平成30年・名古屋場所雑記
3横綱が相次いで休場し、あっという間に横綱不在となった平成最後の名古屋場所。
場所前から私が注目していた、新大関・栃ノ心の「平幕から横綱まで一気に年内にステップアップ」も、肝心の栃ノ心の途中休場で、ほぼおじゃん。レア記録だった「新大関優勝」も消えましたね。栃ノ心には、秋場所からの逆襲を期待しましょう。
優勝をさらったのは関脇・御嶽海。
いくつかの報道では「雷電以来280年ぶりの長野県出身力士の優勝」といわれましたが、これは明確な間違い。雷電の時代は「長野県」じゃないし、そもそも場所ごとの個人優勝制度は明治42年からですから。なので御嶽海は「史上初」の長野県出身力士の優勝です。
ちなみに以前に「史上最強の都道府県」で見たように、優勝回数1位は北海道の120回。長野県はこれから御嶽海があと120回優勝すればトップに躍り出られます。
これで優勝力士を輩出していない府県は、宮城、群馬、埼玉、岐阜、福井、静岡、和歌山、滋賀、京都、島根、徳島、熊本、沖縄の1府12県となりました。
また、御嶽海の優勝は、初土俵から初優勝までの所要場所数で史上3位のスピード記録と報道されていましたが、さてではそれより上位の2例は誰? どうもはっきりした記録が見つからなかったので調べてみました。
史上1位は輪島の15場所(昭和47年夏場所) 2位は琴光喜の16場所(平成13年秋場所) なるほどこの2人だったからなのか……(笑)
御嶽海の記録は出島の21場所(平成11年名古屋場所)と同点なので、正しくは「史上3位タイ」ですね。当たり前のですがこの部門の上位の記録は学生相撲出身などで幕下付け出しデビューの力士に占められていますね。ちなみに、前相撲からの記録では、たぶん朝青龍の23場所(平成14年九州場所)が最速かと。
ということで記録的にも優秀な初優勝でしたが、今場所はほかにも注目すべき記録がありました。
場所中にも話題になったのが、ベテラン安美錦の通算勝ち星記録が、あの大横綱・大鵬を抜いたというやつ。おおっ凄いぞ。
今場所は西十両4枚目だった安美錦、中日8日目の勝利で序の口以来の通算勝ち星が872勝となり、あの大鵬と並んだのです。これは歴代8位タイの大記録。その後3連敗しましたが12日目に希善龍に勝利して単独8位となり、その後も勝って9勝6敗でフィニッシュ。通算勝ち星を875勝とするとともに来場所の幕内復帰の希望も残しました。
序の口以来の通算勝ち星記録というのは、とにかく現役を長く続けることが条件になる、まさに無事これ名馬の勲章(もちろんそのうえ勝たなければなりませんが) なので歴代十傑の名前を見ても、名だたる大横綱、名大関の名前とともに、大潮憲司(964勝)旭天鵬勝(927勝)若の里忍(914勝)寺尾常史(860勝)ら、いずれ劣らぬ人気力士の名前が並んでいます。これもたいへんな勲章なんですね。ちなみに通算勝ち星トップはもちろん「記録王」白鵬(現在1080勝)
いっぽうで秒読みに入っている、その白鵬の前人未到のウルトラ記録、幕内通算1000勝の達成は、残念ながら秋場所へ持ち越し。986勝だから残り14勝は時間の問題かと思ってましたが、今場所の休場でちょっと微妙な感じに。さて年内達成できるでしょうか。
安美錦の大記録達成をアシストしてしまった希善龍も、場所前から注目していた一人(参照:史上最強の十両昇進)。十両昇進じつに9回目、史上最多の昇進回数という、これはこれでタイヘンな記録であるとともに、これまで一度も十両の地位を維持できなかった希善龍が関取キープできるのかが注目だったのですが、さていかに?
残念ながら希善龍、今場所の成績は東十両13枚目で6勝9敗。またも十両の壁に跳ね返された感じです。ただ、今場所は十両下位で大敗した力士や休場力士がいるのと、一方で幕下上位に十両昇進に値する成績を残した力士が少ないので、十両残留は微妙なところ。はたして秋場所の番付で希善龍は十両をキープできているか、それとも10度目の昇進という金字塔を目指すことになるのか、番付発表を待ちましょう。
そして、場所終盤にもっともドキドキさせてくれたのが、大ベテランの嘉風。
初日からなんか元気ない相撲が続いて、気がつけばなんと初日から13連敗。このままいったら15戦全敗もあり得るかという情勢になってしまいました。
15戦全敗というのは、これまた非常にまれな記録です。幕内で1場所15日制で全敗を記録したのは、過去にたったの4回。
列挙すれば、桂川(昭和17年年1月場所)清勢川(昭和38年11月場所)佐田の海(昭和63年3月場所)板井(平成3年7月場所) 佐田の海は現役の佐田の海のお父さん。
ちょうど間逆になる15戦全勝が、じつに74回もあるのに比べれば、そのレアぶりがわかるだろう。
そりゃそうか、そもそも上位力士を除けばそんなに大きな実力差があるわけでもないし、そこまで負けが込むことはやはりめずらしい。そんなことになるのはおおむね体調不良とかケガといったフィジカル面に問題があるからだろうし、どんどん負けが込めばメンタルもやられる。で、そうすると選択肢として途中休場が浮かんでくるからね。
今場所の嘉風も、たぶんどこかケガを抱えていたと思われる(本人は口にしなかったが師匠がテレビ解説で示唆していた)ので、夏巡業の間にしっかり治してもらいたいですね。
幸いにも14日目に初日が出、千秋楽も勝利したので最終的には2勝13敗の負け越し11点、ほかとの兼ね合いもあるがなんとか幕内に残留できそうな感じです。史上5人目の「大記録」にならなくてよかったよかった。
名古屋場所を終えると、しばしの休日をはさんで、夏巡業がはじまります。昔ほどではないですが、各地をめぐる長い旅。この期間に稽古を積んで、大きく飛躍する力士が出現するのが、秋場所です。
横綱陣の復活は、栃ノ心の巻き返しは、そして御嶽海の大関チャレンジは?
充実の秋場所に期待しましょう。
大相撲/丸いジャングル 目次
【2018/8/28】 秋場所の新番付が発表され、残念ながら希善龍は幕下陥落となった。でも東幕下筆頭なので、勝ち越せば史上空前の10度目の十両昇進が成る。頑張れ!
