ジャッキー・チェンと勝負する・追撃戦(30)
「A LEGEND/伝説」(中国語題「傳說」「传说」/英語題「A Legend」)は、中国本土で2024年7月に公開され、日本ではほぼ1年遅れて2025年4月に公開されている。ジャッキー映画も年々歳々日本公開が遅くなってきて寂しい限りだが、それでもちゃんと劇場公開されて、ソフトもすんなりとリリースされたのだからヨシとしよう。まだまだジャッキー・チェンは「商売」になるってことなんだろうね。

漢の時代の匈奴との闘争と、現代における秘宝の争奪戦をシンクロして進めるスケールの大きなアクション……あれ、なんか観たことあるぞとおもったら、そうか「THE MYTH/神話」と同じ趣向なんだ。そういえば、タイトルの雰囲気というか組み立ても同じだな。
で、調べてみたら、この「A LEGEND/伝説」は「THE MYTH/神話」の続編として作られたらしい。とはいっても、ストーリーは直接つながっていないから続編じゃなくてシリーズ作品くらいのイメージなのかな。
そして、言われてみればなんだが、この両作品の中間に作られた「カンフー・ヨガ」も、同じ系列の作品なんだ。そう言われないと、なかなか気づかないが。
いわば、ゆるやかなシリーズといったところなのかな。
だとしたら、前の2作品に進呈した苦言を、ここでもくりかえさなければいけない。
なぜ、この主人公が「アジアの鷹」じゃないんだ! 過去の伝説をネタとした「戦う考古学者」で、「サンダーアーム/龍兄虎弟 」「プロジェクト・イーグル」「ライジング・ドラゴン」で登場している快傑。3度も起用してきた大事なキャラクターじゃなかったのか、ジャッキー。同じ考古学者キャラならば、「アジアの鷹」でもよかったんじゃないか。
まぁ、考古学者とはいっても、どちらかといえば盗賊に近い「アジアの鷹」にくらべると、はるかにまっとうな先生である「THE MYTH/神話」「カンフー・ヨガ」のジャック教授は年齢もだいぶ上だし、イメージが違うんだろうな。
ということころで、またまた気づかされたんだが、今回の主人公は同じ真面目な考古学者でもジャック教授じゃないんだよね。今回はフォン教授なんだ。見ているうちは気づかなかったよ(それくらい、同じようなキャラなんだ)
いやいや年寄りの繰り言だから気にしないでください。まぁ、ジャック(およびフォン)教授は21世紀用のキャラクターで、「アジアの鷹」は20世紀のキャラクターってことなんでしょう(「ライジング・ドラゴン」は2012年の作品だけどね)

さて、今回の目玉は、新疆ウィグルでロケしたという広大な風景だろう。砂漠や草原の広がる、まるでファンタジー世界のような景色は、最初はCGじゃないかいなと思ったが、実際にロケしてたそうだ。政治的にはいろいろある地域だが、こうしてエンタテインメント映画の画面に展開されると、そんなことがなんとも小さな問題に見える、そんな気にもさせられる。
ただ風景が雄大なだけではなく、そこで展開するアクションも壮大だ。とくに数百頭(もっといたかな)の馬を走らせるシーンは凄い。ハリウッドのウェスタン映画でもかつて見たことがないほどの馬の数。映画史上最大の馬群だったかもしれない。
巨大なスケールのスペクタクルシーンは、間違いなく映画の魅力そのもの。これだけでも、この映画を見る価値はあるかも。
さらにもう一点の目玉が用意されているのだから、ジャッキー映画は相変わらずサービス満点だ。
その、もうひとつの目玉は、これだ。

この2人、どっちもジャッキーなんだよね。教授はともかく、ジャッキーが一人二役で演じる前漢時代の将校、ちょっと若すぎないか?
公開時にはちょっと話題になっていたが、これは紛れもないジャッキー・チェン本人なのだ。もちろん過去のジャッキーではない。現在のジャッキーが演じた映像に、AIによる加工を加えて「若返らせた」ジャッキーなのだ。
そうしてみると、さんざん見ていた本物の若い頃のジャッキーとも、微妙に顔が違うことに気づかされる。
まぁストーリー上、前漢の将校が若い設定は必要ではないし、べつに中年くらいに設定すればいいだけの話なんだけど、そこに敢えて挑むのも、新たな試みではある。
しかし、技術の進歩とは恐ろしいものだ。先年、「スター・ウォーズ」の1作で、キャリー・フィッシャーやピーター・カッシングが往年の姿そのままに登場して話題になったが、じきにそんなことも当たり前になるかもしれない。そのうち、故人が主演する映画も平気で作られるかも。倫理的、法的に許されるかどうかも含めて、まだまだ課題は多いだろうが。
今回のジャッキーは、当の本人が許諾して(というか言い出したのが本人かも知れない)いるので、そうした問題は生じないだろう。この新たな技術に、ジャッキー本人が興味津々だったとかは容易に想像がつく。
じつは、今回と逆のケース、つまりジャッキーが年寄りに変身するのには、すでに前例がある(「ナミヤ雑貨店の奇蹟」) あれは特殊メイクによるものだったが、技術的な方法が違うだけで、趣旨は同じと思っていいだろう。
たぶん、ジャッキーにとっては、あれもこれもアクションのアイデアと同じで、映画の手法のひとつに過ぎないんだろう。これからも、どんどんこうしたチャレンジはしていくに違いない。

前漢ではジャッキーの盟友、現代では教授の助手の二役を演じるチャン・イーシン(レイ/張藝興)はなかなかの好演で、アクションもお見事。彼は人気歌手でダンサーとしても一流なのでアクションはお手のものなのかも。こうした若い力を積極的に起用するのも、近年のジャッキー映画の見どころのひとつだ。
匈奴のヒロインを熱演するグーリーナーザー(古力娜扎)もその一例。彼女のデビュー作はジャッキー映画の「ポリス・ストーリー/レジェンド」(2013年)で、ジャッキーとはそれ以来の共演。じつは彼女はこの映画のロケ地となった新疆ウィグルの出身なので、凱旋ということになるのかな。
一方で監督には、ジャッキーが(本人以外で)もっとも多くタッグを組んで信頼も厚いスタンリー・トン(唐季禮)を配するなど、万全の布陣を敷くあたり、さすがに抜け目がない。
70歳を超えてなお盛んなジャッキーを堪能するのにはピッタリの会心作といってもいいだろうが、じつは今年はジャッキー映画の新作があと2本公開されるようだ。1年で3本のジャッキー映画が公開されるのは、ずいぶん久しぶりのこと。
ジャッキー、頑張ってるな。こちらも負けてられないよ。
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