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法改正の罠 - 輸出令別表2の21-3項 麻薬・向精神薬原料

前回の違反事例に続き、法改正情報について紹介します。

(4021字)



【前編】

株式会社ブラックトレード

※この物語はフィクションです
※生成AIを使用、編集しています
※登場人物
主人公:佐藤、上司:山田

法改正の罠

とあるブラック企業の商社、株式会社ブラックトレードでは、今日も厳しい労働環境の中で社員たちが奮闘していた。

2025年3月18日。

朝のオフィスは例によって機械的なざわめきに包まれていた。
冷たい蛍光灯の下、佐藤は手元の輸出書類控えを確認していた。

前日、複数の化学品が予定通り出荷を終えた。
顧客の納期もギリギリだったが、なんとか間に合った。
それが、ブラックトレードでは「合格点」だった。

「佐藤、例の出荷な、税関通ったらしいぞ。得意先から文句言われずに済んだな。」

営業部長・山田の言葉に、周囲は安堵と諦めの混じった空気を見せる。

「通ればいい。細かい事は後で考えろ。」

それがこの会社の流儀だった。

しかし佐藤は、どこか喉の奥につかえた違和感を覚えていた。
今回出荷した化学品。ピペリジン―四―オンを含んだ精製溶剤。

「確か、これ…去年の資料で非該当にしてたけど、何となく気になってたんだよな…」

昼休み。誰もいない会議室で、佐藤はふと経産省の貿易管理ホームページを開いた。

ページの冒頭には太字の新着情報がある。

**輸出貿易管理令別表第二及び別表第七の規定に基づき貨物を定める省令の一部を改正する省令
**「麻薬又は向精神薬の原材料の輸出承認について」等の一部の改正について

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「改正後:輸出令別表2の21の3の項の経済産業省令で定める貨物は、次に掲げるものとする。……   ピペリジン―4―オン及びその塩類

佐藤の視界が一瞬、狭くなる。
施行――済んでいる。昨日だった。

「…終わった」

出荷は、3月17日午前。

政令改正施行日に、ピペリジン―4―オン含有品を無承認で輸出してしまった。

佐藤は、自席で血の気が引いていた。

法改正は、社内で誰も気づいていなかった。
法務部もなく、輸出管理部門も機能していない。改正通知は来ない。担当者が自力で調べていなければ、存在しないも同然の扱いだった。

しかも今回、公布から施行までわずか2週間。

「そんなの無理だろ…」

施行日に該非が変わった。
だが社内では、「該非判定は完了済み」だから確認しない。
更新日付のチェックもない。

佐藤は、PCに残るExcelの該非判定リストを眺めた。
「2025年2月更新」とある。
もちろん、改正前のデータだった。

出荷は終わり、航空機への積み込みも完了している。
今から連絡しても、貨物は戻らない。

ブラックトレードの誰も、それが「違反」だとは知らない。

佐藤は、手帳に視線を落とした。

『退職するまで、あと何日』

手帳の数字を一つ、塗りつぶす。

この職場を離れると決めたのは、数ヶ月前。

きっかけは違反報告を握りつぶされた時だった。
そして今日、新たな一件を知ってしまった。

佐藤はすぐさま違反報告書を作り始めた。

報告書を作る佐藤の指は、いつもより重い。




輸出令別表2の法改正をテーマにまとめます。


【本編】

■輸出令別表2-21-3項 麻薬・向精神薬原材料

▶法体系: 国際条約

麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約
根拠条約です。

麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約は、1961年麻薬に関する単一条約1971年向精神薬に関する条約を徹底するための法的な枠組みを追加的に取り決めた条約である。

1988年12月19日にウィーンで採択され、1990年11月11日に発効した。日本においては、麻薬及び向精神薬の不正取引条約、麻薬新条約とも呼ばれる。2018年8月8日現在、185か国が締約している。

Wikipedia

▶︎法体系:国内法

麻薬及び向精神薬取締法第二条7号、別表第四

(定義等)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
七 麻薬向精神薬原料 別表第四に掲げる物をいう。

別表第四(第二条関係)
一 アセトン
二 アントラニル酸及びその塩類
三 エチルエーテル
四 エルゴタミン及びその塩類
五 エルゴメトリン及びその塩類
六 ピペリジン及びその塩類
七 無水酢酸
八 リゼルギン酸及びその塩類
九 前各号に掲げる物のほか、麻薬又は向精神薬の原材料となる物であつて政令で定めるもの
十 前各号に掲げる物のいずれかを含有する物

e-Gov

麻薬及び向精神薬取締法の第一条 目的条文に「この法律は、麻薬及び向精神薬の輸入、輸出、製造、製剤、譲渡し等について必要な取締りを行う」とあり、輸出に規制をかける国内法令となっています。

また、別表第四 9号に記載される政令において、麻薬・向精神薬原料が定期的に追加されていきます。

▶︎法体系:国内法政令

麻薬、麻薬原料植物、向精神薬、麻薬向精神薬原料等を指定する政令第五条

(麻薬向精神薬原料)
第五条 法別表第四第九号の規定に基づき、次に掲げる物を麻薬向精神薬原料に指定する。
一 N―アセチルアントラニル酸及びその塩類
二 四―アニリノピペリジン及びその塩類
三 四―アニリノ―一―フェネチルピペリジン及びその塩類
四 イソサフロール
五 エチル=二―メチル―三―(三・四―メチレンジオキシフェニル)オキシラン―二―カルボキシラート及びその塩類
六 塩酸
七 過マンガン酸カリウム
八 サフロール
九 一・一―ジメチルエチル=四―アニリノピペリジン―一―カルボキシラート及びその塩類
十 一・一―ジメチルエチル=ピペリジン―四―オン―一―カルボキシラート及びその塩類
十一 一・一―ジメチルエチル=二―メチル―三―(三・四―メチレンジオキシフェニル)オキシラン―二―カルボキシラート及びその塩類
十二 トルエン
十三 ピペリジン―四―オン及びその塩類
十四 ピペロナール
十五 N―フェニル―N―(ピペリジン―四―イル)プロパンアミド及びその塩類
十六 一―フェネチルピペリジン―四―オン及びその塩類
十七 ブチル=二―メチル―三―(三・四―メチレンジオキシフェニル)オキシラン―二―カルボキシラート及びその塩類
十八 プロピル=二―メチル―三―(三・四―メチレンジオキシフェニル)オキシラン―二―カルボキシラート及びその塩類
十九 メチルエチルケトン
二十 一―メチルエチル=二―メチル―三―(三・四―メチレンジオキシフェニル)オキシラン―二―カルボキシラート及びその塩類
二十一 一―メチルプロピル=二―メチル―三―(三・四―メチレンジオキシフェニル)オキシラン―二―カルボキシラート及びその塩類
二十二 二―メチルプロピル=二―メチル―三―(三・四―メチレンジオキシフェニル)オキシラン―二―カルボキシラート及びその塩類
二十三 メチル=二―メチル―三―(三・四―メチレンジオキシフェニル)―オキシラン―二―カルボキシラート及びその塩類
二十四 二―メチル―三―(三・四―メチレンジオキシフェニル)―オキシラン―二―カルボン酸及びその塩類
二十五 三・四―メチレンジオキシフェニル―二―プロパノン
二十六 硫酸

e-Gov
※記事投稿日時点の施行令

◼️公布、施行の確認 (経済産業省 貿易管理)

リンク:https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/index.html

輸出承認系である別表2の基本サイトです。
新着情報をチェックし、公布、施行を確認します。

法令知識の欠如による違反が起きやすい別表2ですが、もう一つの課題として、別表2関連はいずれも公布から施行が非常に短い事です。

前回21-3項改正では、2025/3/3公布、2025/3/17施行でした。
僅か2週間しかないため、輸出令公布が出てからでは対応が遅れて無承認輸出を行ってしまう懸念があります。

改正情報を先取りする方法があります。


◼️法改正情報収集

麻取法政令の改正情報を追いかけます。
確認するのは厚労省の報道発表資料です。
ここで確認する事で、輸出令より一足早く規制物質を認知する事が出来ます。

リンク:https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/index.html

報道発表例

報道発表の情報の中から、麻薬・向精神薬原料の部分を確認します。
ハイライトした箇所が輸出令別表2-21-3項に加わる物質です。


◼️法改正タイムライン:麻取法政令→輸出令

直近改正例

麻取法政令が施行された後、数ヶ月遅れて輸出令改正パブコメが公示されます。
よって最速で規制物質を把握するなら麻取法政令の公布となり、前回改正の事例では、輸出令改正施行の約半年前に知る事が出来ます。

また、輸出令パブコメ公示でも、約3ヶ月前に知る事が出来ます。
少なくともパブコメを定期確認しておけば、前もって改正に備えられます。


■まとめ

別表2では、国内法規制の改正情報を把握する事で、輸出令改正予定を先読み出来ます。
但し、35-3項(6)は化審法と同時施行等、項番によって異なるタイムラインとなります。

国内法規制若しくはパブコメの定期確認により、先取りして改正に備えましょう。

◼️後書き

別表2の改正は、公布と施行の期間が短く対応に苦労してきました。
情報を先取りする方法が無いか考え、独自にまとめたものになります。
同業者がどのように対応しているのかは聞いたことがなく、この情報収集方法が業界ではそもそも常識レベルの話なのか、正しい方法なのかは分かりません。

参考となれば幸いです。



■注意事項
掲載する記事は個人の趣味として記載したものです。
記載した情報は全ての読者の方々にとって適切であるとは限りません。
紹介している貿易管理方法においては全て自己判断、自己責任でお願いいたします。
いかなる損失が出た場合でも責任を負うことはできません。


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