ミュージカル「オクラホマ!」〜ロレンツ・ハートもよいがこちらも名作
映画「ブルームーン」の感想、エラ・フィッツジェラルドのアルバムと、作詞家ロレンツ・ハートを贔屓することを書いてきた。公平を期そう。
「ブルームーン」では、ハート、ロジャース、ハマースタイン2世が勢揃いするシーンがある。小柄で繊細なロレンツ・ハートに対して、作曲家リチャード・ロジャースの新しいパートナー、オスカー・ハマースタイン2世は巨漢である。
映画に登場するロジャース&ハマースタイン2世の手によるミュージカル「オクラホマ!」は、1943年にブロードウェイで初演。大ヒットを記録し、ピューリッツァー賞を受賞する。
私が本格的にミュージカル映画を見始めたのは1984年。日比谷映画のサヨナラ公演で見た「イースター・パレード」(1948年)に感動したことからである。私にとってのスターはフレッド・アステア。都会的で洗練された映像が好きだった。ロレンツ・ハート的な世界である。
こうした背景もあり、「オクラホマ!」(1955年)、「掠奪された七人の花嫁」(1954年)といった“田舎“、“農場“を舞台とした作品にはあまり興味がわかなかった。
そんな中で遭遇したのが、1998年のロンドンでの「オクラホマ!」再演だった。赴任して2年が経過した頃である。初演から50年以上の時を経て、私はロンドンのナショナル・シアターで観たのだが、素晴らしかった。
序曲から始まって、有名曲“Oh, What a Beautiful Mornin'“と序盤がらグッとひきつけられ、“The Surrey with the Fringe on Top"といった耳ざわりの良い曲が続く。歌・ダンス・芝居、素晴らしいステージは、フィナーレのテーマ曲“Oklahoma"へと。ロジャースの作曲家としての才能が、一回り大きく開花した感がある。
ミュージカルの舞台、こんなにも楽しく魅力的なのだと感激した。結局のところ、私は“グレイト・アメリカン・ソング・ブック“の楽曲をベースにしたクラシックなミュージカルが好きなのだ。なお、1998年のプロダクションは、イギリスのトニー賞にあたるローレンス・オリヴィエ賞を受賞した。
このリバイバル公演の監督は「キャッツ」「レ・ミゼラブル」などでトニー賞受賞のトレバー・ナン。振付は、トニー賞5回受賞のスーザン・ストローマン。キャストの中では、エラー叔母さん役の名優モーリーン・リップマンが記憶に残っているのだが、今調べてみると、主役のカーリーは映画「グレイテスト・ショーマン」のヒュー・ジャックマンだった。オーストラリア出身の彼は、本作で有名になり、世界的なスターへと階段を登り始めたのだ。
なお、このプロダクションの録音は各種配信サービスで聴くことができる。流石に名作、今聴いても耳に記憶されている楽曲が多い。
本作を機に、ロジャース&ハマースタイン2世のコンビは名作を次々と制作、そのほとんどが映画化される。「南太平洋」(1949年)、「王様と私」(1951年)、コンビの最後の作品は「サウンド・オブ・ニュージック」(1959年)。そう言えば、私が初めてミュージカル映画を見たのは「サウンド・オブ・ミュージック」、中学生の時だった。
ロレンツ・ハート的な“ジャジー〜Jazzy“な世界ではなく、誰もが楽しめる作品群である
