。カレンダーを読まないと翌日かどうか分からないからだ。だから予約自体は毎時発火にして、起きた瞬間にスクリプト自身が「今日は巡回日か?」をイベントカレンダーと照合して、違ったら1行返して即終了する。判定を予約側でなくプログラム側に持たせる。これで「イベントカレンダーを更新すれば巡回日も勝手に変わる」が手に入る。
ふたつ。「データが全部揃ったか」をAIに判定させない。機械は「新しいファイルが着弾して、45分間なにも増えなくなった」ことだけを検知する。揃ったかどうかの判断は、着手した分析部が過去のフォルダ構成と照らしてやる。欠けてたら分析せず「未着リスト」を残して引く。検知は機械、判定はAI、判子は人間。この三層を混ぜると事故る。分けると寝てる間も回る。
③ 請求リマインド(毎月1・3・10日の朝)
かなえが該当日の朝だけ起きて知らせる。3日は「まだなら今日までです」とトーンが変わる。発行ボタンはそもそも作っていない。(ここのブレーキはかけておきたいと思ったので。)
■第6章 スマホとつなぐ——Google Tasks双方向
会社のダッシュボードに「社長のタスク」欄がある。中身はスマホのGoogle Tasksそのもの。
Google Tasksに入れたタスクは、15分おきに自動でダッシュボードに並ぶ(期限切れは赤、今日は黄)
逆にチャットで「これタスクに入れておいて」と言えば、Google Tasks側に登録される。議事録を貼って「タスク抽出して」と言えば、やること一覧を出してくれて、OKで一括登録
Google Tasks APIは無料。従量課金の仕組み自体がない
安全設計をひとつだけ。接続は「読む」と「追加する」だけ実装して、削除と完了化のコマンドは最初から作っていない。AIが誤ってタスクを消す事故は、注意ではなく構造で潰す。チェックを付けるのはスマホの自分。
■第7章 見えるオフィス——楽しさは実利
ダッシュボードには3Dのオフィスがあって、7人が歩き回ってる。仕事の弾がある社員は自分のデスク周りをうろうろして、手が空いた社員は休憩室に歩いていく。頭の上には吹き出しが出る。「ストックあと6本か…」「マラソンまであと2日…」——飾りのセリフじゃなくて、実データから生成された業務速報だ。
さらに、別の画面でクライアント作業をしていると、担当社員に🔥が点いて「いま作業中」と出る。仕組みは単純で、作業ログの計測中ファイルと、各スレッドの更新時刻を見てるだけ。
猫もいる。エントランスを歩いてる。仕事はしてない。
正直に言うと、この画面はただの自己満足だ。
でも、楽しいから毎朝開く。開くから決裁が溜まらない。
溜まらないから会社が止まらない。
一人社長にとって、楽しさは実利。
続かない100点の仕組みより、眺めたくなる60点の仕組みの方が強い。
■第8章 つまずき3連発と答え
半日溶かした穴を、答えごと置いておく。同じ道を通る人はここだけコピペでいい。
Macの自動起動からは、普段使ってるnodeが見えない。 nvmなどでnodeを入れていると、ダブルクリックのスクリプトや自動起動(launchd)からはコマンドが見つからず沈黙する。答え=nodeの場所を自動で探して絶対パスで叩く起動スクリプトを1枚挟む。Macの自動化でいちばん多くの人が踏む穴
GoogleのAPI連携が7日で切れる。 OAuthアプリを「テスト」状態のままにすると、接続が7日で失効して毎週やり直しになる仕様がある。答え=公開ステータスを「本番に移行」に切り替えるだけ。自分専用なら審査は不要で、認証時の警告画面は「詳細→移動」で通る
「イベント終了の翌日だけ」は予約実行では書けない。 答え=第5章の通り、毎時起こして自己判定させる。予約は目覚まし、判断は本人、の分担にする
■第9章 金の話
この会社の追加費用は月0円。
AI社員も自動出社もダッシュボードも、全部Claude Codeの定額の範囲内
Google Tasks APIは無料。3Dオフィスも外部サービスなしの自前描画
金がかかる操作(動画生成などの課金API)は、すべて「人間の判子」の内側に置いてある。社員は課金ボタンの手前で止まって社長を呼ぶ
固定費は今までの定額のまま、変動費は「作る」と決めた時だけ。一人社長の財布で回る設計にしてある。
■第10章 線引き——人間に残った仕事は3つ
全自動に聞こえたなら訂正しておく。線引きだけは最初に固めた。
分析・提案書・投稿の下書き・台本・集計——ここまでは社員が勝手に進める
クライアントへの送信・SNSの実投稿・金がかかるボタン——ここから先は全部、人間の判子
だから人間に残った仕事は3つだけ。アイデアを言う。選ぶ。OKを出す。
外に出るものと金が動くものにだけ人間が立つ。逆に言えば、それ以外に人間が立ってた時間は、ぜんぶ社員に渡せた時間だった。
実際には、もっと自動化は出来ると思うけど、全部を渡し切らないのもポイントだったりもする。
■終章 この記事のオチ
種明かしをもうひとつ。この記事の下書きを書いたのは、発信部のことはだ。
作業が終わったスレッドから知見を「収穫箱」に貯めて、発信部が記事とサムネ案とハッシュタグと告知文まで作って納品する——そういう仕組みまで含めて、この会社は回ってる。クライアントワークは畑、コンテンツは収穫。現役で店を支援してるから書くことが尽きない。
完璧な会社を作ろうとして3ヶ月止まるより、60点の会社が今朝も勝手に朝会をやってる方が強い。
まあ、猫を眺めてる時間が一番長い気もするけど。笑
うちの店はAIからどう見えてるんだろう、と思ったら、無料のAI診断をどうぞ。店のURLを入れると、AIがざっと見てコメントを返す小さいアプリ。その場で画面に出る。
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60点でいいので、頑張っていきましょう!!
■ たにぐち|ECプロデューサー
EC物販13年、法人11期。現在は企業のEC事業に入り込み、
AIをフル活用して利益を残す実務支援を展開中。
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