採用フローをAIエージェントで改善する③計画編|新卒採用の年間スケジュールをAIと組む
「2027卒の選考、まだ終わっていないのに」
「もう2028卒のインターン掲載、準備しないと間に合わない」
採用担当の頭の中では、この2つがいつも同時に鳴っていると思います。
新卒採用は、複数の学年が同時に走る仕事です。
私は元採用担当です。
いまは人事の実務にAIエージェントを持ち込む実験を続けています。
AIエージェントとは、対話型のAIにファイルの読み込みや作業の実行まで任せられるようにしたものです。
前回の②戦略編では、来期の予算配分を決めて、上司の赤入れを提出前に済ませるところまでやりました。
今回はその次、決めた作戦を「いつ打つか」に落とす計画のフェーズです。
やることは1つ。
新卒採用の年間スケジュールをAIと組み、複数の学年の重なりを1枚に畳む。
結果を先に書きます。
年間スケジュールの叩き台は、数分で出ました。
ただし1箇所だけ、現場の人間にしか直せない穴がありました。
この記事でわかること:
年間スケジュールの叩き台をAIに数分で出させる方法(コピペで使えるプロンプト付き)
2つの学年の重なりを1枚に畳んで俯瞰する見せ方
媒体の掲載締め切りをAIに見張らせる仕組み
年間スケジュールが自分の頭の中と去年のExcelにしかない方は、ぜひ最後までお読みください。
このシリーズで目指すゴール

採用の実務は、大きく5つのフェーズで回ります。
現状の分析、戦略づくり、年間計画、実行、そして改善と報告。
このシリーズでは、各フェーズに埋まっている「手を動かすだけの事務作業」を1つずつAIエージェントで軽くしていきます。
①分析編では、半日かかる集計を30分に縮めました。
②戦略編では、その数字で来期の予算配分を決めました。
今回は3つ目の計画です。
決めた作戦に「いつ動くか」の時間軸を与えます。
なぜ新卒採用の「計画」は難しいのか?

難しさの正体は、作業量ではありません。
複数の学年が並行して走ることです。
先に、新卒採用の年間の型を置きます。
大学3年の4〜5月にナビ媒体へインターン情報を掲載。
8〜9月に夏インターン、11〜1月に冬インターン。
1月から会社説明会が始まり、3月1日に広報解禁。
春から面接と内定出しが本格化して、6月ごろに承諾のクロージング。
1年がかりの長丁場です。
やっかいなのはここからです。
実際は3ヶ年分の同時進行
この1年がクローズする春、次の学年のインターン掲載がもう始まっています。
内定を出しているそばで、次の学年の母集団づくりが動く。
私が採用担当だったころは、こうでした。
採用活動をしながら、新入社員を研修しながら、次のインターンシップの準備をする。
常に3ヶ年分をまとめて動かしている状態です。
正直に書くと、私自身は2年目からは混乱しませんでした。
最初の1年こそ混乱しましたが、あとは慣れで捌けるようになりました。
ただ、春先から夏にかけてはずっと忙しい。
選考が延びた年は、6月まで忙しさが続きました。
問題は、この捌き方が「慣れ」でしかないことです。
頭の中の段取りは引き継げません。
担当が替われば、次の人がまた最初の1年で苦しみます。
年間スケジュールが頭の中と去年のExcelにしかない状態は、仕組みと呼べません。
今回は、ここをAIエージェントで仕組みにします。
【準備】戦略を年間計画の「入力」にする

計画はゼロから作りません。
前回の戦略編で決めた予算配分が、そのまま入力になります。
このシリーズは、中堅IT企業(150名規模・新卒8名採用)をモデルにした実験として進めています。
おさらいすると、こうでした。
コストの高いナビ媒体を1つに絞り、浮いた予算をダイレクトリクルーティングと自社採用ページに寄せる。
総額350万円で、承諾8名を狙う。
「どこにお金を張るか」が決まっていれば、あとは「いつその媒体を動かすか」です。
これがスケジュールの骨になります。
渡すのは、予算配分と目標人数がわかるものなら何でもかまいません。
私は前回作った提案書1枚をそのまま渡しました。
採用計画をExcelで持っているなら、その帳票ごとで十分です。
【実演】年間スケジュールをAIと組む
AIへの指示文(コピペ可)
私が使っているのはClaude Codeですが、ファイルを添付できる対話型のAI(ChatGPTなど)なら同じことができます。
チャット画面に提案書を添付して、次を貼ります。
あなたは新卒採用の年間計画づくりを手伝うパートナーです。
添付した来期の採用戦略(予算配分と目標人数)をもとに、
新卒採用の一般的な年間スケジュール(インターン掲載・夏冬インターン・
説明会・広報解禁・面接・内定出し)に沿って、月別の実行スケジュールの
叩き台を表形式で作ってください。
各施策に「どの媒体をいつ動かすか」を紐づけてください。
数分後、AIは月別の表を返してきました。
感心した点が2つあります。
1つ目は、自社採用ページの改修を4〜6月に置いたことです。
前回「70万円で改修をAI内製する」と決めた、あの投資です。
母集団づくりが始まる前に改修が終わっていないと、投資が寝てしまいます。
指示していないのに、そこまで汲んでいました。
2つ目は、前年の実績(目標8名に2名届かなかった)を見ていたことです。
ダイレクトリクルーティングのスカウト配信を5月と冬の2波に分けて、夏の後に追加募集を判断する月まで組み込まれていました。
ここまでは、文句なしに優秀でした。
現場の人間にしか直せなかった1箇所
1箇所だけ、明確な穴がありました。
内定が動き出す時期です。
叩き台には「2月に早期面接」の行こそあるものの、内定の第1波は4〜5月に置かれていました。
教科書どおりの、きれいなスケジュールです。
実際の現場は、1ヶ月以上早く動きます。
早い企業は12月に選考を始めて、12月のうちに内定を出しています。
私の経験でも、1月に会社説明会をやりながら、下旬から2月頭には選考を始めて、内定を出していました。
本当のルールは3月1日解禁。
ただ、それは建前です。
「実勢は前倒し。1月下旬から選考と内定が始まる前提で組み直して」と返すと、表はすぐに組み替わりました。
叩き台の8割はAIが埋める。残り2割の「実勢」は、現場の人間しか知らない。
この2割を足すのが、担当者の経験の使いどころです。
①では名寄せ(応募者データの重複整理)の最終判断、②では戦略の意思決定が人間に残りました。
今回も同じ構図です。
複数の学年の重なりを1枚に畳む

仕上げです。
3ヶ年のうち、採用実務が動く2つの学年を重ねます(新入社員の対応は除きます)。
「次の学年も同じ型で動くとして、同じ月次カレンダーに2学年を重ねて」と頼みます。
返ってきた表で、重なりの正体がはっきり見えました。
3月は、今の学年の解禁対応と、次の学年の掲載原稿の準備が同じマスに乗ります。
4〜6月は、内定出しと承諾のクロージングをやりながら、次の学年のインターン受付が始まります。
選考やクロージングは、学生1人ずつに向き合う仕事。
掲載や母集団づくりは、段取りの仕事。
性質の違う2種類の仕事が同じ月に乗る。
これが、並行して走ることの正体です。
頭の中だけで捌いていたものが、1枚の表になりました。
締め切りの見張りもAIに任せる
最後に「この計画の中で動かせない日付を逆算つきで一覧にして」と頼みます。
ナビ媒体の掲載は、原稿の入稿締め切りが掲載開始の少し前に来ます。
正確な締め切りは媒体やプランで違うので、営業担当に確認してください。
余裕を見るなら、1ヶ月前には準備を始めたい。
1ヶ月半あると、さらに楽です。
広報解禁の3月1日から逆算すると、本掲載の原稿と説明会の日程は1月中に確定させておきたい。
こうした締め切りは毎年ほぼ同じ、要するにルーティン業務です。
ルーティンだからこそ、人間の記憶で見張らずにAIの定型仕事にしてしまう。
この一覧を計画表の先頭に置いて、月初にAIへ「今月の締め切りは?」と聞く。
これだけで見張り番になります。
「去年もこの時期にバタバタした」を今年で終わらせます。
AIに任せること、人間がやること

今回AIに任せたのは、叩き台づくり、2学年の重ね合わせ、締め切りの見張り。
人間に残ったのは、実勢での補正、どの学校とどの学生に力を入れるかの優先順位、そして最終責任です。
前回、前々回と同じ線引きです。
スケジュールが仕組みになると、春先から夏の忙しさの質が変わります。
段取りに使っていた頭が、学生1人ひとりに向き合う時間に変わるからです。
スケジュールの管理はAIに預ける。会いに行く判断は、人間がやる。
①分析編で書いた「AIが事務処理を回している間に、人間は足で稼ぎに行く」の、計画版です。
AIは優秀な部下です。
それでも、自分は思考をやめない。
まとめ|今日の1つ
今回の持ち帰りは4つです。
新卒採用の計画が重いのは、作業量でなく複数の学年が並行して走るから
戦略(予算配分)が決まっていれば、それが年間スケジュールの入力になる
AIの叩き台は教科書どおりに出る。実勢の前倒しを足すのは現場の人間
2学年を同じカレンダーに重ねれば、並行の混乱が1枚で俯瞰できる
今日の1つは「叩き台を1回出してみる」。
手順は3ステップです。
自社の採用の年間の型(掲載・インターン・説明会・面接・内定)をメモに書き出す
AIに渡して「月別スケジュールの叩き台を表で作って」と頼む
出てきた叩き台に、自社の「実勢」を1つ足して直す
これだけで、頭の中の段取りが仕組みに変わる感覚がつかめるはずです。
1つ注意を。
社内の採用計画をAIに渡すときは、会社の生成AI利用ルールを確認してください。
スケジュールの見張り番から解放されたら、あなたはその時間で誰に会いに行きますか?
次回予告
第4回は「実行編」です。
媒体への掲載作業、学生への対応メール、説明会の資料づくり。
手を動かす仕事のかたまりをAIでどう回すか、実演します。
HITO|現役人事×AI実運用
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