星を紡ぐ仕事/ショートショート
前の話
暗くて冷たい保管庫の中、木箱をひとつひとつ見ていく。手前から奥に進みながら、記された日付と重さを確認する。
これじゃない。これもまだ。うーん。これだね。
ここに保管されているのは“アポロトスの鋏”によって天から断たれた星たちだ。いや、“星たち”というのは違うか。正しくは“星だったものたち“だな。“星屑”と呼んでいる。
彼らは星という役目を一度終えた。そして、寿命を終える前に星断ちによって天から切り離され、この保管庫の中で長い眠りについている。
再び、天で輝くときまで。
私は星紡ぎの仕事をしている。星紡ぎとは、星屑が再び天と繋がれるようにする仕事だ。その加工がなされた星屑を“星珠”と呼ぶ。
断たれたばかりの星屑は、その加工に向かない。中心部までしっかりと乾燥しきらなければならないからだ。
だから、断たれた日付と重さを確認する。断たれてから十分時間が経過していても、重さによってはまだ時間が必要なこともあるからだ。
今日、保管庫から持ち出したのは、平均的なサイズのものだ。
星屑は大まかに3層に分かれている。一番外側の硬い外殻、中心には黒くて重い核、その間には少し柔らかいスポンジ状の層だ。
まずは、外殻を砕いていく。元々たくさんの罅が入っているので、難しいことはない。その罅を広げるようにして砕く。全面に細かく罅が入ったら、外殻を剥がしていく。中のスポンジ層がいっしょに取れないように、慎重に。
次にスポンジ層を核から取り除く。核はとても硬く、多少のことでは傷ひとつ付かないので、思いっきり剥がす。
星屑を3つに分けたらスポンジ層と外殻を細かく砕いて砂状にする。そして計量だ。
まずスポンジ層を計量し、その6倍の重さの天の川の水を用意する。次に外殻の同量の重さのザクロの果汁を用意する。
そして、それぞれを混ぜ合わせる。するとスポンジ層の方は繊維状の組織ができ始め、外殻はねっとりと粘度状になっていく。
ここからは、成形だ。核のまわりに、均一な厚さになるようスポンジ層を塗っていき、すべて塗り終えたら日光へと当てる。すると天の川の水はあっという間に蒸発する。繊維状になった組織だけが残り、随分と軽くなった。
次は外殻だ。外殻はスポンジ層に比べて薄くする必要がある。しかし、薄い部分があってはいけない。とても気を遣う工程だ。
これで成形は終わり。元の星屑と比べるとかなり大きくなった。しかし、星珠は天と繋げられて星となると、風などに削られてさまざまな形となり、そしてだんだん小さくなっていってしまう。
それが終われば、後は“ペルセポネーの泉”にそれを浮かべるだけ。ペルセポネーの泉は柔らかな光を湛えている。そこに、星珠を両手ごと浸す。ゆっくりと手を離せば、水面に浮かんだまま揺蕩い始める。
泉には以前紡いだ星珠も浮かんでいるが、それ同士がぶつかることは無い。お互いが付かず離れずの距離を保ちながら、ゆらゆらと漂っている。
これで私の仕事は終了だ。ここからまた長い時間、星珠はペルセポネーへ身を委ねて眠る。
そうして時が来れば、また天と繋がれることだろう。
次の話
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