星を蒔く仕事/ショートショート
前の話
ゆらり揺らめく光の泉には、いくつもの珠が漂っている。その、冷たさと熱さを交互に感じるような泉から、淡く発光するひとつを持ち上げた。
今日、俺は星蒔きの仕事を任された。星蒔きとは星珠を天と繋ぎ、再び星とすることだ。
普段は“へーリオスの水“の管理やらをしている。まあ、中間管理職みたいなもんだ。
星紡ぎによって“ペルセポネーの泉”へ預けられた星珠はある期間、その泉の中を漂う。その期間にはバラつきがあり、規則性は見つかっていない。
ただ、その時が来ると星は自ら発光し始めるんだ。
そうなれば、俺の仕事だ。時が満ちたそれを泉から掬い上げ、天へと繋げる。
まずは繋げる場所の選定だ。一度、天と繋がってしまえば、再び断たれるまでそこを動くことは叶わないからな。
周囲にある星たちとの距離、それぞれの大きさ、明るさ。これまでに星が断たれたことのある場所。それらを考えながら最適な座標を選ぶんだ。
いろいろ気を遣わなきゃいけないことが多くて大変なんだぜ?
いくつか候補を挙げたら、そこからは御上が会議。意見は言うが、決定権は俺にはないんだよ。新しい星の誕生というのは重要だからな。
会議は大体一週間くらいで決着するよ。それまで俺は待機。いや、他の細々した仕事はしてるけどな。
決められた場所に星珠を持って向かう。その場所に着いてベルを取り出す。白いハンドベルだよ。見る角度によって色がゆらっと変わる不思議なベルだ。
これも普段は“アポロトスの鋏”と同じように管理されてる。昔は“なんちゃらのベル”って呼んでたんだが、今はただ“ベル”って呼んでるな。まぁ、使う奴どころか、こいつの存在を知ってる奴もあんまりいないけど。
カラーン。そのベルをほどほどの力で振ると、澄んだ音色が響く。高すぎもしない、低すぎもしない。しかし、体の芯を震わせるような不思議な音色だ。
1、2、と数回鳴らすと天から一本のか細い糸が垂らされた。それは風に煽られてきらきらと瞬く。光り方が星のそれのようだ。
その糸の先端と星珠の一部に“月の涙”を吹きかけて、それぞれを繋ぎ合わせる。これにもちょっとした技術が要るんだが、まぁ、内緒な。
上手く繋ぎ合わせることができると、星珠は中心部から強い光を発し始める。そうなれば俺の仕事は完了だ。星珠も晴れて星になれるってわけ。
翌晩には盛大な祭りが開かれる。それには星磨きや星注ぎだけじゃなく、町民たちも大勢参加する。飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎ。誰も彼も浮かれて燥ぎまわるのさ。
新たな星の誕生っていうのは、それぐらいお目出度いことなんだ。
星になったことを祝われたこいつは、またこの場所で途方も無い時間、磨かれ、注がれながら輝き続ける。その先には、また断たれる時が来るだろう。
しかし、それもひとつの区切りに過ぎない。それを越え、また紡がれ、天と繋げられる。
そうやってこの天は廻っているんだ。
次の話
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