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「一緒に遊んであげない」と言われた娘が選んだこと

娘が保育園の年中さんくらいの頃の話である。
「今日、MちゃんとNちゃんに嫌なこと言われた。」
娘がお風呂の中でそう言った。

「何を言われたの?」
と問うと、
「よくわからないけど、
お人形を捨てないと一緒に遊んであげないって言われた。」
という。

「お人形?」
聞けば、今まで買ってもらったおもちゃの話をしていたところ、
「半分捨てないと一緒に遊んであげない」
と言われたらしい。

「そっか。」
私は少し考えて言った。
「でも、MちゃんもNちゃんもうちに来なければ、
 捨てたかどうかわからないんだから、
 『捨てたよ〜』って言えばいいんじゃない?」
すると娘は、
「うーん。」
と浮かない返事をした。
「じゃあ捨てる?」
と聞くと、
「それは嫌。」
ときっぱり言った。
「じゃあどうしようねぇ。」

私は、子ども同士で解決できることは、
なるべく子ども同士で頑張ってもらおうと思っている。
なので、娘の出す答えを待つことにした。

そこでふと、気になったことを聞いた。
「で、そう言われてからどうしたの?」

一緒に遊んであげないと言われたのである。
保育園でも一人でいた可能性が高い。
「うん。Mちゃんたちにそう言われたから、教室の隅で座ってた。」
「一人で?」
「うん。」
それを聞いて、私は怒りと切なさが同時に来た。
部屋の隅でひとり座っている娘の姿が浮かんで、胸が痛かった。

「ずっと?」
怒りと切なさを抑えながら聞くと、
「うん。でも……」
「でも?」
「Sちゃんが私のところに来てね、
 『どうしたの?』って聞いてきたから、わけを話したの。」
「うん。」
「そしたらね、
 『そっか。でもずっとそこで座っていても、
 何も変わらないよ』
 って言われた。」

「ほぇ〜。」
思わず変な声が出た。

年中さんが、それを言うの?
私なんて大人になった今でも、
嫌なことがあると心の中で体育座りしているのに。

Sちゃんはすごいな、と思った。
間に立つわけでも、
先生を呼ぶわけでも、
長々と諭すわけでもなく。
ただ一言だけ置いていった。

「で、Sちゃんにそう言われて、どうしたの?」
娘に聞くと、
「別に。何もしなかったよ。」
「え?」
「別に一緒に遊ばないならそれでいいし。
 今日は嫌なことを言われたのが嫌だっただけで、
 これからも一緒に遊ぼうとは思ってないし。」
「…………そ、そうですか。」

私は言葉を失った。
Sちゃんのことをすごいと思っていたけれど、
娘もすごかった。
Sちゃんのアドバイスを参考にしながら、
何もしないことを選んだのだ。
無理に仲直りしようとせず、
相手の言いなりにもならず。
ただ、
「これはもういい」
と判断して、終わらせた。

嫌なことを言われた。
だから、これからは遊ばない。
ただそれだけだった。

親の私は、この話を聞きながら
「意地悪をいう子と、これからも付き合っていかなきゃいけないのか」
と心配していたのに。
子どもたちはもう、とっくに先へ進んでいた。

この子たちは、
親の私よりずっと大人だったのかもしれない。

ちなみに私は、
この記事を書いている今でも、
嫌なことがあると心の中で体育座りをする。

そして時々、
「ずっとそこで座っていても、何も変わらないよ」
というSちゃんの声が聞こえてくる。

年中さん、恐るべしである。
なお、私は今でも人付き合いで悩む。
どうやら私は、まだ年中さんにはなれていないらしい。



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妃沙 彩未 「続きを読みたい」「また見たい」と思っていただけたことが何より嬉しいです。 いただいたチップは、これからの創作活動に大切に役立てます。