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星を断つ仕事/ショートショート

前の話



 では、明日の明け方に。よろしく頼むよ。


何度も経験した仕事だが、未だ慣れることなく気が重い。


 言われた通り、翌日の明け方。俺はとある星の前にいた。その星は乾燥が激しく、ところどころ罅が入っている。

ああ、確かにこれは駄目だな。


 俺は普段、星磨きの仕事をしていて、西1ブロックを任されている。
そして、稀に星断ちの仕事も請け負う。それが今日だ。


 星は気が遠くなるくらい長い間、輝き続けることができる。しかし、それも永遠じゃない。輝きを保つために星磨きや星注ぎが尽力するが、時間の流れには逆らえない。

 終わってしまう星というのは、俺たちがどれだけ努力をしても、終わってしまうのだ。

 この星は、そんな終わりが見えた星だ。星は緩やかに、しかし確実に終わりへ向かう。


 まずは乾燥の進みが早くなる。前日と比べると分かり辛いが、1週間前と比べると歴然とした差が出る。

 そして、小さな罅が入り始め、それが広がり、最後には穴が開く。そうなってしまうと、もうどれだけの“へーリオスの水”を注いでも意味はない。その穴から零れ落ちて、枯れていくだけだ。


 星は完全に枯れると有害なガスを発生させながら爆発する。それの被害は甚大だ。回避しなければならない。

 そこで、俺のような星断ちが必要になる。


 星は細い糸で天と繋がっている。それは、星が枯れ、爆発する際に自然に切れるものだ。
しかし、爆発が起きる前にそれをこちらで切ってしまう。そうすれば、大規模な爆発は起こらない。そうやって被害を防ぐのだ。


 気乗りがせずとも、これは俺の仕事。全うしなければ。


 この糸は普段、見ることはできない。しかし、“月の涙”を吹きかけることで見えるようになる。
美しいガラス瓶の霧吹きで一吹き。瞬くように光を放つ飛沫が糸を染め上げる。
後はこの糸を切るだけ。この“アポロトスの鋏”で。

 こんなにも頼りない糸は、この鋏でしか切ることができない。普段は厳重に管理されているものだ。強い酸性を持つ月の涙も。仕事を任されたときだけ持たされる。そしてこの仕事が終われば、またしっかりと鍵が掛けられる。


 しゃきん。ああ、切れてしまった。

 か細い糸は、嫌に呆気なく断ち切れた。これでこの星は自分の寿命を終えられず、このまま俺に回収され、暗い保管庫にしまわれる。
まだ、あと少しだけでも輝けたのに。


 これまで何度も経験したことだ。まだ輝けるからといって星の寿命を待てば、大きな被害が出る。それは防がなければいけないことだ。

 星磨きの作業が荒かった? 星注ぎの量に間違いがあった?
そうじゃない。そもそも、完璧な仕事なんて俺も、誰もできない。誰も悪くない。


 しかし、どこか負い目を感じながら俺が終わらせた星をヴェールで包む。

 最後、物言わぬ彼に「ごめんな」と声を掛けて。




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