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【連載小説】w 「あたしの道草」⑤

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(五)

あたしは、いつもはあまり行かない西口のほうへ行ってみようと思った。

この前、友達の友達の部屋探しを手伝ってあげたんだけど、そのときもやっぱり西口の方から出たの。

友達に頼まれて、不動産屋に行ってその人とお店の人の通訳をしてあげたりしたんだよね。

あ、その友達の友達は黒人系で日本語が全然できなくて、それで、通訳とか手伝ってあげてって頼まれたの。

で、その人がタクシーで大使館に帰っていったあと、一人でブラブラ歩いてて。

それで、なんとなく大学の方に歩いていたら、なんとなくレトロな感じの喫茶店があって、ちょうどのどが渇いていたから、なんとなくお茶飲もうと思ってそのお店に入ったら、同じ高校の同級生で同じ大学のアオイちゃんがいてビックリ。

なんとなくあたしは、って”なんとなく”が多すぎだよね。

大体あたしはなんとなく行動することが多くて、アオイちゃんもなんとなく見つけて、なんとなく声をかけたんだよね。

アオイちゃんは、詩を書くのが上手で、そこでも創作活動をしてたみたい。

アオイちゃんは、とっても素敵な詩を書くコで、あたしは大好きなんだよね。

高校の頃は、話したことはなかったんだけど、大学で偶然会って、同じ高校ってことがわかって、仲良くなった。

アオイちゃんはあたしのことを知ってたみたい。まあ、あたしは16歳で日本に帰国して、編入した高校でも日本語が変でちょっと目立ってたみたいだから、アオイちゃんがあたしを知っててもおかしくないよね。同じクラスになったことはないんだけど。

アオイちゃんは、落ち着いた雰囲気の可愛いコで、あたしは基本的に可愛いコが大好きだから、すぐ好きになったんだよね。

詩を書いてるって教えてくれて、作品も見せてくれたの。それがとっても素敵で、カッコよかったの。なんか向こうの授業で、詩の朗読とか暗唱とかしたのを思い出した。

恋愛っぽい詩だったと思うけど、アオイちゃんって彼氏いるのかな。やっぱりああいう恋愛の詩を書くには、実際に恋愛をしてないと書けないよね。今度アオイちゃんに会ったら聞いてみよう。

その喫茶店に行ったらまたアオイちゃんいたりしないかな。

あたしも今日は暇になっちゃったし、その喫茶店で詩でも書こうかな。なんか、詩を書いてるってカッコいいよね。

あたしは、駅の西口から出て、駅前のロータリーに沿って歩いた。

駅には大きく東口と西口があって、どちらかというと東口の方が開けているから、あたしは東口に出ることが多かった。

だから、この間もそうだけど、西口ってなんか新鮮なんだよね。

この間の喫茶店は、西口にあるちょっと大きな公園を超えて少し行ったところにあって、あたしの中ではちょっとした穴場って感じ。そんなに混んでなさそうだし、雰囲気も古い感じであたしの好みに合ってるんだよね。

あたしは、小学校の低学年くらいにはもう海外に行ってしまったので、日本ではどうしてもその年代で止まってしまってるところがあって、少し古めのそのくらいの時代の雰囲気の方がなんか落ち着くんだよね。

だから、結構年上の人との方が、話が合うようなところがあって、逆に同世代のコたちが普通に知っているようなこととか流行りのファッションとかにはちょっと疎いのね。

向こうは、日本ではオシャレとかいろいろ言われてるけど、基本的にズボラなだけだから、あたしもその楽さに慣れてしまってるところがある。

服だって、自分着たい服を好きに来ているだけだしね。

だからあたしが気に入ってる服は、紫のラインが入った紺色のジャージの上下だったりするんだよね。大学にももちろん着て行ったりする。

そんなことを考えながら歩いてたら、いつの間にか西口の大きな公園通り過ぎてた。公園はやっぱり人は多いね。

公園を超えた通り沿いのお店が並んだ先に「白いバラ」という看板が見えた。

このお店で、偶然、アオイちゃんに会ったんだよね。

「白いバラ」っていうネーミングもどこかヨーロッパぽいし、なんとなくレトロな雰囲気もあって、小さい頃、まだ海外に行く前に日本にいた頃を思い出すような、どこか懐かしい感じ。

お店の前まで来て、あたしは自動ドアを開けて中に入った。

それなりに人がいて、店内はちょっと混んでる感じ。

あたしは、この前来た時にアオイちゃんが座っていた奥の席のところに歩いて行った。

やっぱり、いないか。もしかしたら、と思ったけどアオイちゃん、いないみたいだね。

今日は日曜日だもんね。わざわざ出てきたりはしないか。

あたしは、ちょっと残念に思いながら、アオイちゃんがこの前座っていた席が空いてたから、そこに座った。

席はそこそこ埋まっていて、この前よりも少し混んでる印象。やっぱりお昼時だからかな。そういえば、あたしも少しおなかが減ってるかも。何か食べようかな。

メニューを見てあたしは、グレープフルーツジュースと高菜ピラフを注文して、一息ついた。

店内をもう一度ぐるっと見回してみる。

やっぱり、アオイちゃんいないよね。立ち上がってお店の角の方も見てみたけど、アオイちゃんはやっぱり来ていないようだった。

アオイちゃんのことを考えていたら、あたしはなんだか詩が書きたくなって、バッグの中から大学ノートとペンケースを取り出した。いつも持ち歩いてるんだよね。

あたしは、どちらかというとアナログ派だから、パソコンとかに書くよりノートに書くほうが楽なんだよね。

これからはスマホに書いていこうとは思ってるんだけど、今日はノートのほうがいいかな。

あたしは、ペンケースからオレンジ色のボールペンを出して、テーブルの上にノートを広げて、思いつくままに言葉を書いていった。衝動があるときは、一気に書き上げたほうがいいってフランス人の先生に言われたことがあって、それはアオイちゃんもそう言ってた。

「あたしの道草」⑥に続く



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