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【ポリファーマシー減薬】回復期リハ病棟だからこそできる「薬の引き算」─PT・Nsとつなぐチーム医療の実務

【この記事は、こんな方に向けて書きました】

・回復期リハで働く薬剤師
・回復期リハで働くリハビリスタッフや看護師
・退院時連携で関わる保険薬局薬剤師


「HONOさん、この患者さん薬多すぎませんか?」

朝のカンファ後、PTさんからふと投げかけられたひとこと。
受け持ちのAさん、80代、脳梗塞後のリハ。内服は12種類。
ふらつきと頑固な便秘で、リハの時間が午前中ずっと取れない。

──確かに、多い。
でも「多い」と「減らせる」は、まったく別の話です。

回復期リハ病棟の薬剤師は、
ポリファーマシー対策の最前線にいます。

だけど「減らす」という判断は、急性期のように検査値だけで決まるものではありません。患者さんの生活、退院先、家族、嚥下機能──全部を見渡したうえでの「安全な引き算」が、回復期だからこそできる仕事です。

この記事では、私が現場で実際にやっている「薬の引き算」の手順を、症例を混ぜながらお話しします。

  • 今まさに、回復期リハでどう関わればいいか悩んでいる薬剤師

  • 『薬減らせないの?』と悩んでいるリハスタッフや看護師

そんな方の助けになったらいいなと思っています。

この記事で取り上げている症例は、複数の症例を掛け合わせており、個人が特定されないように配慮しています。


急性期での治療が終了して、回復期リハビリへ転入。
これから本格的なリハビリが始まる。

でも、この頃からいろんな症状が出てくることがありませんか?
「なんだか痛くなってきた」
「なんだか眠れなくなってきた」
「トイレの回数が増えた」
   ・・・などなど

薬を「足す」のは、実はそんなに難しくない。
症状があれば、対応する薬があります。
痛ければ鎮痛薬。
眠れなければ睡眠薬。
血圧が高ければ降圧薬をもう一剤。

でも「引く」のって、意外と難しい。

どこまで減らせるのか。
やめて大丈夫なのか。
やめた後、誰が責任を持つのか。

急性期では、その「引き算」をする時間も情報も、
なかなかそろわないことが多い。
短い入院期間、次々と変わる病態、退院調整の速さ。

『在宅で使っていた薬はすべて中止』なら話は早い。
でも、足し算で積み上げた薬がそのまま退院時の薬袋に入っていくことも珍しくありません。


回復期リハ病棟は少し違います。

環境に応じて、足し算か引き算か考える必要があります。

患者さんは長ければ数ヶ月入院します。

食事の量、睡眠の質、日中の活動性、トイレの頻度。
生活のすべてがみえます。

「なんか最近ふらつきが増えた気がする」
「食欲が落ちてきた」
「夜中にまた起き上がっていた」

そういう小さな変化を、看護師もリハも管理栄養士も共有できる環境があります。 薬物有害事象を「生活の変化」として早期に捉えられるというのは、急性期にはない回復期の強みだと私は思ってます。

そしてもうひとつ。

回復期には「退院後の生活」という明確なゴールがあります。

自宅に帰るのか、施設に移るのか。
誰が薬を管理するのか。
一日何回の内服を、本人が続けられるのか。

その視点で薬を見直すと、
「今の薬は本当に退院後も必要か」という疑問が、
自然と生まれてくることがあります。


減薬を考えるときの基本スタンス

誤解されやすいんですが、
「減薬=薬をやめること」ではありません。

目的は、患者さんの機能・生活の質・安全性を最適化すること。

減らすことが目的になってしまうと、必要な薬まで手を付けてしまうことになります。

では、どこから手をつければいいんでしょうか。

私がまずチェックするのは、これです。

  • 入院前、薬をちゃんと飲めていたか。

  • 飲み残しはなかったか。

  • 自分で管理できていたか。

  • 夜中に転倒したことはないか。

  • 便秘や尿閉で困っていなかったか。

それから検査値。

  • 腎機能(eGFRやCcr)

  • 体重の変動

  • 栄養状態

腎機能が落ちているのに、腎排泄型の薬の量が調整されていないことが結構多いです。


腎機能の評価、実は「クレアチニンだけ見ていても危ない」ケースがあります。高齢・低体重の患者さんのeGFRの読み方はこちらでまとめています。


薬の種類でいうと、とくにコレ。
いわゆる『Beers Criteria』です。

  • ベンゾジアゼピン系・Z薬

  • 抗コリン薬

  • 抗精神病薬

  • NSAIDs

  • そして漫然と続くPPI

今、目の前の患者に必要か?という視点が大事。

高齢者や腎機能低下のある患者さんでは、これらの薬が「気づかないうちにダメージを積み重ねている」ことがあります。

ただ、ここで大事なのは「リストに載っているから減らす」ではないということです。

その患者さんに、今、何の症状があるのか。
その薬が始まった理由と、今の状態はつながっているか。

そこを確認してから、はじめて「引き算」の話になります。
Beers Criteriaに載っているからダメではありません。
必要な場合もあると思います。

そしてもうひとつ、個人的にめちゃくちゃ大事だと思っていることなんですが、薬剤師だけで完結しようとしないこと

減薬を提案するのは薬剤師でも、それを実際の生活の中で観察しているのは看護師やリハスタッフです。

「この薬を減らした後、日中の覚醒はどうか」
「ふらつきは増えていないか」
「食事量に変化はあるか」

そういう変化を拾えるのは、毎日患者さんのそばにいるスタッフです。だから私は、減薬提案をするときには必ずチームに言葉で伝えます。

「この人、最近眠れてますか?眠れていれば薬減らす相談しようかなと思います。」
「この薬そろそろ減らしてもいいと思っています。食欲どんなですか?」

そして、実際に減薬したら必ずこうお願いする。

「薬が減ったので、睡眠に変化があれば教えてください。」
「薬が減ったので、食欲が低下してきたら教えてください。」

根拠を示すのは薬剤師の仕事。
変化を見るのはチームの仕事。

減薬は薬剤師だけの仕事じゃないんです。


リハスタッフの方へ:CKD患者さんのリハビリに影響する薬、意外と見落とされていることがあります。


「持ち越された薬」をどう見直すか

回復期に転院してくる患者さんの薬袋を見たとき、「あれ、この薬なんで飲んでいるんだろう?」と思うことありませんか?

まず、急性期で始まった薬。

  • 術後疼痛で追加されたNSAIDs

  • 胃粘膜保護のPPI

  • 夜間不穏のベンゾジアゼピン系

状態が落ち着いた今も、そのまま続いていることが多い。

ただ、急性期で始まった薬は、ある意味まだ調整しやすいと思っています。

サマリーや紹介状に「いつ・なぜ始まったか」が書いてあることが多いし、 開始からの期間も比較的短い。しかも、「〇〇になったら中止を検討してください。」と書いてあることも多い。

「今もその理由が続いているか」を確認すれば、続けるべきか中止を検討していいかが見えてきます。

個人的に難しいと感じているのは、
在宅からずっと続いている薬の方。

「かかりつけでずっともらってる薬です」
「何十年も前から飲んでます」
「先生が出してくれてるから、やめたことない」

開始理由が不明なまま、何年も続いている薬がときどき存在します。 処方した医師はもういなくて、なぜ始まったのか誰も知らない。

腎機能が低下しているのに用量が変わっていない。
認知機能が落ちているのに抗コリン薬が続いている。
理由もわからず安心のためにPPIを飲み続けている。

在宅からの薬は、「長年飲んでいる」という事実が見直しの邪魔をすることがあります。

長く続いているから安全、ではなく、 長く続いているからこそ、今の状態で本当に適切かを確認する必要があるんです。

開始理由がわからなくても、今の病態・検査値・症状と照らし合わせれば、「少なくとも今は必要ない」という判断はできるかもしれません。

それが、回復期での見直しのもう一つの入口だと思っています。


実際の介入場面から

ひとつ、症例を紹介します。

この記事で取り上げている症例は、複数の症例を掛け合わせており、個人が特定されないように配慮しています。

大腿骨骨折の術後で転院してきた、80代の女性。
eGFRは35前後。
不眠、日中のふらつき、頑固な便秘あり。

薬袋を見ると、NSAIDs、PPI、ベンゾジアゼピン系が並んでいました。 NSAIDsは術後疼痛で急性期に追加されたもの。 PPIはそのカバーで始まったもの。 睡眠薬は……在宅からずっと継続でした。

「今、痛みはどのくらいありますか?」

と本人に聞くと、

「手術のところはもうあまり痛くない。でも夜眠れなくて」

と返答をもらいました。
でも、自宅で介護していた家族に聞くと「寝てたよ」と。

NSAIDsの継続理由はありそうですか?
私は、腎機能を考えると続けるリスクの方が大きいと思いました。
PPIはNSAIDsをやめれば必要なくなる。
睡眠薬は、まず睡眠状況を整理してから漸減を検討しよう。

こんな感じで考えました。

主治医に情報を整理して処方提案を行い、チームで方針を共有。

看護師には「日中の覚醒状態とふらつきの変化を見てほしい」と伝えた。
リハには「転倒リスクの評価を一緒にお願いしたい」と声をかけました。

減薬は、チームでやってこそ成功すると思っています。

数週間後、夜間不眠は以前よりマシになり、痛みはなく、
日中のリハへの参加状況が改善しました。


もう一例紹介します。

食欲がなく、体重が落ち続けていた70代男性。
管理栄養士が介入をしても、なかなか栄養状態が改善しませんでした。

薬を見直すと、過剰な降圧薬による低血圧、抗コリン作用を持つ薬による激しい口渇がありました。 どれも在宅から継続されていた薬で、これらが食欲を邪魔していました。

減薬と栄養介入を並行して進めると、少しずつ食事量が戻ってきて、 褥瘡も治癒に向けて少しずつ動き出しました。

薬を引いたことで、別の治療が動き始める。
そういう場面が、回復期にはあります。


退院後を見据えて

減薬を考えるとき、私はいつも「退院後」を起点に考えます

自宅に帰る患者さんなら、こう考えます。

  • 誰が薬を管理するのか。

  • 家族は手伝えそうか。

  • ヘルパーや訪問看護などのサービスは使うのか。

  • 保険薬局との連携はどうするか。

  • 一日3回の内服を、本人や家族は続けられるのか。


施設に移る患者さんなら、こんなふうに考えます。

  • 施設側でどこまで対応できるのか。

  • 嚥下機能は大丈夫か。

  • 剤形の変更は必要か。

「入院中は飲めていた」と「退院後も続けられる」は、残念ながらイコールではありません。

だから退院時に薬局薬剤師への情報提供書が必要なんです。

  • 減薬の経緯と理由

  • 開始した理由

  • やめた薬と残した薬の根拠

  • モニタリングしてほしいポイント

できるだけ簡潔に、でも丁寧に書くようにしている。
バトンをつなぐ、という感覚に近いのかもしれないですね。


回復期での減薬は、コスト削減のためでも、薬の数を減らすためでもない。その人が退院後の生活を、少しでも安全に、自分らしく送れるように。
そのための「引き算」だと思っています。

足し算は、誰でもできる。
でも引き算には、患者さんをよく知ること、チームで考えること、退院後まで見通すことが必要です。

回復期リハ病棟は、その条件がそろっている場所だと思います。

長い入院期間を一緒に過ごしながら、生活を見ながら、チームで悩みながら。 そうやって積み上げた「引き算」が、その後の何年もの生活を変えることがあります。

地味で、目立たなくて、なかなか伝わりにくい仕事だけれど。
それでも、やっぱり面白い仕事だと思っています。

一人でも、回復期って面白い!と思える薬剤師が増えたらいいな。
そして、リハスタッフや看護師の皆さんの中にも、「薬剤師に相談してみようかな」という人が増えたらいいな。と思っています。


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