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メモのとり方再考

 リクエストを頂いたので、メモの取り方練習法をアップしておく。高次脳機能障害の方に対するメモの取り方の指導だが、障害の有無にかかわらず、参考になれば幸いである。
 今どき、生成AIを使えばメモの取り方の練習なんてすでに過去のものになった、AIが会話をまとめてメモを作ってくれるよ、なんて議論があるのは承知しているけれど、AIを使えない場面もあるかもしれないし、AIのハルシネーション(実在しない情報・誤った情報の生成)の問題もある以上、アナログ&アナクロではあるけれど、従来のメモのとり方練習もまだ有効かもしれない。


メモは練習

 まず大前提として、使えるメモを作成するためには、練習が必要です。たかがメモに練習?疑問に思われるかも知れません。筆者がこの数十年間診療してきた経験からすると、練習なしで”使える”メモを取れる方は、例えば、新聞記者とか警察官とか、職業的にメモを使い慣れた方に限られる印象があります。
 筆者を含め大半の人にはメモのコツを身につける必要があると言っていいでしょう。とはいえ大したことではありません。ほんのちょっとしたコツを身につけるだけで、ちゃんと”使える”メモが取れるようになりますので、試してみてください。

メモは未来の自分という他人に向けた引き継ぎ書

 メモで大事なことは、何を書いて何を書かないか、それをどう判断するか、でしょう。
 ところで、自分で書いたメモなのに、必要になって見たら、内容がよくわからない、何が書いてるのか理解できない。そんなことありませんか。筆者はよくありますし、うちのメンバーでもそのようにおっしゃる方は少なくない。いや、書きなぐってしまって字が汚いから読めないって意味ではありませんよ。そうではなく、書いてある内容を理解できない。
 なぜそのようなことが起こるのか。おそらく、内容を理解するために必要な情報が足りないからではないでしょうか。自分で書いたのに、必要な情報が足りてないのはどうしてでしょう?
 私たちは、今、わかりきっていること、当たり前なこと、それらは空気になってしまっていて意識しにくい。だからメモ書きをするときに、そのような情報を書かないのですね。
 別の言い方をすると、今、頭の中に存在している当たり前わかりきった情報と、メモに書くために意識化した情報、その両者を合わせて、今の自分は”状況”を理解しているわけ。
 ところがですね、一定の時間が経ってからメモを読む自分は、書いたときにはわかりきって当たり前であった頭の中の情報を忘れてしまっている。もう頭の中にない。すると必要な情報のうち、メモに書いた情報しか手元に残っていないことになる。その足りない情報から、メモを書いたときの”状況”を再現しようと思っても、それは土台無理な話。いきおい、メモの内容が理解できない!となってしまうのでしょう。
 解決策は、自分にとってわかりきったこと、当たり前なこともメモに書く、それだけでOKってことですよね。でも、自分にとって当たり前なことを意識化するのが結構難しい。つい端折ってしまいがち。
 で、ちょっと頭を切り替える。自分のためのメモだから、自分がわかっていることは端折ってしまう。最初から、他人に向けた引き継ぎだと思って書けば、必要な情報を漏らさずかけるようになるはず。未来の自分というのは、今現在の状況を忘れてしまっている=今の状況を知らない人、つまり、他人と同じなのですね。
 メモに書く内容、何を書いて何を書かないか、それをどのように判断するのか、という疑問に対する答えがこれ。未来の自分という他人への引き継ぎのつもりでメモを書きましょう。意識してみてください。効果ありますよ。
*休憩のために作業を中断するときなども、再開用の指示のメモを同じ方針で作っておくと、まごつかずにスムーズに作業再開できるよ。

メモは”ポケット1つ原則”で

 ”ポケット1つ原則”とは、別記事でも触れましたが、野口悠紀雄先生の「超整理法」に紹介されている、情報の保管場所を一か所に限定する管理術です。こうすると、情報を探す場合に、あちこち探さず、一か所だけ探せば良いので、必ず見つかる、紛失がないというわけです。これ、言い換えると、”分類しない”ってセオリーです。

 メモにもこの方法を適用しましょうというのは「超整理法」でも提案されている方法です。メモはできるだけひとつのメモ帳(あるいはスマホとか)に書いて(入力して)いく。
 仕事のスケジュールはスマホ、プライベートの予定は携帯用のメモ帳、趣味の活動は大判ノート、なんて具合に”分類”して管理されている方もおられますが、どうしても見落としなどが起きやすい。どこに書いたかわからなくなることもある。混乱しやすいようです。
 メモを書く場所をひとつだけに限定しておくと、とりあえず、そこだけ見れば良い。一か所探すだけで必ず見つかる。あちこち見なくても良い。だから見落としが減る。
 ポケット1つ原則は、メモに限らず、いろいろな場面で役に立つので取り入れてみてください。

メモは読むもの、書くだけじゃない

 前項で”メモの見落としが減る”と書きましたが、そう、メモは書くだけではありません。書いたメモを見なければ(参照しなければ)、メモとしての意味をなしません。当たり前です。
 ところがですね、この当たり前が意外と難しかったりする。どうしても、皆さん、メモの書き方に一所懸命になる。たしかにこの記事でも、ここまで長々とメモの書き方に紙面を割いてきたわけだけれどもね(紙じゃないけど)。
 診ていると、メモを書くだけ書いて、メモ帳を携帯していることを忘れてしまっていた、そんな事態をまれならず目にするわけ。せっかく相応の労力をかけて書いたメモなのです。いかに参照するか、そこを意識しておいていただきたいのです。
 ある方は小さなメモ帳を、首からぶら下げるようにしました。メモ帳が常に自分の視界に入るように工夫されたわけです。また、ある方はスマホのアラーム機能やタイマー機能を使って、スケジュール確認などを忘れないようにしています。
 紙のメモ帳やノートを使うにしろ、携帯端末を使うにしろ、メモを参照する意識をもつこと、これが大事。ご自身の使いやすい方法を工夫してみましょう。

待ってもらうーメモをとるための対人スキル

 ここまではツールとしてのメモの使い方について考えてきたわけですが、メモについてよく問題になるのが、メモの記載が追いつかない事態です。
 例えば職場で指示者から指示を受ける。その際、口頭でどんどん指示を伝えられると、メモ書きが追いつかず、結果的に言われた指示を落としてしまう。診察時によく聞くエピソードです。
 相手の話にメモ書きが追いつかない、そんなときは、一旦、相手の話を止めること。という指導をすると、大抵の患者さんは躊躇されます。それはそうです、相手の話を遮るのは失礼になりかねないからね。そこで、なるべく失礼に当たらないような言い方を工夫します。
 仕事では確認が大切ですよね。指示された内容を復唱して確認することもよく行われているかと思います。ここはひとつ、指示者の話を遮るのではなく、確認する体で行きましょう。指示内容を確認するために、話すことを少し待ってもらうのです。
 早速練習してみましょう。「ちょっと待ってください、ヤマモトさん。確認したいのですが・・・。」Repeat after me!
 このように一旦、話すのを待ってもらい、そこまでメモできた内容を復唱、確認。それができてから、また、続きの指示を貰えばよいのです。指示を確認する真摯な姿勢を演出すれば、話を遮る印象も和らぐでしょう。だいたい、皆さん、こんな感じで、それなりにうまくこなしているようです。いかがでしょうか。

 以上、診察時のいつもの話でした。もう何度も聞いたよ、なんて言わずにおさらいだと思ってね。だって、”何度も聞いた”ってのは、聞いた話がちゃんと記憶に残ってるって証左だから、結構なことじゃないですか。

まとめ

・メモはすべてAI任せ、も可能な時代にはなったが
・”使える”メモとりのために練習と工夫
・未来の自分という他人に向けて書こう
・ポケット1つ原則が有効(分類しない)
・メモは参照するもの
・待ってもらって、復唱確認

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